次代の社会を担う「主権者」を育てよう!

学校教育学研究科(教職大学院)
HIRATA
JUN
平田 淳
教授
「『開かれた学校づくり』と生徒参加による主権者教育」
[キーワード]
開かれた学校づくり,生徒の学校運営参加,主権者教育,
学校協議会,エンパワーメント
平田淳(2007)
『「学校協議会」の教育効果に関する研究­
「開かれた学校づくり」のエスノグラフィ-』東信堂
次 代 の 社 会 を 担 う 「 主 権 者 」 を 育 て よ う !
研究紹介
◆研究概要
「主権者教育」は,18 歳選挙権の実現によって注目さ
れ始めましたが,実際の教育現場においては,違法な選
挙運動の防止を目的とした公職選挙法の解説,または模
擬選挙・模擬投票など,その活動の殆どは「選挙教育」
に留まっています.一方で,集団的自衛権や TPP など
政治的な問題の教育方法については,主に「政治的中立
性」との関連で議論されています.この場合,「主権者
教育」は高校でのみ実施され,その担い手は社会科や公
民科の教員に限定されるという傾向にあります.しか
し,「主権者教育」とはそれで十分なのでしょうか.
「主権者教育」を「民主主義社会を主体的に維持・発展
させていくための市民(主権者)を育てる教育」と定義
し,民主主義が「自分たちの社会は自分たちでつくる」
ということを意味するのであれば,主権者教育の内容は
より身近な問題からアプローチし,「自分たちで社会を
つくる」ことを体験的に学習することが求められるので
はないでしょうか.
◆学校協議会活動を通じたエンパワーメント
児童生徒にとって「自分たちの社会」とは,「学校」
がその中心的位置を占めています.しかしながら学校で
「自分たちの社会を自分たちでつくる」ことを体験的に
学習できているのでしょうか.これまでは,その役割を
児童会や生徒会に期待していましたが.実際には形骸化
していることが指摘されています.また,生徒会が生徒
の要望を集め教員に伝えるなど,例えば校則を変える取
組みを実施したとしても,生徒対教員という対立構図に
なってしまい,建設的な話し合いが難しくなっていま
す.そこで当研究室では,「主権者教育」実践の場とし
て,いわゆる「学校協議会」の取組みに着目していま
す.「学校協議会」とは,校長等管理職,教員,保護
者,子ども,場合によっては地域住民などが学校に関係
する当事者として意見交換・議論を通じて合意を形成し,
学校運営を行っていくための合議制機関のことです.生徒
は「学校協議会」に参加することで,①情報収集処理能力,
②論理的思考能力,③説得的表現能力,④交渉能力,⑤協
働性などの能力が向上していきます.この活動を通して学
校生活に対する満足感や達成感,より高い学校参加への動
機づけなどが得られるでしょう.つまり生徒の「エンパワ
ーメント」が達成されることになります.
「自分たちの社会」である「学校」のあり様を自分たち
で決めていくという体験を通じて学習し,その「社会」が
学校を超えて地域社会に,国レベルに,そして国際社会の
あり様に敷衍して考えることができるようになります.更
には,高度な政治的問題,あるいは世界の裏側で起こって
いる事象についても,「自分たちの社会」をどうつくって
いくかという観点から,身近なことに引き付けて考えるよ
うになります.つまり,「主権者教育」とは国や国際社会
のあり様を規定するものに発展する可能性を持っていま
すが,そのスタート地点は学校や学級など最も身近な「自
分たちの社会」を「自分たちでつくっていく」ことから始
める必要があるのです.
図.学校協議会における当事者間の相互作用
掲載情報 2016 年8月現在
教職大学院を
目指す皆さんへ
一言アピール
「開かれた学校づくり」も「主権者教育」も,グローバル・シティズンシッ
プ教育のために重要な取組みです.共に学んでいきましょう.
産学・地域連携機構より
「自分たちの社会を自分たちでつくる」という当事者意識を持った主権者を育てる
教育,「学校協議会」に興味がある方をお待ちしています.
佐賀大学研究室訪問記
2016
佐賀大学
産学・地域連携機構
(佐賀県佐賀市本庄町1番地)
(お問い合せ先) 国立大学法人 佐賀大学 学術研究協力部 社会連携課
TEL:0952-28-8416
E-mail:[email protected]