— 師弟対談 — 人 私を“歯科衛生士” にしてくれた 【第 4 回】 塚越芳子さん × 清水雅雪先生 忘れられない言葉 塚越「清水先生とはじめてお話することができたの は 22 年前.当時ずっと憧れていた北欧,スウェー デンでした」 清水「イエテボリ大学で行われた,歯科医師と歯科 衛生士の合同サマーセミナー,まだ発足したばかり のころから塚越さんは参加していたよね」 塚越「先生は覚えていらっしゃらないかもしれない のですが,そのセミナーで,先生が私に『あなたに は情熱がある』って言ってくださったんです」 清水「覚えているに決まってるじゃない.熱心に取 り組む姿をみて,すぐに“彼女は僕と同じだ”って ピンときたんだよ」 塚越「当時はいくら勉強しても,それが患者さんに 還元できているのかがわからず,不安なまま,手探 りでがむしゃらに努力していました.そんなときに, 当時すでに歯科衛生士向けに多くの講演をされてい た清水先生にそう言われて,“ああ,私はまだ頑張 塚越 芳子 1985 年に埼玉県立衛生短期大学歯科衛生学 科を卒業後,ナグモ歯科クワバラクリニック (さいたま市浦和区)とわたなべ歯科医院(埼 玉県上尾市)に勤務.長年の臨床経験に基づ く確かな技術と,笑顔と思いやりの溢れる姿 勢で患者さんに寄り添いつづけている 清水 雅雪 1973 年に清水歯科医院(名古屋市中村区) 開業.その後 15 年にわたりイエテボリ大学 で学んだことをベースに,現在も歯周治療の 第一線で活躍しつづける.芸術にも造詣が深 く,情熱的,かつ多面的な視点から歯科医療 界,歯科衛生士界をみつめる れる”って思えたんです」 清水「働く医院も地域も違うけれど,あのときから て……私が歯科衛生士としてのキャリアを考えて心 僕にとって塚越さんは,同じ臨床に対する情熱,つ が揺れていたときも, 『あなたは大丈夫』って, 先生, まり患者さんへの想いをもつ“仲間”だし,そこは 言ってくださいましたよね」 ずっと通じ合っていると思っているんだ」 清水「塚越さんみたいに情熱がある人は,ちょっと 塚越「私はずっと患者さんのことを第一に考えて生 産休や育休で現場を離れるくらい大した問題にはな きてきたので,先生にそう言ってもらえるのが本当 らないんだよ.だってその根底には“患者さんのた にうれしいんです.主人にも『お前は俺じゃなくて め”という明確な信念があるじゃない.臨床で一番 患者と結婚しろ』って言われたくらい」 重要なのは患者さんの信頼を得ることだから,その 清水「僕もそう,妻に『あなたは臨床に立っていると 信念さえあれば技術や知識の遅れなんてすぐに努力 きが一番いい顔をしてる』って言われるな(笑) 」 で取り戻せると僕は思ってる」 情熱と信念 塚越「それからしばらく経ってから子どもを授かっ 338 デンタルハイジーン Vol.36 No.4 2016.4 塚越「その後すこしずつ現場に復帰する際も,ずっ とその言葉が心の支えになっていました.それから 臨床はもちろん,講演や執筆活動を勧めて,引っ張 情熱と信念に笑顔が併されば、 そりゃあどんな患者さんだって通いたくなっちゃう それが理想の歯科衛生士であり、医療人だよね り上げてくださったのも先生なんです」 ど,笑顔には表れるからね.患者さんが通ってくれ 清水「書いたり話したりすることで,自分の臨床や るのは医療者側の人間性ありきだし,塚越さんのそ 人生を評価できると僕は考えているからね.あとは, れには歯科医師がどんなに頑張っても適わないと思 塚越さんのすばらしさをいろいろな人に紹介したく う」 て,僕の主催するスタディグループでの講演をお願 塚越「でもそういうところを肯定して,理解してくだ いしているんだよ」 さる先生も,医療人として,一人の人間として患者 塚越「清水先生はいまでも雲の上の方だし,講演ど さんに向き合っているんだなとあらためて思います. ころか,依頼のお電話をいただくだけですごく緊張 そういう先生のご姿勢が私の幹となっているんです. してしまいますが……(苦笑)」 先生がそのままでいてくださる限り,私は歯科衛生 患者さんを惹きつける笑顔 士としてまだまだ頑張れるような気がします」 清水「僕もまだ道半ばだから,とりあえず 80 歳ま 清水「あとね,塚越さんの最大の魅力はその笑顔. では頑張りたいね.そして,若い歯科衛生士,歯科医 患者さんを思いやる心っていうのは目に見えないけ 師たちに塚越さんのすばらしさを伝えていきたいな」 The Journal of Dental Hygiene 339
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