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.9,165(
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0
1
1
)
周防灘の水質・底質の変化と水産業
山本民次 *1 ・和西昭仁
瀬戸内海, 60,
7
1
4(
2
0
1
0
)
周防灘は瀬戸内海の西端に位置し,伊予灘と接するとともに,関門海峡を通じて日本海とつ
ながっている。灘全体としては密度流的に反時計回りの環流が形成される。全窒素および全リ
ンの河川経由の流入負荷量は, 1990年代初頭の集計で 4
.
8X 103 tNy
r
-1および 2.
4X 1
02tP
y
r
lであり,体積当たり負荷量では大阪湾と比較すると 1110程度と少ない。
周防灘の貧栄養化の原因はいくつかあるが,いずれも人為的なものなので「人為的貧栄養
化」と呼ぶのが正しい。周防灘の海水中の栄養塩濃度の推移を見ると,溶存態無機リン (
D
I
P
)は
1976~ 1980年の 0.21μMから 1991~ 1995年には 0.13μM (前者の 60%) に低下,溶存
態無機窒素 (
D
I
N
) は 1980年代の低下は見られないものの, 1991~ 1995年の 3.5μMから
2001~ 2005年には1.7μM(前者の 49%)にまで低下した。このことは,水質総量削減において,
リンが第 I次当初 (1980年)から削減指導対象で、あったのに対して,窒素は第 4次(1995年)
に削減指導対象となり,第 5次 (2000年)にリンとともに総量規制の対象になったことと非常
に良い一致を示す。
周防灘は水深が浅く,面積が非常に広い海域であるため、底質が水質に与える影響は非常に
大きい。灘の南西部(豊前海)で、は貧酸素水塊の形成が報告されている。細粒分が多い底泥に
は水中の酸素が入りにくいため,還元状態を呈し,硫酸還元によって猛毒な硫化水素が生成さ
れる。硫化水素は酸素に触れればすぐに酸化されるが,直上水が無酸素状態の場合には溶出す
る。底層の貧酸素化および硫化水素の生成は底生生態系を崩壊させる。周防灘の底質は,広島
湾と比べて,含水率 (
W
C
)や強熱減量 (
I
L
)は低いが,酸揮発性硫化物 (
A
V
S
)濃度や酸化還元電位
(OR
町には大きな違いがない。貧酸素水塊の形成が報告されている灘の南西部で、は,年聞を通し
て AVS>0.2mg/g乾泥の場所があること,夏から秋にかけて AVS濃度が高くなることが分かっ
た。この海域では WC,I
L,AVSが高く, ORPは低かった。 AVSは必ずしも H2Sの濃度と比例す
るわけではないが,還元的環境では H2S含量が高いことが推測される。
瀬戸内海の一次生産のほとんどは浮遊微細藻(植物プランクトン)によると言われてきたが,
周防灘のように水深の浅い海域では,底生微細藻による寄与が大きいことが推察され, 10%程
度が底生微細藻によるものであることが報告されている。これは,干潟域などにおける底生微
細藻の一次生産を加えると,数倍になることが予想される。底生微細藻が活発に光合成をして
酸素を放出すれば,底層の貧酸素化の軽減や泥表層での硫酸還元の抑制などとして作用する。
また,増殖に当たっては底泥間隙水中の栄養塩を取り込むので,水柱内への栄養塩溶出量を低
減する。このようなことから,周防灘においては浅海域の底生微細藻が海域生態系の健全性の
維持に大きく寄与していると考えられる。
キーワード:周防灘;貧栄養化;水底質;一次生産
*1 広島大学大学院生物圏科学研究科
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