多段階光励起法による 光線力学治療法とその装置 大阪大学 産業科学研究所 教授 真嶋 哲朗 大阪大学 産業科学研究所 准教授 川井 清彦 1 背景 光線力学療法:Photo Dynamic Therapy (PDT) 癌組織集積光増感剤 と 光照射 による選択的癌組織破壊 ターゲット:細胞膜、ペプチド、DNA etc…. 癌組織の破壊にはDNAの破壊が最も確実 2 光線力学療法 レーザー 集積 癌 光増感剤の投与 ・体力的に外科的手術が困難 ・とり除きたくない部位の腫瘍 ・血友病患者 などの治療に注目される 3 PDTのメカニズム 従来法 S (光増感剤) 光照射 1S* ISC 3S* (一重項励起状態) (三重項励起状態) 従来法: Type II 3S* + O2 1O * 2 S + 1O2* 癌組織破壊 レーザー照射とともに酸素濃度が低下 効率が激減、、 4 PDTのメカニズム 本手法 S (光増感剤) 光照射 1S* ISC 3S* (一重項励起状態) (三重項励起状態) 本手法: Type I 1S*, 3S* 癌組織破壊 酸素濃度に影響を受けにくい新たな 腫瘍破壊機構 5 Type I機構の効率 レーザー S*• S:光増感剤 - •+ G G:DNA構成因子 グアニン 逆電子移動のためDNA損傷の効率は極めて低い 6 2波長2レーザー照射による高効率化 2nd レーザー S •** eaq- S:光増感剤 1st レーザー G損傷 DNA切断 •+ G O2 and H2O G:DNA構成因子 グアニン 2-color-2-laser照射で反応を不可逆に! 7 2波長2レーザー照射による空間制御 角度を変えて2つのレーザーを照射 2つのレーザー光の交わる点において 損傷効率が最大 反応部位を空間的に制御することができる 8 2波長2レーザー照射:実験系 ΔOD 1.5 1.0 DNA 1st レーザー 355 nm NDIの励起 532 nm 355 nm NDI NDI•- 2nd レーザー 532 nm NDI•−の励起 0.5 400 500 Wavelength (nm) 600 O N N O O ~ 300 NDI : ~ 0.0 200 O 光増感剤としてNDIを使用 9 2波長2レーザー照射:実験系 2nd レーザー 532 nm eaq- 1st レーザー 355 nm ND I*•* •+ G G損傷 DNA切断 O2 and H2O 光増感剤としてNDIを使用 10 2波長2レーザー照射:実験系 2nd レーザー532 nm 20 mJ pulse-1 1st レーザー355 nm 1.6 mJ pulse-1 過渡吸収: 5 mm DNA損傷量 11 2波長2レーザー照射:実験系 DNA損傷量定量 照射時間 30 μL ~ 1 mL ~20 min HPLC分析 1st レーザー ~ 20 J (50 J/cm-2) 1 sample 10 μL 2nd レーザー ~ 250 J (600 J/cm-2) 12 2波長2レーザー照射:実験系 dG:DNA構成因子 dIz:DNA分解物 NDI誘導体 40 μM DNA 40 μM リン酸buffer 20 mM (pH 7.0) dG dA dC (1) レーザー照射 5 min or 20 min T dIz (2) Enzymatic digestion HPLC analysis 0 10 20 30 Retention Time 13 2波長2レーザー照射:実験結果 Table. レーザー照射によるGの損失量(%) 1st-laser 2nd-laser 1st + 2nd laser 1.6 mJ 20 mJ delay 10 ns 0.8 0 14.2 TGTGTGTGTGTGT ACACACACACACA 0.6 < 0.3 2.6 TTGGTTGGTTGGT AACCAACCAACCA 2.5 < 0.2 13.5 DNA NDI-TTTCGCGCTT AAAGCGCGAA 14 2波長2レーザー照射:実験結果 • 2波長2レーザー照射により損傷効率が一桁 以上増加 • 2つのレーザーはほぼ同時に照射された際 最も損傷効率が高くなる 15 2波長2レーザー照射:実験結果 高 1st レーザー G •+ G •- 切断効率 •+ G •- 低 2ndレーザーの照射タイミングが重要 16 従来技術とその問題点 既に実用化されているPDTは、単一レーザー による照射に基づくが 光照射に伴う酸素濃度の低下により効率が 大きく低下し、長時間照射を必要とする 等の問題があり、広く利用されるまでには至っ ていない。 17 新技術の特徴・従来技術との比較 • 従来の単一波長照射に比べ、極めて短時間 でDNAの破壊が可能となった。 • 従来の単一波長照射では困難であった、空 間を制御した腫瘍細胞の破壊が可能となる。 • 従来技術の問題点であった、光照射に伴う酸 素濃度の低下による効率の低下を、本手法 では改善できる可能性がある。 18 想定される用途 • 実際の医療現場に用いられていたレーザー を2波長レーザーに変更することにより、治療 時間の大幅な短縮が期待される。 • 上記以外に、癌組織破壊の空間制御が行え ることも期待される。 19 想定される業界 • 想定されるユーザー 光化学療法をとりいれている全国各地の病院 • 想定される市場規模 日本人の死因第一位の癌治療は、これからより患 者の望む治療を行う形になると考えられ、市場規模 は計り知れない。 20 実用化に向けた課題 • 現在、2波長2レーザーにより癌組織破壊に おいて重要なDNAの高効率破壊が可能なと ころまで開発済み。しかし、実際に医療現場 で用いられている光増感剤に適用できるかに ついて未解決である。 • 今後、すでに認可されている薬剤を用いて、 照射波長等の条件設定を行っていく。 21 企業への期待 • 実用化に向け最も必要なのは、最適な光増 感剤の選択することである。様々な薬剤のラ イブラリーを持つ、企業との共同研究を希望 する。 22 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :生体分子損傷方法、および 生体分子損傷装置 • 出願番号 :特願2003-338082 • 出願人 :独立行政法人科学技術振興機構 • 発明者 :真嶋哲朗、川井清彦 23 お問い合わせ先 【技術内容について】 大阪大学 産業科学研究所 真嶋研究室 真嶋 哲朗 電話:06ー6879ー8495 FAX:06ー6879ー8499 E-mail:majima@sanken.osaka-u.ac.jp 【技術移転について】 科学技術振興機構(JST) シーズ展開課 技術移転プランナー 吉田 長作 電話:03-5214-7519 FAX:03-5214-8454 E-mail :c2yoshid@jst.go.jp 24
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