所長・専攻長の挨拶 - Publications

所長・専攻長の挨拶
基盤機関
国際日本文化研究センター所長として
総合研究大学院大学文化科学研究科の国際日本研究専攻は、国際日本文化研究センター
(以下「日文研」)を基盤として設置されています。日文研は、国際的な視点から日本文
化を学際的・総合的に研究するとともに、海外の日本研究者に対して研究上の便宜や研
究協力を行うことを目的として設立された大学共同利用機関です。国内外の人文学 ・ 社
会科学、あるいはその関連分野における日本研究の一翼を担いつつ日本研究を深化させ
るとともに、日本文化研究に関する情報の収集・提供のための諸活動も行っています。
国際日本研究専攻では、日文研の優れた研究者と恵まれた研究環境をベースに、国際
的な視点から日本文化に関する教育研究を行い、国際的・学際的な教育研究活動を通し
て国内外の若い研究者を育成することを目指しています。そのためにも、優れた外国人
留学生を積極的に受け入れています。こうした使命を達成するために、教育面では単一
の大講座のもとに多角的な視点から日本研究が可能となるようなカリキュラムを編成し、
所 長 小
松 和彦
特徴ある柔軟な教育・研究体制を整えました。日文研が重視している他分野・他機関の
研究者たちとの「共同研究」のための環境も整えています。日文研で研究を志すひとたち
が、これらの優れた教育研究環境を活用し、立派な研究成果をあげて博士の学位を取得
されることを期待しています。
国際日本研究専攻について
ようこそ「国際日本研究専攻」へ!― さて、「国際日本研究」
(International
Japanese Studies)とは、如何なる専攻であり、専門領域なのでしょうか?― そ
もそも、いわゆる「日本研究」
(Japanese Studies)という学問領域とは、どのような
違いがあるのでしょうか?
「国際日本研究」とは、「日本」という対象に関して、文化本質主義的な立場から自明
視したりせず、グローバルな視座の下に、国際的な比較や連関を通じて、より総合的に
捉えようと試みる、いわば「日本研究」の発展形態とも言えるものではないかと考えて
おります。
例えば、日本の歴史や伝統、社会や文化を研究の俎上に載せる際に、分析や考察の範
囲を狭い日本列島の中だけに限定していたのでは、その本質や特徴を十分に把握するこ
とは出来ません。前近代の長い期間を通じて、日本の社会や文化は、中国大陸や朝鮮半
専攻長 伊
東 貴之
島からの多大な影響を度外視しては、本来、成立し得ないものです。近代以降は、欧米
の文化からの影響力が飛躍的に拡大しますが、他方で、不幸な軋轢や葛藤の歴史も含め
て、東アジアの近隣諸国との交流も脈々と続いています。近年の歴史学では、閉じられ
たいわゆる「一国史観」が否定や超克の対象となっているほか、現代の政治や経済、文
化や芸術を研究する場合には、グローバルな視点は、むしろ当然の前提でもあります。
また、「国際日本研究」という専門領域では、伝統的な人文学や社会科学は勿論のこ
と、芸術一般から文化研究、サブカルチャー、自然科学なども含めて、さまざまな方
法論を駆使して、「日本研究」を行います。その意味では、その研究上の態度や姿勢は、
国際的であると同時に、必然的にジャンル横断的、越境的な、いわば学際的なものとも
なります。
そして、本専攻の基盤機関である国際日本文化研究センター(日文研)には、まさに
そうした立場から、独創的で野心的な研究を展開して、国際的にも活躍している研究者
が集っています。そうした第一線の研究者の指導を得ながら、同時に、共同研究会や国
際シンポジウムなど、日文研の多様な活動や催しに、日常的に参加し得る環境にあるこ
とも、本専攻の誇る特徴の一つかと思います。意欲のある学生の入学を心から期待して
います。
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