特別調査「中小企業の『災害対策』について」

岐阜・愛知を含む東海地方は、マグニチュード8クラスの巨大地震とされる東海地震の発生の切迫性が指摘
されています。最近では、5年前に東日本大震災、今年4月に熊本地震が発生し、多くの企業が甚大な被害を
受けました。地震だけでなく、台風、竜巻、火事等、企業を襲う災害はいくつも考えられます。
当金庫お取引先である岐阜・愛知の中小企業は、さまざまな災害にどのような対策を講じているのかをお聞
きしました。
アンケートにお答えいただいた当金庫お取引先に対し、災害時にどのような被害状況の確認手段を整備して
いるかをお聞きしたところ「電話で社員の安否確認をする」と回答した企業が 69.7%と最も多くなりました。
一方で「特になにもしていない」と回答した企業が 26.1%にのぼり、災害時の被害状況の把握にやや不安が残
る結果となりました。
次に、災害被害を軽減するために建物・設備にどのような備えをしているかをお聞きしたところ、
「特になに
もしていない」が 53.4%にのぼりました。次いで「地震保険に加入した」19.6%、「避難経路の確保をした」
18.5%、
「設備、什器、備品等を固定した」14.4%となっています。半数以上の企業が、建物・設備に主だった
対策をしていないことがわかりました。
また、緊急物資をどの程度備蓄しているかについてお聞きしたところ、
「特になにもしていない」と回答した
企業が 76.2%にのぼり、さらに、緊急時における社員の帰宅計画等の整備については「特になにもしていない」
と回答した企業が 83.4%と、災害時に公共交通機関や自動車が使用できない場合等の対策がほとんど取られて
いない現状が浮き彫りになりました。東日本大震災の経験や教訓を踏まえ、
「帰宅困難者対策条例」を施行して
いる東京都では事業者に対して従業者の 3 日分の食糧等の備蓄を努力義務として課しており、東京商工会議所
が会員企業に平成 26 年に実施した「防災対策に関するアンケート」によれば、3 日分以上の備蓄をしていると
回答した企業割合が約 50%という結果となっています。
最後に、災害からの復旧、事業再開に向けて、どのような対策を行っているかをお聞きしたところ、
「コンピ
ューターのバックアップシステムを備えている」29.1%、
「電子情報のバックアップを行っている」20.0%とな
り、他の対応策と比較して高い割合となりました。一方で「特に対応していない」と回答する企業は 56.1%と
なり、自社や取引先が被災した際の備えについても不安が残る結果となりました。
本特別調査から、震災を経験した地域と比較すると、岐阜・愛知の中小企業は災害に対する備えや認識がや
や弱い傾向にあると思われます。日頃からの備えや、定期的な訓練について、これを機に考えていただければ
幸いです。
調査方法:アンケート表による面接聴取法
調査期間:
回答企業数(業種別)
:製造業220、建設業91、卸売業・小売業120、不動産業17、サービス業79、運輸・郵便業16、その他6
合計 549社
特別調査
中小企業の「災害対策」について
(1)災害の被害状況の確認手段について
(2)建物・設備への備えについて(複数回答可)
(複数回答可)
災害被害を軽減するために建物・設備にどのよう
アンケートにお答えいただいた当金庫お取引先
な備えをしているかお聞きしたところ、「特になに
に対し、災害時にどのような被害状況の確認手段を
もしていない」が 53.4%にのぼりました。次いで「地
整備しているかをお聞きしたところ「電話で社員の
震保険に加入した」19.6%、
「避難経路の確保をした」
安否確認をする」と回答した企業が 69.7%と最も多
18.5%、
「設備、什器、備品等を固定した」14.4%と
くなりました。他にも、被害状況を確認する方法と
なっています。半数以上の企業が、建物・設備に主
して
「電話で社内設備の被害状況を確認する」20.7%、
だった対策をしていないことがわかりました。 (図
「インターネットで社員の安否確認をする」10.6%、
②参照)
など、主に電話を状況確認の手段にする企業が多く
災害被害を軽減するために建物・設備に
どのような備えをしていますか。
見られました。一方で「特になにもしていない」と
回答した企業が 26.1%にのぼり、災害時の被害状況
参照)災害時には電話がつながらなくなる可能性も
建物に耐震診断・耐震工事を
実施した
設備、什器、備品等を
固定した
高く、災害用伝言ダイヤルやSNSを利用した連絡
避難経路の確保をした
手段をとることも効果的と考えられます。
停電時用の自家発電を
取り入れた
の把握にやや不安が残る結果となりました。(図①
13.3%
14.4%
18.5%
5.9%
19.6%
地震保険に加入した
どのような被害状況の確認手段を整備していますか。
53.4%
特になにもしていない
69.7%
電話で社員の安否確認をする
10.6%
インターネットで社員の安否確認をする
電話で社内設備の被害状況を
確認する
インターネットで社内設備の
被害状況を確認する
図①
図②
20.7%
3.3%
26.1%
特になにもしていない
その他
その他
2.4%
0%
100%
2.2%
0%
100%
(3)緊急物資の備蓄について
(4)帰宅計画について(複数回答可)
緊急物資をどの程度備蓄しているかについてお
緊急時における社員の帰宅計画等の整備について
聞きしたところ、「特になにもしていない」と回答
お聞きしたところ、
「特になにもしていない」
が 83.4%
した企業が 76.2%にのぼりました。次いで「事業所
にのぼりました。「社員に帰宅を命じる際の判断基準
にとどまることを想定している社員の 1~2 日分を
や帰宅の手順等を定めている」11.3%、「社員に徒歩
備蓄している」14.2%「事業所にとどまることを想
での帰宅経路の確認を義務付けている」4.1%、
「社員
定している社員の 3 日分以上を備蓄している」6.5%
に歩きやすい靴等の用意を求めている」3.1%といず
となりました。 (図③参照)
れも実施している企業は少数で、災害時に公共交通機
東日本大震災の経験や教訓を踏まえ、
「帰宅困難
関や自動車が使用できない場合の帰宅について対策
者対策条例」を施行している東京都では事業者に対
がほとんど取られていない現状が浮き彫りになりま
して従業者の 3 日分の食糧等の備蓄を努力義務とし
した。(図④参照)
て課しており、東京商工会議所が会員企業に平成 26
緊急時における社員の帰宅計画を
整備していますか。
年に実施した「防災対策に関するアンケート」によ
れば、3 日分以上の備蓄をしていると回答した企業
割合が約 50%という結果となっています。
緊急物資をどの程度備蓄していますか。
その他
0.9%
事業所にと
どまること
を想定して
いる社員の
3日分以上
備蓄して
いる
6.5%
事業所にと
どまること
を想定して
いる社員の
1~2日分
を備蓄して
いる
14.2%
社員に帰宅を命じる際の判断基
準や帰宅の手順等を定めている
社員に徒歩での帰宅経路の確認
を義務付けている
11.3%
4.1%
帰宅訓練を実施している 1.7%
社員に歩きやすい靴等の用意を
求めている
3.1%
特になにもしていない
83.4%
その他 0.9%
特になにも
していない
76.2%
図③
社員だけで
なく近隣住
民や顧客へ
の配布も想
定し多めに
備蓄して
いる
2.2%
図④
0%
50%
100%
(5)復旧、事業再開に向けた対策(複数回答可)
災害からの復旧、事業再開に向けて、どのような
対策を行っているかをお聞きしたところ、「コンピ
ューターのバックアップシステムを備えている」
29.1%、「電子情報のバックアップを行っている」
20.0%となり、他の対応策と比較して高い割合とな
りました。一方で「特に対応していない」と回答す
る企業は 56.1%となり、自社や取引先が被災した際
の備えについても不安が残る結果となりました。
(図⑤参照)
災害からの復旧、事業再開に向けて
どのような対策をしていますか。
県外の自社事業所、得意先等と
応援・協力体制を整えている
8.9%
取引先が被災した際、代替する
取引先を用意している
通常の運送手段が被災した際、
代替の輸送手段を確保している
6.3%
3.9%
電子情報のバックアップを行っ
ている
20.0%
コンピューターシステムのバッ
クアップシステムを備えている
予備の業務オフィスを確保して
いる
29.1%
2.2%
特に対応していない
56.1%
その他 0.7%
図⑤
0%
50%
100%