鹿児島大学農学部獣医学科 教授 大和修

ニンニク由来 sodium 2-propeny1 thiosulfate の
第二相解毒酵素誘導機能(第二相解毒酵素誘導剤)
∼ニンニク・タマネギの新規健康成分∼
鹿児島大学 農学部獣医学科
教授 大和 修
技術内容:
2PTS
NPTS
sodium 2-propenyl thiosulfateの機能性
(sodium n-propyl thiosulfateの機能性)
●
●
●
●
●
抗ガン:
ガン細胞増殖抑制
ガン予防: 第二相解毒酵素誘導
抗血栓症: 血小板凝集阻害
免疫増強: 白血球活性酸素生成促進
放射線防護:DNA損傷低下
注:すべての機能はin vitroの実験系で証明された
背景:Allium属植物の機能性
● 機能性 (食品の第三の機能):
疾患予防・健康維持に寄与する
● 大蒜 (A. sativum) と玉葱 (A. cepa) :
薬理効果は古代エジプトから知られる
● 治療・予防効果を示す疾患:
創傷、感染症、喘息、糖尿病、
高脂血症、関節炎、血栓症(梗塞)、
悪性腫瘍 など
背景:犬のネギ中毒原因物質として同定
sodium n-propyl thiosulfate
sodium trans-1-propenyl thiosulfate
(NPTS)
Biosci Biotechnol Biochem 1994
sodium cis-1-propenyl thiosulfate
(1PTS)
sodium 2-propenyl thiosulfate
(2PTS)
Biosci Biotechnol Biochem 2003
発想:食品・医薬品への応用
● 人にはネギ中毒はない(むしろ体に良い)
↓
● 2PTSとNPTSの機能性を検索してみよう
↓
● 多様な機能性が存在した(in vitroで証明)
↓
● さらに多くの機能性が存在するようだ
↓
● これらの機能性を応用したい
(機能性食品あるいは医薬品として)
抗ガン
腫瘍細胞増殖抑制効果
使用した腫瘍細胞株:
HL-60(急性前骨髄球性白血病細胞)
WiDr (大腸癌細胞)
293 (胎児腎細胞由来形質転換株)
白血病細胞(HL-60)に対する
増殖抑制効果および細胞死誘導効果
2PTS・NPTSには抗腫瘍効果があった
生存細胞数↓
アポトーシス↑
Cancer Lett 2004
その他のガン細胞に対する抑制効果
● 大腸癌 (WiDr) および腎癌細胞 (293)
に対する抗腫瘍効果
Cancer Lett 2004 (IF 3.5)
● Tリンパ芽球性白血病細胞 (HuT78)
に対する抗腫瘍効果とそのメカニズム
Sebelli et al. FEBS J 2008 (IF 7.0)
ガン予防
第二相解毒酵素誘導
● 求電子性物質(化学発ガン物質など)
を不活化・排泄促進
→ 悪性腫瘍の発生を予防
● 誘導した酵素:
Quinone reductase (QR)
Epoxide hydrolase (EH)
QRおよびEHのmRNA量の変化
2PTSには第二相解毒酵素誘導効果があった
発現量↑
第二相解毒酵素誘導剤 公開2008-115090
Nutr Res submitted
抗血栓症 (梗塞予防)
血小板凝集阻害効果
血小板に対する凝集阻害効果
Maximal platelet aggregation (%)
2PTSとNPTSには血小板凝集阻害効果があった
低い濃度域だけで
血小板凝集↓
100
80
*
NPTS
2PTS
†
**
60
40
20
0
Control
0.001
0.01
0.1
Concentration (mM)
*P < 0.05, **P < 0.01,
1
†P < 0.005 vs Control
Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids 2004
血小板COXに対する抑制効果
血小板凝集はCOX活性を抑制して阻害されていた
Platelet COX activity
(relative light units)
3,500
3,000
COX活性↓
2,500
**
*
2,000
1,500
1,000
500
0
0
0.01
0.1
Concentration of 2PTS (mM)
1
*P < 0.05, **P < 0.01 vs Control
Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids 2005
免疫増強
好中球活性酸生成促進効果
好中球の活性酸素生成刺激効果
2PTSとNPTSには活性酸素生成刺激効果があった
Reaction time
(sec)
Maximal intensity
of light emission
(relative units)
NPTS
8000
2PTS
†
††
A
*
6000
4000
2000
0
400
B
*
300
200
*
* *
100
0
Control
0.01
0.1
1
Concentration (mM)
*P < 0.05, **P < 0.01,
10
††P < 0.001 vs Control
Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids 2004
放射線防護
照射によるDNA損傷低下
放射線防護効果
2PTSとNPTSには放射線防護効果があった
DNA損傷↓ by comet assay
**P < 0.01, ††P < 0.001
技術内容:
2PTS
● 抗ガン:
NPTS
ガン細胞増殖抑制
● ガン予防: 第二相解毒酵素誘導
● 抗血栓症: 血小板凝集阻害
● 免疫増強: 白血球活性酸素生成促進
● 放射線防護:DNA損傷低下
新技術の特徴・従来技術との比較
● 多機能性
1種類の化合物が複数の機能を有している
● マイルドな活性
低毒性・広案全域の可能性がある (要確認)
● 有機合成が可能 (合成品利用の場合)
安価な原料で有機合成が容易である
● 化学構造上の利点
低臭性、水溶性、安定 (耐熱、不揮発性)
● 高含有量画分の調整 (天然物利用の場合)
加熱、減圧濃縮
想定される用途:
2PTS・NPTSを含有する
機能性食品あるいは医薬品
想定される業界:
食品メーカー
医薬品メーカー
実用化に向けた課題
合成品を利用する場合:
● 生体に対するin vivo効果の確認
・マウスなどを使ったin vivo研究が必要
● 毒性についての情報
・毒性量、慢性毒性、残留触媒や溶媒などの評価
● 味・臭気・安定性の問題
・味、臭気、長期保存時の安定性の評価など
天然原料 (ニンニク・タマネギ) を利用する場合:
● 含有量の評価
・高含有量画分の調整法の検討
・測定法の確立
企業への期待
● 実用化への課題の解決 (共同研究)
・合成物利用の場合(毒性試験など)
・天然物利用の場合(測定法開発など)
● 共同研究企業の試験設備
・毒性試験あるいは測定法開発する能力
● 新たな機能性発掘と特許取得
・共同開発した新規機能に関する特許の取得
● 機能性食品あるいは医薬品の開発
・最終的目標
本技術に関する知的財産権
発明の名称: 第二相解毒酵素誘導剤
出願番号:
特願2006-297965
公開2008-115090
出願人:
鹿児島大学
発明者:
大和
修、他3名
お問い合わせ先
鹿児島大学 産学官連携推進機構産学官連携部門
産学官コーディネーター(客員教授)
遠矢 良太郎
TEL 099-285-8498
FAX 099-285-8495
e-mail office@rdc.kagoshima-u.ac.jp