高感度・高分解能質量分析機能を 備えた核磁気共鳴分光装置 神戸大学 大学院理学研究科 化学専攻 教授 冨宅 喜代一 1 気体NMR分光法 の概念図 (イメージ図) 構 造 A 構造B 2 本開発の背景 従来のX線回折、NMRでは試料の量、精製、結晶化が困難 (極微量機能物質ペプチドホルモン等) 生体分子 の気相 イオン化 の開発 これを補うため、高感度·高分解能質量分析が発展した。 しかし、質量数だけでは構造解析に限界 気相イオンの新しい構造解析法の出現が希求されている。 本開発の目的 質量選別した分子イオンのNMR(核磁気共鳴)測定装置 本装置で何を可能にするか 感度105/cm3で、分子量2000程度までの「気体分子」中のプロトン をNMRによって区別して、分子の構造を決定する。 3 Rabi の分子線磁気共鳴実験 LiCl, NaFの磁気モーメント の測定 検出器 分子線源 A磁石 C 磁石 B磁石 LA ~ LB = 0.5 m dB/dz = 1000 T/m 4 分解能が 非常に低い 13000 ppm 気相イオン には適用 できない。 I. I. Rabi, Phys. Rev. 55, 526 (1939) 5 どのように気体NMRを可能にするか? 従来の核磁気共鳴 電波の吸収あるいは放出を観測。 ある程度の物質量(濃度)が必要。 対象は、固体や溶液。気体分子の測定は不可能 本開発による核磁気共鳴 分子イオンをcountする。 これが本開 発の独創 105/cm3を可能にする 共鳴周波数のプロトンを持つ 分子イオンだけを、傾斜磁場 内で加速して選別する [磁気共鳴加速法] 0.1ppmの分解能 これは溶液 NMRの100MHz にほぼ対応 分子イオン源は、気体、溶液、液体 表面、固体表面など何でも良い。 6 イオンサイクロトロン共鳴質量分析の原理: FT - ICR イオンの捕捉; ローレンツ力 ; F = q ⋅ v ⊗ B サイクロトロン運動(擬一次元並進運動) 検出感度 RF励起と共鳴周波数(ω)と質量(m); ω = q ⋅ B ∼ 102 個/cm3 m 7 B (1) NMR測定仕様の 超電導マグネット 高磁場域 12~15T π−パルス ハード励起 均一度 1ppm 低磁場域 2T (100 MHz)仕様 π-パルス ソフト励起 均一度 <0.1 ppm 周波数掃引 8 磁気共鳴加速 (加熱): 核磁気力の増幅 1.高磁場(BH)と低磁場( BL )の勾配磁場(dB / dz)を設定 B1が大 100%で 磁気加速 2. 両端にHermholtzコイルを設置、π-パルスで磁気モーメントの 方向を反転させる。 往復でイオンが連続的に加速され増幅される。 θ = γ B1 Δt, θ = π; π-パルス; 180°になるB1, Δt でパルスRFを照射 単振動運動の効果 N s 1.磁気力の増幅 2.サイクロトロン運動 で発生する電磁気力 の相殺 S n α α β α F F+F β α F+F+F F = μH (dB/dz) mI mI = +1/2, -1/2 磁気励起 9 開発装置概念図 傾斜場型超伝導磁石 イオン源 イオンの 質量選別・ 濃縮 磁気共鳴加速器 加速イオン の速度測定· 計数 共鳴加速) (速度選別+ Δv ω 電気スプレー イオン源 MARDIイオン源 ICR(イオン サイクロトロン) 質量分析器 速度増分 RF周波数 Δv - ω ; NMRスペクトル Δv ω 10 気体NMRの新原理 (磁気共鳴加速)と開発構想(特許出願) NMR:Rabiの分子線磁気共鳴法(Phys. Rev. 1939)の発展的拡張 開発構想:ICRとNMRの融合技術とコンピュータ技術の集約 気相イオンのNMRと質量分析の同時測定を実現 測定原理:傾斜磁場内のNMRセルにイオン束を導入。両端の RFコイルで選択励起し、スピンを交互に反転し磁場で共鳴加速 (反復運動により、非常に弱い核磁気力を増幅し、検出可能にする) 傾斜磁場 RFコイル 180°パル ス V1 (BH=12T, BL = 2 T) F ∝ μH ⊗ V2 ICR セル;イオントラップ、 質量選別、イオン検出と 速度増分の測定 V3 磁束で捕捉 100 %移送効率 V4 dB dz NMRセル:イオン束の発 生 (V4の開閉)、 磁気共鳴加速 11 J. Am. Chem. Soc. 91, 2220 (1969) 12 Mg2+(H2O)3 のNMRスペクトルの 本プロトタイプ機の目標性能 シミュレーション計算結果 質量分析濃度でNMRスペクトル;質量と構造の同時化学計測 (加速ー周波数スペクトル) ‧ 測定核種はプロトンを対象:質量数 2000、分解能 0.2 ppm N=20, dB/dz=40 T/m ほとんどの薬に類する分子は質量数500 分子の速度増分( Δv)は ‧ 低分子量のタンパク分子やペプチドホルモン等への応用 同じ環境(化学シフト)のプロトンの数に比例 +の付加により、非常に広範な有機分子が測定の対象となる。 ‧ H面に垂直軸はイオン強度; 将来展望 ‧ 装置性能を改良し、 13C、31P等の他核種への拡張 ‧ 質量測定限界を向上 (10000、分解能 0.1 ppm)、 タンパク質イオン、極微量の生体機能物質の構造決定 ‧ MARDI法による固体(表面)試料の気相イオン化、同定と定量 波及効果 ‧NMR法の新領域開拓、日本発の化学分析法として世界に展開 ‧質量分析に依る諸分野に構造決定のブレイクスルーを与える M = 119 環境・生体物質,新素材・医療分析の分野 13 本プロトタイプ機の目標性能 質量分析濃度でNMRスペクトル;質量と構造の同時化学計測 ‧ 測定核種はプロトンを対象:質量数 2000、分解能 0.2 ppm ほとんどの薬に類する分子は質量数500 ‧ 低分子量のタンパク分子やペプチドホルモン等への応用 ‧ H+の付加により、非常に広範な有機分子が測定の対象となる。 将来展望 ‧ 装置性能を改良し、 13C、31P等の他核種への拡張 ‧ 質量測定限界を向上 (10000、分解能 0.1 ppm)、 タンパク質イオン、極微量の生体機能物質の構造決定 ‧ MARDI法による固体(表面)試料の気相イオン化、同定と定量 波及効果 ‧NMR法の新領域開拓、日本発の化学分析法として世界に展開 ‧質量分析に依る諸分野に構造決定のブレイクスルーを与える 環境・生体物質,新素材・医療分析の分野 14 想定される用途 質量分析の関わる広い分野に応用できる 気相基礎化学 大気·環境化学 クラスターの 構造 と揺らぎ 大気微量成分の分析 環境ホルモン 質量分析 生命科学 ESIとの組み合わせ 糖鎖(細胞膜) タンパク質構造 (プロテオーム解析 のブレイク) を兼備した 気相イオンのNMR 検出濃度 103 ions/cm3 表面科学 MARDIとの組み合わせ 表面微量成分の 超高感度分析 気相核磁気共鳴の 基礎研究 15 実用化に向けた課題 • シミュレーションでは、実現可能であることを 確認している。 • 本年度のJST先端計測分析技術・機器開発 事業 に採択され、これから本格的な機器開 発に取り組む。 16 企業への期待 • 超伝導マグネット製造企業とは連携済みであ る。 • NMR、質量分析機器等の製造・販売を担当 できる企業との連携を希望。 17 本技術に関する知的財産権 • • • • 発明の名称 公開番号 出願人 発明者 :気体核磁気共鳴装置 :WO/2007/080857 :国立大学法人神戸大学 :冨宅 喜代一 18 お問い合わせ先 神戸大学連携創造本部 TEL 078-803-5945 FAX 078-803-5947 e-mail ccrd3@port.kobe-u.ac.jp 19
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