発芽種子およびその製造方法 新潟大学 農学部 応用生物化学科 教授 大坪 研一 特任准教授 中村 澄子 1 研究背景 わが国の食料自給率は低下基調で約40%と低く、 先進国中最低である。 米の用途開発によって消費を拡大し、食料自 給率を向上させる必要がある。 そのためには、発芽等によって米の機能性を 高め、新規需要を開拓する必要がある。 2 技術上の問題点 従来の発芽の際の浸漬温度は30∼40℃ → 雑菌が増殖 従来は、12∼24時間という長時間芽 → 発芽玄米に特有の不快臭 3 問題点の解決 本発明は、前記の問題点を解決するため、 ①発芽時間を短縮し、②発芽率を向上させ、 ③発芽時の菌の増殖を抑えるとともに、 ④タマネギ機能成分を発芽種子が吸収する。 4 新技術の基となる研究成果・技術 A: 赤玉葱 水 B: pH. 6.9 赤玉葱 (1%水溶液) C: pH. 5.9 赤玉葱 (2%水溶液) 試料米品種:巨大胚芽米「越車」 玉葱水抽出物の発芽促進効果 発芽条件:40℃で30分間、次いで37℃で72時間 5 各種溶液による発芽率(37℃・18時間) 6 グルコース含量(g/l00g) 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0 A B C D E F G H I K A : 赤玉葱浸漬発芽玄米 コシヒカリ B : 赤玉葱浸漬発芽玄米 ミルキークイーン C : 赤玉葱浸漬発芽玄米 ホシユタカ D : 赤玉葱浸漬発芽玄米 夢十色 E : 赤玉葱浸漬発芽玄米 春陽 F : pH6.9 水浸漬 コシヒカリ G : pH6.9 水浸漬 ミルキークイーン H : pH6.9 水浸漬 ホシユタカ I : pH6.9 水浸漬 夢十色 J : pH6.9 水浸漬 春陽 赤玉葱浸漬発芽玄米のグルコース含量 7 発芽率 % 100.0 90.0 80.0 70.0 60.0 50.0 40.0 30.0 20.0 10.0 コシヒカリ 春陽 ホシユタカ PH6.9発芽率(%) 夢十色 ミルキークイーン 白玉葱発芽率(%) 白玉葱浸漬発芽による発芽率 8 発芽率% 100.0 90.0 80.0 70.0 60.0 50.0 40.0 30.0 20.0 10.0 0.0 コシヒカリ 春陽 ホシユタカ pH 6.9発芽率 (%) 夢十色 ミルキークイーン 長葱発芽率(%) 長葱浸漬発芽による発芽率 9 発芽率 % 100 88 90 80 70 60 赤玉葱 g/50ml 50 40 水 30 30 17 20 10 0 12 3 2 茶豆 小豆 黒豆 豆類の発芽試験 (25℃、30時間) 10 A: 赤玉葱抽出液浸漬 B: pH. 6.9脱イオン水浸漬 赤玉葱水抽出物の黒豆発芽促進効果 11 A: 赤玉葱抽出液浸漬 B: pH. 6.9脱イオン水浸漬 赤玉葱水抽出物の小豆発芽促進効果 12 発芽率% 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 コシヒカリ pH6.9脱イオン水) 春陽 ホシユタカ pH7.1黒豆抽出液 夢十色 ミルキークイーン pH6.48紫キャベツ抽出液 pH7.21 朝紫抽出液 各ポリフェノール抽出液浸漬による発芽率 (促進効果は認められなかった) 13 GABA含量(mg・乾物100g) 45 42 40 35 30 25 20 18 15 10 5 0 A B A : EM10発芽玄米18時間(37℃) B : EM10発芽玄米18時間(37℃・赤玉葱) 赤玉葱浸漬発芽玄米のGABA含量 14 (%) 100 90 80 70 発芽率 60 水 50 1%赤玉葱 2%赤玉葱 40 30 20 10 0 越車 夏雲 コシヒカリ 巨大胚芽米等の赤玉葱浸漬発芽試験 発芽条件:40℃で30分、次いで37℃で18時間 15 a b c A B a: EM10 発芽(水) b: EM10 発芽(2%玉葱水溶液) c: EM10 発芽(2%赤玉葱水溶液) A:16時間後の各浸漬液の菌数(×1000) B:24時間後の各浸漬液の菌数(×1000) 赤玉葱浸漬発芽による抗菌作用 16 新技術の特徴・従来技術との比較 • 従来技術の問題点であった、発芽時の異臭 発生を抑制することに成功した。 • 従来は発芽温度と時間の点で、微生物の増 殖が起こったが、タマネギ抽出物の、微生物 増殖抑制効果により後処理が不要となった。 • 本技術の適用により、発芽時間が短縮できる ため、製造コストが1/2程度まで削減されるこ とが期待される。 17 想定される用途 • 本技術の特徴を生かすことで、発芽玄米製造 やスプラウト製造における時間短縮と発芽率 向上の効果が得られる。 • 上記以外に、玉葱成分の吸収効果が得られ、 発芽種子の機能性がさらに向上することも期 待される。 • また、本効果に着目すると、植物工場等の新 分野や用途に展開することも可能と思われる。 18 想定される業界 • 利用者・対象 発芽玄米製造メーカー スプラウト製造メーカー • 市場規模 発芽玄米市場:約100億円と想定 →工程改善と新機能付与により、50億円の市場 拡大が期待できる 19 実用化に向けた課題 • 現在、発芽玄米について工程短縮と品質向 上が可能なところまで開発済み。しかし、工 場規模での実用化試験の点が未解決である。 • 今後、スプラウトについて実験データを取得し、 野菜や豆類にも玉葱添加発芽技術を適用し ていく場合の条件設定を行っていく。 20 企業への期待 • 未解決の規模拡大試験については、企業と の共同研究により克服できると考えている。 • 発芽玄米やスプラウト製造の技術を持つ、企 業との共同研究を希望。 • また、植物工場分野への展開を考えている 企業には、本技術の導入が有効と思われる。 21 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :発芽種子およびその製造 • 出願番号 • 出願人 • 発明者 方法 :特願2009-172977 :新潟大学 :大坪研一、中村澄子 22 産学連携の経歴 1.農水省高度化事業「新形質米の新食品開発」新潟県農総研、(株)まつや、北陸センター、石川県総 農研、(株)北陸製菓等と共同研究(平成17∼19年) 2.農水省総合食料局助成事業「機能性米菓」、同・「米麦混合による機能性菓子の開発」(株)関口醸造 、茨城県工技センターと共同研究(平成15∼16年) 3.農水省安全信頼プロ「糖尿病発症予防のための米加工品の特性評価および臨床試験」(代表研究者 、平成18∼22年度、慈恵医大、兵庫県立大、キユーピー研と共同研究) 4.米品種判別キットの開発(代表研究者、食糧庁品質管理室、農業生物資源研究所、タカラバイオ(株 )と共同研究)平成13年にコシヒカリポジキット、平成14年度にコシヒカリネガキットを開発し、実用化 した。 5.糊化特性試験装置の改良(平成17年)フォス・ジャパン(株)およびオーストラリア・Newport scientific社と 共同で新型機種を開発した。特許を共同出願し、実施許諾している。 6.即席玄米雑炊の開発(平成12年)キユーピー(株)研究所、作物研究所と共同で、低アミロース米を 原料とする即席玄米雑炊を開発。共同で特許を出願。 7.農水省実用技術開発事業で「アミロペクチン長鎖型の超硬質米による新需要食品の開発」で産学10 機関による共同研究を実施(平成20年∼24年、代表研究者、九州大学と特許を共同出願) 8.にいがた産業機構の市場構築事業「新規米加工品の開発および冷凍流通技術の開発」に参加し、産 学14機関の共同研究を実施中(平成22年∼24年) 23 お問い合わせ先 新潟大学 地域共同研究センター 産学官連携コーディネーター 長濱,後藤,定塚 TEL 025−262 − 7554 FAX 025−262 − 7550 e-mail kenkyu@ccr.niigata-u.ac.jp 24
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