里 山 は“ 宝 箱 ” 自 分 た ち の 遊 び 場 は 自 分 た ち で 守 り 続 け る

vol.
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今回は房総の山々を舞台に、マウンテンバイクの
さ ふ
ぼうそうしんりんかい
ん
岡部 正史さ
里 山 は“ 宝 箱 ”自 分 た ち の 遊 び 場 は
自分たちで守り続ける
たから。最初は4人だった森輪会も、今
もらっている自分たちの責任だと思っ
では活動に共感して集まったメンバー
する場を設けるなど、精力的に活動し
に安全面を重視した正しい作業を指導
ティアや自伐型林業を目指す人を対象
パトロールや、間伐をしたり、ボラン
美しい森と古道を維持するために森林
ンバイクを楽しんでいる。その一方で、
道、林内作業道などをつないでマウンテ
ぎる。俺たちはギブ&テイクの精神で、
ベントだけやって終わりでは一方的過
コミュニケーション。場所を借りてイ
と実感しているのは、地域の方々との
ら活動している。活動の中で特に大事だ
から、それぞれのスキルを出し合いなが
種多様な職種の人たちが集まっている
里山を使わせてもらう代わりにNPO
うにしている。信頼関係を築くまでに
とも協力して、植樹活動や草刈りなど
時間はかかるけれど、山を守るために
ている。
れていく一方だ。4年前に房総森輪会を
は地域に必要とされる存在にならない
求められることはできる限り応えるよ
立ち上げたのは、これ以上走れる場所
とダメだからね」
イクコースに最適だが、放っておくと荒
をなくさないようにするため。そして、
「千葉県に多く残る古道はマウンテンバ
保全活動を行うことが里山を使わせて
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2016.8 No.113
林野
走行コースに利用している里山エリアの整備・保
全活動に取り組む「房総森輪会」代表の岡部正史
葉 県 で 2 番 目 に 高 い 山・ 鹿 野 山
の一角に佇む、一軒の可愛らし
才)。「自分たちで間伐し
た木を使って、仲間と2年かけてつくっ
人にも増えたよ」
ーー 実際に活動してみていかがですか?
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同会は、鹿野山周辺の里山を中心に、
里 山 所 有 者 の 理 解 を 得 な が ら 古 道 や 林 「本職が芸術家、コンサルタントなど多
のおおらかさを感じさせる。
笑顔で話すその姿は、山で活動する男
が
部正史さん(
くり上げたのは、房総森輪会の代表 岡
ぬくもりが漂っている。この空間をつ
子が置かれた室内からは、木の香りと
い丸太小屋。薪ストーブや手づくりの椅
千
た」。白い口ひげを生やし、気取らない
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さんにお話を伺いました。
代表 み
房総森輪会
ま
丸太から角材を挽く
「木取り」を指導する岡部さん
「プロでも一歩山に入れば危険と隣り合
何だと思いますか?
ーー 里山保全に必要なことは
ーー 房総森輪会が目指すものは?
発信をしていくことが必要だと思う」
カー主催のイベントなどを通して情報
わせ。最近、若いボランティアが増えて
てはいけない。たくさんの宝物が散り
林を維持し、大切さを伝えていかなく
ならないもの。そのかけがえのない森
う。そうならないように、安全も含め
ばめられた里山を次世代を担う子供た
「森林は人間が生きていく上でなくては
たさまざまな知識を備えておくことが
ちに残していくことが森輪会の使命だ」
きたけれど、浅い知識で山に入って事故
重要だ。またマウンテンバイカーには、
を起こせば地域からは拒絶されてしま
気持ちいいコースを走れるのは保全活
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動があってこそということを理解して
を主体的に考えること。その地道で前向き
な行動が、安全で美しい森を維持し続ける
糸口になるのかもしれない。
もらいたい。その上で走行すれば、山の
住民のために自分たちができることは何か
「『 森 輪 会 』 と は 、 自 転 車 乗 り が 山 に
入るという意味」と岡部さんが会の名
けではなく、少しでも里山、そこに暮らす
前の由来を教えてくれた。しかし、そ
的な取組ができるだろう。言われたことだ
環境は保たれるはず。自分たちも走行
機を導入したことで、これまで以上に積極
する際には木を傷つけないように最善
ウォークなどに使用している。最近、製材
の“輪”は自転車という意味にとどまる
ほか、森の危険箇所に設置するブリッジ
の注意をし、轍ができたらすぐに補修
木材を丸太小屋やハチの巣箱に利用する
ことなく、房総の山々の森林環境を守
いと強く話していた。房
するようにしている。このようなこと
総森輪会では、間伐した
る人々の大きな輪として広がり続ける
岡部さんは、里山の資
だろう。
源は絶対無駄にしたくな
をマウンテンバイカーに理解してもら
ーク
ウォ
ッジ
リ
ブ
うためには、注目度の高いスポーツメー
間伐材利用
マウンテンバイクでの森林パトロール
イノシシよけのネットを張るための杭打ち作業