第2回議事録.doc

第2回高等学校改革プラン検討委員会議事録
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日
時 平成 16 年3月 19 日(金)午前9時 30 分から午後 12 時 30 分
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場
所 県庁舎 特別会議室
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出席委員
葉養 正明委員長
梶間 みどり委員
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金子
郁容委員
竹下
弓太郎委員
土井
進委員
中沢
薫委員
萩本
博幸委員
村上
忠明委員
瀬良和征教育長挨拶
一言御挨拶申し上げます。前回1月 13 日に初めての高校改革プラン検討委員会が開催されま
して、今回が第2回でございます。委員の皆様には早朝から大変お忙しい中お集まりいただきま
して、ありがとうございます。本日は、県立高等学校の後期選抜の合格発表がございまして、ま
さに 15 歳の春の悲喜こもごもの状況にあるわけでございますが、今回前期選抜と後期選抜を合
わせまして、約 18,000 人余の子どもたちが県立高校に入学できることになります。これから再
募集等がありますので若干増えますが、いろいろな思いを持って今日の日を迎えているところで
ございます。
今回の県議会でもいろいろ議論があり、また、県民の方々から御要望もありますが、県立高校
の改革に対する熱い思いというものをひしひしと感じております。この検討委員会に対する御質
問や御要望もございました。是非、県民の熱い思いを御理解いただきまして、充実した検討委員
会であることを期待しておりますので、よろしくお願いしたいと思います。簡単ではございます
が、開会の御挨拶と致します。
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委員自己紹介
(梶間委員)
初めまして、梶間と申します。現在、日本学術振興会特別研究員と致しまして、文部科学省の
直属の研究機関であります国立教育政策研究所で研究員をしております。どうぞ、よろしくお願
いいたします。
私の専門は、教育行政学と学校経営学でございます。現在は、日本とイギリスの比較研究の観
点から研究を進めておりますが、特に取り組んでいることにつきまして、自己紹介を兼ねて、お
話させていただきます。
大学院からの一番の研究の関心と致しましては、教育行政の在り方でございました。教育課題
の中で、新しい教育行政、特に地方教育行政の新しい役割が求められているという観点から、日
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本とイギリスの比較研究を行っております。イギリスは、人事、財政など全ての点において学校
の自立性が保障されておりまして、この中での地方教育行政の関わり方ということを中心に、自
立的な学校と教育行政の役割について研究しております。
それから、イギリスも地方分権が進んでおります。この中で自立的に地方自治体が政策立案を
し、行政を行っていくための職員の能力開発を進めておりまして、この点についての研究も行っ
ております。
また、規制改革等の検討委員会からも注目されておりますように、民間の力をどのように活用
して教育行政を行っていくのかという観点から、公設民営や PFI についてもいろいろな先生方と
研究を進めております。
この3月に発表されました中教審の答申でもありましたが、コミュニティ・スクールは、イギ
リスの学校理事会制度がモデルとされており、この学校理事会制度につきましては、ここ数年研
究を進めておりまして、金子先生ともいろいろな形で共同研究をさせていただいております。
今、一番の課題として研究所の先生方と研究しておりますことは、若年無業者の問題に対して
どのように取り組むべきなのかということでございます。これは中等教育改革の一つの課題です
が、この点についても、イギリスではどのように無業者に対して対応しているのか、また、行政
としてどのような責任を果たそうとしているのかということにつきまして研究を行っております。
以上のような形で研究を進めておりますので、少しでも私の研究の成果や資料がこの検討委員
会の中でお役に立てばと思っております。どうぞよろしくお願い致します。
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議事
(1) 高校改革に対する基本的な考え方について
(葉養委員長)
前回からしばらく時間が経っておりまして、この間事務局から詳細な説明を承ったわけですが、
なおまだ、長野県の培ってきた高等学校教育の情報というものは膨大なものがありまして、なか
なか消化しきれないところもあるかと思います。しかし、本日議事になっておりますように、基
本的な審議の枠組みは今日の委員会でほぼ固めた上で、第3回から具体的な審議に入っていくと
いう段取りで進みませんと、予定している8月頃に「中間とりまとめ」が出せませんので、是非
ご協力をいただきたいと思います。
本日はできるだけ皆さんから御意見をお伺いすることを中心に、議事進行をして参りたいと思
います。
議事(1)
「高校改革に対する基本的な考え方」ですが、おそらく委員の皆様も事務局から情報
をいただいて感じたことがあると思います。基本になることは、長野県の高校教育の未来像をど
んな形で考えていくかということですので、この点について、各委員の皆さんの思いを率直に披
瀝していただければと思います。これからの検討委員会の進め方の基本を確認するということを
させていただければと思います。中沢委員さんからお願いします。
(中沢委員)
基本的な考え方として、現場に近いところで判断する、現場に近いところで任命権や経営権を
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与えていくという時代でありますので、現場に当事者意識を持たせるということを基本に持つ必
要があると思います。全て教育委員会の統制下においておくという時代ではないと思います。多
様化を進めようと思いますと、一つのところからの発信ではまかなえないという感じがします。
このためには、現場が目標を持ち、それぞれの学校がビジョンや使命感を持って、それを一つの
判断軸にして学校運営を行い、職員がその方向で動くという組織体制を取らないといけないと思
います。いつまでも教育委員会のイニシアティブという時代ではないと思います。
もう一つは、資料の中にいろいろモデルを示していただいておりますが、まず学校自身が自分
たちで自助努力をし、改善していくための努力をしないとだめだと思います。学校が改善努力を
した上で、それに見合ったシステムを導入していくことが必要であります。要するに、学校自ら
が変わり、個々の職員が変わらないと、
いくら良いシステムを導入しても変わらないと思います。
学校に改善の努力を持って欲しいと思います。
また、学習の動機付けというところに起因していると思いますが、無業者・フリーターがどん
どん増加しており、学校におりますとこの点に苦慮しております。高校生であれば人生哲学のよ
うなものを教育の中に取り入れていかない限り、
インターンシップや体験学習だけでは、
職業観、
働くということへの動機付け、学問の必要性ということに対して不十分であると思います。仕事
を通じて生きる喜びや自分の成長、自己実現という人生観を子どもたちに植え付けていく必要が
あると考えております。
(萩本委員)
前回長野県のコモンズについてお話をお伺いし、これが全ての基本になるというお話がありま
した。教育に対しては、理念としてはわかりますが、平等ということについては、小中学校の義
務教育の場合には平等であるべきであり、そうする必要があると思いますが、高等学校以上の教
育につきましては、生徒それぞれの能力、資質がはっきりわかってきますので、平等から公平と
いう考え方で、個々の能力や資質の点から分けていく必要があるのではないかと思います。教育
全体に対して、平等で通していくことはどうなのかと考えております。
前回、私は義務教育までは徒競走であり、高校以上ではレース、社会に出ますと完全にゲーム
であり、勝ち組と負け組に分かれていくと申し上げましたが、こういう考え方で行くべきではな
いかと思います。このことは、教育について基本とするべきではないかと思います。
答申は産業についても書かれておりますが、各地域を基本とするということはわかりますが、
現在はグローバル化の時代であり、特に産業界はそうであります。コモンズとしての地域が連携
をして一つの特徴を出していくべきではないかと思います。
「地域密着型の新しい産業を創出させる」と書かれておりますが、視点を日本全体あるいは世
界全体の産業ということで考えていただきたいと思います。コモンズの理念はわかりますが、実
際問題としてはどうなのかと思います。
資料の中には、いろいろなパターンの高等学校が書かれておりますが、私にはよくわかりませ
ん。あまりに多様化されておりますが、生徒の自主性を重んじて教育をするということは確かに
必要かと思いますが、個人の自由というものを長く認めていくと、逆に本人がどうしたらいいの
か分からなくなるおそれがあるのではないかと思います。あまりに自由度があるために、道を模
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索しすぎてしまい、この期間を長くしていきますと、いま問題となっているフリーターの原因と
なってしまうのではないかと考えております。青年期に自分の進路、人生をはっきりと確立させ
るように先生や家族が指導するということが必要ではないかと思います。子どもたちを放任しす
ぎると、逆に自分で判断ができなくなるということになるのではないかと思いまして、これがフ
リーターの一つの原因になっているのではないかと思っております。
また、現在技術専門校に関する委員をやらせてもらっておりますが、工業高校と技術専門校の
それぞれの役割がどのように違っているのかということを感じております。社会に出てから技術
専門校に来られる生徒もいらっしゃいますが、それぞれを統一していくということを県として考
えていく必要があるのではないかと思います。
(村上委員)
この改革を進めて行くに当たって、当たり前の問題として、誰のための改革なのかという視点
を常に意識しながら、進めていく必要があるだろうと考えております。主体である子どもたち以
外のところから入口として入っていくという危険性に対して指摘したいと思います。
そして、高校は知識伝達中心の機能だけではなく、生徒に生き方を問いかけ、価値観をきちん
と付けさせていく、あるいは養成していく場であるべきであろうと考えております。これからの
時代は、こういうことが非常に重要となってくると考えております。
高校が地域コンソーシアムの一員になり得ているのだろうかと考えております。高校ではさま
ざまな取組がされておりますが、学校としての認識、行動がまだ充分でないのではないかと思い
ます。地域自体が高校の位置づけというものを、どのように捉えているのかを把握する中で、名
実共に地域コンソーシアムの一員としての有り様、存在ということを高校がきちんと持っていな
いといけないのではないかと思います。
こういう価値観の問題や地域との関わりの点を見据えた上で、将来的なビジョンというものを
見ていくことができるのではないかと考えております。
(土井委員)
高校生は気力や体力が一番充実するときで、男子は高校時代に父親を凌駕します。例えば相撲
をやっても父親は息子に勝てなくなります。娘の場合は、既に中学段階で母親をやりこめてしま
います。このような時期にある高校教育というものをどのように改革していくのかということが
この委員会の大事なことであると考えております。
高校は広い範囲から子どもたちが集まりますので、子どもたちは市町村での小中学校の視野の
レベルから、県レベルの広い視野になります。こうした中で、一番高校時代に大事になってくる
ことは、彼ら自身が自分はこの分野で将来このようになりたいという志を立てることであると考
えております。
このことを踏まえた上で、この委員会で何を議論することが大事かと考えますと、
今何故高校生がやる気をなくしてしまうのかということについては、一つにはA高校は有名で良
い高校であり、別の高校はこのような高校というように、高校の名前で世間が評価してしまうと
いう風潮があり、親は我が子がどこの高校に通っているということを他人に言いたがらない、逆
にA高校へ子どもが通っている親はそのことで鼻が高くなってしまっているというように、学校
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が固定化されてしまっていることがあります。生徒自身も自分に誇りを持てず、社会もあまり評
価しないということが高校教育を硬直化している要因であると思います。今回検討していく中に、
ジョイント高校や一つの学校を基に連携するという考え方がありますが、このような視点は今ま
での閉鎖性を破った一つの考え方になるのではないかと思っております。
要するに高校時代は、自ら将来の方向を決め、職業意識を芽生えさせる大事な時期であり、こ
のための組織はどうあればいいのかということを検討しなければいけないと思っております。そ
のためには、現実に高校生と毎日触れ合い、彼らの悩みや彼らの希望、職業意識、志に触れてい
る先生方の声をまず聴かなければいけないと思います。先生方は、生徒達が何故萎縮し、やる気
をなくしているのかということをつかんで、この改革の論議の中に活かしていかなければならな
いと思っております。
そして、子どもたちの志に火を付けて、将来大きな希望を持てるようしていくために、子ども
たちに直接触れ合う先生自身が、資質・能力の向上に努めていくことが大事であると考えており
ます。
(竹下委員)
本質的なところを押さえておきたいと思います。教育は、一人ひとりの資質・能力を最高に伸
ばし、発展をさせていくというところにありますので、子どもたちが心身共に著しい成長を遂げ
る時代の高校教育は大変重要であり、どういう教育を受けたのかということは、その人のその後
の人生に大きく影響を及ぼすことになると思います。
したがいまして、自分が将来どういう事をやりたいのか、どういう生き方をしたいのか、つま
り自らの生き方、将来の在り方というものを、具体的に自分で判断することができることが非常
に重要ではないかと思います。このためには、高校時代にいろいろなことを経験し、あるいは広
い分野の教育を自ら選択をして学ぶ環境作りをしていくということが非常に重要なことでありま
す。特に、今日のように社会の変化が非常に激しい時代には、生徒の関心事も個性化して多岐に
渡っておりますので、画一的な方法をあてがうということではなくて、個性を確立させ、個性を
はっきり認識させるための体制を作っていかなければいけないのではないかと考えております。
このような点が改革のポイントにならなくてはいけないと思います。
今回の改革に大きな期待がありまして、高校に進学する子どもたちの多様なニーズを受けとめ
ていくということからも、早期の結果が求められているのではないかと思います。
しかし、教育改革でございますので、長野県教育の改革の目指す方向がどういうものでなくて
はいけないのか、つまり、理念というものを明確にしていくことが必要でありますし、これが明
確になることによって、その後の教育の目標が立てられ、どういうところに重点を置かなければ
いけないのかというところも見えてくるのではないかと思います。
したがいまして、長期又は短期の改革の推進計画につきましても、県民に充分周知をして、県
民全体が共通認識を持つというやり方をしなくてはいけませんし、こうすることによって初めて、
学校、
保護者、地域がお互い協力し合って改革の推進の当たれるのではないかと思っております。
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(金子委員)
県行政及び教育委員会が、なるべく良い教育をするための全体的な責任を負うということは当
然のことであります。ただ、日本の学校に一番欠けていることは、当事者意識であります。した
がって、教育委員会が細かいことをやりすぎることはよくない。学校はどこからか与えられるも
ので、自分たちがやるものではないという意識から、校長や教員が逃れられない限りは、いわば、
どんなことをやっても本質的な効果は上がらないでしょう。高校は県の教育委員会が直轄でやっ
ておりますので、今回の高校改革は、その辺を変える良いチャンスではないかと思います。
教育は完全な自由市場ではないと思いますが、マネジメントされた競争や選択を取り入れるこ
とが必要であると思います。多様な選択肢とよく言いますが、教育委員会が多様な選択肢を用意
するという考え方ではなく、学校ないし教員が生徒や親に対してそれぞれが工夫した選択肢を提
示できる枠組を県教委が作るということが大事なことです。出てきた選択肢を選ぶか選ばないか
は生徒や親が決めることであり、選ばれないものは変えていく、ないし、退場してもらうという、
その意味では市場原理と似たメカニズムを働かせることが必要です。教育委員会はそういうこと
を活性化させる枠組みをどう作るのかということと、学校をどのように支援するのかということ
に徹するべきではないかと思っております。
私立学校とは違いますが、いろいろな提案の中で、どうしても子どもが集まらなくなった学校
はなくなっていく、あるいは縮小されていくことは、やむを得ないことだと思います。ただし、
県全体の責任を教育委員会は負っているわけですから、最低限なくてはならないものは維持しな
くてはなりませんし、あるいは、全体のバランスをとったり、普通の競争では生き残れないが県
民にとって大事な意味のある学校の支援は必要だと思います。そのような原則を踏まえて、なる
べくいろいろな学校ないし教員グループ、住民関係者などが、自律性を発揮できる枠組みを作る
ことが大事だと思います。
ただし、普通の市場とは違いますので、インセンティブや自助努力を促すような仕組みについ
ては、かなり工夫して作るべきだと思います。それとともに、教育はその究極的な効果は年数が
経たないと出てきませんので、消費者保護のために情報を開示することや民主的で透明な経営が
なされることを行政が保証することが必要だと思います。
効果の測定をどうするのかということは大きな課題です。教育の本質的な効果はなかなか測定
できませんが、充分ではないにしても、短期的に測定できるものはやる必要があると思います。
多様な枠組みを作り、全体的な評価や効果測定、あるいはマネジメント支援は教育委員会が行
い、内容に関しては教員の人事も含めて学校が決めていくという方向性が重要です。そのような
枠組みを作ることについて、参考となるいくつか、国や自治体レベルですでに機能している枠組
みがこの数年間でいろいろな分野で作られてきておりますので、参考までに述べておきたいと思
います。
ひとつは、国立大学の法人化です。この枠組みについては、私は個人的に必ずしも賛成はして
おりませんが、参考にはなります。仮にですが、ひとつの考え方として、長野県の高校は法人の
ような形をとるように扱って、全体的な評価は県が5年などごとに行い、それによって予算を決
めていく。そのような枠組みは検討してもいいのではないかと思います。
アメリカでは、ノーチャイルド・レフトビハインド法という法律が一昨年できました。これは、
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授業についていけない生徒を一人もださないということを州で保証するというもので、そのこと
について、学校に対してインセンティブやペナルティーを与えるというものです。アメリカと日
本では、社会構造が違いますが、この考え方も参考になります。全体的な教育や学校の品質管理
は県行政がしていくべきです。学校に対する、インセンティブやペナルティーを与えるのも、県
行政の仕事です。教育の内容に関しては学校ごとに一番良い教員を選び、一番良いカリキュラム
を作り、一番良い教材を採用し、結果は1年ごとに報告をして、うまくゆかないものは修正する。
良いということは、それぞれの学校にもっとも相応しいという意味ですね。この基本は、どの国
でも、同じではないかと思います。
それから、いろいろな分野で認証評価制度ができてきております。一番早いものでは、有機農
産物の認証があります。何が有機農産物かということは国際標準があり、農林水産省がそれに沿
って決めております。評価する団体を県が認定し、認定された団体は農協やNPOですが、これ
らの団体が実際の畑などに出向いて、評価をしております。現場の評価は現場がしており、どの
ような評価をするのかについては、国が決めております。イギリスにおいては、学校評価につい
ても同じような制度ができています。
もう少し具体的なツールで言いますと、バウチャーがあります。経済学者がいうところのバウ
チャーは必ずしも教育には相応しくないかもしれませんが、バウチャーによってどのサービスを
受けるかは消費者が選び、どんなサービス提供機関がバウチャーの換金ができるのかということ
はついては行政が決める。そのような考え方を取り入れていくということも一つの手法かもしれ
ません。
こういう高校や学科をいくつ作るという具体的なことを細かく行政が決めるのではなく、生徒、
親、教員グループ、校長が自分たちで選び、それを県が認定するかどうかを公正に決め、この結
果に関しては責任を取ってもらうということがバウチャーの方式であります。
コミュニティ・スクールの枠組みも、基本的には学校ごとにいろいろなことを決めていくとい
うことを保証する制度です。コミュニティ・スクールの現状につきまして、少しだけ説明します。
数週間前にコミュニティ・スクールの実施を平成 17 年4月から可能にするための法改正の提案が
文部科学省から出され、これを今国会に提出することが閣議決定されました。審議はこれからで
すが、順調にいけば平成 17 年4月からコミュニティ・スクールが可能となります。
どこが今までと違うかと言いますと、人事を含めて学校運営は個々の学校が行う中で、住民参
加の協議会がモニターすることで、しっかりアカンタビリティーを担保するというものです。こ
れも、学校の自律性を高めるための一つの仕組みとして利用を検討すべきでしょう。
バウチャーやコミュニティ・スクールの考え方を組み合わせて長野県独自の新しい枠組みを作
り、評価はしっかりやり、バランスを考え、ミニマムなところは押さえていく、後は当事者意識
と選択に任せるという形の中で、行政としては支援をしていく。そういう形で進めていくことが
トータルとして良い結果をもたらすのではないかと考えております。
(梶間委員)
大前提として、まず財政難の時代における教育改革をどのように進めていくのかということを
考えていかなくてはいけないと思います。今までのように、同じものを同じように全ての学校で
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行うことはできないので、メリハリのある改革をどのように進めていくのかということを考える
必要があると思います。多様化や特色化ということはこれからの教育改革からははずせないキー
ワードであると思います。自立的に行うということも必要だと思います。ここには、格差が生じ
てくると思いますが、イギリスの教育改革を見ておりましても、格差の問題をどのように是正す
るのかという点はとても重要な課題となっております。ブレア政権で行われている政策としまし
ては、まず現状認識をして、そこで現場にとって何が必要なのかということから考え、自立的に
できる学校についてはそのまま成長してもらい、自立的にできない学校については、教育委員会
が介入ではなく、自立できるように手厚く支援をしていくという機能を教育行政に持たせようと
いう改革をしております。このような点から多様化・特色化を進めていくことはとても大切なこ
とであると思いますが、これと同時にいかにセイフティー・ネットを整備していくのかという点
で、行政の役割をどのように考えていくのかということを考えていく必要があると思います。
これに関連しまして、評価をどのようにしていくのかということはとても大切なことであると
思います。評価という意味では、学校の自己評価だけではなく、税金を使っている公教育である
以上は、アカンタビリティーの観点からも、第三者の目から見て学校がどうなのかということが
重要であると考えております。その評価に基づいて、現状を認識し、分析を行い、その評価から
生まれた証拠や結果に基づいて行われるという改革が必要であると思います。
評価した結果をどのように改革案に結びつき、改革のサイクルに乗せていくのかということが
必要であると思います。単に評価をして終わりではなく、評価を次の改革に結びつけていくサイ
クルを学校経営の中にどのように組み入れていくのかということが大切であると思います。評価
した結果、悪かったことに対してだけ何かを行うということではなく、逆に良かった点について
どういうことをしていくのかという、アメとムチをどのようにバランス良く学校に対して行って
いくのか、また学校が自立的にどのように受けとめていくのかというシステムを作ることが大切
であると思います。
二つ目の視点としては、これからはグローバルな時代であるとともに、地域をどのように支え
ていくのかという観点での人材育成が県の課題としてあると思います。つまり、グローバルとロ
ーカルをどのようにバランスを保ちながら、高校改革の中で人材育成をしていくのかという点が
大切であると思います。地域を支えるリーダー、県を支えるリーダー、国を指導するリーダーを
育てていくと同時に、リーダーを支えていく人材を育成するというメリハリのある人材教育をど
のように行っていくのかということを学校現場の先生方、子どもたち自身、教育委員会が一緒に
なって考えていく必要があると思います。こういう意味での人材育成という観点もこの高校改革
の中では必要であると思います。
三点目としましては、当事者意識を育成していくという点で、参加型の改革をどのように立案
していくのかということも必要であると思います。私が研究して参りました学校理事会制度は、
学校関係者だけではなく、当事者である保護者、子どもたち、地域の人たちがどのように学校経
営に関わり、その結果国民全体として国の教育をどのように改善するのかということを考えた制
度であり、これは 1970 年代のイギリスの荒廃していた教育を背景にして生まれてきた制度です。
このことからも、参加型ということは改革を進めて行く上で大切な視点であると思います。
当事者ということを考えたときに、教職員だけではなく、保護者、あるいは高校段階では子ど
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も自身が自立的に考えていける年代ですので、子どもをどのように参加させていくのかという視
点が必要となってきます。東京都では、学校経営計画を立てるようになっております。ある学校
が改革の目標として「遅刻者を減少させる」ということを掲げ、保護者や生徒達に示したときに、
これまで生徒自身は遅刻者がそんなに多いという現状を認識しておらず、この目標が示されたと
きに生徒自身が生徒会で何ができるのかということを考えるようになりました。これにより、保
護者や生徒の意識も変わり、
遅刻者数もかなり減少したということがございました。このように、
参加型という点では、保護者や地域を巻き込んで、教職員や教育委員会も含めて改革を進めてい
くというシステムをどのように作るのかということが大切であると思います。
情報化についてですが、長野県は広いので、どのように学校の連携をし、ネットワーク化して
いくのかという点では、ITの技術をうまく活用しながらやる必要があります。資源の有効活用
という点でどのようにしていくのかということは大切な視点であると考えております。
(葉養委員長)
どうもありがとうございました。意見はかなりばらついておりますが、大きく括りますと、一
つには現場主義で考えていくこと、もう一つはシステムやネットワークを再構築していくことで
あると思います。また、ベースとなることは、村上委員、土井委員がおっしゃった誰のための改
革かというメッセージ性であると思います。この検討委員会がなぜ設置されたのか、また、どの
点をどのように変えようとしているのか、つまり高校改革に着手しなければいけない基本的な考
え方についてのメッセージ性を明確にしていかないといけないと考えております。
第1回の検討委員会に対する報道機関の受けとめ方をみますと、適正配置が新聞の見出しに上
がっております。適正規模・適正配置に向けての検討案を事務局が提出したという記事になって
おります。そうしますと、この検討委員会は、魅力づくりを提示してはいるが、結局のところ県
立高校の減量経営に向けていくことに最大のポイントがあって、最後のメッセージはそこにある
となってしまいます。この点については、これから検討を進めていく中で、何のための改革かと
いう点とも関連させながら、
クリアにしていく努力をしていかないといけないと考えております。
もう一つ問題提起させていただきたいことは、長野県という大きなエリアを一つのブロックで
将来展望を描くということには無理があると思います。
旧 12 通学区を4通学区に広域化したわけ
ですが、ある程度全県的な視野を持つとともに、同時にローカルなものを考えながら、括りを小
さくして将来像を考える必要があると思います。4ブロックとしてビジョンをつくることがいい
のか、あるいは旧 12 通学区ごとの方がビジョンづくりは考えやすいのかといった地域性の問題に
ついて、
エリアをどの単位で設定するのかということを考えていくことが必要であると思います。
特に、適正配置はどういうエリアで考えていくのかという問題がでてくると思います。
それぞれのエリアには、多くの市町村があり、市町村の内部には旧村などがあり、これらが集
まって長野県というエリアが成り立っておりますので、小さなエリアを考えながら適正配置は検
討していかなければならないと思います。こういう問題がいずれ出てくるとすれば、この適正配
置と魅力ある学校づくりというビジョンを絡めながら、エリアを区切って議論を進めていく方が
良いのではないかと思います。
これについては、後ほど御意見をお伺いしたいと思いますが、先に資料1及び2が用意されて
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おりますので、説明を事務局からお聞きした後に(2)の「検討委員会の検討項目と検討スケジ
ュール」の議題の中で皆さんに議論していただければと思います。
資料1及び資料2について、高校教育課草間企画員から説明(説明内容省略)
(葉養委員長)
最初に資料1及び資料2につきまして何か御質問はございますでしょうか。
(竹下委員)
中高一貫教育については、どのようにお考えでしょうか。
(窪田主任指導主事)
中高一貫教育につきましては、これまで教育委員会において検討して参りましたが、その後さ
まざまな要因がございまして、この魅力づくりの中には記載してございません。今後中高一貫教
育校が必要であるということでございましたら、この検討委員会の中で御検討いただきまして、
方向性を示していただきたいと考えております。
(吉江補佐)
補足で申し上げますが、資料5で中高一貫教育につきましては全国の状況をお示ししてござい
ます。これにつきましては、後ほどご覧いただきたいと思います。
(梶間委員)
県立学校の概要についてお尋ねしたいのですが、高 大連携を考えるときに、それぞれの学校の
所管がどこの部局であるのか関係してくると思いますので、その所管部局を教えてください。
(吉江補佐)
看護大学は衛生部、短期大学は総務部、工科短期大学校は商工部、農業大学校は農政部、林業
大学校は林務部、福祉大学校は社会部、公衆衛生専門学校及び看護専門学校は衛生部、技術専門
校は商工部でございまして、それぞれ所管が分かれております。
(萩本委員)
これらの連携はどうなっておりますか。
(吉江補佐)
現在は、充分な連携は取れていない面もございますが、来年度につきましては、議会に対しま
して組織改正に関する条例案を提出しておりまして、この条例案が可決されれば、現在分かれて
いる学校が一つの部の所管になるものも出て参ります。
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(梶間委員)
この検討委員会では、この所管部局の統合を視野に入れた検討を行うということでしょうか。
(吉江補佐)
部局による所管の違いは考慮に入れていただくことなく、それぞれの学校との連携をいかにす
べきかということにつきまして、御議論いただきたいと思います。
(土井委員)
多部制・単位制高校の報告書を昨年提出し、1年ほど経過しており、県教委から具体的にどの
ような内容がどのように出されてくるのかと思っておりましたが、ただ今の説明では、その報告
書を踏まえて、高校教育全体をこの場で改めて検討して、この検討委員会は多部制・単位制高校
検討委員会の報告書を受けとめて、さらに具体化のための検討をするということになっていると
いうことでしょうか。この検討委員会以外に報告書を基に、多部制・単位制高校を具体化してい
くところはないわけですね。
(吉江補佐)
多部制・単位制高校検討委員会の報告書の中では、
「平成 15 年度に始まる高等学校改革プラン
検討事業において、本報告書の趣旨を十分反映し」という提言をいただいておりますので、この
検討委員会での検討の中で配置等も含めて御審議いただきたいと思っております。
(萩本委員)
資料1の1頁の学校の違いがよく分かりませんので説明をお願いしたいと思います。
(窪田主任指導主事)
総合学科高校は、総合学科という一つの学科がございまして、普通科、職業科を問わず、これ
らを超えた科目を選択することができる高校でありまして、基本的には単位制でございます。
総合選択制高校は、例えば農業科、商業科、工業科がそれぞれ一つの学校に分かれて設置され
ており、生徒はそれぞれの学科に所属しておりますが、生徒は所属する学科の科目を超えて他の
科の科目を選択することも可能であります。
総合科学技術高校は、総合という名前がついておりますが、工業高校をさらにいろいろな形で
再編するという高校でございます。
(萩本委員)
これだけ、高校を分ける必要があるのですか。
(窪田主任指導主事)
それぞれの高校に特徴がございます。
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(吉江補佐)
それぞれの高校は別のものであると同時に、似て非なる面もあると思います。それぞれ、御提
案させていただいておりますが、これにつきましては、二つのタイプの高校を一つにまとめても
良いのではないかといった御審議をしていただければと考えております。
(中沢委員)
総合学科は、高校に入学してから、生徒が自分の将来のことを考えながら科目を選択すること
ができる高校であり、総合選択制高校は、ある学科に入学した場合には、卒業までその学科から
他に転科することはできないという規制が存在しているものを、弾力化しようとする高校であり
ます。
何校ぐらい設置するのかについては、ニーズに応じて設置すればいいので、先にいくつ高校を
設置するという考え方は難しいのではないでしょうか。
また、高校生の段階では、学科の専門性が即戦力として役立たない時代になっており、社会の
技術水準が非常に高くなっております。世間では、食品、環境、福祉等については、高校の卒業
者が即戦力になるという認識を持っておりますが、実際はそうではないと思います。このため、
高校の学科は、将来のステップとして、もう一つ上の専門性を付けるという位置づけにしていく
必要があり、学科で完成させていくという考え方は時代に合わないのではないかと思います。
(金子委員)
福祉科を卒業したからといって、福祉関係の仕事に就けるのかというと必ずしもそうではなく、
社会は高校で教えることとは別の知識やスキルを求めているという可能性があると思います。こ
れは、高校に限ったことではなく、例えば、情報処理者試験の資格を取得したからといって企業
でコンピュータの専門家として認められるかというと、最近はそうではなくなってきました。オ
ラクルとかシスコなどが提供している、もっと最新技術を踏まえた実践的な認定試験を取ってい
かないと役立ちません。英語検定についても、昔のように、2級や準2級を持っているというこ
とは、実践的には、あまり意味がありません。このような状況ですので、学科を細分化して生徒
をこれに縛るということは時代遅れではないかと思います。
全日制か多部制かというように学校のタイプを大まかに分けて、あとは、それぞれの地域にそ
れぞれのタイプに対するどのくらいのニーズがあるのかを決めていけばいいと思います。その中
で、単純に数字だけでなく、その地域における、これまでの歴史的経緯や地域性などは調整する
必要があると思います。
(葉養委員長)
情報がかなりたくさん提示されておりますが、スケジュール案を見ますと、検討委員会の回数
はそれほど多くはありませんので、この検討委員会で議論していただく中身は枠組みづくりにな
るかと思います。大きな枠組み、考え方をこの検討委員会として合意形成できる形で進めさせて
いただきたいと思います。
情報は事務局がたくさん持っており、教育委員会という決定機関がありますので、最終判断は
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教育委員会がやっていただき、その判断する前の考え方や迫り方を整理していけば私たちの意思
に添う形になると思います。
日本は村社会ですので、地域は生態系を持っており、構造があります。こういう構造の上に、
小学校、中学校、高校が配置されているという現実があります。ローカルな構造を踏まえながら、
なおかつそこにグローバルな視点や全県的な視野あるいは新しい視点を入れていくということ
を考えていく必要があると思います。
例えば、総合学科をつくるのかどうかということも一つのテーマですが、総合学科を配置する
場合にも4つのブロックで考えるのか、全県的に一つで考えるのか、あるいは旧 12 通学区を単
位として考えるのかという課題がありますが、この点が固まってきますと具体的な作業がしやす
くなると思います。
資料1の4頁の適正配置の中にも、検討事項として「4通学区若しくは旧 12 通学区ごと」と
いう記述がございまして、この区分けをどうするのかということはかなり重要な点だと思います。
この点についてはいかがでしょうか。
(中沢委員)
長野県のように面積が広い県ですと、全県で一つというわけにはいかないと思います。生徒の
通学範囲を考慮にいれ、その範囲内にそれぞれ学校を設置していくという考え方が非常に適切で
はないかと思います。一つの地域だけに学校が設置されますと、他の地域から不満が生じます。
(萩本委員)
学校によっては特殊な設備の更新が必要になってきますので、学校の配置については財政的な
面も考慮に入れていかなければならないのではないかと考えております。
(葉養委員長)
地域高校を考えたときに、ブロックの考え方について、村上委員さんのお考えは何かございま
すでしょうか。
(村上委員)
地域高校は配慮すべき高校という位置づけをしていく必要があると思います。この考え方にた
った上で、あまり機械的にやることはできないのではないかと考えております。
(葉養委員長)
土井委員にお伺いしたいのですが、多部制・単位制高校を検討する過程で、ブロックという視
点を組み入れながら検討した経過はあるのでしょうか。
(土井委員)
最終段階で、具体化するときには通学の範囲等を考え、4通学区に一つが適切であるというこ
とを報告書に記載しましたが、検討している過程では、理念を重視して、地域については最後に
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触れたという程度でございました。
(葉養委員長)
大分県では、ある自治体に高校の分校しかない状況で、その分校の小規模化がかなり進行した
ために、今後の対応方法について私のところに相談に来られたことがありましたが、学校は自治
体の中に一つはないと精神的、文化的な拠点がなくなるという意識があると思います。こういう
意味では、ある程度高校の場合も、小中学校の配置との関係を考えながら、ローカルな視点を持
ってビジョンをつくるようにしていかないと、実施過程で相当な混乱が起きるのではないかと思
います。
このため、4ブロック、12 ブロックあるいは別の考え方がいいのか、最初に議論していただき
たいと考えております。
(竹下委員)
魅力ある高校については、4ブロックで少なくとも1校は配置することが必要ではないかと思
います。後は、それぞれ地域の特殊性や既存高校の問題もありますので、ある程度弾力的に対応
していけば良いのではないかと思います。
(葉養委員長)
4ブロックは、少し広すぎる感じはしますが、通学圏域から考えて可能でしょうか。
(竹下委員)
中山間地もありますので、難しいところもあると思います。
(萩本委員)
テレビ会議という手法を導入することは可能なのでしょうか。キャンパスがない大学というこ
とで、社会人対象のテレビ大学を東京や名古屋の先生の協力を得てやっておりますが、これは好
評でありますので、こういう手法はできないのでしょうか。
(葉養委員長)
やがて統合問題を議論することになりますが、条例上は高校を統合したけれども、リモートキ
ャンパスを置き、そこを拠点にしてITを活用して授業を受講できるシステムも考えられると思
います。これについての技術的な可能性はあるのでしょうか。
(金子委員)
遠隔学習は、技術的には非常に簡単になっています。ネットワークをコントロールする多少の
ソフトは必要になりますが、普通のパソコンとカメラがあればできるようになっています。普通
の PC だと、音声に少し問題はありますので、マイクやスピーカーシステムはしっかりさせる必
要があります。
利用者にとっては、
10 万円から 20 万円程度のパソコンがあれば充分にできます。
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慶応のSFCでは、授業を全部録画しておいて、終わった瞬間にネットワーク配信するというシ
ステムを一部で使っています。それほど大袈裟なシステムがなくても、ネットワーク経由で、す
ぐに、同じ内容を見ることができます。
全体のことについていうと、我々は、まずニーズをしっかりつかまなくてはいけないと思いま
す。また、新しい施設をいくつも建設する財政的余裕はないと思います。養護学校の建設や多部
制・単位制高校を新設するという話はありますが、これらは例外として、既存の建物を利用する
ことを原則とすることだと思います。
ニーズをまず見るということです。たとえば、地域高校は特別で、どうしても必要だという意
見があるようですが、子どもたちが本当に求めているのであれば、特段の考慮を払う必要があり
ます。しかし、高校に進学する子どもたちが、本当に地域の高校に行きたいのかということです。
高校生ですから、近いことが最大の関心ではなく、自分の関心のある科目が多く、良い授業が行
われている高校に行きたいのではないかと思います。
この検討委員会として、私たちは、前に言った大枠でのタイプ分けと地域についての配分はや
らなければいけないと思います。タイプ分けは進学重視の高校と就職重視の高校とでは違うだろ
う、と、そのような大枠でのタイプということです。不登校経験者やさまざまな理由でやり直し
をする生徒のための高校も、ひとつのタイプとして、あっていいかと思います。多部制高校のよ
うな夜も開校する高校や夕方に終了する全日制高校という大まかなタイプ分けをするとともに、
4つのブロックで、それぞれの地域のニーズを満たすために、また、地域間のバランスを考えて
大きな片寄りがないようにするという考え方も必要だと思います。
その上で、学校間連携によって教員が移動したり、集中授業をすることなど、リソースをうま
く活用して効果を出すことが検討されるべきです。その中に、ひとつの重要な手段として、IT
を利用することもあると思います。ITがあれば、学校はいらないということではないと思いま
すが、アメリカでは e-ラーニングをかなり利用しています。大学での事例ですが、大教室の講議
の場合、キャンパス内に住んでいる学生の多くがテレビ会議の授業を好むという結果が出ており
ます。民法やマクロ経済学など、大教室で教師が遠くで講義をするのを聞くより、自分の部屋で
ビデオを見た方が良いという意見が多いという結果が出ております。
これまでのように、e-ラーニングは単位制と通信制だけ、という分け方ではなく、誰でも eラーニングを利用でき、これを単位として認めるのかについては学校ごとに決めていくという形
を取りながらやることも一つの方法であると思います。
進学をしないで高校を卒業してすぐに就職する子どもたちのためには、地域との関わりは必要
だと思いますが、これを福祉科、農業科というような学科で細分化することは時代遅れではない
かと思います。
要するに大きなタイプ分けと地域バランスと学校/教員の連携とITの活用。それらをどのよ
うに組み合わせるかということだと思います。例えば情報教育の基本はほとんど遠隔でできると
思いますし、語学教育も良いソフトがでております。とはいえ、学校は地域にとっては、一つの
文化センターであり、生徒にとっては心のよりどころであるので、もちろん、すべてを e ラーニ
ングでということではなく、これまでの歴史的経緯も含めて適正にリソースを配置していくこと
が必要ではないかと思います。
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(葉養委員長)
土井委員のお話にも出て参りましたが、学校には皆ラベルが付いていて、全部序列化しており、
これによって生徒が拘束されており、こういう学校に入ったという意識を後々まで引きずってし
まうことがあります。この点について、この検討委員会で少しでも前進させることを考えたとき
に、一つの可能性としてジョイント高校のやり方があると思います。極端に言いますと、長野市
の高校をジョイント高校として、長野高校のいう名称にする形などもあると思いますが、高校の
序列化については、どのように考えたらよいでしょうか。
第1回に提示された資料の中に、基礎からもう一度勉強したい生徒の比率はかなり高かったの
で、ラベリングの問題とともに、進学した高校が自分の学力と合っていないと思っている生徒も
多くいて、その生徒はもう一度やり直したいという意識があると思います。このようなことに対
応するための高校を作り出すためには、具体的にどういう発想でどういう構想を持ったらいいの
か、また、ジョンイント高校が可能性としてできるのかどうか、あるいは e-ラーニングやITを
利用して基礎から教科を学べるようなメニューの提供の仕方ということができないのかどうか
という点は、おおきなポイントではないかと思います。
この検討委員会において、具体的なことが提案できれば、検討委員会としての意味があったの
ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
(土井委員)
多部制・単位制高校を検討している際に、実際に単位制高校を卒業した生徒の話をお聴きしま
したが、その高校で自分に誇りが持てた、自分を発揮することができたと思える子どもたちは、
その高校を愛していけます。
今問題となっていることは、3年間その高校で学んでも、誇りを持てないまま時間が経過して
しまうということだと思います。この点から、多部制・単位制高校こそが既存の高校以上に魅力
ある学校になる可能性が充分あると思っております。また、そのようにしていかないと、この高
校の存在意義が薄れてしまうと思います。
この問題は、それぞれの学校の先生方と生徒が3年間の学びの中で、自分たちはこの学校で良
かったというものをどのように創り出すかということであり、最終的には当事者がどのように誇
りある学校をつくっていくかということに行き当たると思います。
多部制・単位制高校という新しいタイプの学校は、もう一度やり直す人たちにとっては重要で
あり、何とか良い学校をつくりたいという考えを持っております。
(竹下委員)
地域高校は、少し時間は掛かるかもしれませんが、特色を出して魅力のある高校にするという
ものをどのようにつくっていくのかということではないかと思います。例えば、総合科学技術高
校へ生徒が行きたいということであれば、通学には時間が掛かるけれども山間地の高校へ行って、
じっくり勉強をするという環境をつくっていくということが、ラベリングの問題をクリアする唯
一の方法ではないかと思います。
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(葉養委員長)
竹下委員のお話をお伺いしながら、札幌の特認校制度のことを思い出しましたが、特認校とは
25 年前に通学区域を自由にした学校であります。子どもが減少してきますので、通学区域の子ど
もだけでは、複式学級になってしまう状況になったわけですが、特認校に指定された4校は北海
道開拓団の入植地にできた約1世紀の歴史のある小学校で、なかなか廃止ができませんでした。
そこで、教育委員会は、通学区域をはずして、教育課程の面でも魅力ある学校づくりを行い、P
Rも盛んに行い、他の地域から生徒を集めることを行いました。これにより、25 年間毎年 100
人前後の生徒が維持されている状況にあります。
地域高校は、地域の中には生徒は少なくなっているということはあると思いますが、魅力づく
りをして、その高校に行かなければその魅力を享受できないということになれば生徒は集まると
思います。生徒が集まらなければ、何らかの基準を用意しておいて、廃校にしていくという仕組
みづくりが必要になってくると思います。
後で議題にもありますが、
「高校改革の具体的進め方」について、学校現場からこういう学校
をつくりたいというプロポーザルを基盤とした学校のビジョンの描き方というやり方もあるの
ではないかと思います。
また、学校の運営形態については、コミュニティ・スクールの法制化がまもなく予定されてい
て、来年4月から試行という話を聞いておりますが、どのようにお考えでしょうか。
(村上委員)
重要なことは、当事者がどれだけ現状認識をして、どのようにハンドリングしていくのかとい
うことであると思います。これらを保障する運営の在り方をきちんと考えていく必要があると思
います。常に原点は現場だと思いますので、上意下達の流れから、現場からの動きを重視するこ
とだと思います。
また、誰のための学校かという観点では、行政や教員のための学校ということだけではなく、
中心はそこに学ぶ子どもたちのための学校であるので、ここをきちんと認識していくことは当然
のことでありますが、逆転の発想として、ただ学校を残すということではなく、そこに行かない
と学べないという学校に価値を与えるということをどれだけできるのか、ということが大事なこ
とだと考えております。
生徒が少ないからこそできることや、ITが活用できるからということで田舎の方が有意であ
るということもあると思います。これらを含めて当事者がどうやって魅力ある学校をつくってい
くのかということをハンドリングできる運営体制の在り方を検討する必要があると思います。
(中沢委員)
学校間連携の観点から、総合高校と地域運営をうまく関連させて実施すれば、かなり斬新なも
のができると思います。現在では、高校生1人当たり年間 100 万円ほど経費がかかっております
ので、長野県のある高校が非常に地域性がある場合に、その高校をモデルとして、ジョイント方
式と地域運営をうまくかみ合わせていけば、斬新な教育ができると思います。
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(葉養委員長)
ジョイント高校は、個人的には非常に面白いと思っておりますが、これが、条例上の高校の統
合と連動したときに、問題として生じることは教員配置が悪化することです。統合は教職員配置
の効率化という意味を持っておりますので、生徒数の比率で教職員は配置されますから、教員数
は減ることになります。そうすると、リモートキャンパスに配置される教員は、条例上の統合に
よって少なくなる可能性があります。この場合、ボランティアなど学校の外の力をうまく活用し
ながら、これを補っていくという工夫がないと、非常に苦しくなると考えておりますが、この意
味では地域運営学校という発想でリモートキャンパスを残していく努力を行うことは可能性と
してあると思います。
地域高校は小学校の特認校の高校版という形で、自然環境が豊かな場所に配置されているはず
ですので、地域の資源を有効に活用しながらアピールを行い、魅力づくりを進めていき、これに
よって地域外の生徒を引きつけていくような学校づくりが進行していけば非常に面白い形にな
ると思います。
ただし、適正規模という問題が残ります。高校の適正規模・適正配置については資料1の4頁
にありますが、地域高校の適正規模は特別扱いをする場合にも、その特別扱いはどんなに学校が
小さくなっても存続するのかというボーダーラインの問題が出てくると思います。この適正規模
についてはどのようにお考えでしょうか。教職員の配置の面で一番良い規模というものがあると
思います。データについては、今後事務局から用意してもらいたいと考えております。
(村上委員)
適正規模について、地域高校が設置されているところの住民や高校を支えている行政の意識は
どうであるのかということが、実はよくわからないところです。提示された数値について、多い
あるいは少ないという反応はあると思いますが、自分たちはどのレベルを適正と考えているのか
という当事者の認識はあるのでしょうか。
(葉養委員長)
小中学校については、20 年来研究しておりますのでわかりますが、特に小学校などで適正規模
論議をしていきましと、その学校の生徒数が 40 人である場合には、保護者からは下限 30 人とい
う話が出てきまして、50 人である場合には、下限は 40 人という話が出てきます。また、幼稚園
はもっと極端に少なくなります。ですから、体験的なベースで話を詰めていこうとすると、在籍
数よりも下に下限が設定されてしまうことが普通であります。
小中学校の場合は、費用や年数を掛ければ、データを得ることができるかもしれませんが、な
かなか学術的なデータはありません。このため、教職員配置の関係では、中学の場合は1学年5
学級の水準であれば、5教科は3人の教員配置ができるということになりまして、この場合、各
学年の担当やコース制の担当として教員を分けることができるようになります。一方で、1学年
2学級の場合には、英語や数学の教員数は1人になってしまいまして、複数のコースを設置する
ことはできないわけです。こういうことから、適正規模にも下限があるということで議論してい
くことが普通であります。また、これしかないというのが実情であります。
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高校の場合も、おそらく教職員の配置との関係で言いますと、ある程度のデータは出てくるか
もしれません。このデータを使って1学年2学級規模は小さすぎるとするのか、あるいは地域高
校は別枠で扱うのか、また他の高校は別の基準を定めるとした場合、その基準をどのように考え
ていくのかということはとても悩ましい課題であります。
(竹下委員)
教育学的に、集団による教育効果は研究対象になっていないのでしょうか。
(葉養委員長)
学級規模のデータはあります。1学級当たり 18 人程度がかなり効果をもたらすというデータ
はあります。ですから、40 人を 30 人にしても、データから見ると大した効果はあがらないとな
ります。40 人をもっと小さくしようとすれば、18 人ぐらいにしないと、目立った効果は出てこ
ないという研究データがあります。
しかし、学校規模のデータはなかなかないと思います。都内の自治体について調査をしたこと
はありますが、かなり難しいです。学力との関係を示さなければいけませんが、教職員の指導力
の要素をどのように考えるのか、あるいは一人ひとりの子どもの家庭の文化的な要素や経済水準
が影響していないのかなどを考えたときに非常に難しくなります。
適正規模論は配置の基礎となりますので、いずれ検討しなければいけないと思います。この場
合、地域高校は別枠として扱うのか、別枠として扱うとすれば下限をどのように考えるのかなど、
検討する必要があります。これについては、事務局でいろいろなデータを持っておりますので、
どういう考え方で規模を考えたらよいか整理をお願いしたいと思います。この点は大きなポイン
トになると思います。
現在のところで何かご意見はございますでしょうか。
(金子委員)
私が小学校の校長をした経験から言いますと、生徒が少ない方が良いというのは、教員がやり
やすいということだと思います。しかし、授業を受ける生徒の側から言いますと、あまり少ない
と先生にすべてを監視されてしまうということにもなります。英語はある程度以上は 10 人程度
の小人数でやっていました。算数が特に苦手だという子どもに対しては、10 人ぐらいの人数で授
業をするとメキメキ力をつけるということはありました。しかし、たとえば社会などでディスカ
ッションしようというときには 18 人ではもの足りないかもしれません。もっといろいろな意見
がでた方がいい。もちろん、常識的には、50 人では多すぎるとは思いますが、何人が適正かとい
うことは、一概には決められません。
適正なひとつの答えがあるということではなく、いくつかの原則や経験則は参考にすべきです
が、それ以外は、要するに、その学校がどういうことを打ち出し、どう説明し、それに対してど
れくらい支持が得られるのかということだと思います。基本的にはその学校がどういう教育を提
供するのか、またどういう魅力を出すのかということではないかと思います。ただし、魅力とい
うことは進学率だけではないですね。
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土井委員がおっしゃったように、それぞれの学校が誇りを持って、生徒に来てもらうようにす
ることが大事です。この学校は特別だからどんなことがあっても存続させるということにします
と、かえって、誇りは無くなってしまうと思います。
また、基本的には教育費の 90%は人件費ですので、どの位の人員を配置できるのかということ
が重要になります。再スタートの子どもたちも対象とした多部制高校や養護学校の子どもたちに
は教員の配置を手厚くする必要がありますが、それ以外は、やはり子どもの少ないところにはそ
れほど多くの教員は配置できない。それは当然です。
多様な機会と言っておりますので、高校に入ってからもう一回英語をやり直したい子どももい
れば、どんどん先をやりたい子どももいますので、各学校で、英語の先生は数人必要だというこ
とになるでしょう。少人数校がいいといっても、数学の先生が英語を教えるわけにはいきません。
とくに、ここでは、私立学校ではなく公立学校を対象にしているのですから。今の県の財政状況
から考えてどのくらいの人数を配置するのかは算出できるでしょう。その際、地域バランスや歴
史的経緯も考慮して、大くくりのタイプ別高校をいくつ配置するのかということを検討すれば、
大雑把な数は出てくるのではないかと思います。それを具体的に、どの学校をどうするのかとい
うことについては、必ずしも、我々がここでやることではないのではないかと思います。
(中沢委員)
学校規模の数字は、だいたい各県似たような数字が出ています。数字が必要だとすればこれを
使っていけばいいと思います。例外規定が必要かということにつきましては、学校の創立に特別
なものがあるという学校についてはあってもいいと思いますが、それ以外に例外規定を作るとそ
ちらに流れてしまうことになりますので、あまり例外規定は好ましくないと思います。
(葉養委員長)
それでは、資料3「高校改革の具体的進め方」について、それから資料4から資料6について
も、これらに関連した議論も出ていますので、事務局の方から資料の説明をお願いいたします。
資料3、資料4、資料5及び資料6について、高校教育課窪田主任指導主事から説明
(説明内容省略)
(葉養委員長)
資料3が大きなテーマです。3つの案が提出されておりますが、この中のどの案で進めていく
のかにつきまして、できれば今回絞り込みをしていただきたいということです。
事務局としては、1の「各校が主体的に改革を実施していく進め方」を考えているようです。
他の都道府県とは違った進め方を打ち出すということであれば、資料3の裏面のようなやり方に
なります。
ただし、審査機関をどうするのかという問題があります。こういう統合問題というのは、総論
賛成、各論反対が常ですので、審査機関は「火だるま」になる覚悟でやっていかなければならな
いと思います。また、審査機関が、統廃合対象校の固有名詞を絞り込む作業をやらざるを得ない
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ということになりますから、委員になり手がいるのかなど、いろいろな問題もあります。このよ
うに考えますと、ある程度、2の「検討委員会が改革の具体的内容を決定する進め方」
、3の「県
教委が改革の具体的内容を決定する進め方」の要素は加味しながら、何らかのフレームやルール
をこの検討委員会で決定しておく必要があると考えます。
(金子委員)
1の「各校が主体的に改革を実施していく進め方」にありますプロポーザル方式という考え方
自体は大変貴重な発想であり、何らかの形で取り入れるべきであると思います。しかし、実際の
問題として考えるとき、ある地域で3校のうち1校が廃校になる状況で、今現在いる校長と教員
が提案を出して、審査機関が審査をして1校を廃校とすることは、事実上不可能だと思います。
今の職員配置は、県教委が、いわば、勝手に決めたものですので、そのままで、統廃合や新しい
タイプの高校の数を決めるときにすぐにコンテストをするということは、難しいと思います。
全体として地域のバランスを考える、また、高校のタイプをいくつぐらい設置し、このうち多
部制・単位制高校などは1つずつ設置するという検討をする、例外はなるべく作らない、という
ようなことを検討委員会では決めるべきだと思います。
教員の配置は基本的には行きたい人、欲しい人という自主的なマッチングを重視して決めるべ
きです。地域の人たちの意見も入れながら、校長や教員が学校ごとに選ばれ、そのスタッフが地
域の人と協力して、こういう特徴を出したい、そのためにはこのタイプの学校で、規模や予算は
これこれにしたい。というような、イニシアティブが発揮できる体制を作った上で、プロポーザ
ルを行い、コンテストを行うことが望ましいと思います。その意味で3つのやり方を適切に組み
合わせるということになりますね。
ただし、数を決めるとか配分を決めるというような、本来的に厳しいところでは、検討委員会
が主導的に案を作るということにせざるを得ないのではないかと思います。ただそれで全部を決
めてしまうのではなく、自発性やプロポーザルの内容を十分に生かす仕組みをつくって具体的な
ことを決めるという形をとることが一番現実的であると思います。
(梶間委員)
金子先生のお考えに私も賛成です。1案の考え方は、学校の当事者意識を芽生えさせていくと
いう点では大変いいと思いますが、現在の教員配置などの人事制度のことを考えますと、各校か
ら提案された改革に対して誰が責任を取り、継続的な運営を行うのかということに課題がありま
す。現在は、校長が2、3年で交替しますので、改革案を出した校長が改革実行中に交替してし
まい、次に来た校長がその案に反対だという場合には責任の所在がなくなり、継続性もなくなっ
てしまいます。このように考えますと、各校が主体的に改革を進めていくという方法は機能しな
いのではないかと思います。学校の特色化も含めてプロポーザル方式を考えていくのであれば、
校長の任期の問題やその特色にあった教員を学校が選べるような人事制度を取らない限り機能
しないのではないかと思います。
東京都では学校に特色を持たせ、それに合わせて学校運営計画を立て、それに合わせて予算も
付けていくというように、学校に実質的な権限を移譲するとともに、校長も2、3年の任期では
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なく、長い任期でその学校に経営責任を持ってもらうような配置がされてきています。そういう
システムを作らない限り、学校に自立性や当事者意識は芽生えないと思います。
京都府は、学校の特色化に合わせて教員を募集したり、教員が自分の能力を示して、売り込む
ような制度を取り入れようとしています。これは義務教育の段階ですが、高校の段階でも特色化
を持たせるという意味では、人事制度を含めた形で改革案を考える必要があると思います。
(葉養委員長)
適正配置の手続きについては高等学校設置条例がありまして、条例を改正することは議会の権
限になります。議会にこの設置条例の改正を承認していただくということが最後の手続きになり
ます。その条例の改正案を提出する前の段階でどういう手続きをするのかということで、この3
つのオプションがあり、そのどれを取るのかということだと思います。
議会の段階で暗礁に乗り上げたというケースは小中学校の場合に経験がありますし、あるいは
教育委員会の決定前の段階で組合せが変わってしまったというケースもあります。このようにこ
の問題は非常に難しく、必ずしも一筋縄ではいかないということを十分承知していただきながら、
案をつくっていく必要があります。計画をつくっても、実行できなくなってしまうことも考えら
れます。答申はできますが、それは机上のもので終わり、何も現実には動かないということにも
なりかねません。このところを念頭に置いたときに、どこまでこの検討委員会でやるのかという
ことが今我々に問われているわけです。
土井委員さん、長野県の現状をよくご存じだと思うのですが、これについてどのようにお考え
ですか。
(土井委員)
やはり各高校や地元の方々は、高校が残ることによって活性化をしていきたいと考えますから、
生徒が極めて少ない状況になっても、この高校は無くてもいいということにはならないと思いま
す。
大学においても統合再編問題や独立行政法人化が進んでいます。ある県で大学が廃止というこ
とになれば、知事さんが反対の陳情に行くということになり、大学だけでは決められない状況に
なります。
先ほどの共同提案の場合、高校の校長先生が自ら3校の中で連携して自校を廃止対象校にすべ
きだと考えたとしても、自治体の首長はそう考えない場合があります。ですから、この1番目の
「各校が主体的に改革をしていく進め方」というやり方は、だれが言い出すのかということが問
題になると思います。生徒もたくさん集まって人気のある高校は、きっと生徒数が少ない学校が
立候補してくれるだろうと思うでしょうが、
「あなたのところを廃校してくれませんか」とは言い
出せないと思います。
実際、教育学部の統合再編や独立法人化に向けて年々予算枠が縮小する状況を経験することか
ら申し上げますと、外から決定されたことに対しては、反発しか起こりません。6 年ごとに中期
目標を立てて、これに対して評価を受けていくという制度で、この 6 年間に目標を立て何とかや
ってみようという努力ができる期間を設けて、その成果を審査していくという、ある程度の期間
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を設けた制度が必要であると考えます。
(葉養委員長)
事務局との打合せでは、この 3 つの案のうちどれで実施するのかということについてある程度
方向付けをしてもらいたいということですが、理想論でいけば、1案でしょうが、現実問題とし
ては、2案や3案を加味して、1案が動くような仕組みができるかどうかということであると思
います。
(金子委員)
事務局が1案を提示してきたことは、大いに評価すべきことだと思います。個人的にこのよう
な意見を持っているということはこれまでもあったでしょうが、事務局としてこういう思いきっ
た案を提示してきたことは大変すばらしいことだと思います。このスピリットを実現するにはど
うしたらいいのかということです。さきほど述べたように、今のままの校長と教員の配置で、す
ぐに、高校ごとに案を出してもらって、3校のうち2校の存続を審査機関が決定するというやり
方は無理だと思います。梶間委員がおっしゃったように、学校自体がガバナンス体制を持てるよ
うなシステムが必要です。もうすでにいくつかのところで行われているように、校長の任期を長
くして、教員を学校の目標ごとに集めることができるようにし、また、教員も自分の適性を活か
せるところに行けるようにすることが必要です。このようにして1年か、2年ぐらいかけてプロ
ポーザルをやるべきだと思います。
プロポーザル方式はすでに宮城で行われています。校長がプロポーザルを出して、学校を任せ
るというやり方です。我々としては、例えば1年目は人事に関するガバナンスをきちんとできる
ように、教員人事について学校単位で自主的にできるようにし、その代わり第三者機関でモニタ
ーをしていることにし、その上で、いくつかの高校でプロポーザルを出してもらい、それを審査
する。これは、どの学校を廃校にするのかどうかということではなく、同じ目標で集まった校長
と教員がどんなプロポーザルを出すのかという、いわば、
「練習」をするために、いくつかのモデ
ル校でやってみることがいいのではないでしょうか。
1案のスピリットを活かすには、順番として、まずは、人事制度やガバナンスをしっかり確立
することであり、これは来年度4月から検討して、平成 17 年度からでもすぐにできますね。実際、
来年4月からスタートするコミュニティ・スクールでは、国の方針としてそうすることが実現で
きるのですから、長野県が自分でそうしようと思えば、長野県の公立高校にはすぐにできるはず
です。
来年の4月からそれを前提にプロポーザルを求めることも十分に可能ですね。そうすれば、
17 年度中にはプロポーザルが実現します。
多部制・単位制高校については、すでに提案がでているので、全部決まるのを待たずに、でき
るところから始めるべきです。多部制高校をどこに配置するのかということについては、
「この地
域はNPOとの協力が得られるので、誘致します」というようなコンテストを平成 16 年度中にや
ってもいいと思います。県教委がすべて決めてしまうのではなく、地元のバックアップ状況など
設置のための条件を踏まえて限定的にコンテストをやってもいいと思います。その経験を踏まえ
て、全体の高校配置についても、ある種のコンテストを導入することは自然なやり方でしょう。
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そういうステップを踏んで3年ぐらい掛けてやることが、1案のスピリットが活かせるアプロー
チではないかと思います。
(葉養委員長)
資料3は、適正配置のための具体的進め方になっています。金子委員がおっしゃったようにプ
ロポーザルというのは、統廃合校を絞るためのプロポーザルだけではなく、むしろ魅力づくりの
ための学校内発的な改革を促すための仕組みという意味合いもありますので、むしろ適正配置は
別の枠組みで考えていった方がいいという気がします。
事務局に伺いますが、資料3は、適正配置の資料になっていますが、これを出されたのは、財
政状況などの理由で統廃合にただちに着手しなければならないという状況があるのでしょうか。
(窪田主任指導主事)
各校が主体的に改革を実施するという進め方をとりますと、統廃合校の決定はむしろ遅れる方
向になると考えています。ですからこの資料は、緊急に統廃合校を決めなければならないと考え
て作成したものではございません。プロポーザルの内容は、適正配置、統廃合に限定されている
わけではなく、魅力づくりも含まれております。魅力づくりに重点をおいたプロポーザルを進め
ていくということは、事務局の方向性と異なるものではありません。
(葉養委員長)
今、事務局から説明がありましたように、平成 17 年度か 18 年度に1校減らさなければならな
いというような差し迫った事情があって出された資料ではないということが分かりました。検討
委員会では、金子委員がおっしゃったように総量としてこれくらいの数で考えるということを決
定するということかと思います。
しかし、その前提となるのが適正規模問題です。ベースになるものがないと、10 年後まで生徒
数の推計をしたとしても、何校ぐらい必要かという数字は出てきません。学級数の推計の問題や、
長野県を1ブロックとするのか、4ブロック又は 12 ブロックとするのか、あるいは 4 と 12 の間
に中間的な合理的な説明のし易い単位があるのかなどのブロックの問題、またそれぞれのブロッ
クの中で生徒の出現率を推計し、適正規模の下限を考えて校数の幅を算出するというところまで
はこの検討委員会でやることはできると思います。それから先の高校の固有名詞を出す段階にな
ったときには、いろいろな政治的な手順が待っていますので、さまざまなことをクリアーしてい
かなければなりません。ペーパープランではいろいろなことが書けますが、現実の実施計画まで
たどり着けるような土台となるものをつくるとすれば、結構きついことになると思います。今日
のところはプロポーザルの精神を活かす仕組みを考えていくということにしたいと思います。
適正配置の問題は適正規模と絡みますので、このプロポーザル方式でブロックごとに何校と決
めていくにはもう少し議論が必要かと思います。こういうとりまとめでいかがでしょうか。3案
のうちの1つに今日の段階で絞れますでしょうか。
スピリットというのは非常に大事なことでありまして、学校内発型の改革は非常に重要なこと
です。そうでなければ本当の意味での改革にならないと思います。教育改革は、学校の正門の前
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で止まる、あるいは教室のドアの前で止まるなどと言われることがあります。実践ということは、
一人ひとりの教師が教室の中で教えているわけですから、そこに本当の意味での影響を及ぼすよ
うなものでないと本当の意味の改革になりません。構造改革はシステムをいじればすぐにできま
すが、教育改革は質的な変化を生み出さなければ起きません。その意味で内発型の改革は大事な
ことであり、地域内発型、教室内発型にとってプロポーザル方式は大きな意味を持っています。
金子委員が評価されたように事務局がこうした案を出されたのは重要な第一歩だと思います。た
だし、適正問題と絡めるということは、もう少し手順を踏まないと難しい感じがします。一つに
決めるということになりますと、審査機関はどうするのかという話や学校数をどうするのかとい
う話に関心が移ってしまいます。このため、結論をもう少し先送りにするということでいかがで
しょうか。
(金子委員)
結論を曖昧にするということではなく、積極的な意味で、まずは、学校が主体的にアカウンタ
ビリィーができるものをつくることです。そのためには、校長公募も含めて、学校ごとにビジョ
ンをつくって教員も応募したりするというやり方をしなければならないと思います。1案の手法
を取るために、学校がガバナンスの主体になることがまず必要ですから。
1案の目的を実現するためには、政治的手順だけを考えるのではなく、組織的なシステム的な
手順を踏んでやっていく方が、結果として、いいものが早くできるのではないかと考えます。
(萩本委員)
先ほど出されたスケジュール案を見ますと、改革の進め方の結論を少なくとも 8 月までには出
さなければなりません。また先ほど事務局から説明がありましたが、実際の統廃合は少し先でも
いいということですが、予算のことはどうなっているのでしょうか。
(吉江補佐)
予算に反映するという議論になりますと、次年度の予算編成は 10 月か 11 月でございますので、
17 年度の当初予算に何らかの反映をするとすれば、この頃までに適正配置・規模に限らず、学校
の魅力づくりについての学校の再配置も含めて検討いただければ反映できると思います。
(萩本委員)
県の予算は大変厳しいと聞いています。学校数をここまで減らさなければならないという数字
はあるのですか。
(吉江補佐)
中沢委員の発言にもありましたが、ある程度以上の経費が生徒一人当たり掛かっています。平
成2年度が生徒数のピークでございまして、その後生徒数は3分の2になっておりますが、学校
数 89 校は変わっておりません。
この状態が県民の皆様にどう見られるかということはあろうかと
思います。
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(萩本委員)
これまでの委員会に出された資料の中に教育関係の予算のことはありましたでしょうか。
(吉江補佐)
予算関係の資料は、これまでのところ特段お出ししてございません。先だって「教育要覧」を
お配りいたしましたが、その中に児童生徒一人当たりどれくらいの経費が掛かっているかという
数字はお示してございます。
(葉養委員長)
適正規模・適正配置の問題は、第4回目の議題に予定されています。その頃にはこの委員会で
どこまで決定するのかを決めざるを得ないと思います。
適正規模・適正配置は予算が掛かります。たとえば3校を廃校にして1校を新しくつくるとす
れば、校章から校歌からすべて新しくしなければなりません。統合はこれほどお金がかかるもの
なのかという話を何度も聞いたことがあります。もちろん、長期的に見れば、学校を統合すれば
経費は削減されます。
生徒数のピーク時の体制をこれからも維持することがいいのかということは、今の時代ですか
らある種の減量経営というのは致し方ないとしても、それをどのくらいの水準で進めていくのか、
それをどういう地域的バランスでどういうルールに基づいてやっていくかということは微妙な問
題であります。
ブロックを固めることと、そのブロックごとに生徒数の推計値に基づいた校数は何校ぐらいと
なり、これくらいの減量経営になるということはやっていかざるを得ないと思います。地域高校
の問題もありますが、適正規模の水準もある程度合意して見込みとしての校数の幅を設定するこ
とになります。そして、現在の高校数との差を明らかにして中間とりまとめを公表し、県民の皆
様からのご意見を受けた上で、最終報告に向けての手直しを行っていくという段取りではないか
と思っています。
現段階では、進め方についての3案のうちどれで実施するのかということは決めないで、フリ
ーハンドにしておいた方がいいという気がします。多少曖昧な形で終わりますが、適正配置につ
いては、第4回の委員会で検討することになりますので宜しくお願いします。
次回の第3回検討委員会は、4 月 13 日午前9時 30 分から、この特別会議室で行います。それ
では、
以上をもちまして第2回の検討委員会を終了させていただきます。大変ご苦労さまでした。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
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