抗菌薬の適正使用 - 日本赤十字社 松山赤十字病院

2016/7/19
Infection
Control
Team
QQ部カンファレンス
2016/07/15
理想的な抗菌薬とは?
抗菌薬の適正使用
• 全ての菌に効く
• 副作用がない
松山赤十字病院 ICT
(腎臓内科) 岡 英明
• 起因菌にしか効かない
• 安価
私見 “ the narrower spectrum, the better ”
治療期間は
・感染臓器
・起因菌
+免疫力
+人工物の有無な
どで決まる。
“ the narrower spectrum, the better ”
条件:起因菌が判明 or 推定できる
起因菌
感染症では必ず
三本柱を意識する
感染臓器
標
準
的
治
療
期
間
・CRP陰性化
・画像の改善
だけでは決まらない
患者背景
Clin Infect Dis 2011; 52: 1232
より引用改変
三本柱が揃わないと治療方針が決め辛い
感染臓器
感染臓器からのアプローチ
VCM
起因菌
例) カテーテル感染 ➡ ブドウ球菌(MRSA, MR-CNS)を外さない!
胆道系感染 ➡ グラム陰性腸内細菌±嫌気性菌±腸球菌 をカバー
CTRX
感染臓器
患者背景
しかし、どちらかが欠けることがしばしば
CMZ
SBT/ABPC
患者背景
感染臓器からのアプローチ
例) 好中球減少 ➡ 緑膿菌を外さない!
透析患者 ➡ MRSAの高リスク
口腔内不衛生 ➡ 嫌気性菌
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2016/7/19
抗菌薬投与量・院内感受性率・
抗菌薬マニュアル・感染症治療ガイド・・・等々
PCからアクセスできます!
起因菌・感受性判明までの2つの治療戦略 広域
状態が悪い場合:de-escalation
➡広域の抗菌薬でスタート
➡感受性に応じて狭域の抗菌薬にチェンジ
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狭域
ICU領域ではde-escalation。
しかし、NHCAP等では・・・
状態が安定している場合:escalation
『ガイドライン集●●●●』
➡ 感染症治療ガイド2014(案)
私見
➡狭域~中程度スペクトラムの抗菌薬でスタート
➡感受性や効果が不良なら抗菌薬のスペトラムを広げる
広域抗菌薬の問題点
①広域から開始するde-escalationは最低目標!
②重症でも可能な限り初期にfocusと起因菌を推定する努力を!
③塗抹(グラム染色) ➡ 菌名 ➡ 感受性が判明する度に最適化!
(Day1~2)
(Day2~3)
(Day3∼4)
広域抗菌薬の問題点①
• 全ての菌に効くわけではない
• 長期に使用すると必ず菌交代
カルバペネムが無効な重要な菌
MRSA
MR-CNS
カルバペネム耐性腸内細菌(CRE)
E.Faecium
S.maltophilia
レジオネラ肺炎
マイコプラズマ肺炎
クラミジア
C.difficile
真菌
結核
ニューモシスチス肺炎
(PCP)
淋菌
非結核性抗酸菌
(NTM)
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菌交代に難渋する誤嚥性肺炎
NHCAP診療ガイドライン‘12では・・・
• 広域抗菌薬を使用して再度誤嚥すると・・・
➡ 耐性化した緑膿菌・MRSA・Candidaを検出
問題点が
多過ぎる
NHCAPガイドの問題点
広域抗菌薬の問題点②
 喀痰からの検出菌で抽出されたリスク因子
 検出菌 ≠ 起因菌
 実際には緑膿菌やMRSAをカバーせずとも多くは治癒
• 必ず耐性が獲得される
• 使用量が多い程、耐性化は進む
 口腔内不衛生(-) ➡ CTM, CTRX 等

〃
(+) ➡ SBT/ABPC, CLDM± CTM or CTRX 等
 効果不十分+塗抹・培養で耐性菌優位
➡ 耐性菌カバーにescalation
耐性菌の歴史
新規抗菌薬は開発され難い!
理由
当然キュビシン®耐性も
海外では報告済み
①経口薬と比較して、
使用期間が短く
売り上げが伸びない
②使用が制限される
③直ぐに耐性化してしまう
↓
企業にメリットが少ない
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耐性化の指標:緑膿菌の感受性
緑膿菌耐性率
(%) 30
使用制限による耐性率低下(小倉記念HP)
感染症誌 2008
20
■IPM/CS
■CPFX
■CAZ
10
AUD
全国的には回復傾向らしい・・・
0
← 制限前 → ←―――――――――― 制限後 ――――――――――→
■カルバペネム
■セフェム
2002
抗緑膿菌薬使用による耐性増加リスク
2003
2004
2005
2006
当院における抗緑膿菌薬の感受性率
(%)
Antimicrob Agents Chemother 1999
100
97
耐性増加リスク
95
CAZ
0.8倍
90
使用薬
PIPC
5.2倍
85
CPFX
9.2倍
80
IPM/CS
44.0倍
95
84
83
2011
背景にあるβラクタム薬の使用量(AUD)
■2012年度
■2013年度
CEZ
CMZ
CTM
CAZ
CTRX
CTX
CFPM
CZOP
ABPC
PCG
PIPC
BIPM
DRPM
IPM/CS
MEPM
PAPM
S/A
S/C
T/P
2012
CAZ
2013
CZOP
2014
CFPM
IPM/CS
MEPM
DRPM
T/P
S/C
2015
(年)
 頻用されている
MEPM・T/P
+IPM/CS・S/C
の4種類が低下
 CAZ・DRPMは
94%と高率を維持
適正使用のコツは
以下の抗緑膿菌薬を極力使用しない!
抗緑膿菌活性のある抗菌薬
■2014年度
■2015年度
94
92
90
カルバペネム
:83∼94%
ゾシン®
(T/P)
:92%
ニューキノロン 第4世代セフェム
:81~87%
:91~94%
ワイスタール®
(C/S)
:84%
ピペラシリン®
(PIPC)
:89%
セフタジジム®
アミノグリコシド
(CAZ)
:79~99%
:94%
当院・平成26年度上半期データ
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2016/7/19
緑膿菌の特徴から見た治療対象例
実際、緑膿菌が起因菌になることは多くない!
血培(+)の主要な菌種
 感染症が成立するには以下の条件が必要
①皮膚、粘膜などの機械的バリアの破綻
②好中球減少や低γ-グロブリンなどの免疫能の低下
③広域抗菌薬の投与による腸内細菌叢の攪乱
例)血液内科/リウマチ科等の免疫不全者
COPD/IP等の肺構造の破綻・気切後・長期尿カテ留置
etc.
緑膿菌カバーを外すには
カバーする菌)グラム陰性腸内細菌+嫌気性菌
【単剤治療】
静注)SBT/ABPC,CMZ
スルバシリン®
内服)CVA/AMPC
セフメタゾール®
オーグメンチン®(+アモキシシリン®)
MRSA/MSSA
:51件
連鎖球菌/腸球菌
:44件
CNS
:61件
腸内細菌群
:115件
緑膿菌
:6件
嫌気性菌
:26件
・コンタミ
or
カテ感染
・免疫不全
・IP/COPD
カンジダ ・術後 or
:4件 カテ感染
/総計327件 当院・平成25年度データ
広域抗菌薬の問題点③
• 広域なほど正常細菌叢(腸内・皮膚)が乱れる
• 細菌叢=バリアが破綻し新たな感染症
• 腸内細菌が減るとVit.K欠乏も
【併用療法】
グラム陰性菌 ➡
第1~3世代セフェム系,ST合剤 (,キノロン)
嫌気性菌
MNZ, CLDM
➡
フラジール/アネメトロ®
ダラシン/クリダマシン®
腸内細菌叢の変化が関連する疾患
Am J Gastroenterol 2013; 108: 177-185
消化器疾患
非消化器疾患
便秘(特発性) 自閉症 慢性疲労症候群
線維筋痛症
炎症性腸疾患
糖尿病
インスリン抵抗性
メタボリック症候群
過敏性腸症候群
喘息
パーキンソン病
多発性硬化症
胆石症
関節炎
虚血性心疾患
自己免疫疾患
結腸・直腸癌
花粉症
アトピー性疾患
高コレステロール血症
肝性脳症
湿疹
腎結石(蓚酸Ca)
脂肪肝
家族性地中海熱 気分障害
肥満
胃癌
ミオクローヌス・ジストニア症候群
胃リンパ腫
特発性血小板減少性紫斑病
正常細菌叢の乱れが原因?
:抗菌薬投与で増える感染症
 若年女性の無症候性細菌尿を治療すると・・・
➡ 大腸菌の分離が増え、症候性の尿路感染症が有意に増加!
⇔ 無治療群では大腸菌↓・腸球菌↑で症候性感染症は少ない!
Clin Infect Dis 2012
 単純性膀胱炎を長期間治療(7日以上)すると再発が増加!
尿路系に限った話 ⁇
JAMA internal medicine 2013
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2016/7/19
私見
抗菌薬だけじゃない!感染症治療のトライアングル
病原菌
④短期的には広域抗菌薬は有効
毒素
⑤中~長期的には予後不良因子=新たな耐性菌感染症
⑥初期からの標的治療、早期のde-escalationが長期予後を改善
⑦コツは抗緑膿菌薬を使用しない
⑧免疫不全者, 重症患者, 長期戦が見込まれる症例こそ適正使用を
免疫力
患者
膿瘍
耐性化
shock
(➡時々escalation)
バイオフィルム
外科的処置
抗菌薬
bacterial
translocation 経腸栄養 ワクチン
正常細菌叢
probiotics
医師
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