特集 観光と連携した沖縄農林水産業・農山漁村の活性化

特集
観光と連携した沖縄農林水産業・農山漁村の活性化
- 9 -
写真:観光と連携した様々な農山漁村活性化の様子
伊江島からのフェリーの見送り
東村における漁業体験
今帰仁村におけるあいあいファームで
の農業体験
読谷村における漁業体験
大宜味村におけるきゆな牧場でのふれ
今帰仁村におけるあいあいファームで
あい体験
のソーセージづくり体験
大宜味村での農泊、農業体験中の修学 御菓子御殿
読谷本店
旅行生
- 10 -
今帰仁村のクワンソウイメージガール
第1節
沖縄の観光をめぐる実態
沖縄 は、離島 が点 在する島嶼性等により形成され
た豊か な自然環 境や 琉球王朝時代から培われてきた
独自の 歴史・文 化な どの特色を有し、また、アジア
の主要 都市に航 空機 によりおおむね4∼5時間で到
達可能 という地 理的 優位性もあり、観光地として大
きなポテンシャルを有しています。
この ような中 、近 年、沖縄を訪れる観光客は3年
連続で 過去最高 を記 録するなど年々増加し、また、
観光収 入も2年 連続 で過去最高額を更新しており、
沖縄経 済におい て、 観光は今や欠かすことのできな
い重要な産業となっております。
東アジアの中心に位置する沖縄
資料:沖縄県アジア経済戦略構想(平成27年策定)
(1)沖縄観光の概況
① 入域観光客数
平成26年度の入域観光客数及び観光収入は、それぞれ717万人、5,342億円で
あり、平成27年度の入域観光客数は、3年連続で過去最高となる794万人(対前
年度比約11%増)で、うち外国人観光客は約5分の1を占める167万人(同69%
増)と、初めて100万人を突破しました(図1-1)。
また、沖縄の観光拠点である沖縄美ら海水族館を有する海洋博公園及び首里城
公園(国営沖縄記念公園)においても、入園者数が平成26年度で約687万人、平成
27年度で約728万人と、3年連続過去最高を記録しました。
こうした入域観光客数増加の要因として、円安や格安航空会社(LCC)を中心
とした国際航空路線の拡充やクルーズ船の寄港回数の増加、外国人ビザの要件緩
和、那覇空港新国際線旅客ターミナル及び那覇港旅客船ターミナルビルの供用開
始などが考えられます。
今後も、航空路線の拡充やクルーズ船ターミナルの整備、那覇空港の滑走路増
設などを背景に、引き続き外国人観光客をはじめとして、沖縄への入域観光客数
は好調に推移する見込みです。また、沖縄は近年外国人観光客の増加率が顕著で
あり、地域別に見ると、アジア諸国から訪れる外国人観光客が最も多い(約8割)
ことが特徴といえます(図1-2、1-3)。
図1-1
資料:沖縄県観光政策課作成
- 11 -
図 1 - 3 平 成 2 7年 度 地 方 ブ ロ ッ ク 別 外 国 人 延 べ 宿 泊 者 の
図 1 - 2 平 成 2 7年 度 外 国 人 観 光 客 の 伸 び 率
資料:平成28年観光白書
国・地域別構成比
資料:平成28年観光白書
②
観光収入
平成26年度の県内の観光収入については、観光客一人当たり消費額の増加、観
光客数の大幅な増加により、2年連続で過去最高を更新し、5,342億円(対前年
度比19.3%増)となりました(図1-1)。
観光客一人当たりの消費額は、外国人観光客が3万円余り高くなっており、
「爆
買い」に見られるような外国人観光客の活発な消費は、沖縄経済の活性化に大き
く貢献しています(図1-4)。
また 、一人当た りの消費 額を項目別に見る と、「飲食 費」が22.6%、「土産 ・
買物費」が22.0%となっており、宿泊費の次に高く、大きな割合であるといえま
す(図1-5)。
今後は、宿泊サービスだけでなく、飲食や土産についての消費を維持・増加さ
せることで、安定的な観光収入による観光産業の持続的な発展を推進し、沖縄経
済を活性化させていくことが重要です。
図 1 - 4 県外客・外国人客一人当たり消費額 推 移
図 1 - 5 平 成 26年 度 観 光 客 一 人 当 た り 消 費 額 内 訳
(千円)
110
106
100
90
80
70
60
50
84
88
97
88
80
72
73
72
73
73
72
67
66
83
71
71
83
79
69
68
75
68 68
67 67
73
県外客一人当たり消費額
外国人客一人当たり消費額(空路のみ)
観光客一人当たり消費額
40
H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 (年度)
資料:沖縄県「平成26年版観光要覧」
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(2)観光客の食に対する意識
沖縄県における観光需要を取り込むための要素として、海や歴史的建造物など
の観光資源が代表的ですが、以下に挙げる各種調査結果を踏まえると、沖縄の地
域食材や伝統料理を目的として国内外から訪れる観光客も一定数存在しており、
観光客の一層の誘致のためには、「食」も重要な要素の一つとして考慮する必要
があるといえます。
①
◆
沖縄の魅力度
地域ブランドランキングでは、都道府県別で全国4位、市町村別では、那覇
市が13位、石垣市が15位、沖縄市が17位であり、ブランド力は高いといえる(地
域ブランド総研「地域ブランド調査2015」)。
◆ 平成26年度中に沖縄に訪れた観光客において、旅行先に選んだ理由は、「食
・特産品に興味があったから」の割合が全国1位、旅行先評価では、「魅力の
ある特産品や土産物が多かった」の割合が全国1位など、沖縄への観光客の食
に関する評価・関心は、全国と比較しても高い(図1-6)。
図1-6
テーマ別魅力度ランキング
(旅行先として選んだ理由)
そこならではの食・特産品に興味があったから
1位
沖縄県
魅力のある特産品や土産物が多かった
1位
沖縄県
地元の人のホスピタリティを感じた
1位
沖縄県
地元ならではの美味しい食べ物が多かった
5位
沖縄県
(旅行先の評価)
資料:株式会社リクルートライフスタイル「じゃらん宿泊旅行調査2015」
➁
◆
観光客の満足度
沖 縄を訪れる 国内観光客の「食 事」、「土産品」の 満足度は 、他の 項目に 比
べ、増加傾向にあるものの、「海の美しさ」や「景観」の満足度より低い状況
にある(図1-7)。
◆ 一方、外国人観光客については、「おもてなし」の満足度がかなり高く(71
%)、ま た、「食事施設」、「食事のメニュー・味」の満足度は 前年か ら大幅増
であ り、「土産品 」の満 足度も 高い状況であ るが、「 外国語 対応能力」の 満足
度はかなり低い(21%)(図1-8)。
図1-7 国内観光客の満足度
図1-8 外国人観光客(空路)の満足度
51.2
54.0
53.7
旅行全体
食事施設
45.0
45.6
45.1
宿泊施設
44.7
39.5
42.3
食事
70.9
68.1
おもてなし
H26年度
観光施設
H25年度
宿泊施設
H24年度
交通機関
土産品
43.9
20.0
40.0
60.0
39.4
35.1
33.2
29.8
両替の利便性
26.5
19.3
WiFi
資料:沖縄県「観光統計実態調査」に基づき沖縄総合事務局作成
(%)
20.5
18.6
0.0
80.0
H25年度
49.8
40.7
外国語対応能力
0.0
H26年度
56.1
53.7
案内標識のわかりやすさ
55.4
59.3
景観
60.8
45.9
クレジットカード・銀聯カード対応
65.6
66.1
63.1
51.4
土産品
58.0
海の美しさ
65.2
47.8
食事のメニュー・味
37.0
34.9
31.0
66.5
50.4
20.0
40.0
60.0
80.0
資料:沖縄県「外国人観光客実態調査」に基づき沖縄総合事務局作成
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(%)
③
◆
訪日外国人旅行客(インバウンド)の状況
沖縄においては、外国人延べ宿泊者数が全国5位、外国人比率が全国4位と、
東京、大阪、京都という有数の外国人訪日地域に次いで台頭している(図1-
9)。
◆ さらに、外国人観光客の沖縄旅行の活動では、「沖縄料理を楽しむ」が約7
割と、自然観光やショッピングに次いで高い人気を有している(図1-10)。
図1-9
外国人延べ宿泊者数(左)と宿泊者全体のうちの外国人比率(右)
1位
東京都
1,778万人
1位
大阪府
30.2%
2位
大阪府
934万人
2位
東京都
29.9%
3位
北海道
548万人
3位
京都府
25.7%
4位
京都府
481万人
4位
沖縄県
18.8%
5位
沖縄県
392万人
5位
北海道
17.0%
資料:観光庁「宿泊旅行統計調査(平成27年・速報値)」に基づき沖縄総合事務局作成
図1-10 外国人観光客の沖縄での活動内容
(複数回答)
(%)
資料:「平成26年度外国人観光客実態調査報告書」に基づき沖縄総合事務局作成
(3)展望
これまでの分析を踏まえると、沖縄における入域観光客と観光収入は近年好調
に推移しており、今後の沖縄における観光産業の成長を持続させるためにも、農
林水産業・食品関連産業が観光産業と連携し、急増するインバウンドをターゲッ
トとした県産食材の周知・浸透、6次産業化による商品の高付加価値化、外国語
対応などの販売体制の強化などを推進することが重要となっています。
また、第5次沖縄県観光振興基本計画では、平成33年度に観光収入1兆円を達
成 する ことを目標 としており(第3 節参照 )、この目標額の達成に は、1,000万
人まで観光客を増やし、一人当たり10万円を県内で消費してもらう必要がありま
す。しかしながら、現在まで、観光客一人当たり消費額はこの目標を達成するに
至っておらず、この状況を打破するためには、潜在性のある魅力的な観光資源を
活用していく必要があります。
内閣府が全国各地から抽出した「農山漁村に関する世論調査」(平成26年6月
調査)では、非農山漁村地域在住と認識・回答している人々の3割が、農山漁村
地域に定住してみたいと答えており、その割合は平成17年度の同調査時の2割に
比べて、都市住民の農山漁村への関心は高くなっていることを示しています。つ
まり、魅力的な観光資源としての農山漁村と連携した観光産業の成長も期待でき
ます。
次節では、農林水産業・農山漁村と観光の連携の取組事例を紹介します。
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<コラム:沖縄へのクルーズ船寄港の経済効果>
平成27年の県内へのクルーズ船の寄港は219回(前年比約35%増)でした
が、平成28年は新たに久米島や中城港湾へのクルーズ船の寄港も予定されて
おり、過去最多となる457回(同109%増)と大きく増加する見込みです。
また、平成27年8月には、アジアへ寄港するクルーズ船の中で最大となる
「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」(16万トン、4,905人乗り)が那覇港に初
寄港しました(平成28年も7回寄港予定)。乗客へのアンケート調査による
と、平均消費金額が13.8万円/人、乗客全体では約6.35億円/寄港と推計され、
大きな経済効果をもたらしていることが分かります。
沖縄総合事務局(開発建設部)では、こうした観光産業に大きく貢献して
いるクルーズ船の寄港増や大型化に対応するため、旅客船ターミナルの整備
や、クルーズ客の利便性を向上させるため、市街地等へのアクセス道路の整
備を推進しています。
那覇クルーズターミナルビル
<コラム:那覇空港の滑走路増設事業>
現在、那覇空港の就航路線については、県外との空港との間に22路線、離
島との間に6路線が就航しており、今後も増加が見込まれています。
こうした那覇空港の航空需要に対応するため、沖縄総合事務局(開発建設
部)では、平成32年3月末に供用開始を目指し、第二滑走路を建設(平成26
年1月に工事着手)を進めております。
○那覇空港の就航路線
○ 空港整備事業の概要( 総事業費:約1,993億円)
資料:沖縄総合事務局開発建設部作成
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第2節
沖縄県内における農山漁村と観光の連携の動き
近年、インバウンドの拡大に伴い、地方を訪れる外国人旅行者も増加してきまし
た。特に、沖縄では、クルーズ船の寄港回数の増加等に伴い、インバウンドが飛躍
的に増加しています。こうしたインバウンドの観光需要を取り込むためにも、観光
資源の豊富な農山漁村において、その受入体制を構築するなどの連携が始まってい
ます。ここでは、沖縄県における農山漁村と観光の様々な連携事例を紹介します。
表1-3 事例一覧
No.
会社名、農場
1 きゆな牧場
住 所
取組分野
大宜味村 酪農体験
(酪農教育ファー
取
組
日帰りの乳搾り、チーズづくり等の
体験のほか、宿泊型の酪農体験も展開。
ム)
2 NPO法人おおぎ 大宜味村 グリーン・ツ アジア諸国等からのインバウンド
みまるごとツーリ
ーリズム
の受入れを実施。
民泊
農家民泊の県内先駆者。
ズム協会
3 伊江観光協会
伊江村
修学旅行生を中心に現在年間
5万人を受入れ。
4 あいあいファーム 今帰仁村 農業・調理体 廃校を活用して、農家レストラ
験
ン、宿泊施設、農業加工体験等
を提供する教育ファーム。
5 今帰仁ざまみファ 今帰仁村 花摘み体験
ーム
地域資源クワンソウを用いた
観光産業との連携による花摘み
ツアーを実施。
6 読谷村漁業協同組合 読谷村
漁業体験
定置網漁船に乗り、網の引上げ
作業を体験。漁港ではセリ見学
もできるほか、海鮮食堂も展開。
7 御菓子御殿
読谷村
農商工連携
地域資源紅芋を使って沖縄土産の
代表格に。ハラル対応商品も展開。
8 食のかけはしカン うるま市 6次産業化
パニー
9 伊盛牧場
国産原材料を活用した総菜等の
製造・販売
石垣市
6次産業化
自社生産生乳と地元の果実等を
利用したジェラート等の製造・
販売を実施。
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<事例1:国際色豊かな酪農体験牧場:きゆな牧場(大宜味村)>
【概説】
畜舎の様子
きゆな牧場は、牛、ヤギ、うさぎ等を飼育
しており、動物とのふれあいを通じて「食やい
のちの大切さ」を子どもたちに伝えている酪農
体験牧場です。大宜味村の山の上にある牧場は、
青い海と満天の星が見える立地も魅力の一つで
す。
【取組内容】
○体験等についての受入れの拡大
牧場は、外国人研修生も受け入れているこ
とから、地元を中心とする職場体験の生徒た
ちにとって国際・文化交流の場ともなってお
り、良い刺激になっています。
また、修学旅行生の受入れも行っており、宿
泊も可能です。
○観光サイトへの掲載
英語表記の観光サイト等に牧場が載ってお
り、それを見た外国人観光客が訪れることもあ
ります。彼らには、日本の酪農を体験できるこ
とが好評とのことです。
ヤギと乳牛
牧場でのふれあい体験
<事例2:グリーンツーリズムの取組:
NPO法人おおぎみまるごとツーリズム協会(大宜味村)>
【概説】
そば作りの講習
大宜味村 は、「やんばる」と呼ばれる沖
縄本島の北部に位置し、山・川・海の豊か
な自然環境、地域伝統文化等に恵まれ、平
成5年には健康な高齢者の割合が日本で最
も高い地域として「長寿の村日本一」を宣
言し、沖縄県外や海外からも多くの注目を
集めている地域です。
【取組内容】
○グリーンツーリズム
修学旅行生の農業体験
NPO法 人 お お ぎ み まる ご と ツ ーリ ズム 協
会は、大宜味村の特徴である健康長寿と緑
豊かな自然環境を活かし、自然環境の保全・
育成を目指した体験滞在型交流ツーリズムに
取り組んでいます。
平成21年度から、大宜味村内において、農
家民泊の取組を実施し、大宜味名産品の作成
や農作業等の体験プログラムを行っており、
平成26年度には約2,650名、平成27年度 には
約3,280名の修学旅行生等を受け入れています。
また、近年は、「長寿の里」「地域資源を活かしたグリーン・ツーリズム」
等の影響により、台湾などのアジア諸国からの外国人観光者が増えています。
- 17 -
<事例3:農家民泊の県内の先駆者:伊江島観光協会(伊江村)>
【概説】
伊江村は、沖縄本島の本部半島から北
フェリーの見送り
西 約 9 kmの 海 上 に 位 置 す る 自 然 豊 か な 一
島 一村 の農漁 村で す 。 本部港か ら フェ リー
で、約30分で訪れることができます。
【取組内容】
○農家民泊
伊江 村での 修学 旅 行 は県内の 小 学生 を中
心 とし た日帰 り旅 行 型 であり、 島 への 経済
的 効果 が乏し かっ た こ とから、 島 内宿 泊施
設の利用拡大を目的に、旅行会社の協力を得
て平 成15年度に、 県外 4校の高校生約360
人を対象に、試験的に民泊の取組を開始し
ました。
実施後、学校側からの評価が高く、地域経
済への波及効果も高かったことから、平成16
年度から本格的に民泊事業に取り組むことと
なりました。
現在、民泊の受入は、伊江島観光協会と(株)
こころの2者で行っており、平成27年度の受
入人数は6万人を超え、受入農家数は約200
件と、伊江村経済に大きく寄与しています。
加工品の製造体験
<事例4:宿泊施設・レストランもある教育ファーム:
(株)あいあいファーム(今帰仁村)>
【概説】
廃校を改装した施設
(株)あいあいファームは、今帰仁村の廃
校となった旧湧川小学校の校舎を改装したレス
トランや宿泊施設、工房などを農場で運営して
いる農業生産法人です。無農薬・有機栽培を中
心とした農場では農業体験が、工房では沖縄の
食文化にこだわった手作り体験が楽しめます。
ソーセージ作り体験
【取組内容】
○農業体験
天然酵母パンや、無添加島豆腐、ソーセージ
等の 手作り体験に、平成27年は約5,000人が訪
れました。宿泊者は年間約15,000人で、元小学
校の広い施設を活用して、観光客だけでなく団
体研修等も受入れています。
レストランと地域食材を使った料理
○外国人対応
外国人観光客は、全利用者の約5%を占め、
特 に多 い夏場には月100名ほ ど の外国人客がレ
ストランを訪れます。インバウンド(訪日外国
人)の取り込みに向け、平成27年に台湾への営
業を開始。英語、日本語の話せる台湾人スタッ
フの求人のほか、現地旅行社と提携した島豆腐
作り体験を含むツアーを企画中です。
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<事例5:バスツアーで花摘み体験:今帰仁ざまみファーム(今帰仁村)>
【概説】
(株)今帰仁ざまみファームは、沖縄の伝統
ツアー客の花摘み体験
野菜「クワンソウ」を生産、加工、販売等し
ている農業生産法人です。
【取組内容】
○花摘み体験ツアー
沖縄の伝統的島野菜であるクワンソウ(ア
キノワスレナグサ)の開花期(9月∼11月)
には、県内の旅行会社と連携し、花摘み体験
バスツアーを実施しています。開花が最盛期
の週末には1日に250名のツアー客が訪れ
ることもあり、ツアー客にはクワンソウの加
工食品などが人気です。
○ポニーとのふれあい体験
今帰仁ざまみファームでは、6頭のポニー
を飼育しています。子供連れのお客様に喜ん
でいただけるよう、性格のおとなしいポニー
とのふれあい体験や、馬車を引かせてクワン
ソウ畑の見学などの企画を検討しています。
飼育されているポニー
<事例6:県内最大の定置網で漁業体験:読谷村漁業協同組合(読谷村)>
【概説】
都屋漁港と定置網漁船
読谷村漁協は、県内最大規模の定置網漁を
行っている漁協です。拠点となる都屋漁港には、
直売所の「いゆの店」と海人食堂があり、多く
の人でにぎわっています。
【取組内容】
○漁業体験
ウミガメやマンタだけでなく、ジンベイザメ
もかかることのある大型定置網漁が体験でき
ます。漁業体験の後は、水揚げされたばかり
の魚を船上でさばいて食べさせてくれるほか、
魚のセリの様子も見学できます。平成26年度に
は約1,100名が、定置網漁を体験しました。
○直売所「いゆの店」及び海人食堂
都屋漁港にはセリで落とした鮮魚を中心に販
売する「いゆの店」と、魚汁や海鮮丼、魚のて
んぷら等の食事を提供する海人食堂がありま
す。
平成26年度の来店者は延べ10万人で、うち半
分以上が外国人観光客です。海外からの観光客
には、美味しい海の幸はもちろん、英語と写真
を使った分かりやすいメニューと、伝票を利用
した注文システムが、親しみやすいと評判を呼
んでいます。
- 19 -
漁業体験の様子
いゆの店と人気の海鮮丼
<事例7:観光と一体となった集客:御菓子御殿(読谷村)>
【概況】
(株)御菓子御殿は、地域資源(紅芋)を
読谷本店
活用した農商工連携により、今では沖縄土産
の代表格である「紅いもタルト」を製造して
いるお菓子メーカーです。
【取組内容】
○観光工場の整備
県内にお菓子の製造ラインを併設した観光
工場兼大型土産物販売店を整備しており、お
菓子の製造工程を見学できるだけでなく、景
色・建物などすべてを沖縄にこだわって作ら
れた新しい観光スポットとして観光客の集客
と結びついた販路拡大を展開しています。
○ハラル対応
26年3月には、国際通り松尾店での製造工
程については沖縄県内菓子業界初のハラル認
証を取得しました。これにより、県内に多く
訪れるイスラム諸国からのインバウンド向け
販売が可能となり、県内の観光振興に大きく
貢献しています。
また、香港の百貨店においても通年での安
定輸出を実現しており、引き続き香港での、
更には国内外のムスリム向けに、沖縄の魅力
発信、新需要の喚起を目指しています。
紅いもタルトとハラル認証マー ク
<事例8:国産原材料を活用した総菜等の製造・販売:
食のかけはしカンパニー(うるま市)>
【概況】
(株)食のかけはしカンパニーは、全国
の一次産品を原料に加工食品を製造、国内
のホテル等へ販売しています。
【取組内容】
○和食をテーマにした総菜等の製造
和食(五目豆、ひじきの煮物及び肉じゃが等)を
テーマにした総菜、食肉加工品(ソーセージ及び
ハム 等 ) を製 造し 、そ れ ぞれの 商品に 関し 、販売
先のニーズや輸送期間に応じた包装形態(個包
装、真空包装、常温、冷蔵等)で配送を行うこと
としています。
将来的には、デザート(プリン、ゼリー等)の製造
も予定しています。
○販路拡大
製造された商品は、京都の百貨店や名古屋の
機内食メーカーに出荷されており、今後は、国内
のホテルや飲食店などのインバウンドに向けた販
路拡大 のほか、沖縄県内小売 店向けの直売、関
東圏のカタログ販売事業者等への卸売を強化す
ることとしています。
- 20 -
本社工場
和食惣菜
<事例9:酪農を利用した6次産業化の実践:伊盛牧場(石垣市)>
【概況】
飼養されている乳牛
伊盛牧場は、草地面積13haと恵まれた土地
資 源を活用し、 粗飼料自給率100%で搾 乳牛
60頭を飼養しています。
【取組内容】
○6次産業化の取組
自社生乳と地元の果実等を用いたジェラー
トの製造から加工・販売までを一貫体制で取
り組むとともに、搾乳を終えた高齢牛を利用
した牛肉やハンバーグの製造販売、新商品の
開発・高付加価値化に取り組んでいます。
○「ミルミル本舗」の整備
石垣市内の東シナ海を望む高台に、展望施
設も設置した加工・販売店「ミルミル本舗」
を整備し、その立地の良さから癒やしの空間
を提供するとともに、観光客を中心に売上げ
を拡大しています。さらに、新石垣空港内に
2号店を出店し販路の拡大、雇用の創出など
に取り組んでいます。
- 21 -
自家製ジェラート
第3節
魅力ある沖縄農林水産業・農山漁村に向けて
ここまで紹介してきたとおり、好調に伸びているインバウンドを農林水産業・農
山漁村に取り込み、農林水産業・農山漁村と観光が連携することで、双方のもつ能
力を最大限発揮できる体制づくりを進め、農村地域の更なる活性化を図っていくこ
とが重要です。
また、従来の「観光」の枠に留まらず、伝統島野菜・料理の提供や地域資源を活
用した6次産業化による土産品の開発、新たな観光・宿泊スタイルとしての農家民
泊、グリーンツーリズムの展開など、分野の枠を超えた新たなスタイルや価値を生
み出していくことも重要です。
内閣府沖縄総合事務局(以下「事務局」という。)では、沖縄の観光振興を推進
するため、平成17年に「沖縄総合事務局観光振興推進本部」(本部長:沖縄総合事
務局長)を設置し、沖縄総合事務局の全ての部が一体となって、観光土産品や県産
品の魅力向上、地域の特性や地域の資源を活かした「まちづくり」、沖縄美ら海水
族館や首里城などの整備、港湾や空港、道路や道の駅の整備など、沖縄の観光に貢
献する多くの施策や事業に取り組んできました。
以下、最近の国及び県の主な取組を紹介します。
○
沖縄におけるインバウンドの実態調査
平成28年度において、事務局としては、農産物直売所等に来訪するインバウン
ドなどを対象とした、農林水産物や農家民宿等についてのヒアリングやアンケー
トなどを実施し、その結果からニーズ等を把握して、県産品の消費拡大などの可
能性について調査・分析を行います。
○
産地直売所による観光連携
外国人をはじめとした旅行者が、本場の食や土産品を求めて気軽に訪れること
ができる農産物直売所(JAの直売所や道の駅)の整備を支援しています。
農産物直売所では、そこでしか買えない、新鮮な地元特産品等の販売を通して、
地域の個性・魅力を活かし、地産地消や観光の面で、地域活性化に貢献しており、
今後、ますますその役割が期待されています。
また、農産物直売所とは、生産者(農家)の方々が自ら販売営業する店舗のこ
とであり、消費者にとっては、「顔が見える関係」で安心・安全で新鮮な農林水
産物や、それらの加工品、郷土料理などを安価に入手でき、また、地元の方々と
交流して直に野菜の特徴や調理法などの情報をやり取りできることも魅力のひと
つです。一方、生産者にとっても、自らの生産状況に応じた量を自ら設定した価
格で販売でき、また、加工・販売などの6次産業化による付加価値向上の取組も
展開しやすいなど、高齢者農家の活動の場や、農家の育成、所得向上への寄与な
ど、様々なメリットがあります。
沖縄県内の産地直売所
※【おきなわ
しま食ネットHP(http://market.o
kireci.net/)】
※「未来ぎのざ」は平成26年10月に道の駅に登録され、
道の駅「ぎのざ」と改名。
※糸満 うまん ちゅ市 場、糸 満漁協 お魚セ ンターは、道
の駅「いとまん」内に設置。
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(出典)http://market.okireci.net/(「おきなわしま食ネット」HPより)
○
農林水産省と観光庁による農観連携の取組
「和食」のユネスコ無形文化遺産登録や、2020年オリンピック・パラリンピック
競技大会の東京開催決定を機に、日本への関心の高まりや訪日外国人旅行者の増加
が見込まれる中、里山・里海など美しい日本の農山漁村の景観や農山漁村に息づく
暮らし、地域ならではの「食」など、農山漁村のもつ多様な魅力で国内外の人を惹
きつけることが重要です。
このため、農林水産省と観光庁では、農林漁業分野と観光分野とが連携する農観
連携を推進するため、平成26年1月に「農観連携の推進協定」を締結しました。両
分野の連携による相乗効果により、我が国の農山漁村が有する魅力で国内外の観光
客を惹きつけ、活力ある農山漁村の構築や各地域及び日本ブランドの確立を目指し、
観光立国の実現を図るものとし、以下の課題事項について取り組んでいます。
【当面の課題】
1. 農林漁業体験等のグリーン・ツーリズムと他の観光の組合せによる、新
たな観光需要の開拓
2. 森林浴やアウトドアスポーツ等、森林を活用した観光の振興
3. 国産農林水産物・食品、木工品等を活用した観光地域の魅力の向上
4. 地域 の多様な食文化、 世界農業遺産(GIAHS)、歴史的木造建築物等、
我が国の農山漁村の有する地域資源についての発信の強化
5. 訪日外国人旅行者を農山漁村へ呼び込むための地域資源の発掘・磨き上
げ、受入環境整備やプロモーションの推進
6. 農山漁村を訪問・滞在する旅行者についての調査・分析に基づく施策の
検討
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○
沖縄観光推進ロードマップによる誘客戦略
沖縄県では、第5次沖縄県観光振興基本計画において、平成33年度の観光収入
1兆円、入域観光客数1,000万人(外国人200万人)を目標に掲げています。この
実現に向け、年度毎の市場別誘客目標や、受入の玄関口となる各空港・港湾整備
や県内移動のための二次交通整備、宿泊機能や観光体験機能等の拡充・強化、人
材育成・確保など、受入体制の強化を戦略的に図っていくための「沖縄観光推進
ロードマップ」を策定しており、これらに基づき、官民の関係機関等と一体とな
って中長期的・段階的に観光施策を展開していくこととしています。
出
資
料
資 料 : 沖縄 観 光 推 進 ロード マ ッ プ ( 平成28年3 月 改 訂)
○
沖縄県アジア経済戦略構想における観光関連重点戦略
沖縄県は、沖縄振興特別措置法に基づき、県民が描く将来像としての「沖縄21
世紀ビジョン」の実現に向けた方向性を示す「沖縄21世紀ビジョン基本計画(沖
縄 振興 計画)」(計画期間:平成24年∼平 成33年)を策定しており、さ らに、 そ
れに基づく施策等を補完・強化・促進する戦略として、平成27年に「沖縄県アジ
ア経済戦略構想」を策定しました。それらの中で、世界水準の観光リゾート地の
実現を重点戦略として挙げ、沖縄の国際的なブランド化や増大するクルーズ船の
寄港に対応するための港湾整備等に取り組むこととしています。平成28年3月に
は、当該戦略の具体的な実施計画としての「沖縄県アジア経済戦略構想推進計画」
も策定し、更なる取組の強化を図っています。
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<コラム:県内産地直売所の動き>
○
糸満ファーマーズマーケット「うまんちゅ市場」
道の駅「いとまん」内にある施設であり、
その日採れたばかりの新鮮な野菜や果物を生
産者自身が持ち込み、直売であることから、
安い値段を設定するとともに、生産者名を明
記し、消費者に対し安心感を与えている。沖
縄ならではの商品である作りたての温かいゆ
し豆腐やばくだん(たまごを入れたかまぼ
こ)、生もずくなどを多く取りそろえている。
特に、マンゴーなどの少し傷んだものや形が不ぞろいなものが、特売など
により安価となっている場合もある。
○
外国人向けに工夫 英語POP好評
国 際 色豊かなちゃんぷるー文化の まちと して知 られる
沖縄 市 の「ちゃんぷるー市場」では 、休日 は外国 人の親
子連れが100組以上来店するなど、外国人が利用者全体の
5% を 占める。さらに外国人の心を つかみ 、イン バウン
ドを 含 めた掘り起こしを狙うため、 見た目 で違い が分か
りに く い日本特有の葉野菜に英語P OPを 配置し たり、
洋食 向 けにローズマリーなどハーブ 詰め合 わせコ ーナー
を設 置 するといった工夫を展開して いる。 こうし た取組
は全国でも初めてで、外国人に好評である。
○
全国道の駅ランキング「道の駅許田」5位
世界最大の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」が、サイトに投稿
された口コミを基に集計した「行ってよかった! 道の駅ランキング2015」
において、沖縄の道の駅が2つベスト10入りし、口コミには食に関する投稿
が多い。
<ランクインした沖縄「道の駅」の口コミ>
5位:道の駅許田/名護市:沖縄県第1号店の道の駅。
おっぱ牛乳のソフトクリーム、南国特有の果物である「ド
ラゴンフルーツ」、やんばるの物産を買うことができる。
「道の駅許田、・・・沖縄の食が一同に揃っています!私
のお勧めは サーターアンダギー プレーンがお勧め。
今の時期はパインもお目見え。・・・魚の天ぷらも絶対食
べてほしい。・・・おつまみにもおやつにも最高です!」
○ 重点「道の駅」に「ぎのざ」が県内初選定
国土交通省から、地域活性化の拠点となる優れた企画があり、今後の重点
支援で効果的な取組が期待できるものとして、道の駅「ぎのざ」(宜野座村)
が、重点「道の駅」に県内で初選定された。
道 の駅 「ぎのざ」 は、県内8 つ あ る道 の駅
のう ち 、東海岸沿い初の道の駅とし て平成 26
年10月に登録さ れた8 番目の道 の駅で、 宜野
座エ コ農 産物や人材 資源等を活 用 し た食 育・
地産地消活動の促進の取組が評価された。
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