世波艶情仇乃初恋 - Ei Cohen

英 紅炎 作
えほん
艶本
よ は な さ け あ だ の は つ こ い
世波艶情仇乃初恋 淫斎白繚 画
表明
この 物語 は、 パ ーソ ナル コン ピュ ー タ上 で日 本語 ワ ード プロ セッ サー を使 用 して 書か れ、 Adobe
*1
*2
Acrobat を使用して電子的に PDF(Portable Document Format)ファイル形式 で編集され、インター
ネット上で公開することを意図した創作物です。従って、PDF ファイルとして編集されたこの物語は、
広い意味で、一種のソフトウエアと考えられます。
この物語をインターネット上でお読みになるには、お手許のパーソナルコンピュータに Adobe Acrobat
3
Reader* が搭載されている必要があります。
この作品のインターネット上での公開に至るまでには、著述、推敲、校正、編集構成/校正など、多段階
に亙る長い時間と労力と、費用がかけられています。従って、作品の出来不出来の如何によらず、その
ことを念頭に置いてこの物語をお読みください。
なお、この物語をお読みになるに当たっては、以下の事項がご承認頂けていることをご確認ください。
○ 先ず初めに、この物語は、現実の事象とは如何なる関係もなく、単に作者の想像の中で生まれた純然
たる創作であり、その意味で全くの「絵空事」であるということ。従って、現実に実在した(あるい
は実在する)人物または施設に類似する名称等があるとしても、それとは一切関係がなく、時代背景
や地名なども単に物語の背景として利用されているに過ぎないということ。
○ 次ぎに、この物語の中では、現在の一般的に承知されている習俗や習慣と相容れない習俗や習慣が描
かれている場合がありますが、何れも十分研究されていないにしても、史実として我が国の社会の中
に現実として有った(または行われていた − 作者は、今なお残渣として行われていると疑っています
が… − )ことであるということ。
○ 冒頭で述べた理由で、この物語は有償で(ソフトウエアの利用料を支払って)「講読」していただくこ
とをご承認ください。但し、インターネット上で読むことの出来るダイジェストはその限りではあり
ません。「希望購読料」は、物語の巻末の「著者/発行者の情報」で表明されています(何れも些少で
す)。その支払い方法は、別途ご案内いたします。
○ この物語の「講読」に当たっては、次の事項をお守り頂くことをご承認ください。
a) 物語は、児童福祉法が適用されない年齢層が対象であるということ、つまり「二十禁」である
ということ。対象外の人、および性の道徳主義者のアクセスをお断りします。
b) 筆者の事前の承諾なしに、何らかの手段で勝手にファイルをダウンロードしないこと。「講
読」希望の際には、このサイトの「講読申込書」をプリントしてお申込みください。
c) この物語の「講読」に際して、一つの物語につき利用できるのは、一台のコンピュータシステ
ムに限られるということ、従って、許可なくファイルを複製して同時に複数のコンピュータシ
ステムで利用したり、第三者に頒布したりしてはならないことをご承認頂くこと。
d) この物語の(PDF ファイルの様態を含め)如何なる内容も改竄してはならず、また個人の非営利
的な作品/執筆物の中での引用を除き(この場合も事前に引用箇所をご通知ください)、如何なる
方法でも、複写、複製、引用等に利用してはならないことをご承認頂くこと。
e) 著者は、この物語の「講読」に際してお手許のコンピュータシステムのハードウエアおよび/ま
たはソフトウエア、あるいはインターネット上のシステムによって引き起こされる可能性のあ
る一切の不具合または物理的な損害に対して責任を負うものではなく(無害免責条項)、筆者が
責任を負うのは、あくまでも物語の筋と内容、構成、乱/落丁などに限られるということをご承
認頂くこと。
f)
悪意のある、為にする批判、誹謗、中傷、非難キャンペーンなどに類いする一切の行為を行わ
ないことをご承認頂くこと。但し、筆者は、善意の温かいご批判やご指摘は、今後の改訂のた
めに傾聴することは吝かでなく、大いに歓迎します。
この物語の著作権に関わる全権利は、作者の英紅炎が保有します。
平成戊子
八朔
パーソナル オフィス テリントーク
英 紅炎
注)*1,*2,*3 のソフトウエアは、何れも Adobe Corporation が知的財産権を保有する製品、登録商標またはプログラムシステムの名称で
す。
英紅炎(はなふさこうえん、Ei Kohen/Ei Cohen はとも呼ぶ)はこの物語の著作権保持者の名称で、それ自体が商標(無登録)です。
パーソナル オフィス テリントークは、英 紅炎の個人事務所の対外的に使う呼称です。何れもこの名称を流用することを禁じます。
前置き
この物語は、ロシアの文豪チェーホフの短篇「初恋」に題材を取ったものである。だが、それ
は単なるきっかけで、「初恋」の内容は全く異なって展開される。そしてチェーホフにおいて
は、初恋は、少年期の淡い感情に限定され儚く消えていくが、この物語では、主人公が自分の
心の内に思い掛けなく芽生えたそのような初恋と思われた感情をきっかけとして、本当の初
恋の対象を覚り、そこから物語が展開され、発展して行く。そのうえ、この物語は一種の時代
小説風の空想物語になっている。
この物語では、チェーホフから取った「初恋」という素材とその中の主人公たちの人間関係を
チェーホフの時代よりも古い、江戸中期に移して筋を展開させている。従って、現代ではなか
なか想像のつき難い習俗や習慣や、「掟」や仕来りが語られている。その中でも特に分かりに
くいものとして、「十干十二支に基づく年号 − 六十干支年号」、「時法」および「方位」の表現
について夫々、表形式で付録として補助資料を添付して、読者の理解の一助とした。年号につ
いては、歴史上定まった元号があったわけだが、この物語の登場人物が特定の具体的な時代と
歴史上の人物との直接的な関係のないことを表明するために、故意に元号と結び付けない漠
然とした六十干支年号を採用した。そのため、現在では読み方さえも難しく、なかなか解り難
いので、そのような補助資料を老婆心で補足したのである。
この年号についてもう少し述べると、当時大多数の人達は、始終変わる元号(時には、数ヶ月
しかなかった年もある!!)を常に意識していたわけではなかった。更に云うと、今日に比べる
と遥かに「自然に近い」生活をしていて、いちいち時代を年号で表わすほど意識していたわけ
ではなかった。それ故に、例えば、
「∼のあった / 起こった頃」、
「∼公のご威政の頃」というよ
うな云い方をしたように、漠然とした時代の認識の仕方をしていた。そのようなわけで、当時
の人達にとっては、六十年に一回必ず同じ年号が現れる六十干支の年号の方が元号よりも親
しみやすかったのではないかと思われる。公式記録でさえ「寛政十二年庚申」というように、
わざわざ六十干支年号を書き添えていたのもそのような事情による習慣からではないかと思
われる。
次に、この物語の場合も、作者英紅炎の他の物語同様に、物語の根底には、
「性愛」が重要な位
置を占めていて、その赤裸々な描写が随所に表れる。それが「艶本」と断り書きを入れる所以
である。難しい名称や表現が使われているため、容易には解り難いのではないかと思われる
が、それでも「児童福祉法」で保護されるべき年齢層は読者として対象外であり、それ故「二
十禁」であることをお断りしておく。
なお、この物語には、江戸期の作品の慣例に倣い、
「序」が付されている。これは本来漢文で書
かれるべきものだが、筆者は漢文を能くしないため、連綿体、即ち漢語交じりの変体仮名で
綴ってある。但し、連綿体に適したフォントがないため、変体仮名も仮名の元字を当てて表記
されている。そのためかなり読み難くなっているが、お許し願いたい。
平成戊子 八朔
パーソナル オフィス テリントーク
英 紅炎
艶 えほ
本ん
世
波
情
艶
仇
乃
初
恋
淫
斎
白
繚
英
紅
炎
画
作
女
中
頭
と
決
ま
っ
て
い
た
。
離
し
て
、
中
屋
敷
か
下
屋
敷
で
養
育
指
南
役
を
付
け
て
教
育
さ
せ
た
。
身
の
回
り
の
世
話
を
す
る
の
は
、
夫
々
の
子
の
専
任
の
乳
母
か
養
育
世
話
係
の
松
平
家
に
は
、
麹
町
の
上
屋
敷
の
他
に
、
深
川
の
中
屋
敷
と
下
目
黒
の
下
屋
敷
が
あ
っ
た
。
子
供
た
ち
は
、
七
歳
に
な
る
と
、
夫
々
親
元
か
ら
と
共
に
、
書
や
敷
島
の
道
を
習
わ
せ
、
更
に
長
刀
の
稽
古
も
義
務
づ
け
た
。
を
持
つ
尺
八
と
鼓
だ
け
は
、
武
士
の
嗜
み
と
し
て
習
う
こ
と
を
許
し
た
。
ま
た
、
女
児
に
は
、
箏
や
鼓
な
ど
の
稽
古
事
の
他
に
、
女
大
学
な
ど
の
勉
学
と
共
に
四
書
五
経
の
勉
学
と
書
の
稽
古
を
義
務
づ
け
て
い
た
。
﹁
歌
舞
音
曲
は
、
軟
弱
⋮
﹂
と
し
て
遠
避
け
さ
せ
た
が
、
自
ら
も
嗜
み
、
並
で
な
い
腕
前
鉄
壁
の
不
動
の
護
り
四
騎
の
要
な
れ
ば
、
そ
の
男
児
は
全
て
質
実
剛
健
に
し
て
質
素
、
豪
胆
た
る
べ
し
⋮
﹂
と
て
、
奢
侈
を
廃
し
、
常
に
武
術
の
稽
古
迎
え
た
こ
と
に
よ
り
、
葵
ご
紋
を
使
う
こ
と
が
許
さ
れ
、
﹁
三
つ
剣
菱
葵
紋
﹂
が
家
紋
に
な
っ
た
家
柄
を
誇
り
と
し
、
﹁
当
家
は
将
軍
家
の
藩
屏
に
し
て
藤
山
代
守
左
馬
資
季
衡
を
祖
と
し
、
家
康
公
の
江
戸
ご
入
府
の
み
ぎ
り
に
松
平
姓
を
賜
り
、
五
代
目
三
河
守
行
衡
が
将
軍
家
の
三
女
由
紀
姫
を
正
室
に
定
衡
は
、
曾
て
神
君
家
康
公
の
ご
出
陣
の
み
ぎ
り
、
家
康
公
を
囲
む
親
衛
隊
、
﹁
備
え
の
十
六
騎
﹂
の
内
の
﹁
不
動
の
護
り
四
騎
﹂
の
筆
頭
、
加
他
は
長
女
の
幸
姫
、
次
男
の
次
郎
行
衡
、
三
女
の
百
合
姫
共
全
て
異
腹
の
子
だ
っ
た
。
定
衡
に
は
、
秀
衡
を
含
め
六
人
の
子
が
あ
っ
た
。
嫡
子
の
太
郎
元
衡
と
次
女
の
沙
季
姫
に
三
郎
秀
衡
は
、
正
室
知
佳
の
産
ん
だ
子
だ
っ
た
が
、
初恋ー抜粋
も
、
ま
た
老
中
松
平
越
中
守
に
も
覚
え
が
め
で
た
か
っ
た
。
定
衡
は
、
太
平
の
続
く
世
に
し
て
な
お
文
武
両
道
に
通
じ
る
質
実
剛
健
の
気
風
を
備
え
、
代
々
勤
め
る
老
中
格
大
御
番
頭
と
し
て
、
将
軍
家
に
千
石
の
知
行
を
受
け
、
代
々
大
御
番
頭
を
勤
め
る
直
参
旗
本
中
の
重
鎮
だ
っ
た
。
松
平
監
物
三
郎
秀
衡
の
父
、
松
平
三
河
守
左
衛
門
尉
定
衡
は
、
三
河
以
来
の
譜
代
の
旗
本
の
血
筋
を
引
く
名
家
を
も
っ
て
自
他
共
に
認
じ
、
八
と
り
わ
け
、
八
代
将
軍
は
、
旗
本
や
御
家
人
ら
の
実
戦
訓
練
を
兼
ね
て
、
し
ば
し
ば
大
掛
か
り
な
狩
を
催
行
し
た
こ
と
で
知
ら
れ
る
。
そ
の
た
め
、
将
軍
家
を
初
め
、
特
に
目
黒
一
帯
に
下
屋
敷
を
も
つ
譜
代
大
名
や
旗
本
ら
は
、
し
ば
し
ば
、
こ
の
一
帯
の
原
野
で
狩
を
行
っ
た
。
が
っ
て
い
て
、
御
府
内
の
外
に
西
に
延
び
、
世
田
谷
村
か
ら
狛
江
村
を
経
て
吉
祥
寺
村
に
至
る
ほ
と
ん
ど
手
付
か
ず
の
原
野
が
広
が
っ
て
い
た
。
地
が
占
め
て
い
て
、
多
く
が
百
姓
地
で
あ
る
か
に
見
え
る
。
し
か
し
、
こ
の
辺
り
は
、
ま
だ
余
り
開
け
て
は
お
ら
ず
、
広
大
な
自
然
林
や
荒
野
が
広
白
金
台
、
目
黒
、
下
目
黒
一
帯
は
、
名
だ
た
る
譜
代
大
名
、
直
参
旗
本
の
広
大
な
下
屋
敷
と
神
社
仏
閣
が
点
在
す
る
他
は
、
切
絵
図
上
で
は
田
地
、
畑
由
に
屋
敷
外
に
出
て
、
羽
を
伸
ば
せ
る
よ
う
に
な
っ
た
。
こ
う
し
て
、
秀
衡
は
、
午
前
中
の
四
書
五
経
の
勉
学
と
書
の
稽
古
が
終
わ
る
と
、
午
後
は
剣
術
と
尺
八
の
稽
古
を
口
実
に
お
供
付
き
な
が
ら
自
知
し
て
い
た
の
で
、
﹁
父
親
は
反
対
し
な
い
﹂
と
踏
ん
で
い
た
。
自
身
尺
八
の
腕
も
か
な
り
の
も
の
で
、
寛
い
だ
折
に
は
し
ば
し
ば
母
知
佳
や
側
室
た
ち
の
奏
で
る
箏
に
合
わ
せ
て
演
奏
し
て
い
る
の
を
福
千
代
は
承
﹁
も
と
よ
り
、
お
父
上
の
お
気
持
ち
に
背
く
よ
う
な
こ
と
は
致
し
ま
せ
ぬ
⋮
﹂
と
、
福
千
代
は
大
人
び
た
口
調
で
答
え
た
。
実
は
、
父
親
の
定
衡
め
に
武
術
の
稽
古
や
漢
学
の
勉
学
を
疎
か
に
す
る
で
は
な
い
ぞ
⋮
﹂
と
念
を
押
し
て
、
福
千
代
が
尺
八
を
習
う
こ
と
を
許
し
た
。
漢
学
や
書
で
も
成
長
が
著
し
い
⋮
﹂
と
指
南
役
か
ら
聞
か
さ
れ
て
い
た
の
で
、
﹁
良
か
ろ
う
⋮
﹂
と
、
し
ば
ら
く
間
を
置
い
て
云
い
、
﹁
だ
が
、
そ
の
た
定
衡
は
、
暫
く
じ
っ
と
福
千
代
の
目
を
見
詰
め
て
、
福
千
代
の
気
持
ち
の
真
剣
さ
を
推
し
量
っ
た
。
福
千
代
が
﹁
武
術
で
も
腕
を
上
げ
て
い
て
、
て
く
だ
さ
り
ま
せ
⋮
﹂
と
申
し
出
た
。
せ
て
上
機
嫌
の
父
親
に
、
福
千
代
は
、
﹁
父
上
と
母
上
の
よ
う
に
、
姉
上
の
箏
に
合
わ
せ
て
演
奏
し
た
く
思
い
ま
す
る
ゆ
え
に
尺
八
を
習
う
こ
と
を
許
し
そ
ん
な
あ
る
日
、
三
年
ぶ
り
に
京
勤
番
か
ら
戻
っ
て
来
て
、
正
室
の
知
佳
と
共
に
成
長
し
た
末
の
二
人
の
子
供
た
ち
と
久
方
ぶ
り
に
顔
を
合
わ
と
接
し
た
い
と
思
っ
て
い
た
。
初恋ー抜粋
な
音
色
に
重
ね
て
姉
を
思
い
描
く
よ
う
に
な
り
、
笙
か
尺
八
を
合
わ
せ
て
演
奏
す
る
こ
と
に
よ
っ
て
、
幼
い
頃
の
よ
う
に
も
っ
と
頻
繁
に
側
近
く
に
姉
て
い
る
た
め
で
、
百
合
姫
と
は
滅
多
に
顔
を
合
わ
せ
る
こ
と
は
な
か
っ
た
が
、
偶
さ
か
に
近
く
に
寄
っ
た
時
に
聞
こ
え
て
来
る
百
合
姫
の
弾
く
箏
の
妙
で
と
、
全
く
違
う
環
境
に
住
ま
っ
て
い
た
。
そ
れ
は
、
厳
格
な
父
定
衡
が
、
﹁
男
女
七
歳
に
し
て
席
を
同
じ
ゅ
う
せ
ず
⋮
﹂
を
厳
格
に
養
育
係
に
守
ら
せ
の
百
合
姫
と
共
に
こ
の
下
屋
敷
で
育
て
ら
れ
る
よ
う
に
な
っ
て
か
ら
、
広
い
屋
敷
内
で
別
々
に
、
百
合
姫
は
東
館
の
奥
向
き
で
、
秀
衡
は
西
館
の
中
奥
し
か
し
福
千
代
は
、
剣
術
よ
り
も
歌
舞
音
曲
の
方
に
魅
か
れ
て
い
た
。
年
上
と
い
っ
て
も
、
異
腹
の
た
め
実
際
は
半
年
ほ
ど
し
か
違
わ
な
い
姉
小
杉
源
之
丈
の
新
影
流
剣
術
指
南
道
場
に
通
っ
て
稽
古
を
付
け
て
も
ら
っ
て
い
た
。
が
、
父
定
衡
に
似
て
大
柄
で
、
す
で
に
大
人
並
の
体
躯
を
し
て
お
り
、
剣
術
に
秀
で
て
い
た
。
剣
術
は
屋
敷
内
で
は
な
く
、
中
目
黒
に
あ
る
、
剣
術
士
の
百
合
姫
と
共
に
下
目
黒
の
下
屋
敷
の
別
々
の
館
で
夫
々
の
養
育
指
南
役
の
下
で
育
て
ら
れ
て
い
た
。
福
千
代
は
、
母
の
知
佳
に
似
て
色
白
だ
っ
た
秀
衡
は
、
定
衡
の
子
の
内
の
一
番
年
下
で
、
幼
名
を
福
千
代
と
い
い
、
そ
の
時
十
三
歳
に
な
っ
て
い
た
。
福
千
代
は
、
半
年
だ
け
年
上
の
三
女
る
小
さ
な
祠
が
あ
っ
た
。
そ
こ
は
、
ま
る
で
野
鳥
た
ち
の
楽
園
の
よ
う
に
、
名
も
知
れ
ぬ
小
鳥
た
ち
の
さ
ん
ざ
め
く
囀
り
声
に
溢
れ
て
い
た
。
そ
こ
か
り
大
き
な
池
が
あ
っ
た
。
そ
の
池
に
は
、
何
ヶ
所
も
の
湧
水
か
ら
こ
ん
こ
ん
と
清
冽
な
水
が
湧
き
出
し
て
い
た
。
池
の
一
角
に
は
、
そ
の
池
の
精
を
祭
一
日
、
稽
古
の
休
み
を
利
用
し
て
、
更
に
足
を
伸
ば
し
て
、
多
摩
和
泉
ま
で
行
っ
た
。
そ
こ
に
は
、
鬱
蒼
と
茂
っ
た
欅
の
木
に
囲
ま
れ
た
か
な
か
っ
た
。
会
え
な
い
と
な
る
と
、
ま
す
ま
す
﹁
会
い
た
い
⋮
﹂
と
い
う
思
い
が
募
っ
た
。
そ
の
思
い
は
や
が
て
﹁
恋
し
さ
﹂
に
変
わ
っ
て
行
っ
た
。
て
、
尺
八
や
剣
術
の
稽
古
を
利
用
し
て
何
度
も
そ
の
あ
ば
ら
屋
の
近
く
を
訪
れ
た
。
だ
が
、
そ
の
乙
女
を
見
掛
け
る
機
会
は
な
か
な
か
や
っ
て
来
な
そ
の
後
そ
の
乙
女
の
円
ら
な
瞳
と
白
い
内
股
が
福
千
代
の
脳
裏
か
ら
離
れ
な
く
な
っ
た
。
そ
し
て
、
ま
た
そ
の
乙
女
に
会
え
る
こ
と
を
期
待
し
ら
れ
た
。
代
の
脳
裏
に
は
、
そ
の
乙
女
の
嫋
か
な
姿
躰
と
円
ら
な
瞳
と
、
身
を
翻
し
た
時
に
蹴
出
し
か
ら
ち
ら
っ
と
覗
け
た
細
く
て
白
い
内
股
だ
け
が
焼
き
付
け
暫
し
の
後
、
乙
女
は
何
か
に
弾
か
れ
た
よ
う
に
踵
を
返
し
て
、
樹
々
の
間
か
ら
見
え
隠
れ
す
る
あ
ば
ら
屋
の
奥
に
駆
け
込
ん
で
行
っ
た
。
福
千
生
を
謳
歌
す
る
囀
り
だ
け
だ
っ
た
。
だ
け
だ
っ
た
。
時
の
流
れ
が
止
ま
っ
た
よ
う
に
、
二
人
は
黙
り
こ
く
っ
て
立
ち
竦
み
、
互
い
を
見
詰
め
合
っ
た
。
聞
こ
え
る
の
は
、
た
だ
野
鳥
た
ち
の
瞳
で
驚
い
た
よ
う
に
立
ち
竦
ん
で
福
千
代
を
見
詰
め
た
。
福
千
代
も
、
ま
る
で
雷
に
打
た
れ
た
よ
う
に
、
身
動
き
で
き
ず
に
そ
の
乙
女
を
唯
見
詰
め
る
初恋ー抜粋
女
を
見
た
瞬
間
息
を
呑
ん
だ
。
乙
女
は
粗
末
な
実
な
り
を
し
て
い
た
が
、
色
が
抜
け
る
よ
う
に
白
く
、
ふ
く
よ
か
な
顔
付
き
を
し
て
い
て
、
つ
ぶ
ら
な
乙
女
は
、
粗
末
な
花
柄
の
一
重
を
着
て
、
髷
を
結
わ
ず
に
長
く
垂
ら
し
た
髪
の
毛
を
後
ろ
で
束
ね
て
い
る
だ
け
だ
っ
た
。
福
千
代
は
、
そ
の
乙
に
出
会
わ
し
た
。
何
気
な
く
福
千
代
が
近
付
い
て
行
く
と
、
歳
の
頃
十
二
、
三
の
小
柄
な
乙
女
が
目
の
前
に
現
れ
た
。
弥
生
の
あ
る
日
、
福
千
代
は
、
狛
江
村
に
近
い
辺
り
で
原
野
が
途
切
れ
、
こ
ん
も
り
と
し
た
林
に
向
か
う
境
目
の
奥
に
佇
む
一
軒
の
あ
ば
ら
屋
ま
っ
て
原
生
林
や
草
原
の
中
を
散
策
し
て
、
豊
か
な
自
然
の
営
み
を
満
喫
し
、
英
気
を
養
っ
た
。
ど
の
小
動
物
や
野
鳥
た
ち
の
棲
処
の
よ
う
な
、
広
大
な
原
生
林
や
潅
木
の
入
り
交
じ
っ
た
草
原
が
広
が
っ
て
い
た
。
福
千
代
は
、
稽
古
が
終
わ
る
と
決
尺
八
の
師
匠
の
稽
古
場
は
上
目
黒
村
の
多
摩
川
沿
い
に
あ
っ
た
。
辺
り
一
帯
は
、
世
田
谷
村
か
ら
狛
江
村
に
向
か
っ
て
、
さ
な
が
ら
狐
や
狸
な
音
感
が
良
か
っ
た
。
そ
し
て
一
年
ほ
ど
経
っ
て
、
尺
八
の
演
奏
で
め
き
め
き
上
達
し
て
行
っ
た
。
福
千
代
は
、
幼
い
頃
か
ら
母
や
奥
女
中
達
や
、
乳
母
の
吉
野
ら
の
奏
で
る
箏
や
笙
、
鼓
な
ど
を
聞
い
て
育
っ
た
た
め
か
、
生
れ
付
き
の
よ
う
に
を
流
し
、
四
書
五
経
の
読
誦
と
尺
八
の
お
復
習
い
の
後
、
簡
単
に
夕
餉
を
済
ま
す
と
綿
の
よ
う
に
な
っ
て
眠
っ
た
。
屋
敷
に
戻
る
と
、
心
配
げ
に
出
迎
え
た
女
中
た
ち
に
は
、
言
葉
少
な
に
多
摩
和
泉
ま
で
遠
足
を
し
た
こ
と
を
話
し
た
だ
け
で
、
湯
を
浴
び
て
汗
福
千
代
は
、
﹁
あ
の
乙
女
に
親
し
く
会
い
た
い
⋮
﹂
と
い
う
思
い
を
胸
に
抱
い
て
、
暮
れ
な
ず
む
林
の
中
を
家
路
に
就
い
た
。
福
千
代
は
、
誰
か
出
て
来
は
し
ま
い
か
⋮
と
期
待
し
て
、
暫
く
そ
こ
に
佇
ん
で
い
た
。
が
、
誰
も
現
れ
ず
、
人
の
気
配
も
な
い
ま
ま
だ
っ
た
。
覗
け
た
白
い
内
股
が
福
千
代
の
目
に
焼
き
付
け
ら
れ
た
。
だ
っ
た
福 。
千
代
の
胸
は
、
早
鐘
を
打
つ
よ
う
に
高
鳴
っ
て
い
た
。
ま
た
、
乙
女
の
驚
い
た
瞳
と
、
白
い
首
筋
や
、
駆
け
去
っ
て
行
く
時
に
蹴
出
し
か
ら
回
っ
て
何
処
や
ら
に
姿
を
消
し
た
。
そ
の
後
は
、
ま
た
、
こ
と
り
と
も
音
の
し
な
い
静
寂
に
包
ま
れ
、
聞
え
る
の
は
、
た
だ
小
鳥
た
ち
の
囀
り
だ
け
乙
女
は
、
び
っ
く
り
し
て
声
も
出
ぬ
様
子
だ
っ
た
。
だ
が
、
福
千
代
が
声
を
掛
け
よ
う
と
し
た
刹
那
、
さ
っ
と
身
を
翻
え
し
て
、
家
の
裏
に
か
っ
て
福
千
代
と
目
を
合
わ
せ
た
。
千
代
が
更
に
籬
の
側
ま
で
近
付
く
と
、
し
ゃ
が
み
込
ん
で
何
か
を
し
て
い
た
ら
し
く
、
突
然
あ
の
乙
女
が
立
ち
上
が
っ
て
目
の
前
に
現
れ
、
面
と
向
て
い
て
、
こ
ち
ら
側
に
面
し
て
古
び
た
障
子
戸
の
嵌
っ
た
格
子
窓
が
あ
っ
た
。
家
の
周
り
も
中
も
物
音
一
つ
せ
ず
、
人
気
が
感
じ
ら
れ
な
か
っ
た
。
福
近
付
い
て
み
る
と
、
林
の
中
に
立
っ
て
い
る
と
思
わ
れ
た
そ
の
あ
ば
ら
家
は
、
辺
り
の
薮
の
木
と
変
わ
ら
な
い
丈
の
低
い
潅
木
の
籬
に
囲
わ
れ
初恋ー抜粋
ら
屋
に
近
付
い
て
行
っ
た
。
日
が
西
に
傾
き
か
け
た
頃
、
よ
う
や
く
立
ち
上
が
っ
て
、
も
と
来
た
道
を
辿
り
、
あ
の
あ
ば
ら
家
の
近
く
に
来
る
と
、
思
い
切
っ
て
そ
の
あ
ば
ち
の
喧
騒
の
中
の
木
陰
の
清
涼
な
空
間
に
浸
っ
た
。
を
頬
張
り
、
竹
筒
の
茶
を
呑
み
干
す
と
、
清
水
の
水
を
一
杯
に
酌
ん
で
呑
み
、
大
き
な
平
た
い
岩
の
上
に
寝
そ
べ
っ
て
、
人
心
地
付
く
ま
で
、
小
鳥
た
福
千
代
は
、
流
石
に
暑
さ
と
疲
労
と
、
空
腹
と
咽
の
渇
き
を
覚
え
、
再
び
和
泉
の
湧
水
ま
で
戻
っ
て
木
陰
の
岩
に
座
り
、
持
っ
て
来
た
握
り
飯
鳥
達
の
姦
し
い
ま
で
の
啼
き
声
に
溢
れ
て
い
た
。
て
、
狛
江
村
か
ら
多
摩
和
泉
に
接
し
て
い
る
の
だ
っ
た
。
そ
こ
は
芦
や
葦
の
鬱
蒼
と
茂
る
広
い
沼
沢
地
に
囲
わ
れ
た
岸
辺
で
、
こ
こ
も
姿
の
見
え
ぬ
水
ら
更
に
林
を
一
丁
ば
か
り
抜
け
て
行
く
と
、
再
び
多
摩
川
の
岸
に
出
た
。
多
摩
川
の
左
岸
が
、
中
目
黒
の
先
か
ら
上
流
に
向
か
っ
て
ぐ
る
り
と
蛇
行
し
せ
て
い
た
。
任
せ
だ
っ
た
。
し
か
し
、
今
度
の
こ
と
は
、
少
し
今
ま
で
と
は
様
子
が
違
う
気
が
し
て
、
跋
の
悪
い
思
い
を
し
な
が
ら
も
、
吉
野
の
す
る
が
ま
ま
に
任
福
千
代
は
ま
だ
元
服
前
で
、
下
帯
初
め
の
儀
も
済
ま
せ
て
は
い
な
か
っ
た
。
部
屋
住
み
の
三
男
と
は
い
え
、
身
の
回
り
の
世
話
は
、
全
て
女
中
め り
た に
。 他
の
女
中
達
が
抱
え
て
き
て
、
縁
側
に
据
え
た
大
盥
の
側
に
福
千
代
を
誘
っ
て
、
水
を
張
り
、
濡
れ
手
拭
で
丁
寧
に
福
千
代
の
下
半
身
を
拭
き
清
さ
あ
、
こ
ち
ら
に
来
て
、
寝
間
着
を
お
脱
ぎ
遊
ば
せ
⋮
、
私
が
始
末
を
し
て
差
し
上
げ
ま
し
ょ
う
ほ
ど
に
⋮
﹂
と
い
っ
て
、
吉
野
は
、
常
の
通
は
ご
ざ
り
ま
せ
ぬ
⋮
、
﹁
何
が
病
気
な
も
の
で
す
か
⋮
、
若
君
⋮
、
こ
れ
は
若
君
が
ご
壮
健
で
、
大
人
の
男
に
な
ら
れ
る
準
備
が
整
っ
た
と
い
う
証
拠
⋮
、
恥
じ
る
こ
と
元
に
跪
い
て
、
掛
け
具
を
捲
り
に
掛
か
っ
た
。
だ
が
、
福
千
代
が
幼
少
の
み
ぎ
り
に
乳
乳
母
だ
っ
た
女
中
頭
の
吉
野
は
、
一
向
に
動
じ
ず
、
に
こ
に
こ
と
笑
顔
さ
え
見
せ
な
が
ら
福
千
代
の
枕
﹁
側
に
寄
る
な
っ
⋮
、
儂
は
今
日
は
病
気
じ
ゃ
あ
⋮
、
放
っ
て
置
い
て
く
れ
っ
⋮
﹂
と
、
福
千
代
は
狼
狽
え
て
云
っ
た
。
漂
う
強
烈
な
栗
の
花
の
匂
い
に
気
付
き
、
﹁
あ
ら
あ
ら
、
若
君
⋮
﹂
と
い
っ
て
、
福
千
代
を
起
こ
し
に
掛
か
っ
た
。
暫
く
す
る
と
、
い
つ
も
の
よ
う
に
福
千
代
の
身
の
回
り
の
世
話
を
す
る
女
中
頭
の
吉
野
が
、
襖
を
開
け
て
入
っ
て
き
た
。
直
ぐ
に
部
屋
の
中
に
初恋ー抜粋
暫
く
床
の
中
で
じ
っ
と
し
て
い
た
。
淫
靡
な
状
態
に
あ
る
こ
と
を
朧
気
な
が
ら
覚
っ
て
、
﹁
誰
に
も
知
ら
れ
た
く
な
い
⋮
﹂
と
い
う
思
い
と
と
も
に
、
ど
う
始
末
し
て
良
い
や
ら
判
ら
ず
に
、
福
千
代
に
は
、
何
が
起
こ
っ
た
の
か
、
は
っ
き
り
と
自
覚
で
き
て
い
な
か
っ
た
が
、
見
た
夢
を
反
芻
し
て
、
自
分
が
﹁
と
ん
で
も
な
い
不
埒
な
﹂
間
着
の
股
の
周
り
が
不
快
に
べ
と
つ
い
て
い
る
の
を
感
じ
た
。
身
体
が
緊
張
し
た
瞬
間
に
目
が
覚
め
た
。
辺
り
に
強
烈
な
栗
の
花
の
匂
い
が
漂
い
、
福
千
代
は
、
自
分
の
股
間
の
も
の
が
膨
ら
ん
で
蠢
い
て
い
て
、
寝
顔
に
入
れ
替
わ
り
、
更
に
福
千
代
の
女
中
頭
、
﹁
ね
え
や
﹂
の
顔
に
変
わ
っ
た
。
そ
の
瞬
間
、
福
千
代
の
下
半
身
に
、
何
や
ら
知
れ
な
い
快
感
が
走
り
、
れ
、
戯
れ
合
っ
た
後
に
遂
に
福
千
代
が
乙
女
を
捉
え
て
情
を
交
わ
す
夢
だ
っ
た
。
情
を
交
わ
し
て
い
る
う
ち
に
、
乙
女
の
顔
が
薄
れ
、
姉
の
百
合
姫
の
明
け
方
、
福
千
代
は
夢
を
見
た
。
そ
れ
は
、
福
千
代
が
あ
の
乙
女
の
後
を
追
い
掛
け
、
乙
女
が
喜
々
と
し
た
声
を
上
げ
て
福
千
代
の
手
か
ら
逃
﹁
う
∼
む
,
な
れ
ば
そ
ろ
そ
ろ
元
服
さ
せ
ね
ば
な
る
ま
い
の
う
⋮
﹂
﹁
近
く
十
四
歳
に
お
成
り
で
す
⋮
﹂
﹁
左
様
か
⋮
、
福
千
代
は
今
年
幾
つ
に
な
る
⋮
﹂
*
*
*
*
*
*
*
が
あ
っ
た
と
い
う
も
の
⋮
、
と
て
も
嬉
し
ゅ
う
ご
ざ
り
ま
す
る
⋮
﹂
と
云
い
な
が
ら
、
吉
野
は
頼
も
し
げ
に
福
千
代
を
見
上
げ
た
。
今
後
と
も
、
一
層
文
武
両
道
に
お
励
み
な
さ
り
ま
せ
⋮
、
若
君
が
ご
出
世
な
さ
れ
ば
、
こ
の
吉
野
は
、
乳
母
と
し
て
お
育
て
申
し
上
げ
た
甲
斐
屋
住
み
な
が
ら
も
何
か
の
お
役
を
賜
っ
て
、
文
字
通
り
上
様
の
ご
家
臣
と
し
て
、
お
仕
え
申
し
上
げ
ら
れ
る
よ
う
に
お
な
り
で
す
⋮
ら
、
若
君
の
元
服
の
儀
が
行
わ
れ
ま
す
⋮
、
さ
す
れ
ば
、
折
り
を
見
て
殿
中
に
上
り
、
上
様
と
の
初
お
目
見
が
ご
ざ
り
ま
す
る
⋮
、
そ
の
後
は
、
お
部
﹁
左
様
で
ご
ざ
い
ま
す
る
よ
⋮
、
お
め
で
た
い
こ
と
で
す
か
ら
ね
⋮
、
お
殿
様
も
奥
方
様
も
お
喜
び
に
な
り
ま
し
ょ
う
⋮
、
そ
れ
が
済
み
ま
し
た
初恋ー抜粋
﹁
ち
⋮
、
父
上
や
母
上
に
話
す
の
か
⋮
﹂
と
、
ま
た
福
千
代
は
狼
狽
え
た
。
告
申
し
上
げ
て
、
初
伽
の
後
、
下
帯
初
め
の
儀
を
行
い
、
こ
の
尻
割
れ
の
入
っ
た
猿
股
か
ら
下
帯
に
替
え
て
さ
し
あ
げ
ま
し
ょ
う
⋮
﹂
﹁
さ
あ
、
若
君
⋮
、
さ
っ
ぱ
り
な
さ
っ
た
で
し
ょ
う
⋮
、
若
君
も
も
う
立
派
に
成
長
な
さ
っ
て
お
ら
れ
ま
す
⋮
、
早
速
お
殿
様
と
奥
方
様
に
ご
報
は
、
次
々
と
吉
野
に
渡
し
て
い
た
。
や
っ
て
い
た
。
歳
の
若
い
他
の
女
中
達
も
、
い
つ
も
の
入
浴
の
世
話
と
同
じ
よ
う
に
、
福
千
代
の
股
間
の
も
の
を
見
な
が
ら
、
濡
れ
手
拭
を
交
換
し
て
吉
野
は
、
ま
だ
萎
え
切
っ
て
い
な
い
福
千
代
の
股
間
の
も
の
を
濡
れ
手
拭
い
で
大
事
そ
う
に
押
し
包
ん
で
、
顔
色
一
つ
変
え
ず
に
拭
き
清
め
て
て
、
事
実
上
の
育
て
の
親
だ
っ
た
。
屋
敷
に
上
が
り
、
生
ま
れ
た
ば
か
り
の
福
千
代
に
乳
を
含
ま
せ
て
育
て
、
そ
の
後
も
福
千
代
付
の
養
育
乳
母
で
女
中
頭
と
し
て
ず
っ
と
世
話
を
し
て
き
吉
野
は
、
二
百
石
取
り
の
小
身
旗
本
園
部
東
左
衛
門
の
娘
で
そ
の
年
三
十
歳
に
な
り
、
十
七
の
歳
か
ら
福
千
代
の
乳
母
と
し
て
松
平
三
河
守
の
そ
の
後
に
吉
日
を
選
ん
で
元
服
さ
せ
よ
う
ぞ
⋮
﹂
の
女
中
達
は
、
そ
の
後
か
ら
で
も
良
い
⋮
、
そ
う
せ
い
⋮
、
主
命
じ
ゃ
⋮
、
﹁
さ
れ
ば
じ
ゃ
⋮
、
初
め
は
気
心
が
知
れ
て
い
る
そ
ち
の
方
が
良
か
ろ
う
⋮
、
そ
う
い
う
こ
と
は
ま
ま
あ
る
も
の
じ
ゃ
⋮
、
そ
ち
に
せ
い
⋮
、
他
私
一
存
で
よ
ろ
し
け
れ
ば
⋮
、
女
中
達
の
中
か
ら
、
誰
ぞ
選
ば
せ
て
い
た
だ
き
ま
し
ょ
う
が
⋮
﹂
親
⋮
、
そ
の
よ
う
な
役
は
務
め
兼
ね
ま
す
る
⋮
、
﹁
滅
相
も
ご
ざ
り
ま
せ
ぬ
⋮
、
こ
の
吉
野
は
、
仮
に
も
乳
母
と
し
て
乳
飲
み
児
の
折
り
よ
り
若
君
を
お
育
て
申
し
上
げ
ま
し
た
、
云
わ
ば
育
て
の
お
う
、
そ
う
じ
ゃ
⋮
、
そ
ち
で
は
ど
う
じ
ゃ
⋮
﹂
と
、
定
衡
は
不
意
の
思
い
付
き
を
云
っ
た
。
﹁
そ
ち
の
好
き
に
計
ら
っ
て
や
れ
⋮
、
誰
ぞ
適
当
な
者
が
お
ろ
う
が
⋮
、
い
よ
う
で
す
⋮
﹂
と
、
吉
野
は
殿
様
と
奥
方
様
に
ご
注
進
に
及
ん
だ
。
﹁
適
当
な
お
内
証
を
選
ん
で
初
伽
を
し
て
差
し
上
げ
て
、
下
帯
初
め
の
儀
を
な
さ
り
、
元
服
の
心
構
え
を
も
っ
て
い
た
だ
い
た
方
が
お
良
ろ
し
そ
ん
な
こ
と
が
十
日
ほ
ど
続
く
と
、
そ
の
様
を
見
て
、
吉
野
は
、
福
千
代
の
性
欲
が
人
並
み
外
れ
て
い
る
よ
う
に
思
っ
た
。
初恋ー抜粋
吉
野
か
ら
聞
け
れ
ば
よ
い
と
思
っ
た
。
福
千
代
に
と
っ
て
は
、
﹁
ね
え
や
﹂
は
今
な
お
一
番
気
安
く
話
を
聞
い
て
も
ら
え
る
良
い
相
談
相
手
だ
っ
た
。
夢
を
正
直
に
吉
野
に
話
し
た
。
そ
う
す
る
こ
と
に
よ
っ
て
、
気
を
軽
く
し
て
、
お
ぞ
ま
し
さ
や
罪
悪
感
を
拭
い
去
る
こ
と
が
出
来
、
何
か
良
い
思
案
を
が
、
福
千
代
は
、
﹁
何
事
も
隠
し
ご
と
は
な
ら
ぬ
⋮
﹂
と
、
日
ご
ろ
父
親
や
吉
野
に
言
い
聞
か
さ
れ
て
い
る
た
め
、
自
分
が
こ
う
な
る
時
に
見
る
い
罪
悪
感
さ
え
感
じ
た
。
え
や
の
吉
野
だ
っ
た
り
、
他
の
女
中
達
だ
っ
た
り
、
姉
の
百
合
姫
だ
っ
た
り
し
た
。
そ
れ
は
後
味
の
良
い
も
の
で
は
な
か
っ
た
。
何
や
ら
、
お
ぞ
ま
し
そ
の
日
を
境
に
、
福
千
代
は
ほ
と
ん
ど
毎
日
夢
精
を
見
た
。
夢
の
中
で
精
を
交
え
る
相
手
は
、
あ
の
乙
女
だ
け
と
は
限
ら
な
か
っ
た
。
時
に
ね
﹁
そ
の
儀
は
、
そ
ち
に
任
せ
よ
う
ぞ
⋮
﹂
﹁
御
意
に
ご
ざ
り
ま
す
る
⋮
、
そ
の
前
に
下
帯
初
め
の
儀
を
執
り
行
い
ま
せ
ぬ
と
⋮
﹂
て
、
林
の
樹
々
を
縫
っ
て
、
あ
の
あ
ば
ら
家
の
方
に
向
か
っ
て
進
ん
だ
。
和
泉
の
湧
水
ま
で
行
っ
た
。
そ
の
池
の
辺
の
岩
に
腰
掛
け
て
、
暫
し
尺
八
の
復
習
い
を
し
て
刻
を
遣
り
過
ご
し
、
日
の
暮
れ
な
ず
む
時
刻
を
見
計
ら
っ
そ
の
日
、
福
千
代
は
供
回
り
の
中
間
を
遠
ざ
け
て
待
た
せ
、
狛
江
村
に
向
か
う
林
を
抜
け
て
、
一
旦
そ
の
あ
ば
ら
家
の
前
を
素
通
り
し
て
多
摩
ら
ぬ
あ
の
乙
女
へ
の
恋
し
さ
が
ふ
つ
ふ
つ
と
募
る
の
だ
っ
た
。
剣
術
や
尺
八
を
稽
古
し
て
い
る
時
は
、
集
中
し
て
い
て
忘
れ
て
い
ら
れ
る
が
、
い
ざ
稽
古
が
終
わ
っ
て
帰
る
段
に
な
る
と
、
見
初
め
て
名
も
知
た
一
帯
に
狩
に
出
か
け
て
行
き
、
狩
の
獲
物
が
多
い
と
上
機
嫌
で
下
屋
敷
に
立
ち
寄
っ
て
行
く
の
に
気
付
い
て
い
た
。
福
千
代
は
、
父
親
の
定
衡
が
近
頃
頻
繁
に
お
城
を
退
出
し
た
後
に
、
数
名
の
供
回
り
の
御
徒
を
率
い
た
だ
け
で
世
田
谷
村
か
ら
狛
江
村
に
掛
け
野
や
他
の
女
中
達
に
見
送
ら
れ
な
が
ら
、
﹁
で
は
、
行
っ
て
参
る
⋮
﹂
と
、
供
回
り
の
中
間
を
伴
っ
て
元
気
よ
く
屋
敷
を
出
て
行
っ
た
。
竹
筒
を
右
の
腰
に
ぶ
ら
下
げ
、
吉
野
か
ら
受
け
取
っ
た
差
料
と
尺
八
を
左
腰
に
差
し
て
、
﹁
若
君
、
存
分
に
お
励
み
な
さ
れ
⋮
﹂
と
西
館
の
玄
関
口
で
吉
初恋ー抜粋
そ
の
日
も
、
福
千
代
は
、
何
時
も
通
り
、
朝
の
学
問
と
書
道
の
稽
古
が
終
わ
っ
て
か
ら
朝
餉
を
済
ま
せ
、
昼
の
弁
当
の
握
り
飯
と
茶
の
入
っ
た
﹁
さ
れ
ば
こ
そ
尚
更
、
初
伽
の
儀
は
気
が
重
い
⋮
﹂
と
、
吉
野
は
思
っ
た
。
﹁
若
君
は
、
身
も
心
も
ご
壮
健
で
い
ら
っ
し
ゃ
る
⋮
﹂
と
、
吉
野
は
安
堵
し
た
。
の
様
子
か
ら
は
、
寝
起
き
の
時
の
福
千
代
の
悄
気
返
っ
た
気
配
は
微
塵
も
窺
え
な
か
っ
た
。
中
奥
の
広
間
か
ら
は
、
い
つ
も
の
よ
う
に
御
学
問
指
南
役
林
太
平
の
前
で
四
書
五
経
を
朗
読
す
る
福
千
代
の
大
き
な
声
が
聞
こ
え
て
い
た
。
そ
の
声
つ
き
で
長
い
廊
下
を
く
ね
く
ね
と
伝
っ
て
福
千
代
の
い
る
西
館
の
中
奥
の
間
に
沿
っ
た
廊
下
を
擦
り
抜
け
て
隣
接
す
る
自
分
の
局
に
戻
っ
た
。
西
の
吉
野
は
、
畏
ま
っ
て
主
の
元
か
ら
下
が
っ
た
。
主
命
と
あ
ら
ば
致
し
方
な
い
が
、
吉
野
は
心
を
決
め
か
ね
な
が
ら
思
案
に
暮
れ
た
浮
か
な
い
顔
心
が
弾
け
散
っ
て
消
え
た
。
で
見
た
、
何
処
か
も
ど
か
し
さ
の
残
る
交
合
と
は
、
似
て
も
似
つ
か
な
い
も
の
だ
っ
た
。
そ
し
て
、
こ
の
瞬
間
、
福
千
代
の
乙
女
に
対
す
る
密
か
な
恋
そ
の
光
景
は
、
福
千
代
が
生
ま
れ
て
初
め
て
目
の
当
た
り
に
す
る
、
男
と
女
の
交
合
の
真
の
姿
だ
っ
た
。
そ
れ
は
、
福
千
代
が
何
度
も
夢
の
中
う
じ
て
格
子
に
掴
ま
っ
て
い
る
だ
け
に
な
っ
た
。
や
が
て
侍
の
腰
の
動
き
が
一
層
激
し
く
な
り
、
乙
女
は
絹
を
裂
く
よ
う
な
声
を
上
げ
て
、
ぐ
っ
た
り
と
な
り
、
侍
に
腰
を
支
え
ら
れ
て
、
か
ろ
光
っ
た
。
何
か
を
感
じ
た
の
か
、
駿
純
が
一
声
嘶
く
と
、
そ
の
辺
野
古
を
大
き
く
了
え
立
た
せ
て
、
何
度
も
腹
に
激
し
く
叩
き
付
け
た
。
が
腰
を
前
後
に
動
か
す
に
連
れ
て
、
玉
茎
が
空
割
か
ら
姿
を
現
わ
し
た
り
消
え
た
り
し
て
、
西
日
に
当
た
っ
て
空
割
の
周
囲
と
玉
茎
が
て
ら
て
ら
と
が
腰
を
沈
め
て
更
に
前
に
突
き
出
し
、
侍
が
乙
女
の
腰
を
手
前
に
引
き
付
け
る
と
、
侍
の
玉
茎
は
、
そ
っ
く
り
乙
女
の
空
割
の
中
に
姿
を
消
し
た
。
侍
侍
は
、
格
子
に
近
寄
っ
て
狩
袴
の
紐
を
解
き
、
褌
の
穴
か
ら
い
き
り
た
っ
た
玉
茎
を
抜
き
出
し
て
、
そ
の
乙
女
の
空
割
を
貫
き
通
し
た
。
乙
女
格
子
の
隙
間
か
ら
、
乙
女
の
鴇
色
の
空
割
が
覗
け
た
。
侍
が
ま
た
何
か
乙
女
に
命
じ
た
よ
う
だ
っ
た
。
す
る
と
、
乙
女
は
、
脚
を
広
げ
て
、
更
に
深
く
上
半
身
を
反
ら
し
て
、
腰
を
前
に
突
き
出
し
た
。
西
日
に
映
え
て
目
に
も
鮮
や
か
に
映
る
そ
の
乙
女
の
下
半
身
は
、
す
べ
す
べ
で
、
生
え
際
に
も
毛
は
生
え
て
い
な
か
っ
た
。
た
。
乙
女
が
の
け
反
っ
た
こ
と
に
よ
っ
て
、
乙
女
の
薄
衣
の
裳
裾
が
大
き
く
開
か
れ
、
乙
女
の
下
半
身
が
そ
っ
く
り
格
子
の
間
か
ら
覗
け
て
見
え
た
。
で
打
ち
据
え
た
。
乙
女
は
、
微
か
な
声
を
発
し
て
、
上
体
を
後
ろ
に
の
け
反
ら
せ
た
。
だ
が
、
乙
女
の
表
情
は
、
苦
痛
で
は
な
く
、
喜
び
を
表
し
て
い
初恋ー抜粋
暫
く
す
る
と
、
そ
の
侍
が
何
か
云
っ
た
よ
う
だ
っ
た
。
す
る
と
、
そ
の
乙
女
は
白
い
右
腕
を
格
子
か
ら
差
し
出
し
た
。
侍
が
そ
の
腕
を
乗
馬
鞭
く
想
像
で
き
た
。
離
れ
た
場
所
に
待
機
し
て
い
る
よ
う
に
云
わ
れ
て
い
る
の
だ
ろ
う
⋮
﹂
と
思
っ
た
。
だ
が
、
そ
の
狩
装
束
の
侍
が
父
の
定
衡
で
あ
る
こ
と
は
疑
い
も
な
見
覚
え
の
あ
る
、
父
定
衡
の
自
慢
の
愛
馬
、
あ
し
毛
の
青
、
駿
純
だ
っ
た
。
近
く
に
は
、
い
つ
も
の
御
徒
の
姿
は
見
え
な
か
っ
た
。
﹁
お
そ
ら
く
何
処
か
近
く
で
馬
が
﹁
ぶ
る
ぶ
る
﹂
と
息
を
吐
き
出
す
音
が
聞
こ
え
た
。
馬
は
、
そ
の
あ
ば
ら
家
の
東
側
の
一
角
の
木
立
に
繋
が
れ
て
い
た
。
そ
れ
は
、
日
が
映
え
て
よ
く
見
え
な
か
っ
た
。
格
子
窓
か
ら
三
尺
ほ
ど
離
れ
た
と
こ
ろ
に
、
狩
装
束
の
一
人
の
侍
が
、
鳥
追
笠
を
目
深
に
被
っ
て
立
っ
て
い
た
。
狩
装
束
の
袖
の
紋
所
は
、
西
た
。
一
重
の
着
物
と
腰
帯
の
裾
が
乱
れ
て
白
い
両
脚
が
曝
け
出
さ
れ
、
両
腕
が
袖
か
ら
剥
き
出
し
に
な
っ
て
、
西
日
に
映
え
て
い
た
。
取
ら
れ
な
い
よ
う
に
、
そ
の
木
の
又
か
ら
窺
い
見
る
と
、
西
日
を
受
け
て
、
あ
の
乙
女
が
格
子
を
掴
ん
で
格
子
窓
の
内
側
に
立
っ
て
い
る
姿
が
見
え
あ
の
西
側
の
格
子
窓
が
見
え
る
辺
り
ま
で
近
付
い
て
、
福
千
代
は
﹁
は
っ
⋮
﹂
と
な
っ
て
足
を
止
め
、
大
き
な
木
立
の
陰
に
身
を
隠
し
た
。
気
女
中
達
が
箏
や
鼓
で
伴
奏
し
て
く
れ
る
こ
と
が
あ
っ
た
。
そ
ん
な
こ
と
は
滅
多
に
な
い
の
だ
が
、
五
節
句
な
ど
の
祝
い
の
日
に
は
、
在
府
し
て
い
れ
ば
夕
餉
が
済
む
と
、
福
千
代
は
ま
た
漢
書
の
読
誦
に
書
の
手
習
い
と
、
尺
八
の
お
さ
ら
い
を
し
た
。
尺
八
の
お
さ
ら
い
の
時
に
は
、
興
が
乗
る
と
福
千
代
は
何
時
も
内
心
の
重
圧
と
不
満
の
遣
り
場
に
困
っ
て
い
た
。
﹁
武
士
に
な
る
の
は
辛
い
も
の
よ
⋮
、
気
の
休
ま
る
の
は
寝
て
い
る
時
だ
け
⋮
、
い
や
、
そ
れ
さ
え
も
迂
闊
で
あ
っ
て
は
な
ら
ぬ
の
だ
⋮
﹂
と
、
姿
勢
を
正
し
て
、
神
経
を
集
中
し
て
お
召
し
上
が
り
な
さ
り
ま
せ
⋮
﹂
と
、
す
か
さ
ず
吉
野
の
小
言
が
飛
ん
だ
。
﹁
若
君
、
お
食
事
時
は
、
気
を
散
ら
し
て
は
な
り
ま
せ
ぬ
⋮
、
そ
れ
に
武
士
た
る
者
、
い
つ
何
時
敵
に
襲
わ
れ
る
や
も
知
れ
ま
せ
ぬ
⋮
、
何
時
も
を
逸
ら
し
て
俯
き
加
減
に
な
っ
た
。
野
の
身
体
に
ど
こ
と
な
く
女
の
色
香
が
そ
こ
は
か
と
な
く
漂
っ
て
い
た
。
そ
ん
な
吉
野
の
雰
囲
気
に
些
か
気
恥
ず
か
し
さ
を
覚
え
て
、
福
千
代
は
目
が
ら
、
じ
っ
と
見
詰
め
て
い
る
目
が
妙
に
き
ら
き
ら
輝
い
て
い
た
。
そ
れ
に
、
い
つ
も
の
養
育
係
と
し
て
の
女
中
頭
の
厳
し
い
雰
囲
気
で
は
な
く
、
吉
だ
が
、
そ
の
日
の
吉
野
は
少
し
様
子
が
違
っ
て
い
た
。
い
つ
も
は
、
平
静
で
乾
い
た
表
情
で
座
っ
て
い
る
の
だ
が
、
福
千
代
を
団
扇
で
煽
ぎ
な
だ
り
し
な
が
ら
、
福
千
代
が
好
き
嫌
い
を
し
て
食
べ
残
し
を
し
な
い
よ
う
に
見
張
っ
て
い
た
。
は
許
さ
れ
な
か
っ
た
。
食
事
の
世
話
は
、
若
い
女
中
が
し
た
が
、
吉
野
は
、
何
時
も
福
千
代
の
左
斜
め
前
に
座
っ
て
、
夏
な
ら
団
扇
で
福
千
代
を
煽
い
た
。
百
合
姫
も
同
じ
だ
っ
た
。
﹁
二
人
一
緒
だ
っ
た
ら
、
少
し
は
座
が
賑
わ
っ
て
、
食
も
美
味
し
く
食
べ
ら
れ
る
だ
ろ
う
に
⋮
﹂
と
思
う
の
だ
が
、
そ
れ
初恋ー抜粋
れ
て
き
た
。
食
事
は
、
大
抵
一
人
で
す
る
こ
と
に
な
っ
て
い
た
。
食
事
時
も
毛
氈
を
敷
か
ず
に
直
に
畳
の
上
に
正
座
し
て
い
な
け
れ
ば
な
ら
な
か
っ
福
千
代
が
湯
か
ら
上
が
っ
て
四
書
五
経
の
読
誦
と
尺
八
の
復
習
い
を
了
え
て
、
自
室
に
座
っ
て
待
つ
こ
と
暫
し
、
簡
素
な
夕
餉
の
膳
部
が
運
ば
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
*
*
*
*
*
*
*
お
気
持
ち
に
も
叶
う
の
か
も
知
れ
な
い
⋮
﹂
吉
野
は
、
福
千
代
の
尺
八
の
音
を
聴
き
な
が
ら
、
そ
ん
な
こ
と
を
考
え
て
い
た
。
半
月
が
西
に
傾
き
か
歳
を
考
え
れ
ば
、
お
宿
下
が
り
を
願
い
出
て
、
永
の
お
暇
を
す
る
よ
り
は
、
こ
の
ま
ま
福
千
代
君
の
お
世
話
を
終
生
続
け
る
方
が
福
千
代
君
の
親
も
同
然
⋮
、
そ
う
だ
わ
⋮
、
福
千
代
君
に
と
っ
て
私
は
、
恐
れ
多
く
も
家
光
公
に
と
っ
て
の
春
日
局
の
よ
う
な
立
場
⋮
、
﹁
若
く
し
て
子
を
亡
く
し
、
夫
を
亡
く
し
、
福
千
代
君
の
乳
母
と
し
て
お
屋
敷
に
上
が
っ
て
か
ら
十
四
年
近
く
、
福
千
代
君
に
と
っ
て
は
私
が
母
い
て
い
る
こ
と
は
、
良
く
分
っ
て
い
た
。
代
君
付
の
老
女
と
し
て
福
千
代
君
を
お
世
話
す
る
か
⋮
、
﹂
吉
野
は
迷
っ
て
い
た
。
福
千
代
が
奥
方
様
に
は
抱
い
て
い
な
い
感
情
を
自
分
に
対
し
て
抱
﹁
若
君
が
元
服
し
て
、
上
屋
敷
に
戻
ら
れ
、
部
屋
住
み
と
し
て
お
城
勤
め
を
初
め
ら
れ
た
ら
、
永
の
暇
を
願
い
出
る
か
⋮
、
そ
れ
と
も
終
生
福
千
ち
を
匂
わ
せ
た
。
﹁
も
っ
と
も
っ
と
上
達
し
て
、
吉
野
の
箏
と
合
奏
し
た
い
⋮
﹂
と
、
福
千
代
は
、
言
外
に
吉
野
に
ず
っ
と
側
に
居
て
欲
し
い
と
思
っ
て
い
る
気
持
野
は
、
福
千
代
を
褒
め
た
。
﹁
若
君
は
、
短
い
間
に
随
分
と
上
達
な
さ
り
ま
し
た
⋮
、
音
が
滑
ら
か
で
淀
み
が
あ
り
ま
せ
ぬ
⋮
、
そ
れ
に
音
色
が
澄
ん
で
い
ま
す
⋮
﹂
と
、
吉
座
っ
て
福
千
代
の
横
顔
を
見
詰
め
て
、
尺
八
の
音
を
聴
い
て
い
た
。
卯
月
に
入
っ
た
ば
か
り
の
そ
の
日
、
福
千
代
が
縁
側
近
く
に
座
っ
て
尺
八
の
お
さ
ら
い
を
続
け
て
い
る
間
、
吉
野
は
そ
の
直
ぐ
斜
め
後
ろ
に
初恋ー抜粋
吉
野
の
胸
の
内
に
去
来
す
る
思
い
も
、
同
じ
だ
っ
た
の
か
も
知
れ
な
い
。
の
の
だ
別
っ
れ
た そ と
。 う は
い 、
う 比
思 べ
い 物
か に
ら な
、 ら
福 な
千 い
代 ほ
の ど
胸 重
の い
内 別
に れ
﹁ に
吉 な
野 る
の 。
胸
に
抱
か
れ
て
眠
り
た
い
⋮
﹂
と
い
う
、
そ
ん
な
気
持
ち
が
急
に
沸
き
起
こ
っ
て
き
た
吉
野
は
、
永
の
暇
を
と
っ
て
、
再
び
何
処
か
に
嫁
に
行
っ
て
し
ま
う
か
も
知
れ
な
い
。
吉
野
と
の
別
れ
は
、
ほ
ん
の
一
時
恋
心
を
抱
い
た
あ
の
乙
女
と
し
て
、
一
重
に
上
様
へ
の
ご
奉
公
の
生
活
が
始
ま
る
。
生
ま
れ
て
こ
の
方
、
終
始
、
母
親
以
上
に
身
近
な
吉
野
と
は
、
そ
れ
っ
き
り
会
え
な
く
な
る
。
そ
れ
で
も
、
否
応
無
し
に
そ
の
時
が
間
も
な
く
や
っ
て
来
る
。
そ
う
な
る
と
、
下
屋
敷
を
離
れ
て
、
上
屋
敷
に
戻
り
、
文
字
通
り
部
屋
住
み
と
か
っ
た
。
元
服
し
て
、
登
城
し
て
役
職
に
つ
く
と
、
ど
の
よ
う
な
困
難
が
待
ち
受
け
て
い
る
の
だ
ろ
う
か
⋮
、
福
千
代
の
不
安
は
尽
き
な
か
っ
た
。
父
親
と
母
親
が
や
っ
て
来
て
、
百
合
姫
を
加
え
て
、
合
奏
し
て
楽
し
む
こ
と
も
あ
っ
た
。
そ
れ
で
も
、
福
千
代
に
は
、
武
士
の
生
活
が
窮
屈
で
な
ら
な
﹁
何
事
も
、
手
続
き
が
あ
る
の
や
も
知
れ
ぬ
⋮
﹂
と
、
福
千
代
は
思
い
、
先
導
す
る
女
中
の
清
川
の
後
に
つ
い
て
寝
間
に
向
か
っ
た
。
﹁
私
は
、
今
暫
く
後
に
参
り
ま
す
⋮
﹂
と
、
吉
野
が
答
え
た
。
﹁
ね
え
や
は
、
来
ぬ
の
か
⋮
﹂
と
、
福
千
代
は
訊
い
た
。
し
く
見
え
る
⋮
、
臆
す
る
ま
い
ぞ
、
福
千
代
⋮
﹂
と
、
福
千
代
は
自
ら
に
言
い
聞
か
せ
た
。
﹁
今
宵
の
﹁
ね
え
や
﹂
は
、
あ
の
頃
の
﹁
ね
え
や
﹂
で
は
な
い
⋮
、
お
内
証
と
し
て
儂
の
初
伽
の
添
い
寝
を
す
る
心
構
え
を
整
え
て
、
何
や
ら
神
々
と
、
福
千
代
は
、
自
分
の
心
の
奥
底
の
本
念
を
推
し
量
ろ
う
と
し
た
。
﹁
儂
が
初
め
て
恋
心
を
覚
え
た
の
は
、
あ
の
あ
ば
ら
家
の
乙
女
に
で
は
な
く
、
も
し
か
し
た
ら
、
こ
の
﹁
ね
え
や
﹂
に
で
は
な
か
っ
た
の
か
⋮
﹂
い
で
い
た
あ
の
﹁
ね
え
や
﹂
の
膝
元
の
匂
い
が
福
千
代
の
脳
裏
に
甦
っ
て
き
た
。
て
い
た
。
吉
野
は
、
何
時
に
な
く
清
楚
な
様
子
で
白
檀
の
匂
い
に
包
ま
れ
て
い
た
。
曾
て
、
も
っ
と
幼
い
頃
に
、
﹁
ね
え
や
﹂
の
腰
に
纏
わ
り
付
い
て
嗅
福
千
代
が
踵
を
返
す
と
、
目
の
前
に
﹁
ね
え
や
﹂
が
髷
を
下
ろ
し
て
首
筋
で
お
す
べ
ら
か
し
の
よ
う
に
長
髪
を
纏
め
て
、
端
正
な
腰
巻
姿
で
座
っ
か
り
、
別
の
一
人
が
福
千
代
を
寝
間
に
案
内
し
た
。
吉
野
の
福
千
代
を
促
す
言
葉
を
聞
い
て
、
後
ろ
に
控
え
て
い
た
二
人
の
若
い
腰
元
が
つ
い
と
立
ち
上
が
っ
て
縁
側
の
外
の
戸
を
建
て
付
け
に
掛
初恋ー抜粋
と
止
ん
で
い
た
。
曲
が
終
わ
っ
た
と
こ
ろ
で
、
吉
野
が
云
っ
た
。
多
分
、
百
合
姫
も
女
中
に
促
さ
れ
た
の
で
あ
ろ
う
か
、
東
の
館
か
ら
聞
こ
え
て
い
た
箏
の
音
も
ぴ
た
り
﹁
若
君
、
夜
気
が
冷
と
う
な
っ
て
ま
い
り
ま
し
た
⋮
、
お
風
邪
を
召
し
ま
せ
ぬ
よ
う
、
そ
ろ
そ
ろ
お
寝
間
に
お
引
き
上
げ
な
さ
り
ま
せ
⋮
﹂
と
、
議
と
心
が
落
ち
着
い
た
。
の
匂
い
を
嗅
い
で
い
た
。
こ
の
香
り
は
、
乳
母
の
吉
野
の
香
り
と
し
て
、
ず
っ
と
嗅
い
で
き
た
匂
い
だ
っ
た
。
こ
の
香
り
を
嗅
ぐ
と
、
福
千
代
は
不
思
て
、
尺
八
で
習
い
覚
え
た
ば
か
り
の
﹁
六
段
の
調
べ
﹂
に
追
奏
し
な
が
ら
、
吹
き
入
る
風
の
吹
き
返
し
に
乗
っ
て
背
後
か
ら
馥
郁
と
漂
っ
て
く
る
白
檀
福
千
代
は
、
前
髪
の
残
る
髪
の
毛
を
後
ろ
に
束
ね
た
総
髪
に
し
て
、
東
館
か
ら
微
か
に
聞
こ
え
て
く
る
百
合
姫
の
奏
で
る
箏
の
音
に
合
わ
せ
に
整
え
て
い
た
。
白
羽
二
重
の
小
袖
と
下
帯
に
は
、
福
千
代
の
好
む
い
つ
も
の
白
檀
の
香
が
薫
き
込
め
ら
れ
て
い
た
。
け
、
吹
き
入
る
風
が
夏
の
近
い
こ
と
を
感
じ
さ
せ
て
い
た
。
吉
野
は
、
そ
の
夜
の
初
伽
に
備
え
て
、
腰
巻
き
に
着
た
打
掛
の
下
は
、
白
ず
く
め
の
装
い
こ
れ
が
姫
に
な
る
と
、
も
っ
と
窮
屈
だ
っ
た
。
先
ず
、
屋
敷
か
ら
外
に
出
る
こ
と
だ
け
で
も
容
易
な
こ
と
で
は
な
か
っ
た
。
に
よ
っ
て
父
親
の
許
し
を
得
て
よ
う
や
く
一
人
で
外
出
で
き
る
よ
う
に
な
っ
た
の
は
つ
い
最
近
の
こ
と
だ
っ
た
。
め
き
め
き
剣
術
の
腕
を
上
げ
、
﹁
新
影
流
の
免
許
皆
伝
も
そ
う
遠
く
な
い
⋮
﹂
と
判
断
し
た
、
父
親
定
衡
お
抱
え
の
剣
術
指
南
役
の
山
之
内
正
行
の
助
言
下
屋
敷
に
移
っ
て
か
ら
も
、
福
千
代
は
極
最
近
ま
で
中
間
か
供
侍
の
お
供
な
し
に
外
出
す
る
こ
と
は
な
か
っ
た
。
小
杉
道
場
に
通
い
始
め
て
、
ま
た
、
女
中
や
お
供
の
中
間
が
付
き
添
わ
な
い
外
出
な
ど
思
い
も
寄
ら
な
か
っ
た
。
ま
た
ま
女
中
に
洗
わ
れ
て
い
る
内
に
玉
茎
が
了
え
立
っ
た
と
し
て
も
、
成
人
し
て
い
な
い
限
り
、
本
人
も
女
中
も
意
に
介
さ
な
か
っ
た
。
た
。
湯
に
入
る
の
で
さ
え
、
自
分
一
人
で
す
る
こ
と
は
何
も
な
か
っ
た
。
た
だ
裸
で
女
中
達
が
世
話
し
て
く
れ
る
に
任
せ
て
い
れ
ば
良
か
っ
た
。
た
福
千
代
も
、
生
ま
れ
て
こ
の
方
、
ず
っ
と
そ
う
い
う
窮
屈
ず
く
め
の
生
活
に
慣
れ
て
い
て
、
侍
と
は
そ
う
い
う
も
の
だ
と
思
い
込
ま
さ
れ
て
い
た 役 少
。 の の
女 み
中 ぎ
が り
養 は
育 、
係 乳
の 母
女 役
中 の
頭 女
と 中
し が
て 添
、 い
そ 寝
の を
家 し
柄 、
に 乳
相 を
応 含
し ま
い せ
武 、
家 下
の
の 世
社 話
会 を
や し
家 、
庭 病
内 気
で の
の 看
仕 護
来 を
り し
や た
礼 。
儀 子
作 供
法 達
を が
教 成
え 長
込 す
む る
の に
が 連
習 れ
わ て
し 、
だ 乳
っ 母
初恋ー抜粋
子
供
達
と
て
同
じ
だ
っ
た
。
子
供
の
寝
所
の
前
後
左
右
の
小
部
屋
に
、
お
付
き
の
女
中
が
一
人
ず
つ
殿
居
と
し
て
寝
ず
の
番
を
し
、
子
供
が
幼
は
奥
女
中
が
二
人
な
い
し
四
人
ず
つ
殿
居
と
し
て
寝
ず
の
番
を
し
た
。
や
側
室
と
同
衾
す
る
時
は
も
と
よ
り
、
夫
々
別
々
に
独
り
寝
の
時
も
、
寝
所
の
前
後
左
右
の
殿
居
部
屋
に
は
、
お
目
見
え
以
上
の
番
方
の
侍
二
人
ま
た
下
屋
敷
で
あ
れ
、
殿
様
本
人
は
も
と
よ
り
、
奥
方
や
子
供
た
ち
も
、
誰
か
ら
も
見
守
ら
れ
ず
に
独
り
寝
す
る
な
ど
は
あ
り
得
な
か
っ
た
。
殿
様
が
正
室
万
石
近
い
大
身
の
旗
本
と
も
な
れ
ば
、
そ
の
居
住
の
生
活
様
式
は
、
ほ
ぼ
殿
中
や
諸
大
名
の
生
活
様
式
を
踏
襲
し
て
い
た
。
上
屋
敷
で
あ
れ
、
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
が
分
ら
ぬ
で
は
な
い
の
で
、
一
夜
だ
け
殿
居
の
女
中
達
が
寝
間
の
直
ぐ
隣
の
殿
居
部
屋
で
は
な
く
、
そ
の
先
の
座
敷
の
方
に
侍
る
よ
う
に
伝
え
た
。
い
る
⋮
﹂
と
、
福
千
代
は
、
あ
く
ま
で
直
ぐ
隣
の
殿
居
部
屋
に
何
人
も
の
女
中
達
の
侍
ら
う
寝
間
で
の
伽
を
嫌
が
っ
た
。
吉
野
は
、
福
千
代
の
気
持
ち
﹁
ね
え
や
が
居
る
で
は
な
い
か
⋮
、
そ
れ
に
枕
元
に
刀
の
備
え
も
あ
る
⋮
、
儂
と
て
も
、
も
う
立
派
に
賊
の
一
人
や
二
人
と
戦
え
る
腕
を
持
っ
て
﹁
そ
れ
で
は
、
万
一
賊
が
押
し
入
っ
て
来
た
時
に
、
若
君
を
お
守
り
で
き
ま
せ
ぬ
⋮
﹂
と
、
吉
野
は
云
っ
た
。
が
気
に
入
ら
な
か
っ
た
。
そ
し
て
、
添
い
寝
と
殿
居
の
女
中
達
を
人
払
い
し
て
く
れ
る
よ
う
に
、
吉
野
に
云
っ
た
。
が
付
い
そ た 下
し 。 目
て
黒
、
の
そ
下
の
屋
日
敷
も
で
状
は
況
、
子
は
供
同
用
じ
の
だ
寝
っ
所
た
に
。
は
唯
、
、
番
一
方
つ
の
違
侍
う
の
の
殿
は
居
、
﹁
は
女
な
中
か
が
っ
添
た
い
。
寝
そ
を
の
す
代
る
わ
⋮
り
、
﹂
、
周
と
囲
い
の
う
部
点
屋
だ
に
っ
二
た
人
。
づ
福
つ
千
の
代
殿
に
居
は
の
、
女
そ
中
れ
お
殿
様
の
お
耳
に
入
れ
ば
、
ど
ん
な
お
咎
め
を
受
け
よ
う
や
も
知
れ
な
い
の
で
す
よ
⋮
﹂
と
、
諭
す
し
か
な
か
っ
た
。
初恋ー抜粋
﹁
そ
れ
で
も
、
お
殿
様
に
厳
し
く
言
い
付
け
ら
れ
て
い
る
こ
と
で
す
か
ら
、
守
ら
な
け
れ
ば
い
け
な
い
の
が
、
こ
の
家
の
仕
来
り
な
の
で
す
⋮
、
か
に
福
千
代
の
云
う
通
り
で
、
吉
野
は
、
福
千
代
の
優
し
い
気
遣
い
が
い
じ
ら
し
か
っ
た
。
と
屋
敷
に
閉
じ
こ
め
ら
れ
て
い
て
、
可
哀
相
じ
ゃ
⋮
、
姉
弟
の
儂
と
庭
で
遊
ん
で
、
何
処
が
悪
い
の
じ
ゃ
⋮
﹂
と
、
不
満
顔
に
膨
れ
て
抗
議
し
た
。
確
に
行
く
と
、
姉
姫
の
女
中
達
に
見
咎
め
ら
れ
、
後
で
吉
野
か
ら
酷
く
叱
ら
れ
た
。
そ
ん
な
時
、
福
千
代
は
、
﹁
姉
上
は
滅
多
に
外
に
も
出
ら
れ
ず
、
ず
っ
る
わ
け
が
な
い
⋮
、
儂
だ
っ
た
ら
気
が
狂
う
⋮
﹂
と
、
何
時
も
同
情
し
て
い
た
。
時
偶
、
姉
姫
を
庭
に
誘
い
出
そ
う
と
し
て
、
庭
伝
い
に
東
の
館
の
方
福
千
代
は
、
百
合
姫
が
気
の
毒
で
な
ら
な
か
っ
た
。
﹁
庭
に
出
て
儂
と
戯
れ
遊
ぶ
こ
と
さ
え
許
さ
れ
な
い
と
は
⋮
、
そ
れ
で
は
身
体
が
丈
夫
に
な
の
奥
に
入
っ
て
、
同
じ
よ
う
な
﹁
籠
の
鳥
﹂
の
生
活
が
続
い
た
。
回
だ
け
﹁
花
見
﹂
に
で
も
出
掛
け
る
く
ら
い
の
も
の
だ
っ
た
。
病
弱
な
れ
ば
尚
更
で
、
終
生
自
分
の
屋
敷
か
ら
出
る
こ
と
も
な
く
、
嫁
げ
ば
、
嫁
ぎ
先
家
紋
の
入
っ
た
専
用
の
駕
籠
に
乗
り
、
周
囲
を
お
付
き
の
女
中
や
腰
元
、
中
間
に
取
り
囲
ま
れ
て
の
行
列
騒
ぎ
に
な
っ
た
。
そ
ん
な
機
会
は
、
年
に
一
裏
で
反
芻
し
て
い
た
。
福
千
代
は
、
吉
野
の
話
を
聞
く
と
も
な
く
聞
き
な
が
ら
、
先
度
目
撃
し
た
自
分
の
父
親
と
あ
の
あ
ば
ら
家
の
娘
と
の
激
し
い
情
交
の
光
景
を
脳
気
持
ち
を
和
ら
げ
よ
う
と
、
吉
野
は
昔
話
を
し
た
。
か
っ
た
こ
と
⋮
、
こ
の
吉
野
は
、
懐
か
し
く
も
、
感
慨
深
い
思
い
を
し
て
い
ま
す
わ
⋮
﹂
と
、
福
千
代
の
脇
に
添
い
寝
を
す
る
と
す
ぐ
に
、
福
千
代
の
あ
の
幼
気
な
若
君
が
も
う
元
服
を
迎
え
る
歳
に
な
ら
れ
て
⋮
、
そ
し
て
今
宵
初
伽
の
添
い
寝
を
さ
せ
て
い
た
だ
く
な
ど
と
⋮
、
思
い
も
寄
ら
な
ほ
ほ
ほ
っ
⋮
、
尾
篭
な
話
で
す
け
れ
ど
⋮
、
あ
の
時
こ
の
吉
野
は
、
若
君
の
ご
不
興
が
治
ま
る
よ
う
に
と
、
必
死
で
し
た
わ
⋮
、
山
の
虫
が
出
て
⋮
、
そ
し
た
ら
、
ほ
ほ
ほ
っ
⋮
、
お
腹
の
張
り
が
引
い
て
、
け
ろ
っ
と
良
く
な
ら
れ
て
、
元
の
元
気
な
若
君
に
戻
ら
れ
ま
し
た
わ
⋮
、
お
煎
じ
薬
を
差
し
上
げ
た
後
、
吉
野
が
添
い
寝
を
し
て
、
お
腹
を
一
晩
中
擦
っ
て
差
し
上
げ
ま
し
た
わ
ね
⋮
、
翌
朝
、
御
用
所
で
便
と
一
緒
に
沢
わ
ね
⋮
、
若
君
が
癇
の
虫
を
起
こ
し
て
⋮
、
﹁
お
腹
が
痛
い
⋮
﹂
と
、
む
ず
か
っ
て
⋮
、
﹁
若
君
、
吉
野
が
こ
の
前
若
君
に
添
い
寝
を
し
た
の
は
何
時
の
こ
と
で
し
た
か
し
ら
⋮
、
そ
う
⋮
、
あ
れ
は
、
も
う
八
年
の
余
も
前
の
こ
と
で
す
野
の
白
羽
二
重
の
寝
間
着
か
ら
、
慣
れ
親
し
ん
だ
白
檀
の
香
の
香
り
が
福
千
代
の
鼻
腔
を
突
い
た
。
て
い
た
だ
き
ま
す
る
⋮
、
こ
れ
が
若
君
と
の
最
後
の
添
い
寝
に
ご
ざ
り
ま
す
る
⋮
﹂
と
云
っ
て
、
吉
野
は
、
福
千
代
の
左
脇
に
身
体
を
横
た
え
た
。
吉
初恋ー抜粋
打
ち
掛
け
を
丁
寧
に
衣
紋
掛
け
に
掛
け
て
か
ら
、
吉
野
は
、
福
千
代
の
左
脇
に
跪
い
て
、
﹁
今
宵
、
こ
の
吉
野
が
若
君
の
初
伽
の
添
い
寝
を
さ
せ
野
が
先
ほ
ど
の
白
装
束
に
打
掛
の
腰
巻
姿
で
入
っ
て
き
た
。
こ
こ
か
ら
、
い
つ
も
と
違
っ
て
い
た
。
暫
く
待
つ
ほ
ど
に
、
北
側
の
襖
が
静
か
に
開
い
て
、
跪
い
て
深
々
と
お
辞
儀
を
し
た
後
、
﹁
若
君
、
吉
野
が
入
り
ま
す
⋮
﹂
と
声
を
掛
け
て
、
吉
せ
て
夜
着
を
着
せ
掛
け
て
か
ら
清
川
は
出
て
行
っ
た
。
そ
こ
ま
で
は
、
い
つ
も
と
少
し
も
違
わ
な
か
っ
た
。
帯
を
腰
に
捲
い
て
、
前
で
結
ん
で
く
れ
た
。
そ
し
て
、
夜
着
を
撥
ね
上
げ
て
、
﹁
ど
う
ぞ
、
お
休
み
な
さ
り
ま
せ
⋮
﹂
と
云
っ
て
、
福
千
代
を
横
た
わ
ら
い
つ
も
と
変
わ
ら
な
か
っ
た
。
肌
襦
袢
を
脱
が
せ
、
猿
股
を
脱
が
せ
て
、
白
い
下
帯
を
腰
に
巻
き
付
け
て
、
白
い
寝
間
着
を
着
せ
か
け
、
白
い
細
幅
の
が
、
衣
装
駕
籠
を
手
元
に
お
い
て
、
﹁
寝
間
着
に
お
召
し
替
え
い
た
し
ま
し
ょ
う
⋮
﹂
と
い
っ
て
、
福
千
代
の
着
衣
を
脱
が
せ
に
掛
か
っ
た
。
そ
れ
も
、
女
中
の
清
川
に
案
内
さ
れ
て
、
福
千
代
は
閨
に
入
っ
た
。
部
屋
の
隅
に
行
灯
が
灯
り
、
寝
間
は
い
つ
も
の
通
り
だ
っ
た
。
閨
に
入
る
と
、
清
川
ど
れ
ほ
ど
時
間
が
経
っ
た
の
か
、
吉
野
も
福
千
代
を
抱
え
込
ん
だ
ま
ま
、
微
睡
み
か
け
た
。
千
代
の
兆
す
の
を
じ
っ
と
待
っ
た
。
重
か
っ
た
。
吉
野
は
そ
の
福
千
代
の
重
み
を
受
け
止
め
な
が
ら
、
福
千
代
の
総
髪
の
頭
を
愛
お
し
そ
う
に
抱
え
込
ん
で
、
福
千
代
に
頬
擦
り
し
て
、
福
福
千
代
は
、
ま
だ
子
供
年
齢
だ
と
は
云
え
、
毎
日
剣
術
で
身
体
を
鍛
え
て
い
る
た
め
、
決
し
て
小
柄
な
方
で
も
な
い
吉
野
よ
り
ず
っ
と
大
き
く
、
た 千 飽
。 代 き
を た
受 の
け か
入 、
れ 吉
る 野
姿 の
勢 身
で 体
、 の
股 上
を に
広 伸
げ し
て 掛
福 か
千 る
代 よ
の う
腰 に
を し
掻 て
い 、
込 左
ん 肩
口
で に
い 頬
た を
が 埋
、 め
ど て
う 、
し 暫
た く
わ し
け て
か す
、 や
福 す
千 や
代 寝
の 入
玉 っ
茎 て
は し
了 ま
え っ
立 た
っ 。
て 吉
い 野
な は
か 、
っ 福
福
千
代
は
、
子
供
の
時
と
同
じ
仕
草
で
、
右
手
で
左
の
乳
房
を
揉
み
な
が
ら
、
右
の
乳
首
を
吸
っ
て
い
た
が
、
乳
が
出
る
わ
け
で
も
な
い
の
で
し
た
。 ﹁
さ
あ
、
若
君
⋮
、
私
の
乳
が
吸
え
る
の
も
今
宵
が
最
後
⋮
、
お
吸
い
に
な
り
た
け
れ
ば
、
存
分
に
お
吸
い
な
さ
り
ま
せ
⋮
﹂
と
、
福
千
代
を
促
胸
元
を
押
し
広
げ
て
、
福
千
代
の
身
体
を
更
に
強
く
引
き
寄
せ
た
。
も
う
出
な
い
の
に
⋮
、
隠
れ
て
乳
首
を
吸
わ
せ
て
差
し
上
げ
ま
し
た
わ
ね
⋮
﹂
と
云
い
な
が
ら
、
吉
野
は
、
自
分
の
と
福
千
代
の
帯
を
解
い
て
緩
め
、
初恋ー抜粋
く
て
⋮
、
可
愛
く
て
⋮
、
お
殿
様
や
奥
方
様
に
知
れ
た
ら
、
大
目
玉
を
食
ら
っ
て
お
宿
下
が
り
を
命
じ
ら
れ
る
と
分
っ
て
い
な
が
ら
⋮
、
そ
れ
に
乳
は
﹁
そ
う
で
す
わ
ね
⋮
、
若
君
は
甘
え
ん
坊
で
し
た
か
ら
、
乳
離
れ
し
て
か
ら
も
、
良
く
私
の
乳
を
吸
い
に
来
ま
し
た
わ
⋮
、
私
に
は
そ
れ
が
可
愛
﹁
悪
戯
で
、
ね
え
や
の
乳
を
吸
っ
た
こ
と
を
思
い
出
す
⋮
﹂
と
、
福
千
代
が
呟
く
よ
う
に
云
っ
た
。
は
、
吉
野
に
覆
い
被
さ
る
よ
う
に
身
体
を
寄
せ
て
、
顔
を
吉
野
の
胸
元
に
押
し
付
け
て
行
っ
た
。
て
い
た
頃
の
仕
草
と
同
じ
だ
っ
た
。
吉
野
は
、
そ
の
当
時
と
同
じ
愛
お
し
さ
が
込
み
上
げ
て
き
て
、
福
千
代
の
項
を
抱
き
締
め
た
。
す
る
と
、
福
千
代
ぼ
っ
て
、
福
千
代
は
更
に
深
く
吉
野
の
肩
口
に
顔
を
埋
め
た
。
そ
の
福
千
代
の
仕
草
は
、
曾
て
吉
野
の
腰
に
纏
わ
り
付
い
て
膝
元
の
匂
い
を
嗅
ぎ
に
来
福
千
代
は
、
反
射
的
に
左
に
向
い
て
、
吉
野
の
肩
口
に
顔
を
埋
め
た
。
吉
野
の
懐
か
し
い
香
り
が
、
ふ
く
よ
か
で
柔
ら
か
な
胸
元
か
ら
立
ち
上
方
に
引
き
寄
せ
よ
う
と
し
た
。
慣
れ
親
し
ん
だ
吉
野
の
香
り
と
、
柔
ら
か
な
肌
触
り
が
福
千
代
を
現
実
に
引
き
戻
し
た
。
﹁
若
君
、
も
そ
っ
と
こ
ち
ら
に
お
寄
り
な
さ
り
ま
せ
⋮
﹂
と
云
っ
て
、
吉
野
は
、
福
千
代
の
首
の
下
に
右
腕
を
挿
し
入
れ
て
、
福
千
代
を
自
分
の
﹁
う
う
∼
っ
、
ね
え
や
っ
⋮
、
も
う
駄
目
だ
っ
⋮
﹂
と
、
福
千
代
が
呻
い
た
。
声
を
立
て
ぬ
よ
う
に
、
吉
野
紙
の
懐
紙
を
口
に
く
わ
え
た
。
れ
る
ま
で
討
ち
果
た
さ
れ
ぬ
よ
う
に
辛
抱
し
て
、
お
戦
い
召
さ
れ
ま
せ
⋮
﹂
と
耳
元
で
云
っ
て
、
吉
野
は
、
受
け
腰
で
福
千
代
の
動
き
に
応
じ
な
が
ら
、
﹁
若
君
、
さ
あ
、
そ
の
槍
で
思
う
存
分
お
戦
い
な
さ
れ
ま
せ
⋮
、
た
や
す
く
討
ち
果
た
さ
れ
て
は
な
り
ま
せ
ぬ
ぞ
⋮
、
こ
の
吉
野
が
討
ち
果
た
さ
め
苛
ま
れ
て
い
る
の
を
感
じ
て
い
た
。
福
千
代
は
、
ま
だ
完
全
に
目
覚
め
て
い
な
か
っ
た
。
唯
、
夢
と
も
現
と
も
知
れ
ず
、
自
分
の
玉
茎
が
や
た
ら
に
熱
い
湯
壷
の
中
で
蠢
く
襞
に
責
締
め
て
、
更
に
奥
深
く
福
千
代
を
迎
え
入
れ
た
。
﹁
若
君
、
お
見
事
っ
⋮
、
ご
自
分
の
槍
で
本
懐
遂
げ
ら
れ
ま
し
た
よ
⋮
﹂
と
耳
元
で
云
っ
て
、
吉
野
は
両
腕
と
両
膝
で
福
千
代
を
ひ
し
っ
と
抱
き
そ
れ
は
、
福
千
代
が
自
分
の
玉
茎
で
、
吉
野
の
玉
門
を
貫
い
た
瞬
間
だ
っ
た
。
吉
野
の
顔
に
変
わ
っ
た
。
そ
の
刹
那
、
福
千
代
は
、
﹁
ね
え
や
っ
⋮
﹂
と
叫
ん
で
、
し
が
み
付
い
た
。
乙
女
の
顔
が
見
る
間
に
変
わ
っ
て
、
初
め
は
姉
の
百
合
姫
の
顔
に
な
っ
た
。
そ
れ
か
ら
、
藤
川
の
顔
に
な
り
、
清
川
の
顔
に
変
わ
り
、
最
後
に
初恋ー抜粋
え
立
っ
た
玉
茎
を
刺
し
通
し
た
。
同
時
に
、
乙
女
は
大
き
な
声
を
発
し
て
、
上
体
を
撥
ね
上
げ
て
、
福
千
代
を
見
た
。
福
千
代
の
目
の
前
の
乙
女
の
空
割
が
次
第
に
大
き
く
な
り
、
福
千
代
に
向
か
っ
て
口
を
開
い
た
。
福
千
代
は
、
そ
の
朱
色
の
口
に
向
か
っ
て
了
﹁
若
君
、
さ
あ
、
そ
の
見
事
な
槍
に
て
、
私
を
突
き
通
し
な
さ
れ
⋮
﹂
と
福
千
代
の
耳
元
で
囁
く
よ
う
に
云
っ
て
、
吉
野
は
腰
を
少
し
引
い
た
。
た
福
千
代
の
玉
茎
が
蠢
い
て
い
る
の
を
知
っ
た
。
福
千
代
の
腰
の
動
き
に
気
付
い
て
、
吉
野
は
微
睡
み
か
ら
覚
め
た
。
そ
し
て
自
分
の
空
割
の
上
で
、
い
つ
も
の
朝
の
よ
う
に
見
事
に
了
え
立
っ
乙
女
の
空
割
を
突
き
通
そ
う
と
し
た
。
福
千
代
の
目
の
前
で
反
り
返
っ
て
、
鴇
色
の
空
割
の
襞
を
露
に
突
き
出
し
て
い
た
。
福
千
代
の
玉
茎
が
了
え
立
ち
、
父
親
が
し
た
の
と
同
じ
よ
う
に
、
そ
の
時
、
福
千
代
は
、
夢
を
見
始
め
て
い
た
。
夢
の
中
で
、
あ
の
時
あ
の
あ
ば
ら
家
の
乙
女
が
父
の
定
衡
に
対
し
て
い
た
の
と
同
じ
よ
う
に
、
度
白
小
袖
の
ま
ま
、
広
間
に
お
連
れ
し
て
く
だ
さ
い
な
⋮
﹂
と
言
い
置
い
て
、
吉
野
は
自
分
の
局
に
戻
っ
た
。
な
く
お
起
こ
し
し
て
、
湯
殿
で
身
体
を
清
め
て
差
し
上
げ
て
く
だ
さ
い
。
そ
の
間
に
寝
間
を
綺
麗
に
片
付
け
て
、
湯
か
ら
お
出
に
な
っ
た
ら
、
も
う
一
ら
、
打
掛
を
腰
巻
き
に
着
て
、
裏
の
殿
居
の
間
を
抜
け
て
、
次
の
間
に
侍
る
女
中
達
に
挨
拶
し
た
後
、
﹁
若
君
は
ま
だ
眠
っ
て
お
ら
れ
ま
す
る
が
、
間
も
帯
を
取
り
去
っ
て
脇
に
片
付
け
、
福
千
代
の
白
小
袖
を
整
え
て
帯
を
し
っ
か
り
と
締
め
た
。
更
に
、
立
ち
上
が
っ
て
自
分
の
白
小
袖
を
着
直
し
て
か
た
、
盥
の
水
で
手
拭
い
を
絞
り
、
丁
寧
に
福
千
代
の
股
間
を
拭
い
清
め
た
。
次
い
で
自
ら
の
股
間
を
拭
き
清
め
て
か
ら
、
福
千
代
の
下
帯
と
自
ら
の
下
﹁
う
う
∼
っ
﹂
と
云
っ
た
な
り
、
福
千
代
は
眠
り
続
け
て
い
た
。
吉
野
は
、
吉
野
紙
で
二
人
の
股
間
を
拭
っ
た
あ
と
、
傍
ら
に
用
意
し
て
あ
っ
仰
向
け
に
し
た
。
先
に
目
覚
め
た
の
は
、
や
は
り
吉
野
だ
っ
た
。
吉
野
は
、
ま
だ
完
全
に
萎
え
切
っ
て
い
な
い
福
千
代
の
玉
茎
を
抜
き
取
り
、
そ
っ
と
福
千
代
を
千
代
を
腹
上
に
抱
え
た
ま
ま
、
朝
ま
で
微
睡
ん
だ
。
福
千
代
は
、
そ
れ
か
ら
一
度
も
吉
野
か
ら
離
れ
る
こ
と
な
く
、
都
合
で
五
合
、
吉
野
と
情
を
交
わ
し
て
、
疲
れ
果
て
て
寝
入
っ
た
。
吉
野
も
、
福
や
が
今
自
分
の
腹
の
下
に
居
て
、
確
実
に
繋
が
っ
て
い
る
⋮
、
そ
の
実
感
が
福
千
代
の
中
の
吉
野
に
対
す
る
愛
お
し
さ
を
募
ら
せ
た
。
愛
そ
の
も
の
の
感
覚
だ
っ
た
。
福
千
代
が
は
っ
き
り
意
識
し
て
い
な
い
心
の
奥
底
で
願
っ
て
い
た
ね
え
や
と
の
情
交
が
今
現
実
に
叶
い
、
そ
の
ね
え
慕
っ
て
い
た
の
が
他
な
ら
ぬ
﹁
ね
え
や
だ
っ
た
﹂
こ
と
を
覚
っ
た
。
あ
の
夢
の
中
で
の
情
交
と
は
似
て
非
な
る
こ
の
感
覚
は
、
紛
れ
も
な
い
現
実
の
性
初恋ー抜粋
夢
の
中
で
あ
の
あ
ば
ら
家
の
娘
を
通
し
て
、
次
々
と
相
手
が
代
わ
り
、
最
後
に
ね
え
や
の
顔
で
落
ち
着
い
た
こ
と
か
ら
、
自
分
が
ず
っ
と
恋
い
福
千
代
は
、
空
ろ
な
感
覚
の
中
で
、
﹁
こ
れ
が
情
を
交
わ
す
と
云
う
こ
と
な
の
だ
⋮
﹂
と
、
初
め
て
性
愛
の
本
然
を
知
っ
た
思
い
が
し
て
い
た
。
り
ま
す
る
⋮
﹂
と
、
云
い
な
が
ら
、
吉
野
は
、
福
千
代
の
背
中
を
撫
で
擦
っ
た
。
﹁
若
君
、
お
見
事
に
ご
ざ
り
ま
す
る
⋮
、
よ
く
ぞ
堪
え
ら
れ
ま
し
た
⋮
、
こ
れ
ぞ
、
武
士
に
相
応
し
い
初
伽
の
儀
⋮
、
吉
野
は
、
嬉
し
ゅ
う
ご
ざ
﹁
う
わ
あ
∼
っ
、
推
参
っ
⋮
、
参
る
ぞ
∼
っ
⋮
﹂
と
叫
ん
で
、
福
千
代
は
、
吉
野
に
し
が
み
付
い
て
精
を
発
し
て
果
て
た
。
口
に
く
わ
え
た
懐
紙
の
隙
間
か
ら
く
ぐ
も
っ
た
声
で
云
い
⋮
、
あ
り
っ
た
け
の
力
で
福
千
代
を
締
め
つ
け
た
後
、
ぐ
っ
た
り
と
な
っ
た
。
そ
の
瞬
間
、
﹁
あ
あ
∼
っ
、
も
う
、
も
う
、
吉
野
は
参
り
ま
す
っ
⋮
、
も
う
果
て
ま
す
っ
⋮
、
福
千
代
さ
ま
っ
⋮
、
吉
野
に
続
い
て
お
果
て
な
さ
れ
っ
⋮
﹂
と
、
何
度
も
押
さ
え
つ
け
た
。
福
千
代
は
、
必
死
に
堪
え
続
け
て
、
腰
を
動
か
し
た
。
発
す
る
の
を
堪
え
な
が
ら
、
吉
野
は
、
く
わ
え
た
懐
紙
の
隙
間
か
ら
く
ぐ
も
っ
た
声
で
叱
咤
激
励
し
な
が
ら
、
福
千
代
の
腰
骨
の
窪
み
を
両
方
の
踵
で
﹁
な
か
な
か
⋮
、
若
君
⋮
、
私
は
ま
だ
討
ち
果
た
さ
れ
て
お
り
ま
せ
ぬ
ぞ
⋮
、
し
っ
か
り
堪
え
ま
せ
え
∼
っ
⋮
﹂
と
、
昂
ま
り
来
る
快
感
に
声
を
げ
て
、
拳
を
握
り
、
身
じ
ろ
ぎ
一
つ
せ
ず
に
座
敷
の
間
の
両
親
を
見
据
え
て
い
た
。
吉
野
が
お
次
か
ら
受
け
取
っ
た
盆
を
恭
し
く
捧
げ
持
っ
て
、
晒
木
綿
の
六
尺
褌
を
腰
回
り
に
締
め
た
。
そ
の
間
、
福
千
代
は
、
両
腕
両
脚
を
心
持
ち
広
定
衡
の
一
言
が
終
わ
る
と
、
直
ぐ
に
腰
元
達
が
立
ち
上
が
っ
て
、
福
千
代
を
立
た
せ
、
白
小
袖
と
下
帯
を
取
り
払
っ
て
素
っ
裸
に
し
、
直
ち
に
、
苦
し
ゅ
う
な
い
⋮
、
下
帯
初
め
の
儀
、
許
す
⋮
﹂
﹁
う
む
⋮
、
そ
れ
は
目
出
た
い
⋮
、
こ
れ
で
福
千
代
も
元
服
の
準
備
が
整
っ
た
か
⋮
、
目
出
た
い
⋮
、
目
出
た
い
⋮
、
し
上
げ
ま
す
る
⋮
﹂
と
、
吉
野
は
、
福
千
代
に
並
ん
で
部
屋
の
隅
に
座
っ
て
、
仰
々
し
く
言
っ
た
。
こ
れ
よ
り
、
お
殿
様
の
お
許
し
を
得
て
、
下
帯
初
め
の
儀
執
り
行
わ
せ
て
い
た
だ
き
ま
す
る
⋮
、
私
、
女
中
頭
の
吉
野
よ
り
お
殿
様
に
言
上
申
無
事
初
伽
の
儀
を
お
済
ま
せ
に
な
ら
れ
ま
し
た
⋮
、
﹁
昨
夜
半
か
ら
本
日
早
暁
に
か
け
て
、
若
君
福
千
代
様
、
快
刀
乱
麻
の
ご
活
躍
の
上
、
武
士
に
相
応
し
く
見
事
に
自
力
で
の
本
懐
を
遂
げ
ら
れ
、
待
っ
て
居
た
。
*
*
*
*
*
*
*
初恋ー抜粋
に
、
早
朝
に
到
着
し
て
い
た
狩
装
束
姿
の
殿
様
が
床
几
に
ど
っ
か
と
座
り
、
そ
の
脇
に
奥
方
が
毛
氈
の
上
に
打
掛
腰
巻
姿
で
並
ん
で
、
吉
野
の
登
場
を
の
女
中
達
が
取
り
囲
み
、
襖
を
外
し
た
四
方
の
殿
居
部
屋
に
学
問
指
南
役
、
剣
術
指
南
役
を
初
め
近
侍
の
侍
達
が
集
い
、
座
敷
の
間
に
は
床
の
間
を
背
広
間
で
は
、
福
千
代
が
前
髪
を
残
し
た
ま
ま
髷
を
結
い
直
し
て
も
ら
い
、
真
新
し
い
白
小
袖
を
着
て
座
っ
て
い
た
。
そ
の
周
囲
に
は
、
お
付
き
用
意
し
て
お
い
た
真
新
し
い
褌
を
盆
に
乗
せ
て
お
次
に
持
た
せ
て
、
福
千
代
の
居
る
広
間
に
戻
っ
た
。
吉
野
は
、
自
分
の
局
に
戻
る
と
直
ぐ
に
、
女
中
専
用
の
湯
殿
で
、
身
体
を
清
め
て
か
ら
、
自
室
に
戻
り
、
髷
を
高
島
田
に
結
い
直
し
て
正
装
し
、
*
*
*
*
*
*
*
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
*
*
*
*
*
*
*
く
応
え
て
く
れ
た
こ
と
で
、
来
し
方
の
様
々
な
出
来
事
の
想
い
出
と
共
に
、
感
動
に
も
似
た
喜
び
を
噛
み
し
め
て
い
た
。
吉
野
は
、
福
千
代
が
生
ま
れ
て
こ
の
方
我
が
子
の
ご
と
く
慈
し
み
育
ん
で
き
て
、
福
千
代
を
一
人
前
の
男
に
し
、
福
千
代
も
吉
野
の
期
待
に
良
こ
う
し
て
、
福
千
代
の
元
服
に
向
け
た
第
一
段
階
の
儀
式
が
済
ん
だ
。
初恋ー抜粋
吉
野
は
、
殿
様
と
奥
方
の
前
に
進
み
出
て
、
褒
美
の
目
録
を
載
せ
た
盆
を
恭
し
く
押
し
戴
い
て
引
き
下
が
っ
た
。
﹁
吉
野
も
、
よ
う
大
役
を
果
た
し
て
く
れ
た
⋮
、
ご
苦
労
で
あ
っ
た
⋮
、
褒
美
を
取
ら
す
ぞ
⋮
﹂
と
、
定
衡
が
吉
野
を
労
っ
た
。
﹁
若
君
、
ご
立
派
⋮
、
お
め
で
と
う
ご
ざ
り
ま
す
る
⋮
﹂
と
、
並
み
居
る
者
全
員
が
唱
和
し
て
云
っ
た
。
﹁
う
む
⋮
、
福
千
代
、
武
士
ら
し
い
物
怖
じ
せ
ぬ
態
度
、
父
も
母
も
満
足
じ
ゃ
⋮
、
褒
め
て
取
ら
す
⋮
﹂
と
定
衡
は
音
声
高
く
云
っ
た
。
﹁
こ
れ
に
て
、
下
帯
初
め
の
儀
終
わ
り
ま
し
て
ご
ざ
り
ま
す
る
⋮
﹂
と
、
再
び
吉
野
が
跪
い
て
言
上
す
る
と
、
な
気
持
ち
に
な
っ
て
、
安
堵
し
た
。
*
*
*
*
*
*
*
出
仕
が
叶
う
よ
う
に
な
れ
ば
、
後
は
若
君
次
第
⋮
﹂
と
、
そ
れ
を
聞
い
て
吉
野
は
、
感
無
量
の
思
い
を
噛
み
し
め
な
が
ら
も
、
内
心
解
放
さ
れ
た
よ
う
﹁
こ
れ
で
よ
う
や
く
、
自
分
の
養
育
係
と
し
て
の
大
任
が
終
わ
っ
た
⋮
、
そ
し
て
上
様
と
の
初
お
目
見
が
終
わ
り
、
正
式
に
お
役
を
賜
わ
っ
て
、
が
一
膝
前
に
乗
り
出
し
て
、
大
音
声
で
宣
言
し
た
。
﹁
御
殿
の
命
を
受
け
、
某
、
山
之
内
正
行
が
烏
帽
子
親
と
し
て
福
千
代
君
の
諱
を
三
郎
秀
衡
と
改
め
る
こ
と
を
奏
上
申
す
⋮
﹂
と
、
山
之
内
正
行
こ
れ
よ
り
山
之
内
正
行
を
烏
帽
子
親
と
し
て
、
諱
を
改
め
さ
せ
る
⋮
﹂
と
、
定
衡
が
威
儀
を
正
し
て
言
っ
た
。
結
い
上
げ
る
と
、
立
派
な
若
侍
が
現
れ
た
。
そ
の
姿
を
見
て
、
吉
野
は
思
わ
ず
涙
ぐ
ん
だ
。
初恋ー抜粋
の
山
之
内
正
行
が
剃
刀
を
手
に
福
千
代
の
前
髪
を
執
り
、
青
々
と
月
代
を
剃
り
上
げ
て
、
そ
れ
ま
で
の
茶
筅
髷
か
ら
、
武
家
の
伝
統
的
な
小
銀
杏
髷
に
世
話
を
両 し 福
親 た 千
と 。 代
共
の
に
前
姉
髪
弟
執
や
り
従
と
者
元
の
服
家
の
人
儀
、
に
文
は
武
、
吉
と
野
生
も
活
同
の
席
養
し
育
た
係
。
の
吉
居
野
並
は
ぶ
前
中
日
奥
か
広
ら
座
福
敷
千
の
代
間
と
で
共
、
父
に
定
上
衡
屋
の
敷
名
に
代
赴
と
き
し
、
福
て
千
、
定
代
衡
の
の
支
剣
度
術
を
指
整
南
え
役
る
で
顔
を
合
わ
せ
、
話
を
す
る
こ
と
の
出
来
る
機
会
は
極
々
少
な
く
な
る
。
合
姫
が
輿
入
れ
す
る
坂
崎
伊
代
守
の
上
屋
敷
は
、
小
石
川
林
町
に
あ
り
、
麹
町
か
ら
は
直
ぐ
近
く
だ
と
は
い
え
、
以
後
、
福
千
代
が
百
合
姫
と
側
近
く
百
合
姫
が
輿
入
れ
の
準
備
の
た
め
に
上
屋
敷
に
戻
る
の
と
時
を
同
じ
く
し
て
、
福
千
代
の
前
髪
摂
り
と
元
服
の
儀
が
上
屋
敷
で
行
わ
れ
た
。
百
ご
ざ
り
ま
せ
ぬ
⋮
、
た
。
﹁
若
君
様
の
元
服
の
儀
も
済
み
ま
し
て
、
私
の
大
任
も
ほ
ぼ
了
え
ま
し
た
た
め
、
安
堵
い
た
し
ま
し
た
ゆ
え
か
、
こ
の
と
こ
ろ
体
調
が
思
わ
し
く
﹁
ど
う
し
た
わ
け
じ
ゃ
、
吉
野
⋮
﹂
と
、
定
衡
は
、
何
時
に
な
い
吉
野
の
様
子
に
、
訝
し
げ
に
訊
い
た
。
﹁
お
殿
様
、
折
り
入
っ
て
こ
の
吉
野
に
お
宿
下
が
り
を
お
許
し
く
だ
さ
る
よ
う
お
願
い
い
た
し
ま
す
る
⋮
﹂
と
、
定
衡
の
膝
下
に
跪
い
て
云
っ
定
衡
が
例
に
よ
っ
て
狩
の
帰
り
に
鴨
の
獲
物
を
提
げ
て
立
ち
寄
っ
て
来
た
折
に
特
に
面
談
を
願
い
出
た
。
吉
野
は
、
青
天
の
霹
靂
に
打
た
れ
た
よ
う
な
驚
き
を
覚
え
る
と
同
時
に
、
こ
と
が
容
易
で
な
い
こ
と
を
覚
っ
た
。
﹁
あ
の
た
っ
た
一
度
の
初
伽
の
お
相
手
を
し
た
だ
け
で
か
⋮
﹂
ま
っ
て
い
る
こ
と
を
覚
っ
た
。
だ
。
そ
し
て
、
七
夕
が
過
ぎ
た
頃
だ
っ
た
。
あ
の
日
か
ら
三
月
経
っ
て
も
、
な
お
月
水
を
見
な
か
っ
た
。
そ
し
て
、
軽
い
悪
阻
の
よ
う
な
状
態
が
始
﹁
ま
さ
か
⋮
﹂
吉
野
は
訝
っ
た
。
初恋ー抜粋
だ
が
、
そ
れ
か
ら
旬
日
が
過
ぎ
た
頃
、
吉
野
は
自
分
の
体
調
に
異
常
が
現
れ
て
い
る
こ
と
に
気
付
い
た
。
月
水
が
こ
こ
二
月
ば
か
り
な
い
の
続
け
る
こ
と
に
な
っ
た
。
秀
衡
を
引
き
続
き
下
屋
敷
に
住
ま
わ
せ
る
こ
と
に
し
た
。
出
仕
が
決
ま
る
ま
で
は
、
引
き
続
き
吉
野
が
女
中
頭
と
し
て
、
秀
衡
の
生
活
面
で
の
世
話
を
﹁
な
お
、
沙
汰
あ
る
ま
で
待
て
⋮
﹂
と
云
う
返
事
が
返
っ
て
き
た
。
元
服
し
た
と
は
い
え
、
部
屋
住
み
の
身
分
は
変
わ
ら
な
い
た
め
、
定
衡
は
、
い
を
立
て 定
た 衡
。 は
、
福
千
代
の
前
髪
を
執
り
と
元
服
の
儀
を
了
え
、
諱
を
三
郎
秀
衡
と
改
め
た
こ
と
を
届
け
出
て
、
上
様
と
の
初
お
目
見
の
次
第
の
お
伺
そ
ち
が
独
り
結
果
を
背
負
っ
て
、
秀
衡
の
子
を
父
無
し
子
と
し
て
生
ま
ん
が
腹
で
あ
ろ
う
が
⋮
、
云
わ
ず
と
も
、
儂
の
目
は
節
穴
で
は
な
い
⋮
、
そ
ち
の
顔
を
見
て
直
ぐ
に
分
っ
た
わ
⋮
、
そ
ち
は
、
あ
の
初
伽
の
折
に
秀
衡
の
子
を
妊
っ
た
の
で
あ
ろ
う
⋮
、
有
り
体
に
申
せ
⋮
、
吉
野
⋮
、
﹁
大
厄
ま
で
は
ま
だ
三
年
も
あ
る
⋮
、
大
厄
が
近
い
⋮
と
は
、
た
だ
の
口
実
に
過
ぎ
ま
い
⋮
、
﹁
三
十
に
ご
ざ
り
ま
す
る
⋮
﹂
﹁
吉
野
、
そ
ち
は
幾
つ
に
相
成
っ
た
⋮
﹂
即
断
し
て
云
っ
た
。
﹁
自
分
の
想
像
が
当
た
っ
て
い
れ
ば
、
ど
ち
ら
に
せ
よ
、
好
ま
し
く
は
な
い
⋮
﹂
こ
と
は
明
ら
か
だ
っ
た
。
そ
し
て
、
定
衡
は
い
つ
も
の
よ
う
に
﹁
ど
う
す
る
の
が
一
番
良
い
の
か
⋮
﹂
定
衡
は
、
考
え
て
い
た
。
﹁
⋮
⋮
⋮
、
﹂
暫
く
、
沈
黙
が
続
い
た
。
う
に
見
え
た
。
そ
し
て
、
定
衡
は
本
当
の
事
情
を
悟
っ
た
。
定
衡
は
、
そ
の
吉
野
の
顔
を
じ
っ
と
見
詰
め
て
聞
い
て
い
た
。
い
つ
も
は
引
き
締
ま
っ
て
い
る
吉
野
の
顔
に
、
少
し
む
く
み
が
現
れ
て
い
る
よ
初恋ー抜粋
吉
野
は
定
衡
の
目
を
見
据
え
て
云
っ
た
。
折
り
も
折
り
、
私
の
体
調
が
思
わ
し
く
な
い
の
を
感
じ
て
お
り
ま
す
ゆ
え
に
、
お
宿
下
が
り
を
申
し
出
ま
し
た
次
第
に
ご
ざ
り
ま
す
る
⋮
﹂
と
、
な
り
ま
し
ょ
う
⋮
、
ら
は
女
子
の
私
の
出
る
幕
は
少
の
う
な
り
ま
し
ょ
う
⋮
、
ま
た
何
時
ま
で
も
私
が
お
側
近
く
に
付
い
て
お
り
ま
し
て
は
、
若
君
の
自
立
心
の
妨
げ
に
も
じ
げ
取
ず
﹁ ﹁ っ 定 に
⋮ 吉 た 衡 、
⋮ 野 。 は 当
た
、 、
、 り
後 面
平 障
は を
伏 り
、 上
し の
若 げ
た な
君 て
ま い
の 、
ま 理
上 い
話 由
様 つ
を を
と も
続 述
の の
け べ
初 よ
て た
お う
い 。
目 に
る
見 儂
吉
と の
野
、 目
を
こ を
じ
の 見
っ
松 て
と
平 申
見
三 せ
詰
河 ⋮
め
守 ﹂
な
家 と
が
に 、
ら
相 定
聞
応 衡
い
し が
て
い 云
い
お っ
た
役 た
。
を 。
そ
賜
し
る
て
の
、
を
吉
お
野
待
の
ち
何
申
時
し
に
上
な
げ
い
る
態
だ
度
け
に
⋮
異
、
こ
常
れ
を
か
感
三
十
三
の
大
厄
も
近
い
こ
と
で
も
あ
り
、
そ
ろ
そ
ろ
潮
時
か
と
も
存
じ
ま
す
る
ゆ
え
の
お
願
い
に
ご
ざ
り
ま
す
る
⋮
﹂
と
、
吉
野
は
真
実
を
告
出
来
な
く
な
る
。
﹁
春
日
局
﹂
の
よ
う
に
な
る
こ
と
は
、
所
詮
夢
だ
っ
た
⋮
と
、
吉
野
は
覚
っ
た
。
様
の
子
と
し
て
産
む
方
が
良
い
に
は
違
い
な
か
っ
た
。
そ
の
代
償
と
し
て
、
吉
野
に
と
っ
て
生
き
甲
斐
だ
っ
た
秀
衡
君
の
身
の
回
り
の
世
話
は
、
も
う
吉
野
は
、
複
雑
な
気
持
ち
に
陥
っ
て
い
た
。
胸
算
用
を
す
れ
ば
、
実
家
に
宿
下
が
り
し
て
父
無
し
子
と
し
て
若
君
の
子
を
産
む
よ
り
は
、
若
君
秀
衡
に
は
、
近
侍
の
者
を
付
け
て
、
世
話
を
さ
せ
る
⋮
﹂
と
、
定
衡
は
吉
野
に
諭
す
よ
う
に
云
っ
た
。
そ
ち
は
、
百
合
絵
の
使
い
居
っ
た
東
の
館
に
移
っ
て
、
秀
衡
の
側
女
と
し
て
心
置
き
の
う
子
を
産
ん
で
育
て
よ
⋮
、
良
い
な
⋮
、
吉
野
⋮
、
め
る
わ
け
に
は
い
か
ぬ
⋮
、
良
い
な
、
吉
野
⋮
、
不
服
あ
ろ
う
と
も
、
と
く
と
了
見
せ
よ
⋮
、
秀
衡
に
は
、
そ
ち
を
前
に
し
て
儂
か
ら
話
そ
う
⋮
、
ば
、
そ
れ
が
生
ま
れ
来
る
子
に
伝
わ
ら
ん
と
も
限
ら
ぬ
⋮
、
じ
ゃ
に
よ
っ
て
疎
か
に
は
扱
え
ぬ
⋮
、
お
宿
下
が
り
な
ど
は
滅
相
も
な
い
こ
と
ゆ
え
、
認
﹁
良
い
か
、
吉
野
⋮
、
そ
ち
が
妊
っ
た
の
は
、
庶
流
と
は
云
え
、
我
が
松
平
三
河
守
家
一
族
の
子
ぞ
⋮
、
秀
衡
が
持
っ
て
生
ま
れ
た
才
が
花
開
か
も
皮
肉
な
運
命
の
悪
戯
に
、
複
雑
な
思
い
を
噛
み
し
め
な
が
ら
、
定
衡
の
言
葉
に
反
応
し
た
。
自
ら
の
乳
を
含
ま
せ
て
育
て
、
そ
の
後
も
養
育
乳
母
と
し
て
仕
え
て
き
た
福
千
代
の
元
服
か
ら
時
を
経
ず
に
そ
の
側
女
に
な
る
と
云
う
、
何
と
﹁
あ
れ
、
ま
あ
⋮
、
私
が
秀
衡
様
の
側
女
⋮
で
す
か
⋮
、
そ
れ
を
お
聞
き
に
な
っ
て
、
秀
衡
様
が
何
と
思
し
召
さ
れ
る
か
⋮
﹂
い
う
手
も
あ
る
⋮
、
そ
れ
に
て
吉
野
に
異
存
は
あ
る
ま
い
と
思
う
が
、
ど
う
じ
ゃ
⋮
、
﹂
と
云
っ
て
、
定
衡
は
吉
野
の
反
応
を
待
っ
た
。
ま
た
、
女
児
な
れ
ば
、
元
服
ま
で
当
家
に
て
育
て
、
そ
の
後
大
奥
に
ご
奉
公
に
差
し
出
す
か
、
⋮
儂
か
元
衡
が
養
女
と
し
て
嫁
に
出
す
⋮
、
と
初恋ー抜粋
男
児
誕
生
な
れ
ば
、
改
め
て
手
を
尽
し
て
そ
ち
を
同
格
の
旗
本
家
の
養
女
と
為
し
、
秀
衡
が
元
に
輿
入
れ
さ
せ
て
正
室
に
直
そ
う
⋮
、
暫
し
そ
ち
を
秀
衡
の
側
女
と
し
て
秀
衡
が
児
を
産
め
る
よ
う
に
す
る
こ
と
じ
ゃ
⋮
、
吉
野
⋮
、
る
の
じ
さ ゃ 年 然
れ ⋮ の り
ば 、 差 と
や て
じ
家 、
ゃ
柄 秀
⋮
の 衡
、
差 が
そ
を お
ち
云 役
に
う を
と
て 賜
っ
居 り
て
る 、
も
の 出
我
で 仕
が
は が
松
な 叶
平
い わ
三
⋮ ぬ
河
、 今
守
秀 、
家
衡 直
に
が ち
と
お に
っ
召 秀
て
し 衡
も
出 と
一
し そ
番
は ち
良
お を
い
ろ 妻
方
か 合
法
上 わ
は
様 せ
、
と る
秀
の わ
衡
初 け
が
お に
お
目 も
役
見 参
を
も ら
賜
叶 ぬ
り
わ ⋮
一
ぬ 、
家
今
を
の
立
時
て
期
ら
を
れ
云
る
う
ま
て
で
居
、
い
か
ぬ ﹁ ﹁
⋮ だ ⋮ ど
、 が ⋮ う
の ⋮ じ
う ⋮ ゃ
、 ﹂ 、
図
吉
星
野
で
⋮
あ
、
ろ
儂
う
は
が
そ
⋮
の
﹂
よ
う
な
そ
ち
の
腹
積
も
り
を
見
過
ご
し
て
、
秀
衡
の
子
を
人
知
れ
ず
父
無
し
子
と
し
て
生
ま
せ
る
わ
け
に
は
た
。
た
き
は
、
そ
れ
に
は
答
え
ず
、
﹁
お
殿
様
が
奥
の
お
広
座
敷
の
間
で
お
待
ち
で
ご
ざ
り
ま
す
る
⋮
、
直
ぐ
に
も
お
い
で
な
さ
り
ま
せ
⋮
﹂
と
云
っ
料
を
た
き
が
差
し
出
す
袖
に
渡
し
な
が
ら
、
﹁
ね
え
や
は
ど
う
し
た
⋮
﹂
と
訊
い
た
。
秀
衡
が
帰
宅
す
る
と
、
玄
関
の
前
の
間
に
出
迎
え
た
の
は
、
そ
の
た
き
と
慎
三
郎
だ
っ
た
。
秀
衡
は
、
一
瞬
戸
惑
っ
た
が
、
取
敢
え
ず
腰
の
差
に
当
た
る
よ
う
に
命
じ
た
。
の
者
の
名
は
、
酒
巻
慎
三
郎
と
云
い
秀
衡
の
二
つ
年
上
の
十
六
歳
だ
っ
た
。
そ
の
慎
三
郎
に
年
嵩
の
女
中
た
き
と
共
に
、
秀
衡
付
の
日
常
生
活
の
世
話
更
に
、
定
衡
は
、
番
士
の
倅
の
中
か
ら
、
行
い
優
れ
て
い
る
無
役
の
者
を
推
挙
さ
せ
て
取
り
立
て
、
秀
衡
の
小
姓
待
遇
と
し
て
用
命
し
た
。
そ
皆
、
何
事
が
起
こ
っ
た
か
⋮
と
、
驚
き
、
訝
っ
た
が
⋮
、
唯
一
つ
判
っ
た
こ
と
は
、
﹁
吉
野
様
ご
懐
妊
の
気
配
﹂
⋮
だ
け
だ
っ
た
。
付
の
侍
女
と
し
て
当
て
、
お
次
と
お
末
合
わ
せ
て
五
名
ほ
ど
を
吉
乃
付
き
の
腰
元
と
し
、
東
の
館
に
回
わ
す
よ
う
に
用
人
の
延
岡
弁
志
郎
に
命
じ
た
。
ら
を
集
め
て
、
東
の
館
を
整
理
さ
せ
、
吉
野
の
局
に
あ
る
吉
野
﹂
の
身
の
回
り
の
品
を
吉
野
と
共
に
東
の
館
に
移
さ
せ
て
、
年
嵩
の
女
中
三
名
を
吉
乃
吉
野
の
そ
ん
な
複
雑
な
思
い
を
他
所
に
、
定
衡
は
、
素
早
く
こ
と
を
処
理
し
た
。
女
中
や
そ
の
お
次
ぎ
、
お
末
ら
と
、
お
目
見
え
以
上
の
番
士
初恋ー抜粋
ら
な
け
れ
ば
良
い
が
⋮
﹂
吉
野
の
心
配
は
そ
れ
に
尽
き
た
。
果
に
な
り
、
千
々
に
乱
れ
よ
う
と
は
⋮
、
思
い
も
掛
け
な
い
こ
と
だ
っ
た
。
﹁
願
わ
く
は
、
若
君
が
こ
の
こ
と
を
お
知
り
に
な
っ
て
、
悪
く
お
思
い
に
な
を
見
守
っ
て
き
て
、
吉
野
の
心
は
満
ち
足
り
て
平
穏
だ
っ
た
。
そ
れ
が
、
殿
様
の
ご
意
向
で
若
君
の
初
伽
の
お
相
手
を
し
た
こ
と
が
、
こ
の
よ
う
な
結
思
え
ば
十
七
の
歳
に
、
生
ま
れ
た
ば
か
り
の
福
千
代
君
の
乳
母
と
し
て
こ
の
家
に
上
が
っ
て
以
来
、
唯
一
途
に
福
千
代
君
を
育
て
、
そ
の
成
長
応
も
な
い
⋮
、
お
殿
様
に
万
事
お
任
せ
す
る
に
し
く
は
な
い
⋮
﹂
と
、
吉
野
は
自
分
を
納
得
さ
せ
ざ
る
を
得
な
か
っ
た
。
﹁
然
れ
ど
、
こ
の
吉
野
と
、
産
ま
れ
て
く
る
お
児
と
、
若
君
と
松
平
の
家
の
全
て
に
良
い
よ
う
に
⋮
と
、
お
殿
様
が
な
さ
れ
る
こ
と
ゆ
え
、
否
も
吉
野
は
判
断
に
迷
っ
た
。
吉
野
は
戸
惑
っ
て
お
る
よ
う
じ
ゃ
っ
た
が
⋮
、
﹁
そ
れ
が
正
当
に
こ
と
が
丸
く
治
ま
る
唯
一
つ
の
道
だ
⋮
﹂
と
云
う
て
、
納
得
さ
せ
た
⋮
、
元
、
お
次
ぎ
、
お
末
を
付
け
て
や
っ
た
と
こ
ろ
じ
ゃ
⋮
、
と
す
る
こ
と
と
し
、
東
館
で
心
置
き
の
う
そ
ち
の
児
を
産
む
よ
う
吉
野
に
命
じ
た
⋮
、
そ
の
う
え
で
直
ち
に
手
筈
を
整
え
さ
せ
、
必
要
な
女
中
や
腰
然
れ
ば
じ
ゃ
、
そ
ち
が
元
服
成
っ
た
ば
か
り
で
い
ま
だ
上
様
と
の
初
お
目
見
も
叶
っ
て
い
な
い
こ
と
を
考
慮
し
て
、
暫
し
吉
野
を
そ
ち
の
側
女
然
り
と
て
、
直
ち
に
今
、
吉
野
を
そ
ち
の
正
室
に
据
え
る
わ
け
に
も
参
ら
ぬ
⋮
、
か
に
扱
う
こ
と
は
、
我
ら
が
家
と
し
て
望
ま
し
く
な
い
⋮
、
に
、
そ
ち
の
中
の
季
衡
候
の
武
士
と
し
て
の
血
は
、
男
児
で
あ
れ
女
児
で
あ
れ
、
生
れ
来
る
そ
ち
の
子
に
受
け
継
が
れ
て
く
る
⋮
、
よ
っ
て
こ
れ
を
疎
わ
が
家
は
初
代
季
衡
候
以
来
の
伝
統
あ
る
由
緒
高
き
家
柄
で
あ
り
、
そ
の
一
統
の
者
は
、
何
れ
も
季
衡
候
の
資
質
を
受
け
継
い
で
お
る
⋮
、
そ
れ
故
吉
野
は
、
一
人
責
め
を
負
う
て
、
宿
下
が
り
し
て
父
無
し
子
と
し
て
産
む
つ
も
り
じ
ゃ
っ
た
よ
う
じ
ゃ
⋮
、
だ
が
、
以
前
に
も
話
し
た
よ
う
に
、
と
は
思
わ
な
ん
だ
⋮
、
そ
ち
と
の
初
伽
で
、
そ
ち
の
児
を
妊
っ
た
の
じ
ゃ
⋮
、
吉
野
に
初
伽
の
相
手
を
命
じ
た
折
に
、
吉
野
の
歳
か
ら
し
て
ま
さ
か
こ
の
よ
う
な
こ
と
が
あ
る
え
に
、
常
の
よ
う
に
面
を
上
げ
て
申
す
よ
う
に
云
う
た
⋮
、
吉
野
が
面
を
上
げ
て
話
す
の
を
見
て
い
て
、
儂
は
直
ぐ
に
気
付
い
た
⋮
、
吉
野
は
、
あ
の
初恋ー抜粋
吉
野
が
宿
下
が
り
を
願
い
出
て
来
お
っ
て
の
う
⋮
、
理
由
を
質
す
と
、
﹁
体
調
と
み
に
優
れ
ぬ
ゆ
え
⋮
﹂
だ
と
云
う
⋮
、
面
を
上
げ
ず
に
申
す
ゆ
﹁
秀
衡
、
落
ち
着
い
て
儂
の
話
を
聞
け
⋮
、
有
体
に
話
す
⋮
、
﹁
も
そ
っ
と
側
近
こ
う
寄
れ
⋮
﹂
と
、
定
衡
は
や
や
あ
っ
て
云
い
、
秀
衡
を
側
近
く
に
寄
せ
た
。
﹁
そ
ち
達
は
、
下
が
っ
て
お
れ
⋮
﹂
と
、
二
人
の
お
付
き
に
云
っ
て
、
人
払
い
を
さ
せ
た
。
二
人
は
、
襖
を
閉
め
て
立
ち
去
っ
て
行
っ
た
。
座
っ
て
い
た
。
秀
衡
は
、
そ
の
﹁
ね
え
や
﹂
の
姿
を
一
瞥
し
て
、
訝
し
く
思
っ
た
。
﹁
う
む
⋮
、
三
郎
、
入
れ
⋮
﹂
と
、
秀
衡
に
言
っ
た
。
そ
こ
に
は
、
秀
衡
と
並
ん
で
吉
野
が
御
垂
髪
を
結
っ
て
、
打
ち
掛
け
姿
で
俯
き
加
減
に
戻
り
に
成
ら
れ
ま
し
て
ご
ざ
り
ま
す
る
⋮
﹂
と
言
上
し
た
。
た
き
に
訊
い
た
。
た
き
と
慎
三
郎
は
そ
れ
に
も
答
え
ず
、
奥
の
広
座
敷
の
間
の
前
に
来
る
と
、
畳
廊
下
に
座
っ
て
襖
を
開
け
て
平
伏
し
、
﹁
若
君
様
、
お
﹁
ど
う
し
た
⋮
、
何
か
あ
っ
た
の
か
⋮
﹂
と
、
常
と
は
違
う
雰
囲
気
を
感
じ
て
、
先
導
す
る
た
き
と
慎
三
郎
に
従
っ
て
奥
の
間
に
向
か
い
な
が
ら
も
な
い
こ
と
ぐ
ら
い
は
、
い
く
ら
世
慣
れ
ぬ
若
年
者
だ
と
て
も
容
易
に
理
解
で
き
る
⋮
﹂
と
、
秀
衡
の
想
念
は
宙
を
舞
っ
た
。
。
か
ろ
う
だ ⋮ 自 そ
が 、 分 れ
、
が に
格
町 、
式
人 別
が
や の
第
農 問
一
民 題
の
の も
万
子 あ
石
な る
近
ら ⋮
い
、 、
歳
大
が
身
離
の
れ
旗
て
本
い
の
よ
家
う
柄
と
と
も
も
、
な
慕
れ
っ
ば
て
、
い
例
る
え
ね
部
え
屋
や
住
を
み
直
の
ぐ
身
に
だ
妻
と
に
て
す
、
そ
る
ん
こ
な
と
こ
だ
と
っ
は
て
即
出
座
来
に
な
許
い
さ
相
れ
談
る
で
べ
は
く
な
と
云
う
こ
と
は
、
想
像
だ
に
出
来
ぬ
異
例
中
の
異
例
の
こ
と
だ
⋮
、
﹁
ね
え
や
が
初
伽
の
相
手
を
務
め
て
く
れ
た
こ
と
す
ら
異
例
の
出
来
事
だ
っ
た
⋮
、
ま
し
て
や
、
そ
の
結
果
ね
え
や
が
自
分
の
子
を
妊
る
な
ど
定
め
と
い
う
も
の
か
⋮
、
﹂
と
、
秀
衡
は
、
女
子
と
情
を
交
わ
す
と
女
子
が
妊
る
可
能
性
が
あ
る
こ
と
を
初
め
て
悟
ら
さ
れ
た
思
い
が
し
た
。
﹁
儂
が
手
を
付
け
た
他
の
年
の
若
い
女
中
達
は
、
誰
も
妊
っ
て
は
い
な
い
⋮
、
そ
れ
な
の
に
⋮
、
よ
り
に
よ
っ
て
ね
え
や
が
⋮
、
こ
れ
が
宿
世
の
こ
る
な
ど
、
露
程
も
念
頭
に
な
か
っ
た
。
秀
衡
は
、
終
始
父
親
の
目
を
見
詰
め
な
が
ら
話
を
聞
い
て
い
て
、
複
雑
な
気
持
ち
に
な
っ
て
い
た
。
第
一
、
ね
え
や
に
そ
の
よ
う
な
こ
と
が
起
初恋ー抜粋
に
云
っ
た
。
は
な
い
ぞ
⋮
、
良
い
な
⋮
三
郎
⋮
﹂
と
、
定
衡
は
、
秀
衡
の
気
持
ち
を
慮
か
っ
て
、
委
細
漏
ら
さ
ず
噛
ん
で
砕
く
よ
う
に
説
明
し
て
、
了
見
す
る
よ
う
前
に
申
し
た
よ
う
に
、
そ
ち
に
と
っ
て
は
今
が
一
番
大
事
の
時
⋮
、
委
細
了
見
し
て
、
儂
が
独
断
を
悪
し
様
に
思
い
、
不
服
を
申
し
立
て
る
で
そ
ち
の
世
話
役
は
、
吉
野
に
代
わ
っ
て
女
中
の
た
き
と
、
小
姓
と
し
て
近
侍
の
酒
巻
の
倅
、
慎
三
郎
を
当
て
た
⋮
、
降
り
さ
せ
た
⋮
、
じ
ゃ
に
よ
っ
て
、
今
日
か
ら
吉
野
は
そ
ち
の
女
中
頭
の
吉
野
で
は
な
く
、
そ
ち
の
側
女
吉
乃
と
し
て
こ
の
屋
敷
に
留
ま
り
、
そ
ち
の
世
話
役
は
ち
ら
か
に
な
る
⋮
室
に
直
そ
う
が
儂
の
腹
じ
ゃ
⋮
、
女
児
誕
生
の
場
合
は
、
儂
か
元
衡
が
養
女
と
し
て
嫁
に
出
す
か
、
奥
女
中
と
し
て
大
奥
に
ご
奉
公
に
上
げ
る
か
の
ど
男
児
誕
生
の
み
ぎ
り
は
、
何
れ
機
会
を
見
て
、
吉
乃
を
当
家
と
同
格
の
旗
本
の
仮
の
養
女
と
し
て
、
そ
ち
が
元
に
輿
入
れ
さ
せ
て
、
そ
ち
が
正
い
は
じ
め
て
い
る
こ
と
を
実
感
し
て
、
濡
れ
て
輝
く
目
で
秀
衡
の
目
を
見
詰
め
て
い
た
。
父
無
し
子
を
産
む
仕
儀
に
至
ら
ず
、
﹁
秀
衡
様
の
児
﹂
と
し
て
、
大
っ
ぴ
ら
に
産
め
る
こ
と
を
内
心
喜
び
、
自
分
が
﹁
女
﹂
と
し
て
秀
衡
を
愛
お
し
く
思
吉
乃
は
、
秀
衡
を
じ
っ
と
見
詰
め
て
秀
衡
の
気
持
ち
を
推
量
り
な
が
ら
、
親
子
の
や
り
取
り
を
聞
い
て
い
た
。
そ
し
て
、
自
ら
身
を
引
い
て
、
の
身
体
を
気
遣
う
て
、
房
事
の
こ
と
は
差
し
控
え
る
の
じ
ゃ
ぞ
⋮
、
そ
れ
に
こ
の
こ
と
は
そ
ち
の
胸
の
内
に
仕
舞
う
て
お
け
⋮
、
よ
い
な
、
三
郎
⋮
﹂
﹁
う
む
⋮
、
良
う
了
見
し
た
⋮
、
三
郎
も
大
人
に
な
っ
た
の
う
⋮
、
何
れ
に
せ
よ
そ
ち
の
好
き
に
吉
乃
が
元
を
訪
う
の
は
良
い
が
、
子
供
と
吉
乃
も
な
く
な
り
ま
し
ょ
う
⋮
、
﹂
だ
き
と
う
ご
ざ
り
ま
す
る
⋮
、
さ
す
れ
ば
、
私
に
も
吉
乃
様
に
も
願
っ
て
も
な
い
こ
と
⋮
、
生
ま
れ
て
く
る
児
と
吉
乃
様
を
慈
し
む
の
も
誰
憚
る
必
要
私
が
上
様
よ
り
ど
の
よ
う
な
役
向
き
を
仰
せ
つ
か
る
か
は
存
じ
ま
せ
ぬ
が
、
お
役
に
就
け
ば
、
い
ず
れ
は
吉
乃
様
を
必
ず
正
室
に
直
し
て
い
た
く
に
居
て
⋮
、
私
の
子
を
産
み
、
育
て
よ
う
と
し
て
く
れ
る
⋮
、
今
は
そ
れ
だ
け
で
十
分
で
ご
ざ
り
ま
す
る
⋮
、
﹁
私
は
、
部
屋
住
み
の
身
、
不
服
を
云
え
る
立
場
に
は
ご
ざ
り
ま
せ
ぬ
⋮
、
そ
れ
ど
こ
ろ
か
⋮
、
表
向
き
は
ど
う
あ
れ
、
﹁
ね
え
や
﹂
が
直
ぐ
近
し
て
、
儂
が
取
っ
た
処
置
,
三
郎
に
は
不
服
は
な
い
の
じ
ゃ
な
⋮
﹂
﹁
そ
れ
は
、
そ
ち
と
吉
乃
の
望
み
次
第
じ
ゃ
⋮
、
東
館
の
女
中
頭
や
用
人
に
吉
乃
が
元
に
渡
る
こ
と
を
伝
え
れ
ば
良
い
こ
と
じ
ゃ
⋮
、
父
上
、
側
女
だ
と
て
、
私
が
児
を
産
む
の
で
あ
れ
ば
我
が
妻
女
、
吉
乃
様
を
常
時
訪
う
て
も
よ
ろ
し
う
ご
ざ
り
ま
す
る
か
⋮
﹂
と
し
て
で
も
私
が
児
と
し
て
産
ん
で
く
れ
る
方
が
あ
り
が
と
う
ご
ざ
り
ま
す
る
⋮
、
初恋ー抜粋
ど
の
様
な
形
で
生
ま
れ
よ
う
と
も
、
そ
の
子
は
松
平
三
河
守
家
の
血
筋
に
は
違
い
あ
り
ま
せ
ぬ
⋮
、
そ
う
思
え
ば
、
今
は
、
正
室
で
な
く
側
女
る
の
が
筋
だ
と
存
じ
ま
す
る
⋮
、
く
せ
き
私
を
思
う
て
の
こ
と
で
し
ょ
う
⋮
、
も
し
実
際
に
そ
う
な
っ
て
、
そ
れ
が
後
で
知
れ
た
ら
、
私
は
武
士
を
捨
て
て
も
、
ね
え
や
と
そ
の
子
を
守
﹁
⋮
⋮
、
は
い
、
父
上
⋮
、
お
話
は
良
く
分
り
ま
し
た
⋮
、
ね
え
や
が
、
例
え
父
無
し
子
に
し
て
で
も
産
も
う
と
し
て
く
れ
て
い
た
こ
と
は
、
よ
衡
を
見
て
、
定
衡
が
云
っ
た
。
﹁
お
い
、
三
郎
⋮
、
聞
い
て
い
る
の
か
⋮
﹂
と
、
自
分
の
目
を
見
て
は
い
る
も
の
の
、
想
念
が
何
処
か
に
飛
ん
で
い
る
よ
う
な
空
ろ
な
様
子
の
秀
き
な
が
ら
、
そ
ん
な
こ
と
を
考
え
て
い
た
。
う
と
し
て
い
る
の
だ
ろ
う
か
⋮
、
そ
れ
に
、
子
供
を
妊
る
と
気
分
が
優
れ
な
く
な
る
⋮
、
と
云
う
の
も
理
解
で
き
な
い
⋮
、
﹂
秀
衡
は
、
父
親
の
話
を
聞
﹁
そ
れ
に
し
て
も
、
ね
え
や
は
ど
ん
な
気
持
ち
で
儂
の
子
を
産
も
う
と
し
て
い
る
の
だ
ろ
う
か
⋮
、
儂
の
身
代
わ
り
を
ま
た
一
か
ら
育
て
直
そ
落
着
し
た
よ
う
だ
っ
た
。
*
*
*
*
*
*
*
初恋ー抜粋
渡
っ
た
。
三
人
居
る
定
衡
の
側
室
も
、
そ
れ
ぞ
れ
吉
乃
へ
の
祝
い
の
引
き
出
物
を
女
中
達
に
届
け
さ
せ
た
。
こ
う
し
て
定
衡
の
狙
い
通
り
に
一
件
が
そ
れ
に
よ
っ
て
、
吉
乃
が
お
内
証
と
し
て
の
初
伽
で
福
千
代
の
児
を
妊
っ
た
ら
し
い
と
云
う
こ
と
は
、
直
ぐ
に
家
中
の
ほ
と
ん
ど
の
者
に
知
れ
い
の
引
き
出
物
を
吉
乃
に
届
け
さ
せ
た
。
い
か
に
も
粋
な
お
計
ら
い
を
な
さ
れ
ま
し
た
⋮
﹂
と
、
知
佳
は
、
動
じ
る
風
も
な
く
、
鷹
揚
に
受
け
止
め
た
。
そ
し
て
、
翌
日
老
女
に
申
し
付
け
て
、
祝
人
の
親
に
な
っ
て
い
た
な
ど
と
は
⋮
、
そ
れ
も
縁
に
ご
ざ
り
ま
し
ょ
う
⋮
、
よ
ほ
ど
吉
野
と
は
性
が
合
う
て
い
た
の
や
も
し
れ
ま
せ
ぬ
な
あ
⋮
、
殿
も
﹁
仮
初
め
に
も
せ
よ
、
男
と
女
子
が
契
れ
ば
、
左
様
な
こ
と
も
ご
ざ
り
ま
し
ょ
う
⋮
、
ほ
ほ
ほ
っ
⋮
、
あ
の
福
千
代
が
、
元
服
す
る
よ
り
先
に
、
上
屋
敷
に
戻
る
と
、
定
衡
は
、
一
部
始
終
を
奥
の
知
佳
に
話
し
た
。
﹁
然
れ
ば
、
儂
は
こ
れ
に
て
上
屋
敷
に
戻
る
⋮
、
吉
乃
、
身
体
を
労
れ
よ
⋮
、
﹂
と
言
っ
て
、
定
衡
は
、
下
屋
敷
を
後
に
し
た
。
掛
物
語
第
奥 一
底
主
潜 題
作
者
他
物 物
語 語
様 同
々 様
場
面 性
愛
艶
冶
物 消
誇
語
大 江
戸 構
強 時 成
調 代
中
期
気
短
細 編
赴
初
面
恋
実 白
体
部
分
筋 良 可
少
年
笑
展 知
期
主
開
題 誰
れ
艶 行 れ 出 架
空
本
創 来
作 事 物
語
わ 現
実
細
絵 歴
笑
点 空 史
事 上
飛
旗
本
一
特 度
感 味
動 わ
姿 単
世
界 原 呼
書
思
模
わ
主
人 平 れ
公 凡
恋
少 作 心
作 年 品
者
領
得 主
意
伜
玉
艶
れ
本
仕
立
単 儚
切
敷 利 模 弾
延 用
展
開
れ 物
語
模
艶
初
性 恋
愛
作
但 者
頭 物
語
思 れ 浮
わ
登
れ
場
人
歴
物
史
考 採 全
証 用
人
物
事
実
出
来
判 初 事
然
断
時
代
背
景
作
者
後
書
艶
本
仕
立
模
全
物
語
世
波
情
艶
仇
乃
初
恋
国
文
豪
何
関
わ
短
編
初
恋
題
材
実
際
異
戸
中
期
大
部
分
取
江
れ
含
武
等 実 家
物
情 社
語
会
艶
本
趣
旨
生
活
殊
思
一
切
探
求
れ
主
人
公
実
徳 態
川
将
軍
家
直 様
属 々
武 研
家 究
好
旗
本
想
像
御
家
人
著
作
作
者
考 男
方 女
皆
濃
密
れ
れ
初
成
窮 文
屈 化
世
即 頂
点
男 至
女
武 れ
家
社
会
詳
細 実
体
生
活 成
文
武 化
家
諸 れ
法
度
世
界
れ
平
成
戊
子
明
霜
月
れ
殆
判
性
愛
悦
仲 楽
生
活
実
態 細
殆
英
紅
炎
記
存
知
制 武
約 家
諸
受 法
度
為
)
れ 当
時
含
武
笑 家
社
飛 会
著
筆
主 れ 者
題
趣
意
対
極 言
(
行 勝
わ 手
様
々 物
語
掟
二
番
仕 目
来
主
題
最
二 解
番
目 放
仲 慈
極
意 合
考
時
初
共
次 心
刊
行
電発著
子行者
版者
発
行
所
編
集
作
成
艶
本
世
波
情
艶
仇
乃
初
恋
−
オ
フ
ィ
ス
テ
リ
ン
英ト
紅ー
炎ク
平
成
二
十
年
五
月
人
事
務
所
の
パ
ー
ソ
ナ
ル
オ
フ
ィ
ス
テ
利
は
、
作
者
の
英
紅
炎
、
並
び
に
そ
の
個
英
紅
炎
の
作
品
の
著
作
権
に
関
わ
る
全
権
著
作
権
の
表
明
丘
北
四
神
田
五
拓
四
〒
二
〇
〇
〇
〇
二
神英
田
紅
拓炎
電
子
版
購
読
予
価
四
百
円
消
費
税
込
)
パ
ー
ソ
ナ
ル
ま のそリ
せ 全のン
ん 部正ト
。 ま規ー
たにク
は表に
一明帰
部さ属
をれし
流たま
用許す
し諾。
てな何
右
はく人
表
な作も
明
り品、
す
東
京
都
西
東
京
市
(
紙
版
本
発
行
希
望
応
需
平
成
二
十
一
年
二
月
二
日