第一部 税理士制度 Ⅴ補助税理士 他の税理士の事務所に勤務している税理士を、従来「勤務税理士」と呼んで いました。しかし、他の税理士事務所に勤務しつつ、自宅に自己の事務所を設 置して2ヶ所事務所を持つ税理士が出現するなど「勤務税理士」について問題 点が指摘され、平成13年の改正税理士法において、問題点の整理がなされま した。 改正税理士法において、従来「勤務税理士」と呼んでいた者を「補助税理士」 と称し、その詳細を規定しました。まず、税理士法第 2 条第 3 項において「前 二項の規定は、税理士が他の税理士又は税理士法人の補助者としてこれらの項 の業務に従事することを妨げない。」と規定し、他の税理士の事務所や税理士 法人に勤務している税理士について、その勤務先の税理士又は税理士法人の補 助者として、税理士法第2条第1項及び第2項に規定する業務に従事すること ができると定めました。これは、税理士登録をしていながら他の税理士や税理 士法人に雇用されている税理士についての規定です。なお、税理士法において は「補助税理士」という表現は一切ありません。 「補助税理士」という呼称は、税理士法施行規則第 8 条第 2 号ロにおいて 「・・・税理士又は税理士法人の補助者として常時同項に規定する業務に従事 する者(第十六条及び第十八条において「補助税理士」という。) ・・・」およ び、税理士法基本通達2-7「法第2条第3項に規定する「補助者」とは、規 則第8条第2号ロに規定する補助税理士をいうものとする。」において規定さ れています。 元来、税理士業務とは他人に求めに応じて行われるものであるとされており、 雇われて業務を行う「補助税理士」という概念は、平成13年の法改正におい て初めて明定されたものです。それまでの「勤務税理士」は、一般論としては、 雇用主である税理士が委嘱を受けた税理士業務については、別途、委嘱・委任 を受けたり、雇用主である税理士が納税者との間で復代理選任の特別委任を受 けてこれに基づいて代理人の選任をしない限り、その税理士事務所に勤務する 税理士は当該税理士業務を行えないと考えられていました。 しかし補助税理士は、税務代理をする場合において、租税に関する申告書等 を作成して税務官公署に提出時の署名押印を行う場合、税理士法施行規則第1 6条に規定するように当該税理士の税理士事務所の名称や当該税理士法人の 名称付記したうえで、補助税理士が署名押印することが出来ます。また、基通 2-8「法第2条第3項に規定する「補助者」は、従事する税理士又は税理士 法人が委嘱を受けた事案について、自らの名において税理士業務を行うことが できることに留意する。」としています。 また、税理士は、法第40条第1項において「税理士及び税理士法人は、 税理士業務を行うための事務所を設けなければならない。」と定められていま す。しかし、 「補助税理士」については、税理士法施行規則第18条(事務所 を設けてはならない者) 「法第40条第1項に規定する財務省令で定める者は、 補助税理士とする。」と定められています。「補助税理士」は自己の税理士業 務を行うための事務所を設置できないので、他人の求めに応じ、自己の名を 用いて税理士業務を行うことが出来ません。つまり、 「補助税理士」は納税者 などと直接委嘱契約を行うことが出来ないわけです。 以上のことより、自己の事務所を有しない「補助税理士」には給与所得はあ りますが、税理士の事業所得は発生しません。つまり、「補助税理士」は、自 己の名を付した請求書も領収書もありえません。「補助税理士」は税務支援に 行き、報酬を得ても、それは勤務先税理士事務所の収入になります。また、税 理士協同組合においても補助税理士は組合員になれません。 最近は、この制度を親子間の事務所の事業承継に利用されているケースも多 く見られるようです。
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