第7章 整備 法

第7章 整備手法
第7章
整備⼿法
現在の市⽴体育館は、市が基本的に管理・運営を⾏っていますが、新体育館においては、⺠
間事業者の創意⼯夫や運営及び経営ノウハウの活⽤により、市⺠へのより質の⾼いサービスの
提供の実現と市の財政負担の低減を期待することができる「PFI⽅式」の導⼊や,指定管理
者制度などを活⽤した「公設⺠営⽅式」の導⼊など、施設の規模や機能などを踏まえ、利⽤者
へ良質なサービス提供と市の財政負担の軽減を実現できる効果的な⽅法を検討します。
建設費は、平成26年度の報告書より坪単価110万円と想定して約28億円を⾒込み、整備⼿法
の検討を⾏います。
1.事業⽅式の整理
公共施設の建設に係る事業⼿法は、近年、PFI⽅式をはじめとした⺠間活⼒導⼊型の⼿法が
取り⼊れられており、本事業においても最も有効な事業⼿法を選択する必要があります。様々
な事業⼿法のうち新体育館建設に適していると考えられる⼿法として、⼀般⽅式(従来⽅式)、
DB(Design Build)⽅式、DBO(Design Build Operate)⽅式、PFI(BTO⽅式-Build Transfer and
Operate 及びBOT⽅式-Build Operate and Transfer)の5つの⼿法があげられます。
次⾴に、各⽅式の説明・概要を⽰します。
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第7章 整備手法
概 要 図
区分・説明
設計委託
塩 尻
従来⽅式:
設計・施⼯分離発注⽅式
公共が起債や補助⾦等により⾃ら資⾦調達し、設
施⼯請負契約
建設会社
市
計、建設、維持管理及び運営等の業務について、業
設計事務所
維持管理委託契約
務ごとに⺠間事業者に請負・委託契約として発注す
維持管理会社
る⽅式。
塩 尻
DB⽅式(Design Build):
設計・施⼯⼀括発注⽅式
公共が資⾦調達し、公共が所有権を有したまま、施
建設会社
市
設の設計・建設を⺠間事業者に包括的に請け負わ
設計事務所
設計施⼯請負契約
維持管理委託契約
せ、維持管理及び運営等は別途業務毎に⺠間事業者
維持管理会社
に包括契約として発注する⽅式。
DBO⽅式(Design Build Operate):
塩 尻
公共が資⾦調達し、公共が所有権を有したまま、施
設の設計・建設、維持管理を⺠間事業者に包括的に
委託する⽅式。
基本契約
建設会社
市
なお、設計・建設、維持管理、運営を対象とする事
設計事務所
設計施⼯請負契約
維持管理委託契約
業をDBM(Design Build Maintenance)⽅式と呼称
維持管理会社
している事業があるが、本質的には同義である(維
応募グループ
持管理・運営の業務範囲が異なるのみ)。
◇公共事業を実施するための⼿法の⼀つ。⺠間の資
市
⾦と経営能⼒・技術⼒(ノウハウ)を活⽤し、公共
施設等の設計・建設・改修・更新や維持管理・運営
設計委託
1 施⼯請負契約
建設会社
維持管理
を⾏う公共事業の⼿法。
維持管理会社
委託契約
◇⺠間事業者が資⾦調達・建設を⾏い、建設した直
応募グループ
融資
後に建物の所有権を⾃治体等に移転し、その後、契
建設
⾦融機関
約に基づき⺠間事業者が維持管理・運営を⾏う⽅
PFI⽅式:
⾦と経営能⼒・技術⼒(ノウハウ)を活⽤し、公共
市
施設等の設計・建設・改修・更新や維持管理・運営
所有
設計委託
1 施⼯請負契約
建設会社
維持管理
を⾏う公共事業の⼿法。
維持管理会社
委託契約
◇⺠間事業者が資⾦調達・建設・維持管理・運営を
応募グループ
融資
⾏い、契約期間終了後に建物の所有権を⾃治体等に
建設・所有・運営
⾦融機関
移転する⽅式。
建物賃借
⽤語説明
Special Purpose Company 略 特定 事業 ⾏
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⽬的
設⽴
新体育館
設計事務所
※SPC
◇公共事業を実施するための⼿法の⼀つ。⺠間の資
塩 尻
BOT⽅式(Build Operate and Transfer)
PFI 事業 契 約
式。
※1 SPC:
設計事務所
※SPC
塩 尻
BTO⽅式(Build Transfer and Operate)
PFI 事業 契約
PFI⽅式:
会社
新体育館
第7章 整備手法
2.事業⽅式の⽐較における検討項⽬
(1)ライフサイクルコスト(LCC※1)の縮減
新体育館の建設にあたっては、財政負担を可能な限り縮減できる事業⼿法の採⽤を検討
します。また、単純に体育館建設費⽤を縮減するのみではなく、維持管理や運営の⽅法に
よるランニングコスト※2の縮減など、市にとって有利となる事業⼿法について検討します。
⽤語説明
※1 LCC:
Life Cycle Cost 略 製品 構造物 取得 使⽤
必要 費⽤ 総額 企画 設計
廃棄に⾄る過程(ライフサイクル)で必要な経費の合計額をいう。
※2 ランニングコスト:
光熱⽔費、施設や機器などの保守・管理に必要な費⽤のこと。
維持 管理
(2)将来負担の縮減
新体育館整備に係る財政負担については、平成27年度の市⺠アンケートで⽰されたと
おり、突出した財政負担を避け、⽀出を平準化するため、建設時には合併特例事業債の活
⽤を想定しています。
将来負担を最⼩化するため、建設時の費⽤、完成後の維持管理費(ランニングコスト)、
将来の改修費⽤をトータルで縮減していくことが望ましいと考えます。事業⼿法の検討に
あたっては、将来の財政負担の観点が重要となります。
(3)⺠間ノウハウの発揮
華美な仕様や、無駄な機能などの排除、省エネルギーへの配慮など、体育施設として合
理性の⾼い施設であるとともに、体育館としての安全性、スポーツサービス提供に係る機
能性は犠牲にしない体育館が求められます。
その実現には、⺠間会社で採⽤されている新技術や考え⽅などの⺠間のノウハウを発揮
できる事業⼿法について検討します。
(4)市⺠意⾒の反映
体育館の利⽤者である市⺠の意⾒を計画・設計段階において反映できることが重要です。
⼀般⽅式(従来⽅式)でのプロポーザル⽅式の場合は、「設計者」を選定することから、
設計過程で市⺠の意⾒を⼊れながら進めることができます。
⼀般⽅式(従来⽅式)のコンペ⽅式は「設計案」を選定し、PFI⽅式は設計・施⼯・
維持管理の事業者を選定することから、設計条件や仕様書の条件を変更する意⾒の反映が
限定的となることが考えられます。
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第7章 整備手法
3.事業⼿法の検討について
近年、国が⺠間活⼒の導⼊を⽬指し、地⽅公共団体に対しても「多様なPPP/PFI⼿法導⼊を
優先的に検討するための指針」を⽰すなど、新体育館の建設にあたっては、これまで塩尻市で
取り組まれていない事業⼿法を含め検討する必要があります。
それぞれの事業⼿法でのメリット、デメリットを⽐較検討し、建設予定地の法的制約や事業
スケジュールを考慮したうえで、どのような事業⼿法で整備していくのか検討し、決定してい
く必要があります。
事業⽅式による⼀般的な⽐較を下記に⽰します。
⽅式
課題
事業実施まで
に要する期間
従来⽅式
短期間
DB⽅式
DBO⽅式
厳格にする場合
1 2年程度
1年程度
他市体育館に
おける先⾏事
⼀般的で多数
⽐較的多い
事例なし
例
PFI⽅式
BTO⽅式
BOT⽅式
1 2年程度
1 2年程度
少数であるが現在
取り組みが多い
事例なし
⺠間資⾦調達によ
る事業であるた
将来負担
(LCC)の縮減
維持管理期間に突
維持管理期間に突
出した財政負担の
出した財政負担の
可能性有
可能性有
⺠間資⾦調達によ
め、平準化が可
予防保全のため毎
る事業であるた
能。事業期間中の
年⽀出があるが、
め、平準化が可
コスト把握や管理
突出した財政負担
能。また、事業期
が可能となり、さ
を防げる
間中のコスト把握
らに、所有権が⺠
や管理が可能
間側となり創意⼯
夫によりコスト縮
減が期待できる
⺠間のノウハ 個別発注であるた
ウの発揮
め、期待できない
維持管理が別途発
注のため、効果が
限定的
維持管理を含んだ
維持管理を含んだ
維持管理を含んだ
提案が期待できる
提案が期待できる
提案が期待できる
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第7章 整備手法
PFI事業は、設計・建設から維持管理・運営までを⼀体の業務として⼀括発注することで、
⺠間業者の創意⼯夫が発揮され、市⺠サービスの向上、維持管理費の削減及び財政⽀出の平準
化も期待できます。
ただし、体育施設事業は、その公共性から、運営収⼊だけで維持管理及び運営費⽤をまかな
うことが困難であることや、PFI事業の効果(LCCの削減を指標とするVFM※1の算出)の検証や
事業⽅式の違いによって必要となる事務⼿続き及びこれに関わる期間も異なってくるなどの課
題も踏まえる中で検討する必要があります。
⽤語説明
※1 VFM:
Value For Money 略 ⼀般
⽀払 対
最 価値 ⾼
供給
考 ⽅
例
同⼀ ⽬的
有する2つの事業を⽐較する場合、⽀払に対して価値の⾼いサービスを供給する⽅を他に対し「VFMがある」ということになる。
⼊札・契約⽅式は、設計施⼯分離発注⽅式と、設計施⼯⼀括発注⽅式に⼤きく分けられま
す。分離発注⽅式は、競争⼊札やプロポーザル⽅式が代表的であり、⼀括発注⽅式は事業⽅式
で⽰したDB⽅式やPFI⽅式等が挙げられます。
「プロポーザル⽅式」は設計者を選定する⽅法で、公共施設の建築に要求される公正性、透明
性、客観性をもつ設計者選定が可能な⽅式であり、客観的な評価基準をもとに審査し、選定プ
ロセスも透明性が確保されます。
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第7章 整備手法
4.事業スケジュールの⽐較
それぞれの発注⽅式による事業スケジュールは以下のように想定されます。
期間
発注⽅式
平成28年度
平成29年度
平成30年度
平成32年度
平成31年度
平成33年度
⼀
⼆
三
四
⼀
⼆
三
四
⼀
⼆
三
四
⼀
⼆
三
四
⼀
⼆
三
四
⼀
⼆
三
四
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
期
設計施⼯分離
発注⽅式
DB⽅式
(デザインビルド)
PFI⽅式
準備
基本設計
約6ヶ月
準備
準備 (要求水準
作成等)
事業
者
募集
準備
(PFI可能性調査)
(要求水準作成等)
約11ヶ月
準備
事業者
審査・選定
実施設計
約10ヶ月
準備
基本・実施設計
約16ヶ月
公募+事業者選定
約10ヶ月
基本・実施設計
約16ヶ月
建設工事
約18ヶ月
完
成
期
限
建設工事
約16ヶ月
(先行工事2ヶ月)
建設工事
約16ヶ月
(先行工事2ヶ月)
上記スケジュールは現時点での想定であるため、今後も引き続き検討を⾏います。
5.事業の⽅向性
新体育館の建設にあたっては、基本コンセプトにある「ひとが集う施設」及び「地域を発
信する施設」として、周辺地域との連携を検討する必要があります。
整備⼿法の具体的検討にあたっては、新体育館建設の事業⽅式や完成後の維持管理⽅法と
併せて、周辺で進められている⼟地区画整理事業との連携などを検討する必要があります。
しかし、⾏政だけで担える範囲と効果は限定的となるため、⺠間事業との相乗効果を図る必
要があります。
このため、整備⼿法の検討においては、諸条件及び事業スケジュールなど⼗分調査した上
で今後決定することとします。
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