乳癌診療 モーニングセミナー 7.28 胸部・乳腺外科 森下 敦司 乳癌とは • 乳癌の発生母地・頻度 ①進展様式と頻度 ・浸潤癌が約90% ・非浸潤癌が約10% ②発生母地と頻度 ・乳汁を運搬する乳管由来が約95% ・乳汁を産生する小葉由来が3~5% 乳癌とは • 癌の発生と進展 ・多段階発癌過程:遺伝子異常の蓄積 ・癌関連遺伝子の異常:癌遺伝子の活性化、癌抑制遺 伝子の不活性化 ・環境因子の関与:人種・生活習慣・社会環境・被爆・ホ ルモン環境など • 乳癌の増殖スピード ・一般に乳癌細胞のdoubling timeは約90日と言われて いる ・1cm(しこりとして触れる)に増大するまでに7年以上か かる 乳癌罹患率 乳癌死亡率 乳癌のリスクファクター エビデンスグレード リスクファクター 確実 (convincing) リスク増加:閉経後肥満、成人高身長、未産、初産年齢高 い、授乳経験なし、高線量被爆、良性増殖性乳腺疾患、乳 癌家族歴、閉経後ホルモン補充療法 リスク減少:初産年齢低い、授乳期間が長い ほぼ確実 (probable) リスク増加:アルコール摂取、喫煙、生下時体重が重い、 早い初経、遅い閉経、頻回の医療被曝、糖尿病の既往 リスク減少:閉経前肥満、閉経後運動 可能性あり (limited-suggestive) リスク増加:受動喫煙、夜間勤務、経口避妊薬 リスク減少:乳製品摂取、大豆商品・イソフラボン摂取、卵 黄嚢腫の既往 証拠不十分 脂肪摂取、緑茶摂取、サプリメント、閉経前運動、ストレス、 (limited-no conclusion) 性格傾向、ライブイベント、低線量被爆、子宮内膜症・多嚢 胞性卵巣症候群の既往、閉経後ホルモン補充療法、電磁 波、不妊治療、スタチン服用 乳癌占拠部位 乳癌検診 • 検診の考え方 ①対策型 ・市町村が行う住民検診が該当 ・有効性の確立した検診方法に限る ②任意型 ・人間ドックや私的検診が該当 ・有効性の確立していない新しい検診方法も含む • 意義 早期発見・早期治療のために定期的なMMG検診 (±US)が必要 MMG(マンモグラフィー) MMGの検診対象 40歳以上の女性に2年に1度のMMG検診が推奨さ れている(2005年から対象が50歳以上から40歳以 上に引き下げ) MMGの現状 ・罹患率減少、死亡率減少効果を確認 ・本邦では受診率が欧米に比べ極端に低い 受診率 受診率 アメリカ 2010 80.4% ドイツ 2009 68.4% フランス 2010 75.4% オーストラリア 2009 55.5% イギリス 2009 75.4% 日本 2010 19.0% US(超音波) US検診の考え方 ・高濃度乳腺に有用 ・生命予後に関わる乳癌を拾い上げる ・良性病変を拾いすぎない US検診の現状 ・現時点でUS検診が有用であるとするエビデン スがない(現在比較試験が進行中) ・実臨床ではMMGで発見できない乳癌に遭遇 する機会は珍しくない MMG所見 ①腫瘤 ○境界・辺縁所見 ・明瞭平滑 ・微細分葉状、境界不明瞭 ・スピキュラ MMG所見 ②石灰化 ○石灰化の形態 ・微小円形 ・淡く不明瞭 ・多形性 ・微細線状、分枝状 ○石灰化の分布 ・びまん性 ・領域性 ・集簇性 ・線状 ・区域性 MMGカテゴリー分類 • カテゴリー1 異常なし • カテゴリー2 良性 • カテゴリー3 良性だが、悪性も否定はできない • カテゴリー4 悪性の疑い • カテゴリー5 限りなく悪性 癌 手術 • 胸筋温存乳房切除術 メリット:放射線治療は不必要、追加切除の必要がない デメリット:傷が大きい、膨らみを失う • 乳房部分切除術 メリット:傷が小さい(㊟整容性が保たれるわけではない)、 膨らみを保てる(乳頭が残る) デメリット:放射線治療が必須、断端陽性の場合再手術 手術 • センチネルリンパ節生検 乳輪上外側に色素注入 (インジゴ、ICGなど) 術中迅速で転移あれば… 腋窩リンパ節郭清 化学療法 • 内分泌療法 ・tamoxifen ・非ステロイド性AI剤 ・ステロイド性AI剤 ・fluvestrant ・MPA • 抗癌剤 ・AC療法 ・weekly PTX ・DTX ・eribulin ・capecitabine ・vinorelbine ・gemcitabine • 分子標的治療薬 ・trastuzumab ・lapatinib ・pertuzumab ・T-DMI ・bevacizumab
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