県内金融経済概況

2016 年 8 月 10 日
日本銀行大分支店
Bank of Japan Oita Branch
県内金融経済概況
2016 年度/夏<16/5 月~16/7 月調査>
本資料は当店ホームページにも掲載しています。
http://www3.boj.or.jp/oita/index.html
〈本件に関するお問い合わせ先〉
総務課(TEL:097-533-9106)
(FAX:097-538-7085)
E-Mail:[email protected]
<景気動向の総括表>
基調判断
前回(2016 年度/春)
今回(2016 年度/夏)
変化※
各種支援策の効果等により、熊
観光面を中心に、熊本地震の影
本地震による観光面を中心と
響がみられており、全体として
した下押し圧力が和らぐもと
弱めの動きとなっている。
で、緩やかに持ち直している。
↑
個人消費
地震による消費者マインドの 地震の影響により一時的に弱
悪化等から、足もとでは一部に めの動きがみられたが、足もと
弱めの動きがみられている。
では、持ち直しつつある。
↑
観光関連
需要
地震の影響で大きく落ち込ん
だ後、足もとでは、地域や施設
地震発生以降、大きく落ち込ん 等によりバラツキがみられる
でいる。
ものの、全体としては、各種支
援策の効果等から大きく回復
している。
↑
住宅投資
持ち直しの動きが一服してい
緩やかに持ち直している。
る。
↑
公共投資
横ばい圏内で推移している。
↓
設備投資
全体としては弱含みとなって
弱含みとなっている。
いる。
→
生産
足もとでは、地震によるサプラ
イチェーン問題の影響が一部
横ばい圏内の動きとなってい
でみられているが、全体として
る。
は、在庫調整の進捗等から概ね
下げ止まっている。
→
雇用・所得
労働需給は改善しており、雇用 労働需給は改善しているもの
者所得も振れを伴いつつも、緩 の、雇用者所得は幾分弱めの動
やかに増加している。
きとなっている。
↓
総括判断
需
要
項
目
弱い動きとなっている。
※ 矢印は前回からの判断の変化を表す。具体的には、「↑」は、判断の引上げ(前回判断に比較して景気
の改善度合いの強まりまたは悪化度合いの弱まり)を、「↓」は、判断の引下げ(前回判断に比較して
景気の改善度合いの弱まりまたは悪化度合いの強まり)を、「→」は、判断の据え置き(前回判断に比
較し景気の改善・悪化度合いの変化なし)を示す。
1
1.総論
(1)現状評価
大分県内の景気は、各種支援策の効果等により、熊本地震(以下、地震)に
よる観光面を中心とした下押し圧力が和らぐもとで、緩やかに持ち直している。
個人消費は、地震の影響により一時的に弱めの動きがみられたが、足もとで
は、持ち直しつつある。この間、観光関連需要についても、地震の影響で大き
く落ち込んだ後、足もとでは、地域や施設等によりバラツキがみられるものの、
全体としては、各種支援策の効果等から大きく回復している。住宅投資は、緩
やかに持ち直している。公共投資は、弱い動きとなっている。設備投資は、弱
含みとなっている。
生産は、横ばい圏内の動きとなっている。
雇用・所得面では、労働需給は改善しているものの、雇用者所得は幾分弱め
の動きとなっている。
金融面では、預金・貸出金ともに前年を上回って推移している。この間、銀
行の貸出約定平均金利はなお低下傾向にある。
(2)先行きの見通し
大分県内の景気の先行きは、各種支援策の効果等から、緩やかに持ち直して
いくとみられる。
個人消費は、概ね横ばいで推移するとみられる。この間、観光関連需要につ
いては、
「九州ふっこう割」をはじめとする各種支援策の効果から、国内客を中
心に回復していくと期待される。公共投資は、大型工事の発注から緩やかに持
ち直すとみられる。住宅投資は、緩和的な金融環境のもと、貸家を中心に堅調
に推移するとみられる。設備投資は、低調な動きが続くとみられる。この間、
生産については、新興国経済の動向に関する不確実性を伴いつつも、緩やかに
持ち直していくとみられる。
今後については、①各種観光支援策の効果による観光関連の回復状況、②英
国のEU離脱や中国をはじめとする新興国経済の動向が県内経済に直接・間接
的に及ぼす影響、③金融資本市場の動きや金融政策が企業や家計の支出動向に
及ぼす影響、について注視していく必要がある。
2
2.需要項目別にみた動向
(1)個人消費
個人消費は、地震の影響により一時的に弱めの動きがみられたが、足もと
では、持ち直しつつある。
この間、観光関連需要については、地震の影響で大きく落ち込んだ後、足
もとでは、地域や施設等によりバラツキがみられるものの、全体としては、
各種支援策の効果等から大きく回復している。
① 小売関連
大型小売店等
非
耐
久
消
費
財
コンビニエンスストア
ドラッグストア
地震発生後は消費者マインドの悪化等から弱めの
動きがみられたが、足もとでは、こうした下押し
圧力が緩和しており、全体としては、一進一退の
動きとなっている。
新規出店効果から増加傾向が続いている。この間、
カウンター商材や総菜等の中食が引き続き好調に
推移したほか、平均気温が高めに推移したことも
あり、冷菓など季節商材の販売も好調であった。
新規出店効果から増加傾向が続いている。
地震による防災意識の高まりから、災害対策用品
の販売が増加したほか、足もとでは、平均気温が
ホームセンター 高めに推移したこともあり、扇風機や夏用寝具と
いった季節商品の販売も堅調であり、全体として
底堅く推移している。
低水準横ばいで推移している。この間、平均気温
家電大型専門店 が高めに推移したこともあり、エアコンや扇風機
の販売が好調となっている。
軽自動車は落ち込んだ状態が続いている一方、登
録車(普通車・小型車)は新型車効果から堅調に
乗用車新車販売
推移しており、全体としては、横ばい圏内の動き
となっている。
専
門
量
販
店
耐
久
消
費
財
② 観光関連
当
県
へ
の
観
光
観光施設への
入込客数
県内主要旅館・
ホテルの宿泊客数
当県出発の
旅行取扱状況
地震の影響で大きく落ち込んだ後、足もとでは、
地域や施設等によりバラツキがみられるものの、
全体としては、各種支援策の効果等から大きく回
復している。
国内旅行は、地震の影響で大きく落ち込んだ後、
足もとでは、各種支援策の効果等から九州地域向
けを中心に持ち直しの動きがみられている。一方、
海外旅行は、情勢不安への懸念もあって弱めの状
態が続いている。
3
(2)住宅投資
住宅投資は、緩やかに持ち直している。
先行指標である新設住宅着工戸数をみると、貸家の増加を主因に、全体で
は前年同期を上回った(16/4-6 月:前年同期比+22.5%)。
(3)公共投資
公共投資は、弱い動きとなっている。
発注の動きを示す公共工事請負金額をみると、国や市町村等の発注が減少
したことから、全体では前年同期を下回った(16/4-6 月:前年同期比▲
44.1%)。
(4)設備投資
設備投資は、弱含みとなっている。
16/6 月短観における 16 年度設備投資計画をみると、製造業、非製造業と
もに前年を下回る計画となっており、全産業では前年比▲16.1%の減少計
画となっている(製造業:前年比▲12.8%、非製造業:同▲20.5%)。
この間、民間設備投資の先行指標である産業用建築着工床面積(鉱工業・
商業・サービス業の合計)をみると、鉱工業が減少したものの、サービス業
や商業が増加したことから、全体では前年同期を上回った(16/4-6 月:前
年同期比+0.6%)。
3.生産
生産は、横ばい圏内の動きとなっている。
鉱工業生産指数(季節調整済)は、一部業種における大規模定修などから、
前期比低下した(16/4-5 月:前期<16/1-3 月>比▲3.2%)。
この間、大分税関支署管内の輸出額は、中国や NIEs 諸国等の新興国向け
(鉄鋼、有機化合物、非鉄金属等)を中心に、前年同期を下回った(16/4-6
月:前年同期比▲31.3%)。
4.雇用・所得
雇用・所得面をみると、労働需給は改善しているものの、雇用者所得は幾
分弱めの動きとなっている。
労働需給面をみると、有効求人倍率(季節調整済)は、前期比上昇した
(16/1-3 月:1.08 倍→4-6 月:1.13 倍)。
──
16/4-6 月の有効求人数(季節調整済)は、前期(16/1-3 月)比
4
+2.1%の増加、有効求職者数(同)は同▲3.0%の減少となった。新
規求人数(原数値)は、医療・福祉や建設業などの幅広い業種で増加
したことから、全体では前年同期を上回った(16/4-6 月:前年同期
比+2.6%)。
賃金面をみると、雇用者所得(1 人当たり現金給与総額×常用労働者数)
は、常用労働者数が増加したものの、1 人当たり現金給与総額が減少したこ
とから、前年同期を下回った(16/4-5 月:前年同期比▲0.6%)。
──
16/4-5 月の 1 人当たり現金給与総額は、前年同期比▲1.6%減少し
た。
──
16/4-5 月の常用労働者数は、前年同期比+1.1%増加した。
5.物価
大分市の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の前年比は、0%程度で
推移している(16/4 月:前年比+0.0%→5 月:同▲0.2%→6 月:同+0.0%)。
6.金融
(1)預金
実質預金(含む譲渡性預金、都銀・地銀・地銀Ⅱ・信託<信託勘定を除く
>・信金・信組の末残ベース)残高は、個人預金を中心に前年を上回って推
移している(16/6 月:前年比+2.7%)。
(2)貸出
貸出(都銀・地銀・地銀Ⅱ・信託<信託勘定を除く>・信金・信組の末残
ベース)残高は、法人向けおよび個人向け貸出の増加を主因に、前年を上回
って推移している(16/6 月:前年比+3.0%)。
(3)貸出約定平均金利
貸出約定平均金利(総合・ストックベース、都銀・地銀・地銀Ⅱの加重平
均)は、なお低下傾向にある(16/4 月:1.492%→5 月:1.478%→6 月:1.471%)。
(4)企業倒産
企業倒産(負債額 1 千万円以上)をみると、倒産件数(16/4-6 月:前年
同期比▲16.7%)が前年同期を下回った一方、負債総額(同+7.3%)は前
年同期を上回った。
以
5
上