北欧史概説 2

ヨーロッパと
スカンディナヴィアの出会い
( 参考文献:『北欧史』 pp.51-90)
北欧のキリスト教化と三王国
• 10世紀以降の在地勢力によるキリスト教化→正統性
の道具としてのキリスト教会
• 12世紀初頭、ルンド大司教座の設置→北欧大司教区
の成立
• 12∼13世紀以降、各国の王権拡張と結びついた大司
教座の分立→ノルウェーのニーダーロス(トロンヘ
イム)大司教座、スウェーデンのウップサーラ大司
教座
北欧における王国の構造
1. 国王選挙などを通じた地方共同体の連合…地方法をもつ法域の存在(司
法・行政を担当)←伝統的な法慣習の維持(地方集会を束ねる)
• デンマーク…スコーネ法、シェラン法、ユラン法→クリスチャン5世のデン
マーク法(1683年)
• スウェーデン…ヴェストユータランド法、ウストユータランド法、ティオハ
ラズ法、ヴァルムランド法、グータ法、ウップランド法、スーデルマンラン
ド法、ヴェストマン法、ダーラナ法、ヘルシング法、ナルケ法→マグヌス・
エーリックソンの王国法(1350年)
• ノルウェー…グーラティング法、フロスタティング法、エイッチヴァティン
グ法、ボリヤルティング法→マグヌス6世(法改正王)の王国法(1274年)
北欧における王国の構造
2. 有力者による王国諮問機関の存在…王国参事会(13世紀
以降、司教・法域の首長(=大土地所有者から構成され
る)
3. 諸身分の特権を主張する身分制議会の起源…デンマーク
→エーリック5世の即位憲章(1282年)とダーネホーフ
(13世紀半ば∼15世紀初頭、即位憲章と貴族特権の確
認)、スウェーデン→マグヌス7世の即位憲章(1319
年)、アールブーガ集会以降の議会(1435年以降)
北欧における封建社会
• 王位をめぐる内紛(三王国間の干渉)・
キリスト教布教を名目とした軍事遠征(十
字軍)・ハンザ同盟やノブゴロドなどと
の抗争→国王を頂点とするレーン(領地
とそれに付随する特権)を媒介とした主
従関係の構築
• 軍役から租税へ→軍役代納金による王権
の騎士雇用(兵農分離)
• 独立自営農の領地、王の領地(農民は
国王へ担税義務)、貴族(レーン保持
者)の領地(農民は領主への小作料)
• レーン保持者は徴税機能のみ保持、国
王へ忠誠→領主裁判権をもつ西欧との
違い(地方集会へ参加する農民の自律
性)
中世北欧の王国を考える
【ヴァイキング時代】大陸との経済的・文化的交渉→海外遠征の大規
模化と指導者としての国王→キリスト教を受容した権力の正統化
【北欧内外での抗争】王国内外での王権を巡る内紛・キリスト教国と
しての十字軍活動・ハンザ同盟やノブゴロドなど隣接する政治勢力と
の抗争
【封建社会としての王国】王権を頂点とするレーンを媒介とする封建
制度の進展、各々の地域・身分の慣行・特権を承認することで制度化
される王国
北方十字軍
もう一つのキリスト教世界の拡張運動
)→ブレーメン大司教の
【背景1】バルト海東部に残る非キリスト教地域(12世紀
命を受けた伝道活動の挫折
末∼13世紀後半)→地
【背景2】地中海への聖地回復を目的とした十字軍(11世紀
改宗」を目的とした遠
中海十字軍への参加を渋る北ドイツ諸侯による「キリスト教
征活動の主張
インノケンティウス3世
ローマ教皇クレメンス3世による十字軍布告(1193)→教皇
(1215)
による「テラ・マリアナ(聖母の地)」という命名と直轄化
(ハンザ同盟の活動)
【背景3】バルト海交易の利益に着目したドイツ商人の動き
12世紀∼)+モンゴル
→辺境伯・騎士団・ポーランド諸侯などの勧誘による入植(
のくびき」にあるルーシ
のポーランド侵攻による荒廃と復興(13世紀∼「タタール
諸侯との対立)
北方十字軍
もう一つのキリスト教世界の拡張運動
12世紀に開始され16世紀まで断続的に行われたローマ・カトリック勢力の拡張運動(→16世
紀の宗教改革/ドイツ騎士団領の解体以降も、リヴォニア戦争など抗争は継続)
【参加者】ローマ・カトリック国(デンマーク、スウェーデン、ザクセンなど)、騎士修道
会(リヴォニア帯剣騎士団、ドイツ騎士団)
【デンマーク】ザクセンなどとのヴェンド十字軍…リューゲン島、ポンメルン、メクレンブ
ルク征服(1147頃)→リヴォニア帯剣騎士団などとのリヴォニア十字軍…エストニア(タリ
ン)上陸(1219)→エストニア征服(1223)→サーレマ島征服(1223)→一時的にリヴォニ
ア帯剣騎士団(→ドイツ騎士団へ吸収)領化(1227∼1238)→ドイツ騎士団へ売却(1346)
【スウェーデン】フィンランド十字軍…フィンランド南部征服(1154頃)→東方正教会を奉
ずるノブゴロド公国と抗争…ノブゴロド公アレクサンドル・ネフスキーに敗北(1240「ネ
ヴァ川の戦い」)→カレリアまで征服(1293)
中世のデンマーク王国
• ハーラル青歯王とキリスト教化(10世紀末)
• クヌート1世の“北海帝国”(11世紀前半)→王位継承を巡る内紛
• ヴァルデマー1世の統一(12世紀半ば)
• アブサロン司教と同盟→バルト海南岸への進出
• ヴァルデマー2世の東方進出(13世紀)
• タリン上陸→エストニア征服、ハンザ都市と対立
• ユラン法典の制定、騎士制度の導入、ダーネホーフの制度化
• ヴァルデマー4世の再興(14世紀半ば)
• ゴットランド征服(バルト海支配)、エストニア・スコーネの売却
→ハンザ都市との対立
中世のスウェーデン王国
• 10世紀末以来王は徐々にキリスト教化…ユングリング家∼ステンキル家
• 12世紀までウップサーラ異教信仰の司祭
• 12∼13世紀の内乱…スヴェルケル家vsエーリック家の王位を巡る内紛
• 貴族による寡頭政治(王国参事会の萌芽)
• エーリック9世以来のフィンランド進出(十字軍)…伝承では12世紀半ば以降、実
際には13世紀半ばのビルイェル・ヤールによる
• 13世紀半ば…ビャルボー家の統一→フィンランド支配確立(ノブゴロド公国と抗争)
• マグヌス3世(13世紀末)
• 王国参事会の制度化
• 騎士制度の確立(アルスヌー王令(1279or80))→貴族制の起源
• マグヌス4世エーリックソン(14世紀前半)
• 自由の特許状、全国法・都市法の制定
• スコーネ購入でスウェーデン・ノルウェー・スコーネ王 (国家連合の原型)
中世のノルウェー王国
• ハーラル美髪王(10世紀初頭)による中部統一
• 11世紀王権による強圧的改宗→内乱
• ホーコン4世ホーコンソン(13世紀前半∼後半)による再統一
• 王位継承法
• ベルゲンを中心の北海商業圏支配→アイスランドの服属
• マグヌス6世ホーコンソン(13世紀後半)
• 全国法と都市法の整備
• マグヌス・エーリクソン(ノルウェー王(マグヌス7世)・スウェーデ
ン王(マグヌス4世)・スコーネ領主を兼任)の国家連合へ