地熱発電の持続可能性に係る判断基準について(PDF形式:128KB)

 地熱発電の持続可能性に係る判断基準について
最低限の項目
区分
リスクへの対応強化
評価
評価
(安全性・社会環境影響の追及)
確認項目
チェック内容
(1) 源泉
・源泉データ
○ ×
考え得るリスク
追加的な対策のために必要な技術者等
追加的な対策例
・熱水・蒸気流量、温度、圧力、成分・泉質
・安定した源泉の流量・温度・成分を確保できないため、発電出力が低下する。
地質・地化学・貯留層評価
地質・掘削
・自主保安基準の制定・順守(例えば、地熱井掘削自主保安基準((財)
新エネルギー財団H2年1月)の第2章保安の確保 第6節 ケーシングパ
イプ及びセメンチング・第9節 坑口装置、セパレーター及びサイレン
サー)
・坑井内ボアホールテレビ検層(坑内ビデオ撮影)の実施。
・適切な坑井仕上げの施工。
・井戸の健全性
・坑井の健全性を確認し、改修の必要性の有無を検討
したか。(口元バルブやケ―シングパイプなどの腐食・
劣化・破損・目詰まり等)
・ケーシングパイプが劣化して、孔がふさがり湧出が停止する。
・破損個所からの地上への漏洩が止められなくなり、環境を破壊する。
・坑口装置の設置
・井戸口元に坑口装置(メインバルブ、スプール、直上
バルブなど)が取り付けてあるか。
・湧出量・泉質・耐圧などを考慮した装置が設置されて
いるか、定期点検は実施しているか。
・大涌谷温泉井で生じた圧力上昇時の抑制(注水停止)作業など地下の急変に対応する
作業などが安全に施工できない。
掘削
・定期点検を実施していないため、緊急時にバルブがスケール付着などにより開閉不能
となり坑内作業ができない。
・自主保安基準の制定・順守(例えば、地熱井掘削自主保安基準((財)
新エネルギー財団H2年1月)の第2章保安の確保 第9節 坑口装置、セ
パレーター及びサイレンサー)
・坑井圧力・温度に応じた地熱用主弁等(坑口装置)の設置。
・定期・緊急点検時の坑内作業ができる敷地、搬出入
路および工事用水が十分確保されているか。
・作業敷地確保以外に井戸と建物が近接していたり、井戸直上部に障害物がある(送電
線、樹木の枝など)、積雪による進入不可など緊急時の作業ができない。
・工事用水が少なく井戸冷却ができない。
プラント設計
・民家が近く夜間(昼夜連続)作業ができず緊急時に対応できない。
・大気解放時に熱水、スケール、固形物などが飛散し第三者に損害を与える。
・自主保安基準の制定・順守(例えば、地熱井掘削自主保安基準((財)
新エネルギー財団H2年1月)の第3章環境の保全)
・周辺環境への影響を勘案した設備計画の実施。
・ケーシングパイプ保護セメンチング
(ケーシングセメンチング)実施の有無
・ケーシングセメンチングが実施されているか。
・実施されていない、或いは不完全なセメンチングの場合、温度変化による伸縮が生じ
ケーシングが破損し、井戸外に蒸気(熱水)がリークする。
・ケーシングパイプ伸縮により地上部配管を破損する。
掘削
・自主保安基準の制定・順守(例えば、地熱井掘削自主保安基準((財)
新エネルギー財団H2年1月)の第2章保安の確保 第6節 ケーシングパ
イプ及びセメンチング)
・主弁を取付けるケーシングセメンチングの坑口までのセメント充填の
実施。
・スケール予測
・泉質によるスケール発生を予測したか。
対策を検討したか。
・坑井内にスケールが付着して、噴気量が低下(停止)する。
・発電設備内にスケールが付着して、発電量が低下(停止)する。
地質・地化学
・スケール発生予測の化学分析。
・薬液注入法によるスケール防止対策の選定。
・周辺源泉状況
・周辺源泉との距離および干渉の有無を確認したか。
・過剰な採取により、周辺源泉が枯渇する。
地質・地化学・物理探査・貯留層評価
・継続した温泉モニタリングの実施。
・メンテナンススペースの確保
(2) 冷却源
・冷却方式
・水冷か、空冷か
・設備費操業費の高い冷却方式で、採算が取れない。
プラント設計・地化学
・冷却源データ
・季節変動を含む、流量、温度、水質
・冷却水がないために、バイナリー発電が出来ない。
地質・地化学
・降雨量調査、水利権の調査、水利権者との協議。
・冷却水スケール予測
・水質によるスケール発生を予測し、対策を検討した
か。
・冷却設備にスケールが付着して、発電量が低下(停止)する。
地質・地化学
・冷却水の化学分析の実施。
(3) 系統連系
・接続電圧
・接続点
坑井掘削の有 ・送電可能量
無にかかわら
ず必要となる (4) 発電所設備
共通項目
・源泉との位置関係
・低圧接続、高圧接続を検討したか。
・接続点までの距離を確認したか。
・接続点までの距離が長く、設備投資が高騰する。
電気・プラント設計
・送電可能量を確認したか。
・送電が出来ないため、発電所を建設できない。
電気・プラント設計
・源泉、冷却源、系統連系接続点との位置関係、距離
の短縮化を考慮したか。
・源泉と発電の距離が遠いため、スケール付着や温度が低下して、発電が出来ない。
・周辺気象条件・データを確認したか。
・バイナリー発電と背圧式でないフラッシュ発電の場合には、気温によって発電効率が変
環境・電気・プラント設計
動する。
・候補地諸元
・地目、面積、所有者等の確認はしたか。
・地目、面積、所有者を確認しておらず、適用法規・条令が確認できない。
・発電方式
・バイナリー発電、フラッシュ発電の検討をしたか。
電気・プラント設計・土木
・発電ユニット
・発電機・周辺機器の概略設計をしたか。
電気・プラント設計・土木
・発電出力
・発電量、所内消費電力量を検討したか。
電気・プラント設計・土木
・気象条件
電気・プラント設計
・熱損失の算出、溶存成分の溶出算出等によるプラント設計の実施。
・環境調査の実施。
総務関連・電気・プラント設計・土木
(5) メンテナンス計画
・操業後の維持管理
・メンテナンス計画を検討したか。
(6) 法規・条例等
・維持管理が十分に出来ずに、発電量が低下(停止)する。
電気・プラント設計・地質
・電気事業法または自主保安基準に基づく定期点検・保守の実施。
・条例・指導要綱
・条例・指導要綱等を確認したか。
・当該地域の条令・指導要綱の許認可がされておらず、建設が出来ない。
総務関連
・電気事業法
・電気事業法関連事項を確認したか。
・電気事業法の許可を得ておらず、発電が出来ない。
総務関連・プラント設計・電気主任・ボイ
ラータービン主任
・発電所周辺の法規制
・自然公園法、森林法、国有林野法、農地法、河川法、
砂防法、消防法、建築基準法、水質汚濁防止法など環
境関連法規等を確認したか。
電気事業法の順守
[電事法の主任技術者選任・工事計画書届・使用前検査等不要の場合]
適切な工事計画策定、自主保安基準に基づいた適切な管理体制(管理
者・点検・検査等)
総務関連
(7) 保安・環境対策等
・保安
・保安規定を完備しているか。
・事故・災害が発生する。
保安係員
・保安係員の選任、保安規定の完備・教育と作業前、作業後の継続的
な保安ミーティングの実施。
・景観保全
・環境対策
(8) 事業性評価
・周辺の風致景観に配慮しているか。
・工事中、操業中の環境対策を検討したか。
・景観対策が不十分で、住民からの訴訟が発生する。
・環境対策が不十分で、騒音・振動・臭気・有害物質の排出などの公害が発生する。
環境・電気・プラント設計・土木
環境・電気・プラント設計・土木
・事業前、事業後の継続的な環境調査の実施。
・事業前、事業後の継続的な環境調査の実施。
・初期コスト
・初期コストを把握しているか。
・ランニングコスト
・メンテナンス費用、スケール対策費用、有資格者の人
件費を把握しているか。
・事業性評価
・正確な事業性評価となっているか。
経理関連・地質・地化学・掘削・物理探査・
貯留層評価・電気・プラント設計・土木
経理関連・地質・地化学・掘削・物理探査・
貯留層評価・電気・プラント設計・土木
・温泉発電などの小規模地熱発電は一般的に経済効率が良くないこともあり、FIT法等も 経理関連・地質・地化学・掘削・物理探査・
勘案した正確な事業性評価が行われないと、持続的な発電ができない。
貯留層評価・電気・プラント設計・土木
・フィジビリティー・スタディーによる事業化検討。
○ ×
最低限の項目
区分
リスクへの対応強化
評価
評価
(安全性・社会環境影響の追及)
確認項目
チェック内容
○ ×
考え得るリスク
追加的な対策のために必要な技術者等
追加的な対策例
(1) 地質環境
・掘削の有望性
・地質調査、地化学調査、物理探査(重力、比抵抗等)
を実施して、掘削が有望であることを確認したか。
・掘削地点が有望でなく、貯留層を掘り当てることが出来ないため、地熱開発に失敗す
る。
・段階を経た掘削調査の実施。①ヒートホール、②構造試錐井、③調査
地質・地化学・掘削・物理探査・貯留層評価 井、④生産井・還元井の掘削。
・坑井を利用した調査(地質分析、坑内検層、噴気試験)の実施。
・貯留層の評価
・長期噴気試験など必要な調査・試験を実施して、減衰
率や貯留層挙動・貯留層パラメーターなど(温度・圧力
分布の変化、パラメータを用いたシミュレーション等)を
把握したか。
・生産に伴い、貯留層の圧力や温度が低下して、流量が低下(停止)する。
地質・地化学・掘削・物理探査・貯留層評価
・還元井を計画しているか。
・還元井がないため、熱水を河川に放流して、環境を破壊する。
・地下の生産ゾーンと還元ゾーンの掌握。
地質・地化学・掘削・物理探査・貯留層評価 ・トレーサー試験(熱水に薬剤を溶かす試験法)による、坑井間干渉調
査の実施。
・掘削計画が適切でないため、計画深度まで達することが出来ない。
・断層を掘り抜くような掘削計画になっていないため、掘削が失敗する。
・自主保安基準の制定・順守(例えば、地熱井掘削自主保安基準((財)
新エネルギー財団H2年1月)の第1章総則・第2章保安の確保・第3章環
境の保全)
地質・地化学・掘削・物理探査・貯留層評価
・安全管理体制の順守、災害時の救護等・安全教育の実施。
・坑井掘削計画に適合した、使用掘削機械の選定。
・断層を掘り抜く傾斜掘削計画の決定。
・単独噴気試験、総合噴気試験の実施。
・貯留層シミュレーションによる長期予測の実施。
(自然状態、ヒストリーマッチング、将来予測)
・貯留層挙動の把握(温度・圧力分布等)。
(2) 掘削計画
・還元井(熱水を地下に戻す)
・掘削計画
・掘削計画は、地質状況、保安および環境保全を考慮し
ているか。
坑井掘削を伴
う場合の追加
項目
・ケーシングパイプ
・ケーシングパイプ保護セメンチング
工法
・採用するケーシング材料は適切であるか。
・ケーシング保護セメンチング工法は適切であるか。
・油井用鋼管を使用しておらず、坑井の寿命が短く、噴気が停止する。
・ケーシングセメンチングがされておらず、鋼管が腐食して、噴気が停止する。
掘削
・地目、面積、所有者等の確認はしたか。
・地目、面積、所有者を確認しておらず、適用法規・条令を遵守しないため、地権者から
訴訟が発生する。
総務関連・掘削
・温泉法
・地熱発電を前提として、温泉法第3条の許可を得た
か。
・該当しない場合には関係官庁などに事前説明を行う
事が望ましい。
・地熱・温泉資源の乱開発により、地熱・温泉資源が枯渇する。
総務関連・地質・地化学・掘削・物理探査・
貯留層評価
・鉱業権
・開発区域の鉱業権を確認したか。
・鉱業権者が鉱業法上の権利・義務を履行する上での妨げになる場合に紛争が生じる。 総務関連・地質・掘削
・自主保安基準の制定・順守(例えば、地熱井掘削自主保安基準((財)
新エネルギー財団H2年1月)の第2章保安の確保 第6節 ケーシングパ
イプ及びセメンチング)
・坑内想定温度、pH、設置深度に適合したAPI規格のケーシングパイプ
の選定。
・主弁を取付けるケーシングセメンチングの坑口までのセメント充填の
実施。
・耐熱用セメントの採用。
(3) 掘削基地
・掘削候補地諸元
(4) 法規・条令等
・地熱発電所操業開始前後での、継続したモニタリング調査の実施。
・近隣温泉・地元住民・関係自治体との定期的な情報交換の実施。
・地熱発電の権利は鉱業権とは別個な権利であるため同意は必要とし
ないが、鉱業権者が鉱業法上の権利・義務を順守する上での妨げにな
らないよう事前・事後など適宜説明を行う。
○ ×