第3回 環境汚染物質

第3回 環境汚染物質
3.1 環境に配慮しながら豊かな人間生活を営む
には…
1) 自然の浄化能力を超える量の汚染物質を環境内に持
ち込まない(量の問題)
2) 自然が無害化できない,あるいは無害化しにくい物質
(非・難分解性物質)を環境に持ち込まない(質の問題)
人類
汚染
浄化
自然
3.2 環境汚染物質,人工有害物質
環境汚染物質・・・環境中に存在する濃度いかんに
よって間接的に生物に影響を及ぼす。
人工有害物質・・・生物に直接被害などの悪影響を与
える。
重金属や非・難分解性物質は長期間にわたって自然界に
滞留し,食物連鎖を通して蓄積される。→生物濃縮
PCBの例
(1988)
表層水 動物プランクトン ハダカイワシ スルメイカ スジイルカ 0.00028 ppb
1.8 ppb
48 ppb
68 ppb
3,700 ppb
3.2.1 PCB(ポリ塩化ビフェニル)
Cln
Cln
優れた溶解性,熱安定性,絶縁性,抗酸化性をもつ
用途・・・電気絶縁油,熱媒体油,インク溶剤
生体に対する影響・・・肝腎臓障害,皮膚異常,吐き気
カネミ油症事件(患者1600人,死者50人)
コプラナーPCB(co-PCB)が強い毒性を示す(ダイオキ
シン類に含めて算入される)。
日本では1974年に全面使用禁止
3.2.2 有機塩素系農薬
CCl3
CH
Cl
Cl
DDT
Cl
O
Cl
Cl
COOR
2,4,5-T
少量で効果が持続する農薬 → 難分解性・生物毒性
急性毒性・・・嘔吐,知覚障害,運動障害(呼吸困難)
慢性毒性・・・肝腎臓障害,発がん性(?)
1970年前後から世界的にDDTの製造停止,使用禁止
2006年WHOがマラリア対策として発展途上国(流行地)での
DDTの屋内散布を推奨
3.2.3 有機リン化合物
S
C2H5O
C2H5O
P
O
NO2
パラチオン
主に農薬として使用される。使用禁止や使用規制あり。
コリン酵素の阻害剤 → 殺虫剤として有効。
3.2.4 有機金属化合物その他
メチル水銀・・・水俣病(1950年代)
TBT,TPT(有機スズ)・・・船舶塗料 1990年ごろから規制
アスベスト・・・断熱材。中皮腫を引き起こす。2004年全面禁止
3.2.5 ダイオキシン類
Cl
O
Cl
Cl
O
Cl
2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-パラ-ジオキシン
PCDDs(ポリクロロジベンゾジオキシン類)あるいは
PCDFs(ポリクロロジベンゾフラン類)と略される
コプラナーPCB(co-PCB)も含める。
(http://www.env.go.jp/chemi/dioxin/pamph.html)
難分解性,脂溶性・・・生物濃縮
催奇性,発ガン性,環境ホルモン
日本の排出量:平成24年には平成9年と比べて98.2%削
減された。しかし,公共用水域の水質・底質および地下水
質で環境基準を超過した地点があった。
日本人のダイオキシン類摂取量
平成27年度版 環境白書・循環
型社会白書・生物多様性白書
耐容一日摂取量:4pg-TEQ/kg/日
3.2.6 環境ホルモン(外因性内分泌攪乱
化学物質)
PCB, ダイオキシン類,DDT, TBTなどに加えてビスフェノー
ルA, ノニルフェノールなどを選定
発がん性の他,性異変を引き起こす。
3.2.7 化学物質過敏症
ホルムアルデヒド,アセトアルデヒド類が代表例
頭痛,吐き気,目の痛みなど(シックハウス症候群)を引き
起こす。
3.3 環境汚染物質対策
1) 有害物質,環境阻害物質,難分解物質などは作らない
有害物質などを排出,拡散させない
2)
PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)法
(環境汚染物質排出・移動登録制度)
MSDS(Material Safety Data Sheet)制度
(化学物質等安全データシート)
3) 有害物質などを分解,無害化する