「障害者差別解消法」について 1

「The JTB Way」Web試験 事前資料
「障害者差別解消法」について 1
1 「障害者差別解消法」の概要
●参考資料
・ 内閣府「障害者差別解消法」 リーフレット
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/sabekai_leaflet_p.pdf
・ 国土交通省所管事業における対応指針
http://www.mlit.go.jp/common/001108694.pdf
(1)法の制定の経緯
・2006年12月 国連で「障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)」採択
・2007年 9月 日本が条約に署名しました。
・2011年 8月 権利条約の批准に向けて、「障害者基本法」改正
・2013年 6月 「障害者差別解消法」成立
・2016年 4月 「障害者差別解消法」施行
(4)事業者に求められる義務
障がいを理由として「正当な理由」なく、サービスの提供を拒否したり、制限したり、
条件を付けたりするような行為は、不当な差別的取扱いとして禁止されます。
また、障がいのある方から何らかの配慮を求める「意思の表明(※)」があった場合
には、負担になり過ぎない範囲で社会的障壁を取り除くために合理的配慮を行う
(2)法の目的
ことが求められます。
全ての国民が、障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を
(※)知的障がい等により、本人自らの意思を表明することが困難な場合には、その家族などが本人
尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障がい者差別の解消を推進する
を補佐して意思の表明をすることもできます。
(3)法のポイント
ポイント
キーワードは、
①「不当な差別的取扱い」の禁止
②「合理的配慮」(※)の提供
(※)負担になり過ぎない範囲で「社会的障壁」を取り除くために必要かつ
適切な変更や調整を行うこと
ポイント
ポイント
「社会的障壁」とは、
障がい者にとって、日常生活や社会生活を送る上で障壁となる
以下のようなものを指します。
①社会における事物(通行、利用しにくい施設、設備など)
②制度(利用しにくい制度など)
③慣行(障がい者の存在を意識していない慣習、文化など)
④観念(障がい者への偏見など)
法の対象範囲
①法は、「行政機関」や「事業者」とそのサービスを受ける障がい者との
間で生じる差別を禁止するものです。第三者(一般の人びと)の差別
行為を対象とするものではありません。
②「障がい者」とは、身体障がい、知的障がい、精神障がい、発達障が
いなど、心身の機能に障がいのある人のことです。
いわゆる「障がい者手帳」を持っている必要はありません。例えば、
歩行が不自由で車いすや杖を利用している高齢者も含まれます。
③「事業者」とは、営利・非営利、個人・法人の別を問わず、反復継続
して事業を行うすべての者です。
◎不当な差別的取扱い(例)
障がいを理由(車いすを利用している
、聴覚障がいがある等)として、サービス
の提供や入店を拒否すること。
◎合理的配慮(例)
障がい特性(印刷物が読めない、音が
聞こえづらい等)に応じたわかりやすい
方法で情報を伝えること。
◎障がい者差別を解消するための二種類の義務
不当な
差別的取扱い
行政機関
禁止
(国・地方
合理的配慮
法的義務
公共団体等)
事業者
禁止
努力義務
*「努力義務」とは、「しなくてもよい」
という意味ではありません。
事業者には、対応指針を踏まえた
取組みが期待されます。
*また、特に公共性の高い事業を
行っている事業者は、「合理的配慮」
の提供に対して、より積極的に取り
組んでいくことが望まれます。
【義務を実効的なものにするための措置】
事業者には、障がい者差別の解消のための自主的な取り組みが期待されて
います。具体的には、相談体制の整備や、研修等を通じた障がいへの理解の
促進が求められます。
事業者の取り組みに問題があると判断された場合には、主務大臣から事業者
に対して報告を求めたり、助言・指導・勧告を行うことがあります。主務大臣から
求められた報告を怠ったり、虚偽の報告をすると、罰金が科せられます。
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「障害者差別解消法」について
「障害者差別解消法」について 2
2 「不当な差別的取扱いの禁止」の基本的な考え方
(1)「不当な差別的取扱い」
・ 「不当な差別的取扱い」とは、「正当な理由」なく、障がいを理由に「異なる取扱
い」をすることで、障がい者を「不利に扱う」ことです。
・ 障がい者へのサービス提供を拒否することや、障がい者にのみ特別な条件を
付すことは、障がい者を「不利に扱う」ことに当たります。
(2)障がい者を「不利に扱う」ことが免責される「正当な理由」
・ 「正当な理由」があると言えるのは、障がい者を「不利に扱う」目的が適切なもの
であり(目的の適切性)、それ以外に方法がない(手段の不可避性)場合です。
・ その判断に当たっては、障がい者、事業者、第三者の権利利益(安全の確保、
財産の保全、事業の目的・内容・機能の維持、損害発生の防止等)を客観的に
判断する必要があります。
・ 「正当な理由」があると判断した場合、障がい者に対してそれを説明し、理解を
得るように努めましょう。
(3)「異なる取扱い」であっても不当な差別的取扱いには当たらないケース
・ 障がい者の権利利益を実質的に確保するために、障がい者にのみ配慮を提供
すること。(障がい者を不利に扱う」ことではないので、不当な差別的取扱いには
当たりません)。
・ 合理的配慮を提供等するために必要な範囲でプライバシーに配慮しつつ、障が
いの状況等を確認すること。
3 「合理的配慮の提供」の基本的な考え方
(1)「合理的配慮」の三つの条件
① 障がい者の個別のニーズを踏まえていること
障がいの状況は人によって異なり、性別や年齢、その他の条件の違いによって
個々の障がい者が持っているニーズも多様であるため、障がい種別に応じて
一律の配慮を提供するだけでは十分ではありません。
② 障がい者にとって不利な社会的障壁を取り除くものであること
既存の環境やルールは障がいのない人の都合に合わせてできているため、
障がい者向けに追加的な配慮が必要になっているだけです。追加的な配慮は、
障がいがない人との「平等な機会」を確保するためのものであり、決して「特別
な優遇」ではありません。
③事業者に過重な負担を課さないものであること
以下の要素を総合的に勘案して、事業者にとっても無理のない範囲で可能
な配慮を考えることが求められます。
・ 事務・事業への影響の程度(事業の目的・内容・機能を損なうか否か)
・ 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
・ 費用・負担の程度、事業規模、財務状況
なお、日ごろから障がい者の利用を想定した「環境の整備」を行っておけば、
個別のケースでの対応の負担は小さくなるので、そうした事前の取り組みも重要です。
(2)「合理的配慮の提供」を検討する際のポイント
・ 合理的配慮の内容について検討をする際には、障がい者の意思を十分に
尊重することが重要です。
・ 障がい者からの希望が「過重な負担」を伴うと判断した場合は、障がい者に
その理由を丁寧に説明し、理解を得るよう努めるとともに、実施可能な代替
措置を考えることが大切です。
*十分な話し合いを行わずにサービス提供を断ってしまうことは、法で禁止された
「不当な差別的取扱い」につながり、紛争の発生やブランド毀損のリスクが高まります。
事例
それでは旅行会社では、どんなことが「不当な差別的取扱い」や「合
理的配慮」に該当するのでしょうか?
「不当な差別的取扱い」の事例
● 障がいの状況やご要望をお伺いすることなく、障がいがあるというだけで旅行申込み
を拒んだりすること。
● 十分な説明を行わずに、障がい者に対してツアー参加をお断りすること。
「合理的配慮」の事例
● ツアーについて相談を受ける際、利用する交通機関や宿泊、観光施設等のバリアフ
リー状況について情報を提供すること。
● 貸切バスを利用するツアー等で、旅行会社の方でバスの座席位置を決められる場合
は、旅行申込み時に申告された障がいの状況や希望を踏まえ、歩行の不自由な方
に乗降口に近い座席を用意するなど座席位置に配慮をすること。
●ツアーへの参加をお断りする場合でも、その理由を丁寧に説明して合意形成を図ると
ともに、障がい者が安全、安心に参加できる旅行について相談すること。
※JTBグループでは、「障がい」の「がい」の字をひらがな表記に統一していますが、
法律の部分(障害者差別解消法)については、漢字の「害」を使用します。