食塩の高濃度連続式蒸発晶析槽における製品結晶に及ぼす 翼回転数と

SCEJ 75th Annual Meeting (Kagoshima, 2010)
F115
食塩の高濃度連続式蒸発晶析槽における製品結晶に及ぼす
翼回転数と懸濁濃度の影響
(横国大院工) (学)加藤慎平・井部穂生・(正)三角隆太*・(正)仁志和彦・(正)上ノ山周
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粒径分布 [1/μm]
0-100μm
100-200μm
200-300μm
300-400μm
400-500μm
500-600μm
600-700μm
700-800μm
800-900μm
900-1000μm
結晶個数 [個]
結晶個数 [個]
粒径分布 [1/μm]
D50 [μm]
懸濁濃度 [vol%]
140 mm
はじめに
約 8 時間連続操作を行った。安定な懸濁濃度、適切な
ドラフトチューブ付撹拌槽を用いて、高懸濁濃度で
翼回転数で操作することで結晶個数を安定化させるこ
の食塩の連続式蒸発晶析実験を行った。半回分式蒸発
とができ、安定した粒径の結晶を連続的に得ることが
(7)
(8)
晶析実験で得られた最適種晶条件をもとに連続操作を
できた。 (4)
(1) 3枚プロペラ翼
(6)
行い、製品結晶に及ぼす翼回転数や懸濁濃度の影響を
(2) 邪魔板付ドラフトチューブ
(3) シースヒーター
検討し、同検討に基づいて結晶個数や粒径分布を安定
130 mm
(4) モーター
化させる操作手法を構築した。
(2)
(3)
(5) 変圧器
1.実験装置および方法
(6) 結晶観測点
(1)
(9)
1)
(7) 枝付結晶吸引管
図1に実験装置概略 を示す。槽内の飽和食塩水を
70 mm
(5)
(8) 高速度ビデオカメラ
ドラフトチューブの外側に巻き付けたシースヒーター
(9) NaCl飽和溶液槽
(12)
(11)
(10) サンプルシリンダー
を用いて加熱速度 1200 Wで加熱し、蒸発晶析実験を
(10)
(11) バルブA
行った。沸騰後半回分式蒸発晶析実験で得られた最適
(12) バルブB
(13)
(13) バルブC
種晶条件1)である平均粒径 90μm、重量 20gの種晶を添
out
(14)
(14) アスピレーター
加した。翼回転数 700rpmでは懸濁濃度 30vol%を目指
図1 実験装置概略
し 130 分間半回分式操作を行い、550rpmでは懸濁濃度
40
700
600
20vol%を目指し 90 分間半回分式操作を行った。所定
30
500
の懸濁密度に達した後に、予め減圧した実験槽下部の
400
20
300
サンプルシリンダーを用い槽内の結晶を抜き出し連続
700rpm
700rpm
200
10
操作を行った。抜き出し間隔は 15~20 分で、連続操作
550rpm
550rpm
100
0
0
は約 8 時間行った。また、槽内の液量を一定に保つた
0 100 200 300 400 500 600
0 100 200 300 400 500 600
めに蒸発量と抜き出し量に応じた液量の塩化ナトリウ
時間 t [min]
時間 t [min]
図3 D50の経時変化
図2 懸濁濃度の経時変化
ム飽和水溶液をポンプを用い供給した。槽内結晶の粒
0.008
0.008
10min
10min
100min
100min
径分布は外部吸引サンプリング法1)を用いて算出した。
220min
223min
0.006
0.006
360min
364min
2.実験結果および考察
460min
451min
0.004
0.004
540min
541min
図 2 に翼回転数が 550rpm,700rpmのときの懸濁濃 0.002
0.002
度の経時変化を示した。翼回転数・懸濁濃度を変えて
0
0
0
200
400
600
800
1000
0
200
400
600
800
1000
も懸濁濃度を約 8 時間一定に保つことができた。図 3
粒径 [μm]
粒径 [μm]
にD50の経時変化を示した。翼回転数が 550rpmでは
a) 翼回転数 550rpm
b) 翼回転数 700rpm
目標懸濁濃度
20vol%
目標懸濁濃度
30vol%
D50は増加しているのに対し、700rpmでは 200 分以降
図4 粒径分布
ほぼ一定となった。また、図 4a),b)に粒径分布を示し
×107
×107
0-100μm
6.0
6.0
100-200μm
200-300μm
た。翼回転数が 550rpmでは時間とともに結晶が成長
300-400μm
5.0
5.0
400-500μm
500-600μm
し大結晶が析出するのに対し、700rpmでは 360 分以 4.0
600-700μm
4.0
700-800μm
800-900μm
降粒径分布にあまり変化はみられない。これは懸濁濃 3.0
900-1000μm
3.0
度、翼回転数を上昇させると結晶の摩耗がより進み、 2.0
2.0
1.0
粒径の大きい結晶が摩耗されるためと考えられる。図 1.0
0.0
0.0
5a),b)に結晶個数の経時変化と粒径ごとの内訳を示し
200
400
600
200
400
600
時間t [min]
時間t [min]
た。翼回転数が 700rpmでは結晶個数を安定化させる
b) 翼回転数 700rpm
a) 翼回転数 550rpm
ことができた。これは懸濁濃度を上げることでバルク
目標懸濁濃度
30vol%
目標懸濁濃度 20vol%
からの核発生を抑えることができたからと考えられる。
図 5 結晶個数の経時変化
また、図 5b)で粒径 0~100μmの小さい結晶が恒常的
謝辞 本研究の一部は(財)ソルトサイエンス研究財団研究助成(Nos.0711,
に発生しており、この摩耗で発生したと考えられる核
0813)、および文部科学省科研費(No. 19760112) の援助を受けて行われた。
記して謝意を表す。
も結晶個数の安定化に寄与したものと考えられる。
参考文献 1) R.Misumi, T.Toyoda, K.Nishi, M.Kaminoyama, Proc. 17th
むすびに
International Symposium on Industrial Crystallization, p.667-673 (2008)
高懸濁濃度での食塩の連続式蒸発晶析実験を行い、
* E-mail: [email protected], TEL: 045 - 339 - 3995