「お試し改憲」を軽く見るな 自分のことばで発信を

﹁改憲ありき﹂
に騙されない
改憲勢力が3分の2を占める結
果となり、改憲発議が可能な状況
になってしまった。しかしいきな
り9条や緊急事態条項、自民党改
憲草案を正面から出してくること
はないでしょう。一見、立憲主義
的な内容に見える改憲事項から進
めてくる。安倍さんは公明党やお
おさか維新、民進党の一部まで巻
き込んで憲法改正の発議をしたい
のです。野党分断も視野に入れて
いるでしょう。まずは﹁改憲あり
き﹂の論議に持ち込み、妥協した
か の よ う に 見 せ て﹁ お 試 し 改 憲 ﹂
を 進 め て く る の で は な い か。﹁ 改
憲ありき﹂がそもそもおかしいの
だという視点を見失わないことが
大切です。
直近の衆議院選挙、参議院選挙
でも明確な憲法論議はせず、争点
を隠してきた。改憲勢力と言って
も 必 要 性 が な い の に﹁ ど こ か 改
憲できるところはないか?﹂と探
Constitution 構 造、 体 質、 組
しているおかしな集団です。憲法
︵
織、体格という意味もある︶改正
は 手 術 に 似 て い ま す。﹁ 手 術 を し
てはいけない﹂ということはない
が、手術の必要がないのに﹁どこ
か手術できるところはないか﹂と
た と え ば﹁ 環 境 権 ﹂。 今 の 憲 法
でも環境権を認めることは十分に
できるのにわざわざ憲法を変えよ
うというのは、憲法改正そのもの
野党共闘はさらなる進化を
さらに、緊急性のない﹁どこを
的に政治参加する第一段階として
共闘は、主権者である市民が積極
の マ マ が 初 め て 選 挙 を﹁ 作 る ﹂
今回の参議院選挙では、多く
たに生み出されるものもあれ
たちが入ろうとすることで、新
今回そこへ﹁いち市民﹂の私
自分のことばで発信を
変えようか﹂という憲法改正論議
必要な形だった。市民の声をより
側に回りました。実際にやって
ば、 反 発 も あ っ た と 思 い ま す。
︵市民連合が後押しした︶野党
にうつつをぬかすと、大切な政治
正確に政治に反映していくための
こうした選挙戦中の﹁胃が痛く
が目的といわざるを得ません。
の時間が無駄遣いされてしまうと
み て わ か っ た の は﹁ 公 職 選 挙
なる﹂ようなエピソードは忘れ
法﹂の難しさです。
マ マ の 会 は、 選 挙 を 目 的 に
てしまいたいものですが、あら
手段。現職・世襲議員にきわめて
作 っ た 政 治 団 体 で は な い の で、
ためて振りかえり、問題を解き
有利な選挙制度の中で、新党を作
あくまでも﹁ママの会メンバー
ほぐしていかないと︱と思って
知ってほしい。少子高齢化、財政
︵個人︶﹂として動くことに注意
います。
赤 字、 格 差 と 貧 困、 年 金 問 題 等、
可能な限りの成果を出せたと思
しました。これほどまでに選挙
ら な か っ た の は、 時 期 尚 早 だ と
う。一方、課題も見えてきた。一
参加のハードルが高いというこ
ヘリパッド建設に象徴されるよ
喫緊の課題に対応できない政治状
つ は、 野 党 統 一 候 補 は 必 要 だ が、
とを初めて知りました。
うに、たとえ選挙で﹁民意﹂が
思ったから。
候補者決定の過程が市民に開か
当選できた候補、できなかっ
示されても、安倍政権の暴力が
況になるのです。
れ、十分な論議がされなければな
た候補もいますが、野党の共闘
止まらない現実があります。
今 回、 参 院 選 で の 野 党 共 闘 は、
国 民 投 票 は、 英 国 の 例 を 見 て
らないこと。政党任せだけにはで
を呼びかけなければ、ここまで
の議席は確保できなかったと思
一人でも多くの人に関心を
政治的中立という言論封殺
も、 不 合 理 な 結 果 が 出 か ね な い。
きないと思った。二つめに、野党
黒か白かの二択になる。結果、投
共闘では、単に候補者を絞るだけ
います。それぞれが応援してい
沖縄の辺野古新基地、高江の
熟議をするといっても、実際には
票後に英国民が驚愕する事態に
ではなく、政策協定についても十
場から発信することが鍵になり
な っ た。 日 本 は そ こ ま で も い か
従来の選挙では、それぞれの
ま す。 こ う し た﹁ 不 断 の 努 力 ﹂
持ってもらうためには、一人ひ
それができれば、来る衆議院選
候補者に特定の支持母体がつい
を続けましょう。
る候補者が、目に見えて磨かれ
挙で力を発揮できるだろう。野党
て応援を担っていました。
分論議をし、その内容を明らかに
をさせるはずがない。あらゆるメ
共闘、そして市民がともに運動す
ない。国民投票で決まるといって
ディアに圧力をかけてきた安倍政
るには、他者性や異質性を認め合
とりが自分の言葉で、自分の立
権が弾圧しないなんてあり得ない
わなければならない。今後はいっ
ていくのを感じました。
でしょう。しかも一切の制限なく
そうの公開性、政策議論の深化が
しなければならないこと。
広告できる。改憲発議そのものが
も、 安 倍 政 権 が 自 由 な 国 民 論 議
大変危険だと覚悟しなければなり
求められるだろう。
既 に 削 除 さ れ て い る ︶。 こ う し て
治 的 中 立 性 に つ い て の 実 態 調 査。
載しました︵学校教育における政
投稿用フォームを公式サイトに掲
く、知識を得て、自民党の改憲草
だから変えた方がいいとかではな
か と 問 い た い。 漠 然 と 古 い 憲 法
もそも憲法のことを知っているの
じゃない﹂と思っている人は、そ
﹁少しぐらい憲法変えてもいい
◇
ません。
自民党は先日、政治的に中立で
公共空間や教育における憲法論議
案も読んで、いま何が行われよう
ない教員を密告しろという趣旨の
が 押 し 込 め ら れ て い く。﹁ 中 立 ﹂
てほしい。主権者である以上、憲
の基準を政府が決めようとしてい
で も 民 主 的 な 力 が 奪 わ れ る。﹁ お
法を学び直すところから始めてほ
としているのかを自分の頭で考え
試し改憲﹂を軽く見てはいけな
しい。
る。これでは、たとえ些末な改憲
い。
西郷 南海子 さん
探している医者には手術をさせな
い方がいいですよね。その典型が
安倍さんです。
国の体︵憲法︶の一部にメスを
入れたら、ほかの個所に不具合や
悪影響、合併症が出るかもしれな
い。 逆 に 言 え ば、 ひ と つ の 体 系
をなしているものを少しだけ変え
て、全体像に影響がないなら、そ
もそも変える必要がないくらい些
末なのかもしれません。
安保関連法に反対するママの会
2
2016 年 8 月 10・25 日
第 1147 号(第三種郵便物認可)
7・10 参 院 選 を終えて
市民連合、野党共闘の立役者である中野晃一さん、ママの会
を立ち上げて安保法制に反対してきた西郷南海子さん、参院選
を勝ち抜いて引き続き国会で活躍する福島みずほさん。参院選
で見えてきたもの、今後の課題などについて話を聞いた。
上智大学国際教養学部教授
中野 晃一 さん
「お試し改憲」を軽く見るな