第15回 グリーンケミストリー入門

第15回 グリーンケミストリー入門
15.1 持続可能な社会とグリーンケミストリー
1992年の国連環境会議で採択されたアジェンダ21の重要なキー
ワードが持続可能な発展(sustainable development)である。
1994年米国環境保護庁が「グリーンケミストリー(green
chemistry, GC)」の概念を提唱した。
基本的な考え方・・・
化学製品自体を環境に優しいものにするだけでなく,化学製品
の設計,合成法や製造プロセスなど物質をつくる根本の段階で
汚染の発生を未然に防ぎ,環境や健康へのリスクを低減する。
日本では・・・
持続性を強調し,グリーン・サステイナブルケミストリー(green
sustainable chemistry, GSC)という表現が使われる。
米国のGCは主として化学物質の製造についてであるが,わが国
のGSCは環境浄化やリサイクルも含んでいる。
15.2 グリーンケミストリーの12箇条
1.予防
廃棄物を出してから処理するのではなく,はじめから出さない。
2.原子の利用効率(atom economy)
原料物質中のできるだけ多くの原子が最終製品産物に残るよう
な合成法を設計する。
3.毒性の少ない方法
可能な限り環境や人間に対して毒性のない物質を使って合成す
る。
15.2 グリーンケミストリーの12箇条
(続き)
4.安全な化学物質の設計
機能が同じならできるだけ毒性の少ないものを作る。
5.安全な溶媒や反応補助物質
溶媒や分離のための補助物質はなるべく少なくし,使うにし
てもできるだけ毒性の少ない物質を使う。
6.エネルギー効率の向上
化学プロセスのエネルギー消費は環境への影響,経済性を考
慮して最小限にする。できれば常温常圧で行う。
15.2 グリーンケミストリーの12箇条
(続き)
7.再生可能な原料
技術的に可能で経済性もあるなら,枯渇性資源ではなく再生可能
な原料を使う。
8.化学修飾の削減
反応を効率的に行うためにしばしば官能基の修飾(官能基を別
の形に変換して保護し,あとで元に戻すこと)をすることがある
が,そのような手法は余分の薬品を要し廃棄物も増やすので,で
きるだけ避ける。
9.触媒の活用
選択性の高い触媒は反応の効率を高めるのに優れている。
15.2 グリーンケミストリーの12箇条
(続き)
10.環境中で分解する製品
化学製品は使用後,無害なものに分解し,残留性がないようにす
べきである。
11.汚染防止のためのリアルタイムの分析
化学プロセスにおいて,有害物質の生成をモニター,制御する
にはリアルタイムで計測する分析法が必要である。
12.事故防止のための本質的な安全性
爆発,火災,有害物質の漏出などの事故がおこらないような方
法をとる。
15.3 優れた研究に対する表彰制度
米国・・・グリーンケミストリー大統領賞
!
英国・・・王立化学アカデミーグリーンケミストリー賞
!
ドイツ・・・ドイツ化学会Wöhler賞
!
日本・・・グリーン・サステイナブルケミストリー賞