TV 報道検証 テレビ局: TBS 報告書 番組名:サンデーモーニング 放送日: 2016 年 7 月 17 日 出演者: メインキャスター: 関口宏氏 サブキャスター:橋谷能理子、水野真裕美、伊藤友里 パネリスト(コメンテーター) :岸井成格氏(元毎日新聞主筆、元 NEWS23 キャスター) 週替わりコメンテーター: 宮田律(おさむ) (現代イスラム研究センター理事長)、田中秀征(福山大学客員教授) 瀬谷ルミ子(NPO 日本紛争予防センター理事長) 、西崎文子(東京大学大学院教授) 青木理(ジャーナリスト) 、 検証テーマ: 3.東京都知事選、立候補者出そろう、風を読む 参議院選挙の結果総括 報道内容要旨: Ⅰ.今週の主な News 1.トルコでのクーデター 2.フランス・ニースでのトラックによるテロ 3.東京都知事選、立候補者出そろう 以下、主要候補に関わる部分のみ文字起こし。 ① 「いち早く出馬を表明したものの、自民党などの与党の推薦を受けられなかった小池百合子元防衛大臣は」 小池氏「組織、何らかのしがらみを超えてこの都知事選にこれからまい進してゆく心でございます。 」 都政の透明化を目指し、都民が新しい東京を作るべきだと訴えました。 ② 一方、知事経験と実務能力の高さを買われ与党からの全面支持を受けた、増田寛也総務大臣は 増田氏「都政の混乱に終止符を打たなければなりません。子育て、災害、高齢化と言う三つの不安を解消す る。 」 ③そして、政治と金の問題で混乱した都政に対し納税者意識で仕事に臨むとしたジャーナリストの鳥越俊太郎 氏は「東京都政を一部の人のものでなくて東京都民、皆に都政を取り戻す。住んで良し、働いてよし、環境 によしと言う三つの良しの東京都を実現したい。 」 ④告示の前日(13 日記者クラブ)行われた共同会見では白熱した議論となりました。 増田氏「どうしても気になりますのは(小池氏が述べた)都議会の冒頭解散と言う事で、ただでさえ遅れて いる課題がずっと遅れてしまって滞ってしまう。 」 小池氏「そことけんかしてどうするんだという話で確かにそうですが、しかし、これまでも猪瀬、舛添と続 いてきたことは、次何かの切っ掛けで起こる可能性は十分あると」 そして、与党の推薦を受けられなかった小池氏は「増田さんは(推薦されたのは)どうしてわたしでなかっ たと言えますか?」 増田氏「小池先生のやられている事は少し劇場型の様な、そう言ったところが皆さんの判断につながってい るのかなと。すみません、大変失礼なことを申し上げまして。 」 ⓹ナレ「鳥越氏に対しては記者からこんな質問が取り上げられました。 」 記者「詳細な政策はこれから勉強します。そう言った状況で立候補したのはどうなのか?」 鳥越氏「誰でも最初はわからないのですよ。だけど、真剣に取り組めば道は開けると思います。そんなに心 配していただかなくとも結構です。 ⑥伊藤キャスター「小池氏はニュースキャスターから国会議員に転身。環境大臣、防衛大臣も務めて国政経験 も豊富。 増田氏は官僚出身で岩手県知事。総務大臣も務めた行政のプロ。 鳥越氏は毎日新聞の記者からニュースキャスターに活躍の場を広げたジャーナリスト。 ⑦各自の政策は小池氏は密室で物事が決まらないよう、都政の透明化。 増田氏は一連の金問題による都政の混乱に終止符を打つ。 鳥越氏は住んで良し、働いてよし、環境によしの三つの実現 Ⅱ.その他の主な News 11 日水曜日―英六輔さん死去、ザ・ピーナッツ伊藤ユミさん死去 南スーダンで戦闘激化 PKO 活動への影響は・・ 12 日火曜日―南シナ海めぐり“中国の主権否定”の判断(中国の主張する領有権は否定。国際司法裁判所 は両国の同意がないと採決に至らない。今回フィリピンが訴えた仲裁裁判所は両国の同意は いらないが強制権なし。ただし、中国の領有権が無いと周知された意義はある田中氏:中国 は大国になる品格が足らないとコメント。 13 日水曜日―天皇陛下「生前退位」のご意向(岸井氏解説:宮内庁は第三者が述べるものでは無い。最初 の退位から 1000 年間で半数退位。陛下のご意思があるなら真摯に取り組むべき。国民全体 が考える時では。まず、皇室会議から議論を進めれば。) イギリス・メイ新首相が就任 Ⅲ.風を読むー参議院選挙の結果総括 1.VTR の内容 ①参院選の開票結果につき肯定的な人と否定的な人を一人ずつ紹介した。続いて ②ナレ「与党が圧勝で終わった参議院選挙中、与党が主に訴えたアベノミクスについて有権者に聞いてみると」 市民「全く評価しないわけじゃないけれど、なんか実感として末端にはきてない」 市民「株が上がったり下がったり不安定な状態なので足元をしっかりする政策が必要。」 アベノミクスに対して冷静な町の声に続き、共同通信が選挙後に行った世論調査でアベノミクスにより景気が よくなるかの質問に「よくなると思う」が 32%、 「よくなると思わない」は 56.4%にも上ったと紹介。 ③次に野党4党候補者を一本化して挑んだのは一定の効果があったとして野党共闘を歓迎する市民の声を紹介。 市民「ああいう構想であれば、伸びるとは思いますね。やはり長い間受け皿がなかったから」 市民「今まで票が割れてたのを、共闘によって票を集約できてよかった」 ④しかし、一方で「民主党に任せるのが不安」との声を二人紹介し、民主党政権時代の迷走のトラウマが野党へ の不信感を生み出し、与党への支持を広げる結果になったと結論。その後「自民党が安心」との声を二人紹介 ⓹さらに野党が隠れた争点として指摘した憲法改正について賛否二人の街の声を紹介 市民「僕は必要だと思いますよ。日本人は、やっぱ自分たちの国は自分で守らなければいけない」 2 市民「非常に怖いことだし、やらせてはいけないことだと痛切に感じます。 」 有権者の見方が割れる中、結果は会見に前向きな勢力が、憲法改正の発議に必要な3分の2以上の議席を獲得 したが、選挙後の共同通信の調査では、この結果を「よかった」とする人は 24.2%、 「よくなかった」とする 人は 28.4%と評価が分かれる一方で、 「どちらともいえない」とする人は 46%にも上りました。多くの人が判 断を保留する中での3分の2の議席獲得であった事を紹介。続いて自民党は憲法問題を争点隠ししたとの声と 野党がもう少しはっきりと訴えるべきであったとの声をそれぞれ紹介 ⑥今回もう一つ注目されたのが 18 歳、19 歳の若い有権者の動向でした。若者の投票出来た喜びの声。 18 歳、19 歳の投票率は全体より低めの 45.45%だった。共同通信の出口調査によると、多くの若者が、投票 した政党は自民党だったと紹介。 若い有権者「自民党は『何をしたい』という意思表示が表れているので、自民党にみんな入れたのかなと思い ます。」 「有名な安倍さんがいるから入れてるのかなぐらいにしか思わない」 この結果に驚きを感じないとする声が多い中、こんな声もあった。 若い有権者「結構若い子たちが自民党に入れてると言うのを聞いて、やっぱり戦争を経験してない世代として 戦争に対する意識がちょっと低いのかなとか自分は個人的には思いました。 」 ⑦日本の未来を決める節目の選挙とされながらも、投票率は 54.7%と戦後4番目の低さで幕を閉じた今回の参院 選。果たしてこの選択は、どんな未来をこの国にもたらすのでしょう。 市民「こうやってて心配ですよね。子供とか孫の世代に禍根を残すのではないかなと思います。 」 市民「わかんないね。将来どういう風に変化していくかってことが全く読めない。」 (VTR 終わり) 2.以下スタジオ ⓼関口氏「私の印象ではなんかもや-っとした雰囲気の中で行われた選挙だったかな。争点もなんかあんまりは っきりしてなかったし。 」橋谷アナ「与党と野党の争点が完全にすれ違ってましたね。」 関口氏「なにかね。だからわけわかんないまま投票された方も多かったのじゃないかという気がするけど、ど うでしょうか。 」 ⑨福山大学客員教授 田中秀征氏「いい勝負になるはずだったんですよね。この前ここで黒板使って(話したよ うに)今おっしゃったすれ違いを一番恐れてアベノミクスのマイナス部分、欠陥部分を鋭く野党はついていっ た方が、はるかによかった。片方がアベノミクス、片方が憲法改正っていう形で全然だめだったと。もう一つ はその、野党の中心である民主党が、やっぱりまだ不信感がずーっと。で、どんどんどんどん小さくなってい きますよ。 」 ⑩東京大学大学院教授 西崎文子「やはり節目だと言いながら結局はそう受け止められてなくて、多くの人はま あ要するにひどいことは起こってない、このまま行った方が安全だということで選んだと思うんですけど、た だやはり憲法改正がどうしても気になるんですけど、もう一回改めて自民党の憲法草案を読んでみると、本当 にラディカルなんですよね。かなり今までのと変わって、保守的ではなく、むしろ急進的な変化が訪れる可能 性がある。特に一つ気になったのは、国民主権という言葉は残ってるんですけれども、それを縷々説明した旧 憲・・旧憲法って今の憲法ですが、その説明がすっかり落ちていると。国民が主権であるってことに対するメッ セージ性が非常に希薄な憲法になっていると思うんです。そのあたりが気になりますね。そうですね。主体が 何なのかっていうのがはっきりしない。」 3 ⑪日本紛争予防センター理事長 瀬谷氏「今回争点を含めて無党派層にとって選択肢がなく、投票率の低下にも 表れてるんだと思いますね。後は野党の方が争点にしてた『3分の2を取らせない』っていうスローガンも、 そもそも3分の2が何を意味するっていう理解が有権者の中に進んでいないっていうのがありましたし、選挙 が終わって改憲勢力が3分の2になったっていう調査をしても 50 パー・・大体半分くらいの人が「どちらとも いえない」という意見を表すくらい問題自体がわかりにくい。なので、ま、やはりそういう国民の中で簡単に 意見が出ていないところを争点にして、やはり争点がかみ合わなかったというところが、やはりそういう無党 派層の人たちの投票率の低下につながったのではないかと思ってます。 」 ⑫ジャーナリスト 青木理氏「あの、VTR の中で、『急に変わらないから安心するんだ』っていう話を自民党に ついて行った人がいたんですけど、思い出すのがゆでガエルって言葉ですよね。つまり熱いところにカエルを ごそっと落とすと飛び出すんだけど、冷たい状態から温めていくと気がつかなくて死んじゃうっていう。実は カエルはそんなバカじゃないらしいですけど、そういう現象をゆでガエルって言うんだけど、かなり変わって きてるんですよね。つまり自民党政、安倍政権になってから、二期(二次?)政権になってから3回国政選挙 があってね、最初は参議院選挙で、ほらアベノミクスだって言ってやったのが特定秘密保護法ですよね。戦後 ずっと、スパイ防止法以来みんな反対してたんだけどできちゃったでしょ。二度目はご存じの通り、衆議院選 挙でやっぱりアベノミクスがって言って安保法制ですよね。で、今回参議院選挙でやっぱりアベノミクスだっ て言って、じゃあ改憲じゃないかっていう話になってくるわけですよね。西崎さんおっしゃったように自民党 草案の憲法草案もそうなんだけど、安倍政権のコアな支持層、例えば日本会議なんていうところの主張を検討 していくと、そのたとえば政教分離とかね、国民主権を明確に否定するような方々がかなりいらっしゃるわけ ですよね。だから、そういうのを見ていくと、結果的にかなり大きな分水嶺になっちゃった可能性もある。た だしまだ遅くはないので、その改憲の発議をこれからするとかっていう過程の中で大丈夫なのかっていうのを 僕らは本当に慎重に僕ら見ていないと、この国の形が間に合わない、ゆでガエルでゆであがっちゃって死んじ ゃうような状況にもなりつつあるってことも、僕は本当に、あのみんな真剣に考えた方がいいなと思いますよ ね。 」 ⑬岸井氏「付け加えると、先ほどね、皆さんおっしゃってるように自民党のね、憲法改正草案てよーく皆さん読 み返した方がいいと思うんですね。例えばメディアの立場から言いますとね、言論表現の自由はこれを保障す るって、これはそのままなんですよ。ところがそこに前提条件がつきましてね、公益と公の秩序に反しない限 りって入るんですよ。だからそういうものを誰が判断するんですかっていう問題が出てくるんですよね。今ま での「保障する」じゃなくて、非常に条件がついてくる、非常に厳しくなってくるってことですよね。だから そういう流れがあるってことに対して非常に敏感になってないといけないっていうね、そういう段階にきたと 思うんですね。しかもね、今回はね、3分の2改憲勢力超えたっていうことで、これはもう歴史的な選挙なん ですと、将来を決める選挙なんですよと言ってたんだけど、今の町の声聞いてるとそういう切迫感全くないで すよね。 」 関口氏「ないですね」 岸井氏「うん、だから改憲派の高揚感もないし、あるいは護憲派って言われる、あるいは憲法改正反対勢力の、 なんて言うかな、焦燥感とか絶望感みたいのも全然伝わってこない。だから私びっくりしたのはね、例えば今 度の安保法制、そして憲法改正についてどこが何が問題なの、もっと、ある新聞の調査によると3分の2って どんどん大きく言われるんだけど何のことだか全然知らなかったっていう人がね、7割、8割もいたっていう 4 新聞調査があるんですよ。これはどういうことなのかなって感じが非常にして心配なんですよね。やっぱり後 悔先に立たずって言いますから、いよいよこれから憲法発議のためのなんかいろいろ手続きやってくると思う んです。そこは国民とともにメディアも、しっかりとここはチェックしていかなきゃいけないなと思います。」 関口氏「3分の2はこの番組でも大分ご説明したんですけどもねえ、うん。 」 検証報告(放送法第 4 条の見地から) : 東京都知事選に関する報道は主要三候補の報道時間が増田氏 70 秒、小池氏 64 秒、鳥越氏 72 秒でほぼ同等の 時間であった。所謂主要三候補以外は名前を紹介した程度だが、この番組は政見放送でなく報道番組であるので 番組の編集権の範囲であり、放送法に反するとは言えないと考える。 最後の「風を読む」についても賛否の両方の意見を編集に盛り込もうとの意図が見え、放送法 4 条に抵触する 部分は無かったと思われる。 「印象操作」に関する所見(最高裁判例の見地から) : 印象操作はなかったと思われる。 検証者所感: VTR を見ると、田中氏が以前から指摘している様に、今回の参議院選は憲法問題でなく、アベノミクスの失敗 と言う観点で、野党が争点を絞って居たら野党共闘の効果がより見られたのではと思わせる結果が表れていた し、田中氏はそれを今回も主張していた。それは瀬谷氏の「野党の方が争点にしてた『3分の2を取らせない』 っていうスローガンも、そもそも3分の2が何を意味するっていう理解が有権者の中に進んでいないっていうの がありましたし、選挙が終わって改憲勢力が3分の2になったっていう調査をしても 50 パー・・大体半分くらい の人が「どちらともいえない」という意見を表すくらい問題自体がわかりにくい。やはりそういう国民の中で簡 単に意見が出ていないところを争点にして、やはり争点がかみ合わなかったというところがやはりそういう無党 派層の人たちの投票率の低下につながったのではないかと思ってます。」と野党が憲法改正を争点にした事の失 敗を指摘している。 それに対して、西崎氏、青木氏、岸井氏のコメントはこの時点でも、これから各党が参加する憲法審査会で検 討される憲法改正案が成立するのではないかという、いわば恐怖感に振り回され、西崎氏に至っては現行憲法を 旧憲法と言い間違える有様だ。この様な感情論の押し付けを排し、視聴者の目線でコメントする田中氏の発言に 無理やり憲法改正の危険性を煽った番組構成が結局、今回の総括で関口氏の「3分の2はこの番組でも大分ご説 明したんですけどもねえ、うん。」つぶやきに繋がったのではないか。貴重な公共の電波を使いながら、 「自分た ちが言ったつもりなんだけれど」で話を終えるのでなく、サンデーモーニングという高視聴率の番組で自分たち が訴えた事が、何故視聴者の耳に届かなかったのかを謙虚に反省する良い機会であると思う。 備考: 放送法遵守を求める視聴者の会 5
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