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椎崎一宏(Shiizaki Kazuhiro)
担当講義: 基礎化学、分子生物学、タンパク質科学、生命科学英語
応用生物科学輪講Ⅱ
みなさんは高校で、生物が受精卵、あるいは胞子や種子からどのようにして発生し、細胞分裂を行い、
成長するかについて習っていることと思います。しかし、逆に細胞がどのように傷害を受けて細胞死に至り、
組織や臓器がダメになって最後には個体が死んでいくという、いわば「ネガティブな生物学」は習っていな
いのではないでしょうか。 医学はヒトの疾患と、その回復のための治療についての学問ですが、毒性学に
代表される「ネガティブな生物学」が医学の発展に貢献していることは間違いありません。さらにヒトに限定
せず、あらゆる生物に対する環境化学物質の影響を研究することは「応用生物学」の重要な分野だと考え
ています。
私の興味
現在の研究テーマ
文明の発展に伴い、人類は何度も公害問題に
悩まされてきました。健康被害が出る前に化学物
1) 酵母アッセイ系による環境科学物質の測定
質の毒性や汚染の程度を知ることはできないので
しょうか。生体に対する化学物質の毒性メカニズ
ムを解明し、それを利用した検査方法を開発する
ことで、化学物質の危険性をより早く知ることを目
指しています。
操作が簡単な酵母を使い、野外で採取した環境サン
プルに含まれる化学物質の測定を行っています。
2) ダイオキシン受容体(AhR)の生理的作用の解明
どういうわけか、あらかじめ人体にあるダイオキシン
の受け手タンパク(受容体)。その本来の役割を探っ
ています。
研究に関して
研究はパズルを解くような面白さがあり、世界中
で誰も知らないことを真っ先に知った時には大き
な達成感があります。そんな研究を東洋大で一緒
にやってみませんか。
control
TCDD treated
オワンクラゲの蛍光タンパクGFPと結合させた
光るダイオキシンの受容体を使った実験。
ダイオキシンを細胞にかけると、受容体は核に
集合する。
3) 第三世代シークエンサーによるDNA付加体解析
化学物質の中で恐ろしいものの一つは、DNAを傷つ
け、がんを引き起こす物質です。最新の機器を使っ
て、DNAの傷を読み取る技術を開発中です。
ミニコラム:
ダイオキシンは人が作り出した最強の毒物だ
と言われています。ダイオキシンの受容体には、
タバコの煙に含まれるベンゾ[a]ピレンという発
がん物質も結合します。それでは、この受容体
にくっつく物質が全て毒性物質かというと、そう
でもない。たとえばジーンズの染料であるイン
ディゴもこの受容体に結合しますが、ジーパン
をはいてる人はがんになりやすい、という話は
聞いたことがありません。実は、ベンゾ[a]ピレン
は体の中で解毒(代謝)する途中で発がん物質
に変わりますが、インディゴは代謝されても安
全な物質なのです。
それじゃあ、ダイオキシンは?というと・・・
ダイオキシンはヒトの体では代謝することがで
きないので、ずっと体の中に残り続ける物質で
あることが分かっています。