生産現場におけるあらゆるデータを見える化しグローバルにモノ

導入事例カタログオムロン株式会社様 IoT
生産現場におけるあらゆるデータを見える化し
グローバルにモノづくりの革新を進める
オムロン株式会社様は、独自のセンシング&コントロール技術を中核としたオートメーションのリーディングカンパニー
として、制御機器、電子部品、車載電装部品、社会インフラ、ヘルスケア、環境など多岐にわたる事業を展開しています。
1933年に創業した同社は、全世界に35,000名を超える社員を擁し、110を超える国や地域で商品・サービスを提供して
います。富士通は製造ラインを可視化する
「タイムラインデータビジュアライゼーション」
（以下、
タイムライン）
などの提
供を通じて、同社の目指すIoTによるモノづくり革新を支援しています。同社のこれまでの取り組みや今後の目指すべき
姿などを、本条智仁氏に伺いました。
1. 製造現場におけるIoTイノベーション
1-1. 草津工場における生産効率改善（実証実験）
であり、製造設備ごとにバラバラ
に存在する断片的な記録からで
は、エラーが起こった原因追及に
は限界がありました。
■ 熟練者の経験と勘に頼るだけでは限界
滋賀県の草津事業所内にある草津工場は、高機能な各種
産業用コントローラなどを生産しています。また生産だけで
■ 生産状況を直感的に把握
したい
なく、新たなコア技術の開発や、生産ノウハウの標準化を進
潜在化した課題を見つけるに
め、グローバル展開をするための主要発信基地としての役割
は、熟練者の経験と勘に頼るだ
を担っています。
けでは難しく、改善ポイントの発
本条智仁氏
オムロン株式会社
インダストリアルオートメーション
ビジネスカンパニー
商品事業本部企画室
拡業推進部長
経営基幹職
草津工場では、約4,000品目にも及ぶ超多品種少量生産
見には多大な時間と大きな労力
を行っており、長年製造ラインの効率改善を積み重ねてきま
を必要としました。そこで誰も
した。これまでは、改善ポイントを探るために設備系や監視
が一目見るだけで現場の生産状
系に記録されたエラーログから、その原因となるものを熟練
況を直感的に把握できるようなものはできないかと考えて始
者に推測してもらっていました。しかし、記録は数字の羅列
まったのが、草津工場のプリント基板表面実装ライン見える
化による生産改善の実証実験です。
具体的には、設備や機械の動きを制御する装置であるオム
ロンのSysmac（シスマック）マシンオートメーションコントロー
ラとマイクロソフト社のデータベースシステム「Microsoft SQL
Server」を活用したプリント基板ラインのログの収集です。富
士通は協業パートナーとして、取得した多様なデータを統合し、
ラインの情報を抽出して「見える化」するタイムライン（Time
Line Data Visualization）を開発し、提供しました。
■ 生産実績が把握可能な可視化レポートを抽出
タイムラインは、プリント基板の製品情報と製造ラインの
工程ごとの実績データを個体別で紐付けし、さらに紐付けた
図1 草津工場
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データを加工して、個体別かつ工程別の生産実績を一目で
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効率箇所
わりました。レポートを見ればライン全体の動きを容易に把
握できるため視野が広がり、自分のエラーに気づくだけでな
く、ライン全体の最適化を意識した提案が次々と出されるよ
非効率箇所
うになりました。
同社では年初に改善の目標値をたてていますが、長年改
善を重ねてきているため、今まではどこを改善すればいいの
か見通せず、5％の改善にとどまっていた状況でした。しかし、
改善の成果が見える形で確認できることで現場の方々の意識
が高まり、モチベーションが大きく向上。もっと良くしていけ
図2 生産実績の可視化レポートの例
把握できる可視化レポートを抽出する機能を有しています。
縦軸を時間、横軸を工程とし、1つの製品がどのぐらいの
時間で生産できたのかをグラフで表現します。工程ごとに発
るはずだと、次の改善へつながる好循環が生まれています。
1-3. タイムラインの自社工場グローバル展開
■ 上海工場にタイムラインをクラウドで導入
生したエラー数などをバブルチャートで重ね合わせ、スムー
「見える化」による生産性改善の成果を受け、同社では第2
ズに生産できているかどうかを一目で確認できるようにしまし
ステップとして、草津工場と同じくプログラマブルコントロー
た。例えば、ラインの間隔が狭く、ぎっしりと等間隔で埋まっ
ラのプリント基板表面実装を行っている中国・上海工場への
ているときは、順調に流れていますが、ラインの間隔が広い
展開を進めることにしました。
部分は、何らかの現象でラインが止まり、時間がかかってい
る状態を示しています。
タイムラインの導入にあたっては、草津工場と同様にロー
カルのアプリケーションをオンプレミスで導入するか、クラウ
ド上にアプリケーションを作って導入するかの2つの選択肢が
1-2. タイムラインによる導入効果
■ 今まで見えなかったものが見えるようなった
ありましたが、最終的にクラウド化を選択されました。クラウ
ドを選択した理由は、データベースなどのライセンス費用を
はじめ、パソコンなどのハード費用、インフラ構築などのコス
タイムラインを導入した結果、生産性の低下が生じた時
トがかからないということ、そして、立ち上げ期間が短縮で
刻と工程をピンポイントで特定できるだけでなく、他のデー
きたことでした。草津工場では立ち上げまでに1年近くかかり
タと重ね合わせることで非効率を招いたと考えられる原因ま
ましたが、上海工場では、わずか3か月間で立ち上げが実現
で、誰の目にも一目瞭然になりました。タイムラインのプロ
しました。
トタイプを現場の人に見てもらったところ、開口一番に出て
きたのは「これならすぐに分かります。今まで見えなかったも
Before
のが見えるようになったのですね」という言葉でした。そのと
After
生産プロセス
生産プロセス
き、まさに現場が求めていた、現場で使えるシステムだと確
信し、導入が決まりました。
データを活用した「見える化」により、誰でもエラーの原
因がすぐに突き止められるようになったことで、改善にかかる
リソースが6分の1に削減し、導入から数か月で時間あたりの
生産性が30 ％もアップしました。導入から1年以上たった現
在も、生産性は向上し続けています。
時間
時間
■ 現場のモチベーションが大きく向上
データの「見える化」によって現場で働く方々の意識も変
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図3 生産状況の進捗を表したグラフ
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■ Sysmacとタイムラインの拡販展開も計画
にプラスし、センサーなどが自らの異常やメンテナンス時期
草津工場と上海工場がクラウドでつながったことで、両工
を通知する機能を付加します。これにより、自らメンテナン
場の改善状況を比較できるようになりました。そうなると競
スや交換時期を通知し故障予知や寿命予測を行い、突然の
争意識が芽生え、現場レベルでお互いに改善提案を行えるよ
停止や故障を未然に防ぐことができるようになります。まさに、
うになったり、工場長により工場全体の改善の気づきをもた
らすなど、シナジー効果が生み出されています。
現在、上海工場では組み立てラインでもタイムラインを導
“止まらない工場”の実現です。さらに、潜在的な改善ポイ
ントを抽出することで、製品の“品質強化”や“生産性の向上”
にも寄与します。
入しています。これまでは、ストップウォッチを持った人が作
業者の後ろで時間を計り、各工程にかかる時間を手作業で集
計していたのが、一目で分かるようになりました。次のステッ
■ モノづくりを革新するためのコックピット
より生産性の高い、止まらない工場を目指す、その核とな
プとして、タイムラインを活用して、作業者による違いや、
るのが「モノづくり革新コックピット」です。グローバルレベ
一人ひとりの得意な工程はどこか、作業者の組み合わせによ
ルで世界の全ての工場の状況を見える化し、工場間を比較
る違いがあるかどうかというところまで見ていく予定です。
したり、ドリルダウンで各工場全体の状況を把握することで、
さらに、同じプリント基板表面実装ラインをもつオランダ工
各ラインの状況や設備状況の見える化までを可能にします。
場へのタイムラインの展開も計画しており、今後は同社がグ
経営層や、工場長、マネージャーが情報をリアルタイムに把
ローバルに展開する43工場での生産効率の改善にもタイム
握することで、投資判断が迅速にでき、次のアクションへと
ラインの導入を考えています。
つながります。現場の改善と重ねることで、一番効率のよい
一方、富士通と協業し、今回のモノづくり現場で高い効果
が実証できたSysmacとタイムラインを、他の企業に拡販展
開していくことも視野に入れています。
モノづくりを実現します。
生産現場における生産状況だけでなく、電力、品質、設備、
原価など、あらゆる情報をひとつに集め、モノづくりの革新
を目指すこと、それが「モノづくり革新コックピット」の未来
の姿です。
2．今後の展開
■ KPIダッシュボードの活用
2-1. 描く工場の未来図
― モノづくり革新コックピット
■ FAとICTの融合で“止まらない工場”の実現へ
「モノづくり革新コックピット」のひとつとして、2016年内
の稼働を目指しているのが、KPIダッシュボードです。設備稼
働率や不良率など、品質、原価、納期、安全、環境といっ
同社が描く未来の工場の姿、それ
は全てのラインに神経が張り巡らさ
れ、いつどこで何が起きているのかが
直感的に分かり、全ての工場の状況を
把握できるようにすることです。 2020
年までに全てのFA機器をIoT化してい
く計画のもと、各種のセンサー機器を
はじめ、リレーやスイッチ、電源装置
などモノづくり現場のオートメーション
化に必要なあらゆるFA機器をIoT化。
これらにIO-LINK（国際標準規格IEC
61131-9 で規定されたセンサーとア
クチュエータとの通信のための標準化
技術）を搭載し、現状のON/OFF信号
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図4 「モノづくり革新コックピット」の例
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上がってきました。
工場の未来図
モノづくり革新コックピット
業務アプリ
2014年～
製造ライン可視化“タイムライン”
■ 人と機械が協調する次世代
2015年～
富士通
のモノづくりへ
KPI Dashboard
富士通
オムロンソフトウェア
Microsoft Power BI
改善を見つけることで、さらに
次の改善につなげていくための
仕組みづくりで同社が徹底してい
Cloud
るのが、常にその分野、その技
ネットワーク
デバイス/
システム
術、その製品の最適なパートナー
IoT Gateway / FA LAN
と一緒に取り組むことです。
「モ
IOリンク対応
製造
製造系システム
Sensor
PLC
生産装置
IPC
ノづくり革新コックピット」にも、
アプリケーション、開発プラット
フォーム、セキュリティゲートウェ
図5 全体概要イメージ
イ、デバイスやLANなど、同社
がベストだと考えるものをマルチ
た多角的な面から国際標準に準拠した工場のKPIを算出し、
ベンダーで選択しています。富士通のタイムラインも、製造
グローバルな視点で各工場を比較し、PDCAの改善サイクル
ラインの見える化において、最も効果を発揮できるモノとい
を回していきます。現在は、パイロット的に、草津工場と上
うことで選択されています。
海工場で一部の項目のKPIを比較できますが、データの取得
「機械にできることは機械にまかせ、人間はより創造的な
など精度的な課題もあります。年内にはKPIダッシュボードの
分野での活動を楽しむべきである」という企業哲学のもと、
仕組みを完成させ、進化させていきます。
同社は未来に向けた人と機械の協調関係の創造を目指して
います。これからも富士通は、同社のモノづくり革新を支え
■ 変わろうとする意識のもと、成功を積み重ねる
ていきます。
グローバルに全工場、全工程、全装置、全部品のデータ
を集約し、積み重ねたデータをあらゆる場面で活用し、共有
することで、更なる生産性の向上、品質の向上を図る、それ
がオムロンの考える「モノづくり革新コックピット」です。
会社概要
オムロン株式会社様
十分なデータが集まらない、データの精度が悪いので
所在地
正しい結果を得ることが難しい、やっても無駄だと考える
京都府京都市下京区
塩小路通堀川東入
代表者
代表取締役社長 CEO
山田義仁
設
1948年
39,427人（2015年6月末日現在）
http://www.omron.co.jp
http://www.fa.omron.co.jp
よりも、まずはやってみるというのが同社のモットーです。
変わろうとする意識を第一にもち、やってみることで小さ
なところから成功を積み重ねることができます。クラウド展
開においても、導入した結果初めてそのメリットが浮かび
立
従業員数
ホームページ
Copyright 2016 FUJITSU LIMITED
●本カタログ記載の会社名、製品名等は、各社の商標または登録商標です。
●記載されている内容については、改善などのため予告なしに変更する場合がありますのでご了承ください。
2016 年 4 月 AP
お問い合わせ先
富士通コンタクトライン（総合窓口）
0120-933-200
受付時間 9：00∼17：30（土・日・祝日・年末年始を除く）
富士通株式会社〒105-7123 東京都港区東新橋 1-5-2
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汐留シティセンター
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