STTG工法の概要 - STTG工法協会

STTG工法
石油樹脂・アクリル樹脂系材料を用いたコンクリート構造物への圧入止水工法
NETIS登録NO.KT-140103-A
一般社団法人STTG工法協会
1
1.地下構造物の概要
地下の大型ライフラインは、強固な鉄筋コンクリートにより構築され、
地下水位より深い位置に埋設されていることが多い。
右図のように、地下構造物には「打継ぎ目」等があり、この部分から構
造物内に地下水が流入する。
2
2.地下構造物への漏水の原因
■地下構造物などの構築にあたっては、施工面から
一度に大量のコンクリートを打設することが出来な
いため、構造物には打継ぎ目が生じる。
■打継ぎ目は、躯体温度の変化(コンクリートの伸
縮)や地震等の地盤変位により目開きが発生し、地
下水が流入する場合がある。また、施工不良や荷重
条件の変化などにより、コンクリートにクラックが
発生し、漏水するケースも見られる。
3
3.地下構造物への漏水の状況
4
4.
地下構造物への漏水の主な影響
• 地下構造物に発生したクラック等から地下水が流入することにより、
鉄筋が腐食しコンクリートの剥離が発生し、鉄筋が露出することに
より、更に鉄筋の腐食が促進される。
• 場所によっては、地下水に内在する塩分等の腐食促進成分により、
躯体本体や布設設備に塩害や化学的腐食を発生させることがある。
• 漏水に伴う地下水位の変動や地盤沈下による上載荷重の増加により、
軸方向のひび割れと内空変形が発生することがある。
• 上記の劣化を放置することにより、やがて構造物の耐力を低下させ、
大規模補修や設備の更新を余儀なくされる。
地下構造物を健全に保つためには、早期に漏水を止めることが重要!
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5.
漏水による地下構造物の劣化状況
コンクリート剥離・鉄筋の腐食状況
6
6.
従来の漏水補修工法
(1)従来の漏水補修工法
現在広く使用されている工法は、“ウレタン系高圧注入工法”である。
ウレタン材を使った工法は、即効性に優れている等の理由から、漏水
補修工法の主流として採用されている。
(2)従来の工法の課題
大量の漏水に対して即効性はあるが、長期耐久性に欠ける。再漏水の
原因は、『ウレタン材はコンクリートとの付着性や伸びが殆ど無いた
め、温度変化や地震等による継ぎ目の変位に追随できないため』と想
定される。
(3)再漏水の発生状況
シールドトンネルのセグメント継ぎ目では、漏水補修の施工後2~5
年以内に約70%で再漏水が発生している。また、現場打ちカルバー
トの打継ぎ目からも、漏水補修の施工後の約60%で再漏水が発生し
ている。
7
7.
新たな漏水補修工法の開発
(1)開発の狙い
大量の漏水箇所の止水が可能、また、長期耐久性に優れた工法の開発。
(2)現在使用されている止水材の特徴
• ウレタン注入工法は材料が安価なため、最もポピュラーであるが再漏
水が顕在化。設備管理者によっては使用を制限している例もある。
• 長期耐久性に優れるアクリル樹脂系注入工法は、材料コストが高価で
ある。
• 石油樹脂・アクリル系注入工法は、硬化速度が遅いため漏水量の多い
箇所の補修には不適。ただし、硬化後の性能はアクリル樹脂系注入工
法と同等。材料は安価に入手できる。
8
7.
新たな漏水補修工法の開発
(3)止水材の選定
屋上防水等で実績のある「石油樹脂・アクリル樹脂系材料」に着目。
この材料をもとに開発を進めた。
開発にあたっては、下記の事項を目標に設定した。
 硬化時間を適度に早め、大量の漏水箇所へも適用が可能
 石油樹脂・アクリル樹脂系材料の長所(コンクリートとの付着
力・引張強度等)を生かし、長期耐久性に優れる工法
 比較的安価な石油樹脂・アクリル樹脂系材料を主材にすることで、
施工費用を抑制
9
8.
STTG工法の概要
STTG工法は、石油樹脂・アクリル樹脂系材料のアルファーゾル・
Gと硬化促進剤のウレタンプレポリマーをそれぞれ専用ポンプで圧送し、
混合割合を制御しながら注入直前に撹拌混合することで、材料の硬化時
間(ゲルタイム)を適切に早めている。
左側は硬化促進剤用ポンプ
右側はアルファーゾル・G用ポンプ
STTG工法機器構成の概要
名称の決定
優れた材料を
Super
2つのノズルにより
Two Top
クラックをふさぐために注入する薬液の技術
Grout
10
STTG工法
8. STTG工法の概要
施工方法は、現在多くの止水工法で採用している
ものと同様、クラックに対して交差するよう斜めに
削孔し、設置した注入ピンから止水材を注入する方
法を適用
左図は標準的な注入ピンの設置状況
右図は止水材が充填されるイメージ
11
注入状況写真
9.
材料の要求性能
(1)伸び性能
温度変化や地震等によりクラックに変位が生じた場
合でも、材料が追随できることが必要である。
そこで、塗膜系建築屋上防水材と同等の伸びを有す
ることを要求性能とし、破断時の伸び率を200%以上
とした。
破断時の伸び率200%とは、幅1mmのクラックが
補修後に地震等で幅3mmまで拡大した場合でも、材
料が追随できる性能である。
(2)引張強度
地下構造物の大半は、地下50m以内に位置してい
ることから、水深50m以上の水圧に耐えられること
を想定し、0.5N/mm2以上の引張強度とした。
12
9.
材料の要求性能
(3)付着強度
コンクリートと止水材の付着は、変位により材料が伸
びて破断するよりも強く付着していれば、引張強度が有
効に発揮できることから、付着強度≧引張強度を要求性
能に設定した。
(4)ゲルタイム(材料硬化時間)
ゲルタイムは単に短いだけでなく、止水材が漏水の原
因となっているクラックに行きわたるまでは流動性を保
ち、行きわたった後に速やかに硬化するよう、適切なゲ
ルタイムを有することが望ましいと考えられる。
したがって、クラックに行きわたるまでに必要な時間
や作業効率や材料のロス分の削減等を勘案し、ゲルタイ
ムの要求性能は5分以上20分以下に設定した。
13
10.
材料の性能試験結果
【要求性能】
伸び性能:200%以上(例えば1㎜のクラックが3㎜になっても追
随)
【試験結果】
破断時の伸率(%)
450
供試体温度10℃
供試体温度20℃
供試体温度30℃
400
350
300
250
200
要求性能
0
0
14
5
10
15
硬化促進剤混合率(重量比%)
20
10.
材料の性能試験結果
【要求性能】
引張強度:0.5N/㎜2以上(水深50mの水圧に耐える)
【試験結果】
1.20
引張強度(N/mm2)
1.10
供試体温度10℃
供試体温度20℃
供試体温度30℃
1.00
0.90
0.80
0.70
0.60
要求性能
0.50
0
0
5
10
15
硬化促進剤混合率(重量比%)
15
20
10.
材料の性能試験結果
【要求性能】
付着強度:付着強度≧引張強度
【試験結果】
付着強度と引張強度との関係
混合率
15%
10%
5%
16
試験体
温度
付着強度
N/mm2
引張強度
N/mm2
性能
30℃
20℃
10℃
30℃
20℃
10℃
30℃
20℃
10℃
1.26
1.09
0.93
1.07
0.89
1.03
0.9
0.84
0.82
1.06
0.97
0.79
0.77
0.85
0.83
0.73
0.75
0.73
OK
OK
OK
OK
OK
OK
OK
OK
OK
10.
材料の性能試験結果
【要求性能】
ゲルタイム:5分以上20分以内
【試験結果】
ゲルタイム(分)
30
供試体温度10℃
供試体温度20℃
25
供試体温度30℃
20
15
要求性能
10
5
0
0
5
10
15
硬化促進剤混合率(重量比%)
17
20
25
11.
材料の性能(まとめ)
材料の要求性能に対する試験結果は以下のとおり
項目
試験結果
伸び性能
200%以上
最小値で230%(30℃ 混合率10%)
平均値は290%(20℃ 混合率10%)
引張強度
0.5N/㎜2以上
最小値で0.73N/㎜2(30℃ 混合率 5%)
平均値は0.85N/㎜2(20℃ 混合率10%)
付着強度
付着強度≧引張強度
すべての条件で付着強度が上回っている。
5分~20分
供試体温度10℃・混合率5%のときは要求
性能を下回るため、材料を温める必要あ
り。
ゲルタイム
18
要求性能
12. 特殊な状況下での材料特性
STTG工法の適用拡大に向け、さまざまな状
況下での試験を実施
(1)材料の湿潤状態における特性
– 試験項目:せん断特性試験・付着強度試験
– 試験方法:JCI-SF6「繊維補強コンクリートの
せん断強度試験方法」に準拠
– 試験条件:気中および水中養生の2水準
(2)凍結融解作用を受けた材料の特性
– 試験項目:付着強度試験・引張強度試験
– 試験方法:JIS A
1148「コンクリートの凍結
融解試験方法」A法に準拠
– 試験条件:0・1・30・60・150サイクルの5水準
1サイクルとは、供試体の中心部温度が5℃~-18℃に下がり、ま
た-18℃~5℃に上がる状態。所要時間は3時間以上4時間以内
19
13.
材料の湿潤状態における特性試験の結果
(1)せん断特性
–
気中養生の結果:1.26N/㎟
–
湿潤養生の結果:0.53N/㎟
(2)付着強度
–
気中養生の結果:材料性能試験「付着強度」参照
–
湿潤養生の結果:0.36N/㎟
止水の施工後は、水みちに接している面以外のコンクリート面は気中状態とな
るが、悪い状態を想定し湿潤状態における特性試験を行った。
試験の結果、平均0.36N/㎟であった。この値は、クラックの奥方向に1㎜止
水材が充填されれば、水深36mの水圧に耐えれるという高い値である。
試験体名
20
せん断強度 N/㎟
気中1
1.48
気中2
1.10
気中3
1.19
湿潤1
0.35
湿潤2
0.69
湿潤3
0.55
平均
1.26
付着強度 N/㎟
材料性能試験
付着強度参照
0.39
平均
0.53
0.32
0.38
平均
0.36
14.
凍結融解作用を受けた材料の特性試験の結果
引張強度・付着強度とも60サイクルまで性能の低下が無いことから、
60サイクルまで所定の能力を発揮する。
本特性試験は、ダム堤体に対する止水の適用可否について確認したも
のである。
冬季に堤体内部は1度凍結すると春先まで融解せず、ひと冬における凍
結融解は1回と考えた場合には、材料の耐用年数は60年、安全を見て
30年と推定される。
サイクル数
0サイクル
1サイクル
30サイクル
60サイクル
21
試験体名
付着強度 N/㎟
№1-0
0.21
№2-0
0.97
№3-0
0.87
№1-1
0.70
№2-1
0.84
№3-1
0.75
№1-30
0.62
№2-30
1.00
№3-30
0.81
№1-60
0.69
№2-60
0.61
№3-60
0.56
引張試験 MPa
平均
0.68
1.47
平均
0.76
1.50
平均
0.81
1.49
平均
0.62
1.30
1.35
1.48
1.35
1.38
1.41
1.41
1.31
1.08
平均
1.43
平均
1.41
平均
1.44
平均
1.23
15.
硬化後の止水剤の表面状況
顕微鏡にて止水材硬化後の表面の状況を確認
■メーカー :株式会社キーエンス
■測定機器名:デジタルマイクロスコープ
■型
式 :VHX-100F
■倍
率 :×100
気泡は小さく、量は少ない
STTG材料
気泡は大きく、量は多い
ウレタン材料
STTG工法の止水材の硬化後は、ウレタン材と比較し密度が高いことか
ら、施工後に水分が侵入しにくい(再漏水がしにくい)と想定される。
22
16.
工法名
漏水補修工法の比較
石油樹脂・アクリル系樹脂系
高圧注入工法
(STTG工法)
アクリル系高圧注入工法
極めて低粘度の親水性高弾性
樹脂を高圧で注入し、硬化樹
脂の弾性反発と吸水樹脂によ
りひび割れを閉塞する。
工法概略
ウレタン系高圧注入工法
ポリイソシアネートが水と接触し、
所定の時間経過後に従い、順次反応
を始め、最終的に全量がゲル化する。
このゲルはほとんど分散材を含んで
いない。
伸びや付着性に優れる石油樹脂・ア
クリル系止水材料に親水性ウレタン
プレポリマーを混合し、主材のゲル
タイムを要求性能の範囲に早めた。
主成分
23
アクリル樹脂・石油樹脂、親水性ウ
レタンプレタンプレポリマー
二成分系合成樹脂
ポリイソシアネート化合物
充填性
微細クラックへの対応も可能
微細クラックへの対応も可能
微細クラックへの対応も可能
透水性
優れた止水性を有する
優れた止水性を有する
優れた止水性を有する
変位
追従性
伸び、付着性に優れ、追随性が高い
高弾性のため伸縮性に対する
追随性が高い
伸びや付着性がないため、追随性は
低い
耐久性
経年変化はほとんどない
経年変化はほとんどない
伸縮する目地等には追随できない
経済性
安価
やや高い
安価
17.
施工実績
123件の漏水補修を本工法により実施
(平成28年3月現在)
⦅施工箇所⦆
東京電力の地中送電用洞道をはじめ、水力発電用ダムの打継ぎ目、
監査廊、建物地下、下水処理施設管廊などで施工
⦅補修前の漏水量⦆施工実績の最大は約200ℓ/min
⦅施工例(補修前)⦆いずれも止水良好
東京電力 電力洞道
都市NATM
24
東京電力 電力洞道
多量漏水部(約200ℓ/min)
17.
施工実績
東京電力 電力洞道
開削洞道
ダム堤体
25
ダム監査廊
建物
地下駐車場
18.
施工実績例(東京電力の地下構造物)
サーモグラフィーによる漏水補修前後の止水効果の確認
漏
水
補
修
前
漏
水
補
修
後
26
19.
一般社団法人STTG工法協会
【一般社団法人STTG工法協会】
 設立日
:2014年5月2日
 会員会社数
:38社(2016年3月現在)
 協会活動目的:
 STTG工法の普及事業
 STTG工法施工者に対する技能認定事業
 STTG工法施工品質の維持・向上事業
(施工品質マニュアルのスパイラルアップ等) 等
 連絡窓口:
 住所:〒146-0095 東京都大田区多摩川2-8-1
 電話:03-6715-4395
 FAX:03-6715-4396
27
【参考】一般社団法人STTG工法協会の加盟会社
2016年3月現在
特別会員
正会員
24社
一般会員
13社
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東京電設サービス株式会社
STTG工法協会長 岡崎憲治(個人)
東起業株式会社
三生化工株式会社
日本国土開発株式会社
ハタ防水建設株式会社
豊和工業株式会社
ヤマト工業株式会社
化工建設株式会社
株式会社協和日成
センチュリー株式会社
株式会社関電工
三由工業株式会社
シーピーエンジニアリング株式会社
扇矢工事株式会社
有限会社正和工業
株式会社ニューテック
株式会社フジクラエンジニアリング
山柿工業株式会社
東亜グラウト工業株式会社
東京パワーテクノロジー株式会社
株式会社エステック
株式会社高環境エンジニアリング
株式会社鈴木東建
株式会社ケミカル工事
株式会社埋探屋
日本アドックス株式会社
建装工業株式会社
テクノス株式会社
有限会社美研
力建設株式会社
株式会社千葉電業社
株式会社三浦工業
晃陽電設株式会社
株式会社モールワークス
株式会社大阪防水建設社
株式会社大西洋行
新潟ボンド工業株式会社
株式会社サンライトエナジーコーポレーション
20.
NETIS・特許
【NETIS】
 登録日
:2015年2月13日
 技術名称
:STTG工法
 NETIS登録NO.KT-140103-A
【特許】
 出願日
:2012年11月22日
 登録日
:2013年 6月28日
 特許権者
:東京電力パワーグリッド株式会社
東京電設サービス株式会社 三生化工株式会社 他2社
 発明名称
29
:止水材、止水工法、及び注入装置