北太平洋初のアマゾンカワイルカ類(新属新種)化石の発見!

PRESS RELEASE(2016 年 7 月 7 日 14 時解禁)
秀明大学学校教師学部
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北太平洋初のアマゾンカワイルカ類(新属新種)化石の発見!
研究成果の要点
①千葉県鋸南町に分布する千畑層(630~570 万年前:中新世後期)から発見
されたイルカ化石(図 1)を、新属新種の Awadelphis hirayamai アワデ
ルフィス・ヒラヤマイ(和名:アワイルカ)として命名しました。
②今回の化石の発見により、現在はアマゾン川流域や南米東岸にしか生息して
いないアマゾンカワイルカ類(上科)が、過去には北太平洋にも生息して
いたことがわかりました。
③中新世後期の日本近海において、アワイルカは初めての亜熱帯域から産出し
たイルカ化石であり、当時の動物群集の地理的な違いを知る上で貴重な資
料です。
図1
Awadelphis hirayamai アワデルフィス・ヒラヤマイ(和名:アワイルカ)の頭骨
(右外側面図)【秀明大学・村上瑞季提供】.
論文の概要
論文題名:A new extinct inioid (Cetacea, Odontoceti) from the upper Miocene Senhata Formation,
Chiba, central Japan: the first record of Inioidea from the North Pacific Ocean(千葉県の上部
中新統千畑層から産出した新種のアマゾンカワイルカ上科化石:アマゾンカワイルカ
上科の北太平洋初の化石記録)
著者:Mizuki Murakami(村上瑞季:秀明大学学校教師学部
助教)
雑誌:Paleontological Research(日本古生物学会発行の国際学術雑誌)
公表日:2016 年 7 月 1 日(金)
研究の背景
アマゾンカワイルカ上科は、アマゾン川流域・ラプラタ川河口域・南米東岸の浅い海に
アマゾンカワイルカ属とラプラタカワイルカ属の計 2 属 4 種が現存しています。彼らの細
長いクチバシ、長い首、扇状に拡がった胸ビレといった特徴は、ヨウスコウカワイルカや
ガンジスカワイルカと似ています。しかし、これらの特徴は、現在では別々に淡水環境に
適応して起こった結果であることがわかっています。
アマゾンカワイルカ上科は、中新世の後期から鮮新世(1163~258 万年前)にはアマゾ
ン川流域・南米両岸・北大西洋の両岸・北海・地中海から 11 属 13 種が知られており、広
範囲に繁栄していました。しかしながら、これまで北太平洋からの化石は知られていませ
んでした。
研究の概要
今回の化石は、早稲田大学国際教養学部の平山廉教授が 1992 年に千葉県鋸南町で発見
されたものです(図 2)。属名の Awadelphis アワデルフィスは千葉県南部の旧国名である
安房にちなんでいます。種小名の hirayamai ヒラヤマイは発見者であり、これまで古生物
学に大きく貢献されてきた平山教授に献名されています。発見された化石の部位は、クチ
バシを除く頭骨の右半分(図 1)、脱落した歯が 2 本、肋骨の破片が 1 本です。体長は
1.5m ほどだったと推測されます(図 3)。
図2
アワイルカの発見場所【秀明大学・村上瑞季提供】
.
アワイルカは、頭骨の特徴(U 字型の骨鼻孔と前上顎骨隆起、細長く三角形の鼻骨を持
つこと)からアマゾンカワイルカ上科に属すことがわかりました。また、他のアマゾンカ
ワイルカ上科のメンバーには見られない多くの頭骨の特徴があることから、新属新種であ
ることがわかりました:前から見て垂直に切り立った前上顎骨と上顎骨、横方向に大きく
張り出した前上顎骨隆起、前上顎骨の後端に前後方向の大きな切れ込み、上下に厚い鼻
骨、上顎骨の後方が極端に狭い、左右に狭い側頭窓、非常に短い鱗状骨の頰骨突起など。
系統解析からペルーの中新世の地層から見つかっている化石属 Brachydelphis ブラキデルフ
ィスに一番近いことがわかりました。
これまで日本の中新世後期の地層から見つかっていたイルカなどの歯鯨類は、東北地方
や北海道など比較的寒い海からのものばかりでした。アワイルカは、この時代の日本の亜
熱帯環境を示す地層から初めて見つかったイルカであり、同時代の鯨類群集の南北の比較
及び太平洋の東西の比較に貢献すると考えられます。
図3
アワイルカの復元画 1(足寄動物化石博物館の新村龍也氏提供)
.
図4
アワイルカの復元画 2(足寄動物化石博物館の新村龍也氏提供)
.体長は 1.5mほど
で長いクチバシを持ち、よく動く比較的長い首を持っていたと考えられます(復元画を使
用する際は必ず©新村龍也・足寄動物化石博物館と表記ください)。
標本の特別公開
アワイルカは早稲田大学国際教養学部が所蔵する標本ですが、千葉県立中央博物館で
「ミニトピックス展」として特別に展示公開されます。
ミニトピックス展「新属新種アワイルカ
千葉県鋸南町で化石発見!」
【会
期】
平成 28 年 7 月 20 日(水)~9 月 4 日(日)
【場
所】
千葉県立中央博物館
【特別協力】
【
地学展示室
秀明大学・早稲田大学・足寄動物化石博物館
URL 】
http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=1039
問い合わせ先
研究内容について
秀明大学学校教師学部
TEL:047-409-1002
助教
村上瑞季(むらかみ
みずき)
E-mail:[email protected]
化石標本・発見経緯について
早稲田大学国際教養学部
TEL:03-5286-1765
教授
平山廉(ひらやま
れん)
E-mail:[email protected]
復元画について
足寄動物化石博物館
学芸員
新村龍也(しんむら
たつや)
TEL:0156-25-9100
E-mail:[email protected]
標本公開について
千葉県立中央博物館
企画調整課
主任上席研究員
伊左治鎭司(いさじ
TEL:043-265-3111
E-mail:[email protected]
しんじ)