平成 12 年 電気学会 電力・エネルギー部門大会 平成 12 年 8 月 電気二重層キャパシタを組み込んだ独立型太陽光発電システム 学生員 博嗣* , 川口 正 員 黒川 浩助(東京農工大学),正 野崎 員 洋介(NTT通信エネルギー研究所) A Stand-Alone Photovoltaic System using Lead Acid Batteries and Electric Double Layer Capacitors Hiroshi Kawaguchi *, Member, Kosuke Kurokawa *, Member, and Yosuke Nozaki**, Member University of Agriculture & Technology, **NTT Telecommunications Energy Laboratories *Tokyo 1. まえがき CC 負荷 近年,離島や山間部等の無電化地域での自立分散型電源 として独立型太陽光発電( PV)システムの導入が検討され ている。独立型 PV システムは一般的に,不日照時のバッ クアップ電源として鉛蓄電池を用いているが,夜間や曇天 時には必ず放電が行われるため,鉛蓄電池依存率や充放電 サイクルの増加等が劣化の要因となる。このため,頻繁な 電池の点検や交換が必要である。この問題を解決するため に筆者らは,充放電サイクルによる劣化がほとんどなく, 急速充放電特性に優れた電気二重層キャパシタ(EDLC) [1] を鉛蓄電池と併用し,発電量の変動を平滑することによ り鉛蓄電池の負荷を低減するシステムを提案している[2] 。 本論文では,提案しているシステムと鉛蓄電池の充電制御 としてチャージコントローラを用いた従来システムについ (A) 負荷 PV 実験システムの各構成を図 1 に示す。(A)は PV 出力に 3. E D L C 併用システムの制御 EDLC 併用システムの制御フローを図 2 に示す。コンバ ータ 1 は,PV 出力電力を最大にするための最大電力追従 制御(MPPT)モードと EDLC の過電圧を防止するための 定電圧モードを設定する。コンバータ 2 は,負荷相当の電 流のみを出力する定電流モードと EDLC の電圧がほぼ定 格に上昇した場合に定電圧で一定とする定電圧モード,鉛 蓄電池が最適充電電圧に達すると浮動充電となるフローテ ィングモードを設定する。このフローを用いることにより, EDLC の充放電を優先して動作できるため,鉛蓄電池にか かる負荷を低減することが可能である。 鉛蓄電池 EDLC (B) EDLC 併用システム ( EDLC and battery system) 図 1 . システム構成 Fig.1. Configuration of stand-alone PV systems スタート V e >V 1m V e :EDLC電圧 yes yes V 2m = 23.5V V 1m = 23.6V V e <V 2m no システム構成 リレー式のチャージコントローラ(CC)を介して,鉛蓄電池 と直流負荷に接続したシステム(CC システム)である。 (B)は PV 出力に 2 台の DC‐DC コンバータ(コンバー タ 1,コンバータ 2)を直列に接続し,コンバータ 1 の出 力に EDLC を,コンバータ 2 の出力に鉛蓄電池を接続した システム(EDLC 併用システム)である。 CC システム (Charge Controller system) コンバータ1 コンバータ2 て,PV 模擬電源を用いて実時間における動作実験を行っ た。また発電電力,負荷供給電力及びシステム各部の損失 を分析し,鉛蓄電池依存率の比較を行った。 2. 鉛蓄電池 PV no MPPTモード (A) 定電圧モード コンバータ 1 の制御 (Control of Converter 1 ) スタート V e> V er no yes IC 2 定 電 流 モ ー ド V b :鉛 電 圧 V e定 電 圧 モ ー ド yes V e < V er1 V er = 2 1 . 5 V no V er1 = 2 1 . 1 V V er2 = 1 9 . 2 V no V b > V opt yes V o p t= 1 3 . 3 V フローティングモード yes (B) V b < V er2 no コンバータ 2 の制御 (Control of Converter 2) 図2. E D L C 併用システムの制御フロー Fig.2. Control flowchart of EDLC and battery system 4. 4.3 実験結果 4.1 実験条件 PV 模擬電源を使用して晴天時及び曇天時を模擬した日 射パターンを任意に作成し,3 日間を想定した試験を行っ た。負荷は通信用を想定し,約 5W 一定の抵抗負荷を使用 した。蓄電容量は CC システムでは鉛蓄電池容量を 3 日分, EDLC 併用システムでは鉛蓄電池容量(2.5 日分)と EDLC 容量(0.5 日分)合わせて3日分とした。初期条件として 鉛蓄電池は SOC95%,25℃一定とし,EDLC は電圧 3V(放 電状態)とした。 各システムに入出力される電力量の分析を図 4 に示す。 EDLC 併用システムは CC システムと比較して,PV ミス マッチ損失が 11%程度低減されている。しかしながら,各 コンバータによる損失が 10%程度,また EDLC による充 放電損失が 7%程度発生する。今後,コンバータの効率向 上と EDLC の充放電損失の低減を図ることにより,システ ムとしての損失低減も可能になると考えられる。 CCシステム 4 . 2 任意に設定した3日間の実験 各システムの PV 出力電力,期待される発電電力,鉛蓄 入力 電池電圧及び EDLC 電圧の特性を図 2 に示す。CC システ ムでは,鉛蓄電池の電圧により充電できる電力が決まり, 出力 70 20 50 鉛蓄電池電圧 40 15 30 10 20 5 PV出力電圧 10 0 PVミスマッチ損失 負荷供給量 49.55% (370.52Wh) 46.28% (346.07Wh) 98.62%(738.00Wh) PVミスマッチ損失 出力 38.48%(287.98Wh) ①コンバータ1損 ②コンバータ2損 ③EDLC充放電損 図4. 10 20 30 40 50 PV出力電圧 50 EDLC電圧 40 CC EDLC 20 15 30 10 20 5. 5 10 0 0 0 10 20 30 40 50 60 時 間 〔 h 〕 図3. 鉛蓄電池充放電量及び依存率 Table.1 Dependency on battery 25 鉛蓄電池電圧 システム入出力電力量分析図 EDLC 併用システムは,CC システムと比較して,充放電 量が半分程度に減少し,依存率は 20%程度低減することが できる。このことから,EDLC 併用システムは,鉛蓄電池 の負荷低減に有効であることが確認できる。 60 期待される発電電力 60 鉛充放電損・配線損等 1.07%(8.02Wh) 鉛蓄電池の充放電量及び依存率を表 1 に示す。ここで, 依存率とは,負荷に対して鉛蓄電池が放電した割合を表す。 表1. 電 圧 〔V〕 電 力 〔W 〕 70 4.07%(30.51Wh) 5.85%(43.84Wh) 6.67%(49.93Wh) 負荷供給量 43.86%(328.01Wh) 鉛蓄電池依存率 時 間 〔 h 〕 EDLC併用システム ① ② ③ Fig. 4. Break down of input and output energy 0 0 鉛放電量 1.38%(10.31Wh) 期待される発電電力量 4.4 電 圧 〔V〕 電 力 〔W 〕 25 期待される発電電力 60 98.68% (738.00Wh) 入力 鉛蓄電池の充電の際には,最適充電電圧(13.3V)で充電 が行われ,長時間の不日照時のみ鉛蓄電池の放電が行われ るため,鉛蓄電池の負荷が軽減される。 CCシステム 期待される発電電力量 EDLC併用システム 返されるため,期待される発電電力と比較して PV 出力電 力が減少する。一方,EDLC 併用システムでは,急速充放 電特性に優れた EDLC に優先して充電が行われ,夜間等の 不日照時に鉛蓄電池の充電及び負荷電力供給が可能である。 鉛放電量 1.32% (9.83Wh) CC損・鉛充放電損・配線損等 4.17% (31.23Wh) 過充電防止設定電圧( 14.3V)に達すると充電は停止する。 その際,鉛蓄電池と太陽電池が開放され,鉛蓄電池の放電 が行われ,過充電復帰電圧(13.2V)まで低下すると充電 が再開される。快晴時の満充電状態では一連の動作が繰り システム分析 各システムの出力特性 Fig.3 Systems output energy and voltage characteristics 充電量[ Wh ] 放電量[ Wh ] 依存率[ % ] 230.86 240.69 69.55 121.76 132.07 40.26 まとめ 提案している EDLC と鉛蓄電池を併用したシステムと 鉛蓄電池の充電制御に CC を用いたシステムを比較した結 果,鉛蓄電池依存率を 20%程度低減させることができ,鉛 蓄電池の劣化防止が期待できる。 文 献 [ 1 ] 斎藤,田淵,吉備他:大容量電気二重層コンデンサ,NEC 技報 Vol.46,No10,P89,1993 [ 2 ] 川口,野崎,黒川:EDLC を併用した独立型太陽光発電シ ステム,太陽/風力エネルギー講演論文集,P495,1999
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