古屋元伸氏 井村隆昭氏

㈱ニチダイ 代表取締役社長
古屋元伸氏
Motonobu Furuya
アイダエンジニアリング㈱ 開発本部 成形技術センター 業務部長 兼 成形システム課 課長
井村隆昭氏
Takaaki Imura
車社会の変化に追随するための、
精密金型・鍛造技術を追求
井村 冷間鍛造金型で国内トップメーカーの㈱ニチダ
伸代表取締役社長に、これまでの事業の歩みを振り返
創業時から始まった
製造技術開発への挑戦
っていただくとともに、金型・鍛造における研究開発
古屋 1959 年に前社長の故田中善昭が、大阪の天満
や人材育成、海外展開など、今後のビジョンをうかが
において創業した田中合金製作所が当社の始まりです。
っていきたいと思います。
創業者が超硬メーカーに勤めていて加工ノウハウをも
イは、今年設立 50 周年を迎えました。今回は古屋元
はじめに、御社の創業当初のお話からお聞かせくだ
さい。
っていたこともあって、線引き用の異形ダイスの製造
を主な事業としていました。資金不足の中、超硬の加
工に必須な放電加工機を購入できず、ロシアの文献な
型技術
第 31 巻 第 9 号 2016 年 8 月号
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PROFILE
古屋元伸(ふるや
もとのぶ)
1955 年 9 月 21 日生まれ。山梨県出身。
1980 年 3 月 一橋大学 社会学部卒業
1980 年 4 月 三菱電機㈱入社
1998 年 3 月 ㈱ニチダイ入社
1999 年 6 月 取締役就任
2001 年 6 月 代表取締役副社長就任
2002 年 4 月 代表取締役社長就任
どを読み解き、部品を集めて自作に挑みました。ボー
いています。以来、
「他社ではできない製品と、他社
ル盤を改造して完成させた自家製放電加工機は、市販
の追随を許さない高い技術力」を追求するオンリーワ
品を凌ぐ性能だったようです。この装置が線引きダイ
ン企業を目指してきました。
スの製造に大きく貢献し、順調に売上げを伸ばしてい
井村 御社の現在の経営ビジョンとして「3E カンパ
きました。
ニー」を掲げていますね。どのような思いが込められ
その後、1967 年に寝屋川に工場を移転して法人化
ているのですか。
し、㈱ニチダイを設立しました。自動車産業の発展と
古屋 トップメーカーであり続け、国際競争力を高め
ともに冷間鍛造が普及し始め、当社も線引きダイスか
ていくために私が掲げたのが 3E カンパニーの実現で
ら冷間鍛造金型へと大きく舵を切ることになります。
す。技術で勝ち残り、スペシャリティとオリジナリテ
、社員一人ひ
冷間鍛造にかかわったきっかけは、金型の国産化です。 ィをもった「エクセレントカンパニー」
ある自動車メーカーがドイツから鍛造プレス機と金型
とりが互いに尊重し合い、成長と自己実現を果たせる
を購入していましたが、金型の費用が高く国内で調達
「エキサイティングカンパニー」
、パイオニア精神をも
したいとの意向があり、超硬の加工をしていたわれわ
って社会のニーズを追求する「エクスパンドカンパニ
れに声がかかったようです。さらには当社の近くにフ
ー」を目指しています。これら 3E は、創業者が常々
ォーマをつくるサカムラがあって、われわれが金型を
口にしていた理念「VSOP(バイタリティ、スペシャ
つくり、ねじ関係のユーザーがナットフォーマを欲し
リティ、オリジナリティ、パッション)
」を発展させ
がっていた環境も大きかったのでしょう。寝屋川の工
たものです。
場もすぐ手狭になり、1971 年には現本社がある京都
府京田辺市に移りました。
研究開発を重視し精密鍛造を発展
井村 1960 年代と言えば、冷間鍛造が自転車から自
井村 御社では現在「ネットシェイプ事業」
、
「アッセ
動車へと展開され、車の生産台数の急増に合わせて部
ンブリ事業」
、
「フィルタ事業」の 3 つの事業を展開
品もどんどん冷鍛化されていき、新たな金型が必要と
していますが、冷間鍛造金型の開発、製造、販売、お
された時期です。非常にタイミングがよかったのだと
よび鍛造品の量産を担っているのがネットシェイプ事
思います。金型というソフトとプレスやフォーマとい
業ですね。事業の特徴や強みを教えてください。
ったハードを融合させた提案が鍛造部品の国産化にも
古屋 当社では売上げの約 54% をネットシェイプ事
拍車をかけたことでしょう。
業が占めています。エンジンや駆動系、トランスミッ
古屋 ちなみに社名には、日本を代表する金型(ダイ
ションに関連する部品の金型を手がけており、カーエ
ス)メーカーになるという決意が込められています。
アコン用のスクロールコンプレッサ部品など一部は社
最初は日本ダイス工業という社名にしたかったようで
内で量産まで行っています。特徴としては、単に金型
すが、すでに登録されていたのでカタカナにしたと聞
を製作するのではなく、顧客と共同で新製品の精密鍛
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