首都圏における 「住まいの温熱環境の実態と満足度」調査報告 2016年8月10日 あたたかい暮らし研究会 首都大学東京 建築学域 須永研究室 株式会社旭リサーチセンター ハビトゥス研究所 旭化成建材株式会社 快適空間研究所 Agenda Ⅰ. 調査の背景・目的 Ⅱ. 調査概要 Ⅲ. 調査結果 Ⅳ. 今後の活動計画 Ⅰ. 調査の背景・目的 調査の背景・目的 旭化成グループでは、2016年度より3カ年の中期経営計画「Cs For Tomorrow 2018」 *１を スタートさせ、「クリーンな環境エネルギー社会」「健康・快適で安心な長寿社会」の実現に取り組んで います。その中で旭化成建材が属する住宅領域は、「人びとの健康で快適な生活に貢献し続ける」こ とを目指しており、断熱材事業の拡大は重要な事業戦略の一つです。 近年、健康管理や省エネの視点から、住宅を適温に保つ断熱性能が重視されており、旭化成建材で は、「快適空間研究所」*２を2014年に設立し、室内の温熱環境の研究、マーケティング活動などを 行っています。 2015年には、建築、環境、生活者などの視点から研究を進め、居住空間やそこでのラ イフスタイルの研究をさらに深化させるために、旭リサーチセンター及び首都大学東京 建築学域 須永 研究室とともに「あたたかい暮らし研究会」*３を発足しました。 今後、「あたたかい暮らし研究会」では、「快適空間研究所」における室内の温熱環境の研究、マーケ ティング活動の一環として、様々な取り組みをしてまいりますが、その第一歩として「住まいの温熱環境 の実態と満足度」調査を行いました。 この調査では、首都圏における一戸建持家（以下「一戸建」）とマンション持家（以下「マンション」 の冬季の温熱環境の実態を把握するとともに、築年数別、季節別、部屋別の満足度や建物内におけ る室温差の有無等を調査し、温熱環境や生活者の実態を明らかにしました。 4 参考 *1 旭化成グループ新中期経営計画 “Cs for Tomorrow 2018” 5 参考 *2 快適空間研究所 １）名称：旭化成建材株式会社 快適空間研究所 ２）所在地：東京都千代田区神田神保町1丁目105番地 神保町三井ビルディング ３）設立：2014年4月 ４）所長：白石 真二 ５）人員：10名 ６）目的： ・快適な空間を実現するための情報収集と分析及びそれらの結果を踏まえたコンセプト開発、マーケティング活動等。 ①一戸建の温熱環境と生活実態の把握による居住空間での温熱環境ニーズの発掘 ②活動方針に共感いただける社外の関連企業、大学等の研究機関、行政、生活者等との共創 ③研究成果の社会や生活者への情報発信と断熱材事業へのフィードバック *3 あたたかい暮らし研究会 １）発足：2015年１月 快適空間研究所内に発足 ２）主な活動 ・あたたかく生き生きと暮らすための居住空間とライフスタイルの研究。 ①調査活動：住まいの温熱環境や生活者の暮らしに関するアンケート・訪問・実測調査等の実施 ②啓発活動：生活者の温熱環境に関するリテラシー向上のためのセミナー、ワークショップ等の実施 ③情報発信活動：生活者に向けたＨＰ、冊子等での情報発信 ３）主なメンバー 首都大学東京 建築学域 須永研究室、旭リサーチセンター ハビトゥス研究所、旭化成建材 快適空間研究所 6 Ⅱ. 調査概要 調査概要 調査内容 首都圏における「住まいの温熱環境の実態と満足度」調査 調査目的 住まいにおける温熱環境の課題抽出と生活者の温熱環境に関するニーズ探索 調査期間 2016年1月22日～24日 調査方法 WEBアンケート調査 対象 有効回答数 首都圏(1都3県)の一戸建持家居住者、マンション持家居住者(761人） 既婚･独身は問わず。 築年数別分析については ～10年、～20年、21年以上でほぼ均等に割り付けし、回収した。（602人） 首都圏(1都3県)の性･年代別人口構成比でウェイトバック集計を実行した。 8 調査概要 性別 .居住都道府県 (n) 男性 女性 全体 (761) 50 50 一戸建 (385) 55 マンション (376) 44 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 全体 19 17 35 29 45 一戸建 24 19 25 32 56 マンション 15 15 44 26 未婚 既婚 年齢 婚姻 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 全体 20 29 21 16 14 全体 38 62 一戸建 23 31 18 16 12 一戸建 46 54 マンション 16 27 25 16 17 マンション 29 71 築年数 (n) 0～5年 6～10年 11～15年 16～20年 21年以上 平均 全体 (602) 19 15 18 16 32 16.9 一戸建 (292) 22 17 14 18 29 16.2 マンション (310) 17 12 21 14 36 17.6 築年数わからない除く 数字は（％） 9 Ⅲ. 調査結果 １ 調査報告 ■年間を通した家全体の温熱環境の満足度 年間を通した家全体の温熱環境に満足していない人は全体で55％。 その比率はマンション48％より、一戸建の人が多く62%。 年間を通した家全体の温熱環境の満足度 年間を通した家全体の温熱環境の満足度 （マンション＋一戸建） （マンション・一戸建別） たいへん不満 たいへん満足 5% 11% たいへん満足 やや満足 どちらともいえない やや不満 5.たいへん不満 やや不満 マンション 16% 13 39 34 12 2 満足していない 計 （48%） やや満足 34% どちらともい えない 一戸建 8 29 35 19 8 34% 満足していない 計 （62%） 満足していない 計（55%） 数字は（％） 12 ■住まいのあたたかさ、涼しさに対する満足度 今の住まいのあたたかさ、涼しさに対する満足度（一戸建） たいへん満足 やや満足 どちらともいえない やや不満 たいへん不満 あたたかさ、涼しさに満 （38％） 春 18 44 31 5 2 冬季とも約7割を占め （67％） 夏 6 27 34 22 11 17 47 30 42 7 27 32 18 い比率が春・秋季の 約1.8倍となっている。 （67％） 冬 る。 夏・冬季は満足していな （36％） 秋 足していない比率は夏・ 17 （ ）内は満足していない 計 数字は（％） 13 ■住まいの湿度に対する満足度 今の住まいの湿度に対する満足度(一戸建） たいへん満足 やや満足 どちらともいえない やや不満 たいへん不満 .たいへん不満 （50％） 春 11 40 42 4 4 梅雨・夏・冬季の湿度 （69％） 梅雨 3 28 45 18 6 21 5 （66％） 夏 6 28 40 に 約7割の人が満足 していない。 （50％） 秋 10 40 43 4 3 （68％） 冬 6 26 43 （ 18 7 ）内は満足していない 計 数字は（％） 14 ■居間・食堂の団らん時と起床時の室温（冬季） マンション、一戸建とも団らん時の室温で最も多いのは21～26℃未満。*１ 一戸建では起床時に16℃未満になっている比率が6割を超える。 居間・食堂の団らん時と起床時の室温（マンション） 団らん時の居間・食堂の室温 居間・食堂の団らん時と起床時の室温（一戸建） 起床時の居間・食堂の室温 団らん時の居間・食堂の室温 起床時の居間・食堂の室温 43 一戸建は起床時の室温16℃未満が 6割を超える 34 31 29 25 24 21 18 12 9 8 1 ～5℃以下 1 0 6～10℃ ＊１ 温度は自己申告 6 4 3 3 11～15℃ 9 16～20℃ 21～25℃ 26℃以上 1 ～5℃以下 3 6～10℃ 2 11～15℃ 16～20℃ 21～25℃ 数字は（％） 1 1 26℃以上 15 ■築年数別 居間・食堂の起床時の室温（冬季） 居間・食堂の起床時の室温10℃以下の比率 （一戸建・築年数別） 52％ 47％ 古い一戸建住宅ほど居間 32％ 35 築21年以上の一戸建の 42 室温*１ 約5割で起床時の室温が 25 ６～10℃ の起床時の室温が低い。 10℃を下回る。 17 7 5 0～10年 11～20年 室温 ～５℃ ＊１ 築年数 ＊１ 温度は自己申告 21年以上 数字は（％） 16 ■住まいの温熱環境満足の理由（冬季） 53 45 冬季 温熱環境満足の理由 49 44 マンション持家居住者 一戸建の温熱環境満足 一戸建持家居住者 41 要因トップ2は、「暖房器 36 具の効きが良い」、「日 29 15 12 20 暖 房 し な く て も 快 適 隙 間 風 が な い 湿 度 が ち ょ う ど よ い 9 7 暖 房 し て い る 部 屋 と そ れ 以 外 の 部 屋 で 温 度 差 が な マンションと比較して 7 3 暖 房 し て い る 部 屋 に お け る 上 下 の 温 度 差 が 小 さ い 7 6 . 日 当 た り が 良 い 16 . 暖 房 器 具 の 効 き が 良 い 当たりが良い」。 暖 房 の 風 量 が ち ょ う ど よ い 1 １ ， ２ 階 の 温 度 差 が な い 10 そ の 他 数字は（％） 「暖房しなくても快適」、 「隙間風がない」が少な い。 17 ■住まいの温熱環境の不満の理由（冬季） 79 冬季 温熱環境不満の理由 マンション持家居住者 71 一戸建持家居住者 一戸建の温熱環境不満要 35 35 40 28 因トップ3は、「暖房しない 25 25 22 20 25 24 11 10 13 暖 房 し な い と 寒 い 暖 房 し て い る 部 屋 と そ れ 以 外 の 部 屋 で 温 度 差 が あ る 暖 房 し て い て も 寒 い （ 暖 房 器 具 の 効 き が 悪 い ） 日 当 た り が 悪 い 窓 の 近 く が 寒 い 隙 間 風 が あ る 湿 度 が 低 い 、 高 い 11 5 暖 房 し て い る 部 屋 に お け る 上 下 の 温 度 差 が あ る 5 8 吹 き 抜 け が 寒 い と寒い」、「暖房している部 屋とそれ以外の部屋で温 12 4 暖 房 の 風 が 不 快 で あ る 1 12 度差がある」、「暖房しても １ ， ２ 階 の 温 度 差 が あ る そ の 他 寒い」。 一戸建がマンションと比較 して多いのは「暖房しないと 寒い」、「暖房していても寒 い」、「隙間風がある」等。 数字は（％） 18 ■ 1・2階、暖房・非暖房室間の温度差（冬季） 一戸建で、1階と2階の温度差、暖房室と非暖房室との温度差を感じる人 が7割を超える。 冬季に､1階と2階の部屋で温度差を感じる 冬季に､居間などの暖房室と廊下やその他の部屋 (非暖房室)で温度差を感じる 全く感じない 全く感じない あまり感じない 2% あまり感じない 1% 6% 9% たいへん たいへん 感じる どちらとも言え 27% ない どちらとも言えない 感じる 20% 34% 19% 少し感じる 少し感じる 43% 39% 温度差を感じる 計 70% 温度差を感じる 計 73% 19 ■部屋別の温熱環境満足度（冬季） 一戸建はすべての部屋でマンションと比べて満足している人が少ない。 一戸建では玄関・浴室・洗面所・トイレで寒いと感じ、満足していない人が ７割を超える。 冬季 部屋別の温熱環境満足度（マンション） たいへん満足 やや満足 どちらともいえない やや不満 たいへん不満 冬季 部屋別の温熱環境満足度（一戸建） たいへん満足 やや満足 どちらともいえない 5 21 52 16 5 玄関 4 47 17 23 （47％） 台所 17 36 19 38 41 6 3 台所 7 38 30 19 12 31 33 42 6 3 居間・食堂 9 33 36 9 26 10 3 寝室 7 38 31 12 29 45 16 3 洗面所 3 15 45 10 32 15 8 23 40 16 41 3 浴室 4 43 21 18 15 （82％） 14 （ 14 （75％） （58％） トイレ 8 （82％） （59％） 浴室 14 （61％） （64％） 洗面所 6 （55％） （55％） 寝室 8 （63％） （40％） 居間・食堂 たいへん不満 （78％） （74％） 玄関 やや不満 3 トイレ 3 ）内は満足していない 計 15 46 29 数字は（％） 7 20 ■寒くて使いたくない部屋・スペースの有無（冬季） 一戸建で寒くて使いたくない部屋・スペースがある人は約４割 で、廊下、トイレ、浴室を挙げる人が多い。 マンションでは、納戸がトップ。 寒くて使いたくない部屋や 寒くて使いたくない部屋やスペースはどこですか スペースがある マンション持家居住者 一戸建持家居住者 38 35 28 26 24 28 27 22 27 23 29 20 10 4 3 マンション 一戸建 数字は（％） 居間･食堂 寝室 廊下 ﾄｲﾚ 浴室 納戸 4 ﾛﾌﾄ 数字は（％） 21 ■居間・食堂暖房時のトイレ・洗面所での温冷感（冬季） 居間・食堂で暖房している時のトイレ・洗面所について 一戸建の方がマンションより寒いと感じている人が多い。 一戸建で寒いと感じている人が7割超。 トイレの室温は 寒い 洗面所の室温は 73％ 75％ 58% 49％ 37 37 やや寒い 40 やや寒い 36 24 27 寒い 非常に寒い 9 4 マンション持家居住者 寒い 13 14 9 一戸建持家居住者 非常に寒い 5 数字は（％） マンション持家居住者 一戸建持家居住者 22 ■断熱・温熱に関する言葉の認知度 断熱性能・温熱性能・温熱環境という言葉を知っていますか 72％ 69％ 26 24 境という言葉を 40％ 上：聞いたことはあるが意 下：聞いたこともなかった 「聞いたことはあるが 意味は知らなかっ 21 45 味は知らなかった 48 た」、「聞いたこともな かった」計が約7割。 19 断熱性能 温熱性能や温熱環 温熱性能 温熱環境 数字は（％） 23 ■住まいの温熱環境と健康との関係 家の温熱環境と健康が大きく関係していることを知っているか よく知って いる 知らなかった 13% 34% 家の温熱環境と健康が 大きく関係していることを 「よく知っている」と答えた なんとなく 人はわずか13％。 知っている 53% 24 ■温熱環境のいい家にできなかった理由、購入しなかった理由 「温熱環境に不満をもっている」、「どちらでもない」と回答した人」の内、温熱環境のいい家 にできなかった理由、購入しなかった理由に、「温熱環境及び温熱環境のいい家について知 らなった」を理由に挙げた人が36％。 同じく「温熱環境及び温熱環境のいい家について重視していなかった」を挙げる人が30％。 温熱環境のいい家にできなかった理由、購入しなかった理由 36 温熱環境及び温熱環境のいい家について知らなかったから(意識､知識がなかったから) 30 温熱環境及び温熱環境のいい家について重視していなかったから 温熱環境のいい家は､当時割高だったから 8 19 温熱環境のいい家が､建設当時世の中になかったから その他 7 数字は（％） 25 ２ まとめ ２．まとめ 建物・ 季節別 分析 ・年間を通した家全体の温熱環境（あたたかさ、涼しさ）に満足していない人は55％で、 その比率はマンションより一戸建の方が多く 62 %。 ・一戸建では、夏・冬季とも温熱環境（あたたかさ、涼しさ）に満足していない比率が 約7割を占め、梅雨・夏・冬季の湿度に満足していない比率も約7割。 冬季 分析 ・一戸建の方がマンションと比較して起床時の居間・食堂の室温が低く、起床時に16℃ 未満になっている比率が6割を超える。築21年以上では約半数が10℃以下。 ・一戸建では、1階と2階の温度差を感じる人や、暖房室と非暖房室の温度差を感じる 人が7割を超える。 ・一戸建の主な不満要因は「暖房をしないと寒い」、「暖房室と非暖房室の温度差を 感じる」、「暖房していても寒い」が三大要因。 部屋別 満足度 ・一戸建はすべての部屋でマンションと比べて満足している人が少ない。特に冬季の玄関・ 洗面所・浴室・トイレでは、寒いと感じ、満足していない人が７割以上。 ・一戸建で「寒くて使いたくない部屋・スペースがある」と感じている人は約４割で、廊下、 トイレ、浴室を挙げる人が多い。 温熱に 関する 知識 ・温熱性能、温熱環境という言葉をよく知らない人が約7割、「家の温熱環境と健康が 大きく関係していることをよく知っている」人はわずか13％。 ・温熱環境のいい家にできなかった、購入しなかった理由を「温熱環境及び温熱環境 のいい家について意識・知識がない」とした人が36％。 27 Ⅳ. 今後の活動計画 今後の活動方針 １．調査活動 ・継続的な生活者視点での調査活動 ・温熱環境に関する追加調査、分析 ２．啓発活動 ・生活者向けフォーラム開催 ・生活者向けワークショップ開催 ３．情報発信 ・ＨＰ、冊子等での情報発信 ・断熱材ユーザー様向け施設 29 今年度の活動計画 ■WEBアンケート調査 調査活動 ・ 調査名：「夏季の住まいの温熱環境の実態と満足度」 ・ 実施時期：8月下旬 WEBアンケート調査を実施予定 ・ 調査結果発表：2016年11月予定 ■生活者向け フォーラム ・ テーマ：「住まいの温熱環境に満足していますか？ 」（仮題） ・ パネリスト（予定）：首都大学東京 啓発活動 首都大学東京 建築学域教授 須永 修通氏 名誉教授 星 旦二氏 他 ・ 主催：旭化成建材 快適空間研究所、旭リサーチセンター ハビトゥス研究所 ・ 開催時期：2016年 9月16日（金） 13:00～15:00（予定） ・ 開催場所：御茶ノ水トライエッジカンファレンス ■体験棟、展示棟（仮称：快適空間ラボラトリー）建設 ・ 竣工：2017年1月予定 情報発信 ・ 場所：茨城県 猿島郡 境町（ネオマフォーム工場近接地） ・ 概要：体験棟- 当社断熱材（ネオマフォーム）を採用した温熱環境に優れた住まい 展示棟- 断熱材だけでなく、温熱性能、断熱性能の理解を深めるための施設 ・ 対象：工務店等の断熱材ユーザー様向け 30 本件に関するお問い合わせ先 旭化成株式会社 広報室 ＴＥＬ ０３－３２９６－３００８ 旭化成建材株式会社 快適空間研究所 ＴＥＬ ０３－３２９６－３５５４
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