東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 64 集・第 2 号(2016 年) 授業の指導方法に最も大きな影響を受けた研修先の特徴 ―県・市教育センターと教科研究会に注目して― 池 田 和 正* 教育改革の成否は,教育制度改革とともに,教員の力量形成と意識改革にかかっている。そこで 本論文では,教員の研修経験と研修希望とを手がかりとして,教員の力量形成に関する自己認識を 明らかにすることを目的とした。このため,高校理科教員対象の質問紙調査を実施し,授業の指導 方法に最も大きな影響を与えた研修経験と自らの力量を高めるために必要とする研修内容につい て,次の知見を得ることができた。 第一に「最も大きな影響を受けた研修経験」を「教育センター(悉皆研修)」とした回答群は,発問 等の授業の指導方法に関する内容を挙げている。また「理科研究会」とした回答群は,教科の内容, 特に実験指導を挙げている。 第二に「力量を高めるための希望研修機会」について,教職経験年数が 20 年未満では「教育セン ター」が最も多く,20 年以上の群では「大学の開放講座」が最も多い。研修内容として,科目の専門 的知識,実験指導を希望している。 キーワード:教員研修,高校教員,教育方法,教育政策,教育評価 1 研究の背景と問題設定 本稿は, 「知識活用型教育」への転換が政策的課題と取り上げられる状況の下,教育改革の鍵の一 つとなる教員の資質向上の現状と課題を探ることを目的とする。教員の資質は多様な機会,多様な 段階,多様な要素と内容を通して形成されるものである。多くの場合,教室での実践を通した気づ きを通した自己認識と自己変革が重要な契機となる(たとえば牧,1984) 。しかし,教室や学校を離 れたさまざまな研修制度もまた,教師の資質向上を促す重要な要因である(たとえば牧,1984)。 本稿においては,高校理科教員を調査対象として絞り込み,授業の指導方法に最も大きな影響を 与えたと認識されている研修経験,その具体的な研修先と研修内容とを明らかにした。これに加え て, 高校理科教員が自らの力量を高めるために必要であると考えている研修先と研修内容を分析し, 今後の研修制度に対する期待とニーズを明らかにした。これらの分析を通して,高校理科教員の力 量形成に関する実態と将来的可能性,さらには今後の研修制度設計のあり方について検討したい。 教育学研究科 博士課程後期 * ― ― 235 授業の指導方法に最も大きな影響を受けた研修先の特徴 1.1 後期中等教育における教育改革の動向とその背景 「知識活用型教育」への転換の可能性を考えるとき,重要な鍵を握っているのは,教育評価論であ る。教育目的論や教育内容方法論も重要であるが,実際には学習成果を測定する教育評価の枠組み が教授学習の幅と深みを決定している(たとえば Fenwick & Parsons,2009)。それゆえ,新たな教 育目的が導入され,新たな教育内容が加えられ,また新たな教育活動が展開されても,そこで行わ れるさまざまな活動が従来通りの狭い範囲で評価される場合,教授学習の本質的な転換は期待する ことが困難である。このため,本研究の背景として最初に,授業の指導方法と表裏一体をなす教育 評価の現状について述べることにしよう。 現在,後期中等教育においては,中央教育審議会「高大接続答申」 (文部科学省,2014)によるいわ ゆる新テストやアクティブ・ラーニングなどの教育改革の実施への対応が喫緊の課題である。高度 経済成長期に主流であった相対評価に対して,小学校・中学校では,学習指導要領の改訂とその着 実な実施を踏まえることで,目標に準拠した評価を教育現場に普及させ,定着させてきた。これに 対して後期中等教育においては,このような評価方法の普及・浸透が十分とは言えない現状が窺え る。 工藤(2011)は,高校での評価方法に関する実態調査から,各高校で実際に学習評価を行う際に基 準になる教務内規において,成績評価の結果の割合(評定の 5,4,3,2,1)を設定する学校が,公立 28.9%,私立 32.7%という結果であることを報告した。工藤は, 「これに従って評価が行われている とするならば」と仮定した上で,「評価方法として集団に準拠した評価」が行われているとし,目標 に準拠した評価が,高校の少なくとも 30%においては実施されていないことを指摘した。 そこで,本稿においては,一部の高校において学習指導要領による規定と大きく異なる評価方法 を使い続けている理由に注目したい。工藤は,第一に評価技術の問題として, 「ペーパーテスト」の 問題点があり,高校教員には, 「定期試験等で行うペーパーテストこそが簡易でより客観的であり, 入試で問われる学力に近いものであり,評価方法として便宜上他に代え難いものだという意識」が 根強いと指摘した。この背景には高校教員の意識中に,ペーパーテストのみが客観性・信頼性に優 れているという誤った認識が存在すると考えてよいだろう。このことは,これまでの教員養成段階 及び現職教育において教育測定や教育評価に関する内容及びその重要性を十分に学習させていない 結果とも言え,今後の教育改革における大きな改善点を示唆する。 第二に工藤(2011)は, 「教員の意識や学校の体制」の問題点として,「教員間・教科間の評価に対 する考え方や具体的な手法(評価規準や評価方法,総括の仕方など)についての合意形成が難しいと いった意識」やその背景として, 「教科の主体性を重視する高等学校の伝統的な体制がブレーキに なっているという意識」が強いと指摘した。背景には,法規上での規定の違いによる校内研究への 取組状況の違いが挙げられよう。小学校・中学校・特別支援学校では校内研究を担当する研究主任 は法規上1に規定されており, 校内研究を主に担当する分掌として研究部等の名称で存在する。また, 校内研究は全校テーマを設定し,それを各教科・各学年の課題に適応するようにさらに具体化して いる場合が多い。しかし,高校では研究主任は法規上規定されておらず,そのため組織的に校内研 ― ― 236 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 64 集・第 2 号(2016 年) 究を行う経験の蓄積は小学校・中学校・特別支援学校と比べてかなり少ない。そのため,多くの高 校教員は校内研究の全校テーマを意識した授業実践について,教員間の議論を通してその方向性を 定めていくような経験が,小学校・中学校・特別支援学校の教員よりも少ないと推察できる。言い 換えれば,高校における校内研究は教科中心であり,それが教科間・教員間の壁を強化し,また高め ているのである。このことは,高校における今後の授業改善,教育評価改善を進める上で極めて重 要な課題である。 このような背景もあり,高校教育において,目標に準拠した評価やそれに伴う教育課程改革,教 員の意識改革は十分に進んではいない。 「高大接続答申」では,高校教育の質的改善と大学入試制度 改革,大学教育改革を連動させる内容が示されており,今後数年の内に「知識活用型教育」は大学入 試制度の改革と連動することで,後期中等教育の現場でも確実な実施が迫られている。こうした教 育改革に,後期中等教育の教員は対応できるであろうか。 1.2 欧米の教育改革の影響を受けた「知識活用型教育」重視の流れ 次に,我が国の教育改革で重視される「知識活用型教育」について触れておこう。これは,1980 年 代後半からの欧米に教育改革に端を発している。Shepard(2000)は,1990 年代から 2000 年代にか けて 20 世紀に支配的であった行動主義的な能力観,科学的測定を中心としたパラダイムから構成主 義的な学習理論に基づいた教室でのアセスメント重視のパラダイムへと大きく変化してきたと指摘 した。 図 1 20 世紀に支配的なパラダイムから新しいパラダイムへの移行(Shepard,2000) 特に,Shepard(2000)は,図 1 の中央に示すように古い教育のパラダイムが解体され,新たな教 育のパラダイムへの過渡期の状態を理解する最善の方法として,以前からの伝統的なテスト方法が 続いている間に,構成主義者の学習理論と教室でのアセスメントを中心とした新しい教育のパラダ イムを理解することが理想であるとしている。 具体的な流れとして,Black(1998)による教室でのアセスメントの重要性の指摘が大きな転換点 となり, 教室における学習評価の方法の変化につながった。Black の議論は Shephard による学説的, ― ― 237 授業の指導方法に最も大きな影響を受けた研修先の特徴 理論的な議論と相まって,OECD などの教育改革論として具体化し,教育改革を牽引してきた。こ れらの学説を踏まえ,OECD 諸国による持続可能な経済発展を目指すために必要な人々の資質を ついて研究した DeSeCo プロジェクトは,汎用性をもつ能力観であるキー・コンピテンシーを提唱 した(Rychen & Salganik,2003)。OECD は各国の教育政策への反映を目的にして,キー・コンピ テンシーを測定する PISA を実施している。PISA の分析報告書によると,調査結果が良好な国・地 域の特徴を分析した結果,形成的アセスメントと呼ばれる指導方法の枠組みを見出した。さらに, 形成的アセスメントを通して,キー・コンピテンシーのコアになる「Learning to learn」 (L2)の獲得 への有効性も指摘している(OECD,2005)。 ここで,L2 について述べることにしよう。Hautamaki,et al.(2010)によれば,OECD(2005)に よる L2 の捉え方は,イギリス,ユネスコ,EU(European Union)と同一であるとしている。さらに, 「L2 は学習者がより重要な学習と人生経験にかかわるものとしており,具体的には家庭や職場,教 育と職業訓練などの様々な文脈に適用し活用するための知識とスキルである」 (p.270)とし,「動機 と自信が個人のコンピテンシーの鍵である」 (p.270)とした。これは,L2 は獲得した場面以外でも 汎用性のある転移可能な能力であることに加えて,単なるスキルの獲得ではなく,学習に対する動 機と自己に対する効力感がその獲得に大きな影響を及ぼすと言え,学習内容・特に指導方法等の学 習場面の設定が重要になる。このような背景もあり,表 1 のような汎用性をもつ様々な能力観が提 唱され,現在の「21 世紀スキル」 「ジェネリック・スキル」などにも繋がっている。 表 1 ジェネリック・スキルに相当する多様な用語(清水,2012) 英国 Core skills, key skills,common skills ニュージーランド Essential skills オーストラリア Key competencies, employability skills, generic skills カナダ employability skills 米国 Basic skills, necessary skills, workplace know-how シンガポール Critica enabling skills フランス Transferable skills ドイツ Key qualifications スイス Trans-disciplinary goals スペイン Generic competencies デンマーク Process independent qualification 日本学士力 就職基礎力 社会人基礎力 OECD DeSeCo(Definition and Selection and Development) 1.3 教員研修の実証的な検証による研修ニーズの分析 上述の教育改革論,すなわち教育評価論や教育目的論に対して,教員は十分な準備ができている のだろうか。ここでは,教育改革と教員研修との関係について,述べることにする。山﨑(2000)に よると,教師教育の視座より欧米の教育改革,国内の教育改革のいずれにしても,教育改革は授業 ― ― 238 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 64 集・第 2 号(2016 年) の問題であり,教師の問題であると指摘している。さらに,島田(2009)によれば,教師の学習や成 長を対象とする研究は,教育実践研究における中心的な位置を占めているとしている。 そこで,本節では教育改革を推進する上で重要な役割を果たす教員研修に注目することにしよう。 最初に法規上における教員の研修の規定を示す。教育基本法第 9 条において,教員は「絶えず研究 と修養に励み,その職責の遂行に努めなければならない」とあり,法規上でも教員研修は重視されて いる。さらに,同条第 2 項でも「その使命と職責の重要性にかんがみ,その身分は尊重され,待遇の 適正が期せられるとともに,養成と研修の充実が図られなければならない」ともあり,教員が研修を 受ける機会の保証を示している。そのため,都道府県教育委員会は多様な内容の研修会を実施して いる。参加形態としては,法定である悉皆研修(初任者研修など) ,希望研修,推薦研修がある。い ずれの参加形態であっても,研修内容が直面している現状の課題の解決に有益であると判断した場 合は,研修内容を自己の状況に合うように工夫改善して教育実践に取り入れていく。 次に教員研修に関する先行研究について,述べることにする。清水・池田(2015)は,高校理科教 員対象の質問紙調査を実施し,研修経験の内容や機会,今後の研修ニーズ等の概要を報告した。清 水らによると,教師教育についての研究は,制度設計や理念的研究に関する内容(牧,1982:岩下, 1984)が先行してきたとし,実際の現職教員の研修に関する実証的な検証はあまり多くないとして いる。具体的な現職研修とその成果の検証例として,清水・丸山他(2009),丸山(2011),清水・大桃 (2008) ,池田(2013),池田・有本(2014)を挙げている。清水ら(2015)の調査結果は,研修経験の内 容や機会についての概要を示したのみであり,具体的な研修経験の内容や機会についての詳細な分 析は実施していない。そこで,本研究では,清水らの質問紙調査において,詳細な分析を行ってい なかった授業に関する内容,特に授業の指導方法に最も大きな影響を受けた研修経験の有無に注目 した。授業の指導方法に最も大きな影響を受けた研修経験の背景には,研修の受講時において,喫 緊な課題を抱えた状況で現状の改善を強く願っている姿が窺えよう。 ここまで,後期中等教育おける教育評価の問題点として,小中学校と比べて教育評価に関する改 善が進んでいないこと,今日の政策的な課題である「知識活用型教育」の背景に欧米での教育改革で 中心をなす汎用性をもつ転移可能な能力観があること,そして,国内国外を問わず教育改革は教師 の問題であり,教師に関する研究は教育実践研究における中心的な位置を占め,教員研修が重要な 役割を果たすことを論じてきた。これらの観点を踏まえた上で,高校理科教員の授業の指導方法に 大きな影響を与えた研修経験の具体的な研修先及びその内容についてと高校理科教員の自らの力量 を高めるために必要であると考えている研修先及び研修内容について,データに即して論じていく ことにしょう。 2 方法 2.1 調査対象者及び調査時期 本研究の調査対象者は,M 県内の公立高校全 88 校に在籍する常勤の理科教員 344 名とし,2014 年 9 月に質問紙調査 2 を実施した。回収方法は,学校毎で取りまとめて郵送による回収を行った。 ― ― 239 授業の指導方法に最も大きな影響を受けた研修先の特徴 回答者数は 265 名(回収率 77.0%) ,内訳は男 233 名(87.9%),女 32 名(12.1%)であった。なお,本研 究における常勤の理科教員とは,主幹教諭,教諭,再教諭,常勤講師を指す。 また,教職経験年数は,10 年未満が 61 名(23.1%) ,10 年以上 20 年未満が 67 名(25.4%),20 年以上 30 年未満が 99 名(37.5%) ,30 年以上 40 年未満が 37 名(14.0%)であった。 2.2 質問項目の構成 質問項目は,以下に示すように 2 つの項目から成り立っている。 2.2.1 授業の指導方法に最も大きな影響を受けた研修の有無とその具体的な機会の項目 1) 指導方法の知識やスキルへの影響に関する項目として,項目 15「授業の指導方法に最も大きな 影響を受けた研修はありますか」 (以降 「授業の指導方法に最も影響を受けた研修」)を尋ねた。こ れは, 「授業の指導方法に最も影響を受けた研修」の有無を問う項目 1 項目からなり,2 段階評定(1= はい,2= いいえ)で回答を求めた。 2) 項目15で「はい」の回答者を対象に, 項目18では具体的な研修機会について尋ねた。具体的には, 「授業の指導方法に最も大きな影響を受けた研修について,その研修の機会として,該当するもの を 1 つ選んで下さい」と尋ねた。具体的な選択肢を表 2 に示す。なお,回答に当たっては, 「2 =県・ 市教育センター(悉皆研修)には,初任者研,5 年研,10 年研などを含みます」と予め示した。 表 2 具体的な研修機会についての選択肢 1 =勤務校での校内研修 6 =県理科研究会の活動 11 =教職員組合での活動 2 =県・市教育センター(悉皆研修) 7 =大学の開放講座 12 =民間教育機関(予備校など) 3 =県・市教育センター(希望研修) 8 =大学での教員免許更新研修 13 =個人研究 4 =県・市教育センター(長期研修) 9 =大学院への就学 14 =私的な研究サークル 5 =中央研修 10 =所属する学会での活動 15 =その他 3) 項目 15 で「はい」の回答者を対象にして,項目 20 では具体的な研修内容について尋ねた。具体 的には,「質問 18 の内容について,該当するものを 1 つ選んで下さい」と尋ねた。具体的な選択肢 を表 3 に示す。 表 3 具体的な研修内容についての選択肢 1 =発 問・板書などの普通教室における授業の指導方法 4 =観点別評価などの様々な視点による評価方法に関す に関するもの るもの 2 =担 当する科目について,より専門的な知識に関する 5 =学年や分掌の運営に関する内容 もの 3 =生徒の実験指導(実習・演示実験)に関するもの 6 =その他 ― ― 240 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 64 集・第 2 号(2016 年) 4) 項目 15 で「はい」 の回答者を対象に項目 21 では,「差し支えがなければ,質問 18 について,どの ような影響があったのかをお書き下さい」と尋ね,自由記述で回答を求めた。 2.2.2 力量を高めるための希望研修機会の項目 1) 教員としての力量をより高めるために受講を希望する研修内容を項目22で尋ねた。具体的には, 「今後,教員としての力量をより高めるために最も受講したい研修を 1 つ選んで下さい」と尋ねた。 具体的な選択肢を表 3 に示す。 2) 教員としての力量をより高めるために受講を希望する研修機会を項目23で尋ねた。具体的には, 「質問 22 で回答した研修の機会として,最も適切なものを 1 つ選んで下さい」と尋ねた。具体的な 選択肢を表 2 に示す。 3 結果と考察 3.1 授業の指導方法に最も影響を与えた研修経験 授業の指導方法に最も影響を与えた研修先とその具体的な内容についての考察を行う。 3.1.1 授業の指導方法に最も影響を与えた研修経験とその研修先 清水ら(2015)は,本調査の概要を既に報告している。具体的には,質問「授業の指導方法に最も 大きな影響を与えた研修経験」の有無を尋ね,「はい」と回答した 117 名に対して,その研修先の種類 も尋ねた結果として,図 2 を報告した。さらに,回答が多い順として,「県・市教育センター(悉皆 研修) 」 (19 名), 「理科研究会」 (17 名) , 「校内研修」 (12 名), 「民間教育機関」 「私的な研究サークル」 (ともに 10 名)と指摘している。 19 20 15 17 12 10 10 5 5 3 1 2 2 2 4 1 10 12 2 0 図 2 授業の指導方法に最も大きな影響を受けた研修先(清水・池田,2015) しかし,清水らは授業の指導方法に最も影響を与えた研修機会の報告のみであり,教職経験年数 などの高校理科教員の属性に注目した詳細な分析は実施していない。そこで,教職経験年数と授業 ― ― 241 授業の指導方法に最も大きな影響を受けた研修先の特徴 の指導方法に最も影響を与えた研修経験との関係を分析した結果を表 4 に示す。 表 4 授業の指導方法に最も大きな影響を受けた研修経験と教職経験年数 最も大きな影響を受けた研修経験 有(N=116) 無(N=143) 10 年未満 10 年以上 20 年未満 20 年以上 30 年未満 30 年以上 40 年未満 23 38 35 20 34 28 64 17 「教職経験年数」と「授業の指導方法に最も影響を与えた研修経験」の関係を検討するためにχ2 検 定を行ったところ,χ2 検定の結果は有意な人数の偏りがみられた(χ2=9.67,df=3,p<.05)。こ れは,「教職経験年数」と「授業の指導方法に最も影響を与えた研修経験」との間に関係があること を示す。具体的には,授業の指導方法に最も影響を与えた研修経験を有する教員数が教職経験年数 10 年以上 20 年未満では有意に多く,教職経験年数 20 年以上 30 年未満では有意に少ない。 3.1.2 授業の指導方法に最も大きな影響を受けた研修の具体的な内容 ここでは,授業の指導方法に最も大きな影響を与えた研修経験について,自由記述欄を元にした 質的な分析を行うことにする。項目 15「授業の指導方法に最も大きな影響を与えた研修経験」の有 表 5 授業の指導方法に最も大きな影響を受けた研修【県・市教育センター(悉皆研修) 】 初任研の講師でいらっしゃった先生が物理の先生で,Web 上にある授業で使えるコンテンツを紹介して下さり,今 も重宝しています。特に空気(気柱)の振動や電気力線など実験での可視化が困難なものを JAVA で動画として扱 えるものなど,生徒へ理解させる際,非常に役立っています。(164 教職経験年数 10 年未満) ICT を活用した授業実践や他の先生方の発問や板書の工夫を学ぶことで良いと思った部分を自身の授業で試して います。校内に理科教諭は一人であるため,他校の理科の授業を学ぶことは,授業改善に大きな影響を与えてくれ ました。(327 教職経験年数 10 年未満) 正しく評価するためにどのような授業展開をするべきかという指導計画の立て方について (333 教職経験年数 10 年未満) 教員としての心構えがより強くできました。(477 教職経験年数 10 年未満) 他の先生方の授業方法や実験方法を参考にし,自分でもアレンジを加え実践した。前学年でやったときと比較する と生徒の理解度が上がった。(小テストや定期考査の結果より) (200 教職経験年数 10 年以上 20 年未満) 経験を重ねるにつれ,学校内での役割が変化(増加)していくが,授業についても,より多くの観点で自己評価でき るようになっていく。さまざまな視点で改善を試みるようになった。(232 教職経験年数 10 年以上 20 年未満) ADHD,LD への対応も含めた,総合的な学習方法。(379 教職経験年数 10 年以上 20 年未満) 部長,主任としての立ち位置の確認。(379 教職経験年数 20 年以上 30 年未満) 発達障害について知見を得ることができ,より注意深く生徒を観察し,より生徒の側に立った授業の進め方や評価 のあり方に留意するようになった。(193 教職経験年数 30 年以上 40 年未満) 物理の 5 年研での模範授業において,水平投射と斜方投射との自作の演示教材を用いて説明されたものを拝見した とき,あまりにも見事だったので,深く関心感動した・見た瞬間の 0.5 秒で(例えばの話),納得した内容だった。語 るよりも,板書するよりも発問を繰り返して確実化していくよりも,誰しもが理解したと思った。その後すぐに, 自主的に問題を解き,生徒は精を出していたが,私はその後長く忘れることのできない感動の授業だった。難しく 手の込んだものばかりが教材と思ってはいけないとも知った。(452 教職経験年数 30 年以上 40 年未満) ― ― 242 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 64 集・第 2 号(2016 年) 無を尋ね, 「はい」と回答した 117 名に対して,具体的な影響についての自由記述を求めた結果,55 名から回答が得られた。授業の指導方法に最も大きな影響を与えた研修先として,最も多い回答で あった「県・市教育センター(悉皆研修) 」とした教員 19 名中 10 名より,自由記述が得られた。結果 を表 5 に示す。特に,多い記述内容として, 「授業」 , 「評価」の記述が 10 名中 6 名にみられた。具体 的な記述内容として,ICT を活用した授業実践 2 名,授業の工夫と評価のあり方 4 名であった。こ れらの結果より,高校理科教員は, 「県・市教育センター(悉皆研修)」の経験によって日々の授業で の発問や板書の工夫などやその評価方法のような授業の指導方法に対して,大きな影響を受けてい ることを示唆する。 続いて,「県・市教育センター(悉皆研修)」に次いで多かった「理科研究会」と回答した教員 16 名 中 5 名より,自由記述が得られた。結果を表 6 に示す。 特に,多い記述として,「実験」 ,「教材」を述べた内容が 5 名全員にみられた。このことは,「理科 研究会」 での研修によって,教科内容としての実験及び教材について,大きな影響を受けていること を示唆する。 表 6 授業の指導方法に最も大きな影響を受けた研修【理科研究会】 実験(生徒の実習)の方法について,うまいやり方が身についたような気がした。自分が経験したことのない実験内 容について知ることができ,材料が入手できるという点についてもためになった。 (206 教職経験年数 10 年以上 20 年未満) 実験の効果的利用(317 教職経験年数 20 年以上 30 年未満) 実験教材の創意工夫。(387 教職経験年数 20 年以上 30 年未満) 授業内容の確認的な実験からの転換(397 教職経験年数 20 年以上 30 年未満) 教材を自分で採取して実験をしたり,教材として飼育したりするというものであった。 (312 教職経験年数 30 年以上 40 年未満) 3.2 教員としての力量を高めるための希望研修機会 教員としての力量を高めるための希望研修先とその具体的な内容についての考察を行う。 3.2.1 教員としての力量を高めるための希望研修機会と教職経験年数 教員としての力量を高めるための希望研修機会について,分析を進めることにする。清水ら (2015) によると,教員としての力量を高めるための研修機会の希望として多い回答は,「県・市教育 センター(希望研修)」 (61 名), 「大学の開放講座」 (42 名),「理科研究会」 (37 名)の順であった。 特に教員として力量を高めるための希望研修機会として,回答が多かった「教育センター(希望 研修) 」 ,「大学の開放講座」 ,「理科研究会」について,「教職経験年数」と「最も大きな影響を受けた 研修経験」に注目して分析した結果が表 7 である。 ― ― 243 授業の指導方法に最も大きな影響を受けた研修先の特徴 表 7 教員としての力量を高めるための希望研修機会と教職経験年数 10 年未満 10 年以上 20 年未満 20 年以上 30 年未満 30 年以上 40 年未満 教セ(希望研修) N=59 理科研究会 N=36 大学の開放講座 N=42 全回答者数 N=264 22(36.0%) 18(26.9%) 13(13.1%) 6(16.2%) 9(14.7%) 10(14.9%) 11(11.1%) 6(16.2%) 6( 9.8%) 9(13.4%) 17(17.2%) 10(27.0%) 61 67 99 37 ※なお,表中の割合(%)は,経験年数別の全回答者に対する割合である。 教員としての力量を高めるための希望研修機会として,教職経験年数 10 年未満の層及び教職経験 年数 10 年以上 20 年未満の群では, 「県・市教育センター(希望研修)」との回答が最も多く 26.9%~ 36.0%を示した。しかし,教職経験年数 20 年以上 30 年未満の群及び教職経験年数 30 年以上 40 年未 満の群では,「大学の開放講座」との回答が最も多く 17.2%~ 27.0%を示した。なお,教職経験年数 20 年以上 30 年未満の群では, 「大学の開放講座」, 「県・市教育センター(希望研修)」, 「理科研究会」 と回答した割合が 17.2%~ 11.1%となり,あまり大きな差がみられないため,この群の希望研修機 会のニーズは大きく分かれていることを示唆する。 3.2.2 教員としての力量を高めるための希望研修機会と教職経験年数 ここでは,研修機会として「大学の開放講座」に注目した。「大学の開放講座」は,最も大きな影響 を受けた研修経験では 2 名であるが,教員としての力量を高めるための希望研修機会としては 42 名 が回答しており,高校理科教員が注目している内容であると捉えた。そこで,希望する「具体的な 研修内容」による分析を行った結果が表 8 である。 表 8 「大学の開放講座」 で希望する研修内容 具体的な研修内容 N=42 授業の指導方法 科目の専門的知識 実験指導 評価方法 分掌運営 その他 3 28 10 0 0 1 表 8 より,高校理科教員が力量を高めるための研修機会として「大学の開放講座」で希望する研修 内容の多くは,科目の専門的な知識,実験指導であることが明らかになった。 4 総合考察 本研究では,次の内容が明らかになった。第一に「授業の指導方法に最も大きな影響を受けた研 修経験」が教職経験年数の違いによって異なることである。具体的には,教職経験年数が 10 年以上 20 年未満の群は,教職経験年数が 20 年以上 30 年未満の群よりも多く経験していることが明らかに ― ― 244 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 64 集・第 2 号(2016 年) なった。背景として,初任者研修・10 年経験者研修等の悉皆研修による影響が窺えよう。特に 10 年 経験者研修は 2003 年(平成 15 年)度から法定の悉皆研修とされたことで,初任者研修との研修内容 の継続性が確保された。結果的に「県・市教育センター」主催の研修機会の増加となり, 「県・市教 育センター」での研修に対して,これまで以上に有用性を感じる機会が増えたとも言えよう。 第二に「授業の指導方法に最も大きな影響を受けた研修経験」について, 「県・市教育センター(悉 皆研修)」と回答している群では,影響を受けた具体的な内容として,授業での発問や板書の工夫な どの授業の指導方法に関する内容を指摘している。また, 「理科研究会」と回答している群では,教 科の内容,特に実験指導に関する内容を指摘している。背景として,「県・市教育センター(悉皆研 修) 」では,初任者研修・10 年経験者研修等に含まれる学習指導研修の影響が窺えよう。学習指導研 修は,学習指導案作成から模擬授業,授業実践に至る内容を多く扱っているため,授業研究の基本 となる研究授業のやり方を計画的に学べる機会となっている。その際,県・市教育センターには高 校採用の指導主事に加え,小中学校採用の指導主事も多く在籍しているため,校内研究について多 くの知見が既にある小中学校での実践事例を活かした研修が行われていると推測できる。 「理科研 究会」 では,秋季総会において多くの実践事例が発表されている。発表内容として,生徒実験や演示 実験などの実験指導に関する内容が多く扱っており,その影響であろうと窺える。 第三に「教員としての力量を高めるための希望研修機会」が教職経験年数によって異なり,教職経 験年数が 20 年未満の群では「教育センター(希望研修)」が最も多く,教職経験年数が 20 年以上の群 では「大学の開放講座」が最も多かった。さらに,「大学の開放講座」で希望する研修内容は,科目の 専門的な知識や実験指導が大部分であることであった。背景としては大学を卒業又は大学院を修了 して 20 年以上経過することで,最新の研究知見から長い時間遠ざかっていることに対する不安が少 なからずあると窺えよう。そこには,授業の指導方法や評価方法よりも,専門的知識や実験を重視 した考え方があることを示唆している。 5 結論 5.1 高校教育のパラダイムシフトによる理科教員の研修の方向性 高大接続答申によって,Shepard(2000)が示すような教育のパラダイムシフトの波が日本国内 の高校教育に大きな影響を及ぼす。今後は,高大接続答申が示すように「知識活用型重視」の教育の 推進が加速されよう。その際,知識を修得することに加えて,これまで経験したことがない場面に 直面したとき,自らの知識を活用して課題を解決していく技能,すなわち汎用性をもつ活用技能の 習得が重視される。授業は,生徒がその技能を身に付けるための絶好な機会となり得よう。本調査 によって,高校理科教員が授業の指導方法に大きな影響を受けた研修経験の特徴が明らかになった。 加えて,力量を高めるために必要な研修内容として,「大学の開放講座」を希望する教員群では,科 目の専門的な知識や実験指導を重視する傾向が明らかになった。これは,知識を活用するための基 盤として不可欠であるが,今後の教育のパラダイムシフトを視野に入れた場合,十分であるとは言 えず,今後の早急な改善が必要である。 ― ― 245 授業の指導方法に最も大きな影響を受けた研修先の特徴 改善の手がかりとなる研修機会して,教職経験年数 20 年未満の群では,「教育センター(希望研 修) 」 及び「教育センター(悉皆研修)」 が挙げられよう。教職経験年数 20 年未満の群は,教育センター での研修による効果を期待していることに加え,効果があった研修内容として授業での指導方法を 指摘している。また,教職経験年数 20 年以上の群では,「大学の開放講座」が挙げられている。その 研修内容としては,科目の専門的な知識の研修を希望している傾向がある。 教育センター,大学の開放講座という異なる場面での研修を行うにせよ,理科教員におけるいわ ば正統的な知識・スキル(科目の専門的な知識,実験指導,授業のスキル)に加え,学習指導要領や「高 大接続答申」などで示している活用能力を志向した新たな能力観の定着を目指した取り組みが不可 欠であろう。 5.2 今後の研究課題 世界の教育は,OECD などの国際的な機関が主導して「知識蓄積型教育」から「知識活用型教育」 への転換を図っている。これは,雇用可能性を背景にした経済的な側面が強い政策の一環とは言え, 時代や社会の変化に柔軟に対応できる人材育成を目指すことに変わりはない。学校を卒業した後の 長い人生において,学校で習得した知識・スキル,あるいは習慣を活用し,自分自身と社会を変革で きる生涯にわたる学習者の育成を目指している。既に国内でも,これまでの学習指導要領に見られ るように,こうした教育改革の方向性が明確に示されている。 このような教育改革や授業改革を推進するためには,授業における知識の教授学習方法,協同的・ 探求的な学習などの具体的な授業の展開方法,そして教育評価(形成的アセスメント)などを新たに 織り込んだ指導計画を一人一人の理科教員が自らの手で作成する機会を十分に確保できるような研 修制度の設計が重要である。 研究上の課題としては,従来の研修の在り方に対するいっそう詳細な検証(初任研,10 年経験者 研などの悉皆研修や希望研修の検証,理科研究会の果たしてきた役割とその影響など)を行うこと が必要であろう。既存の研修制度や既存の研修内容の中にも,新しい時代のニーズに十分に応える うる知見は含まれている。それらの知見を汲み出しつつ,新たな時代に即した研修内容,研修制度 を構想することが今後の研究課題である。 【註】 1. 学校教育法施行規則第 79 条で規定され,第 47 条が準用される。第 47 条「小学校においては,(中略)必要に応じ, 校務を分担できる主任等を置くことができる」とあり,各教育委員会の管理規則上で研究主任に関する規定が見ら れる。例 . 県立学校の管理に関する規則(宮城県)第 22 条「中学校及び特別支援学校に,研究主任を置く」。同条 2 項「研究主任は,校長の監督を受け,学習指導に関する研究その他の研修について連絡調整に当たり,及び必要に応 じ指導,助言を行う」とあるが,高校に設置する規定がないことに注目したい。 2. 本調査は,「高校理科教員の研修経験と指導方法に関する調査」として実施した。なお,東北大学大学院教育学研 究科教育ネットワークセンタープロジェクト研究経費「教師のライフコースにおける職能成長と研修の意義に関す ― ― 246 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 64 集・第 2 号(2016 年) る調査研究―東北大学教育指導者講座受講者の追跡調査を通して―」 (研究代表:清水禎文)の助成を得て実施して いる。 【引用文献】 池田和正(2013).高校教員の「職能発達」と勤務経験に関する研究,東北大学大学院教育学研究科修士論文(未公刊) 池田和正・有本昌弘(2014).高校教員の担当教科の違いによる指導方法の特徴―PISA を背景にした「学びの学習力」 に注目して―,日本教科教育学会誌,37 ⑵:1-13 岩下新太郎(1984).教育指導行政の研究,第一法規. 研究代表 工藤文三(2011).高等学校における学習の評価の実態把握と改善に関する研究(研究成果報告書),国立教 育政策研究所 島田希(2009).教師の学習と成長に関する研究動向と課題,信州大学教育学部附属教育実践総合センター紀要「教育 実践研究」,No10:11-20 清水禎文・柴田聡史・高橋文平・大桃敏行(2008).高校教員の研修希望と大学の役割―宮城県高校教員意識調査の分析, 東北大学大学院教育学研究科教育ネットワークセンター年報,8:1-12. 清水禎文・丸山和昭・柴山直・足立佳奈・鈴木学(2009).高校教員の研修意識に関する実証的研究,日本教育学会第 68 回大会研究発表要項,402-403. 清水禎文(2012).ジェネリック・スキル論の展開とその政策的背景,東北大学大学院教育学研究科研究年報,61 ⑴: 275-287. 清水禎文・池田和正(2015).高校教員の研修経験と指導方法に関する調査研究,東北大学大学院教育学研究科教育ネッ トワークセンター年報,15:15-28. 牧昌見(1982).教員研修の総合的研究,ぎょうせい . 丸山和昭(2011).高校教員の専門職性と研修意識―東北地域における質問紙調査の分析から―,福島大学総合教育研 究センター紀要,11:37-44. 文部科学省(2014).中央教育審議会答申「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育,大学教育, 大学入学者選抜の一体的改革について」,文部科学省 山﨑準二(2000).教師のライフコース研究―その研究的特徴― 静岡大学教育学部研究報告人文・社会科学篇,50: 201-228. Black, P., & Wiliam, D.(1998)Inside the black box. London, King’s College School of Education. Fenwick, T & J. Parsons(2009).The art of evaluation: a resource for educators and trainers, Toronto. Hautamaki, A., Hautamaki, J. and Kupiainen, S.(2010). Assessment in schools –Learning to learn. In: Penelope Peterson, Eva Baker, Barry McGaw,(Eds),International Encyclopedia of Education. volume 3, 268-272. Oxford: Elsevier OECD(2005).Formative Assessment Improving learning in secondary classrooms. OECD(有本昌弘(監訳) ・小田勝 己・小田玲子・多々納誠子(訳)形成的アセスメントと学力 人格形成のための対話的学習をめざして 明石書店 2008) Rychen, D, S., & L, H.Salganik.(2003). Key Competencies for a Successful Life and a Well-Functioning Society. OECD.(D.S. ライチェン・R.H. サルガニク.立田慶裕(監訳) ・今西幸蔵・岩崎久美子・猿田祐輔・名取一好・野村和・ 平沢安正(訳)キー・コンピテンシー 国際標準の学力を目指して 明石書店 2006) ― ― 247 授業の指導方法に最も大きな影響を受けた研修先の特徴 Shepard. Lorrie A.,(2000).The Role of Assessment in a Learning Culture: Educational Researcher, 29 ⑺:4-14 ― ― 248 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 64 集・第 2 号(2016 年) What Kinds of Experiences Enhance Teaching Strategies of Upper Secondary School Teachers?: Focusing on OJT Programs In-service Training Institutes (Educational Centers) and Subject Research Associations Kazumasa IKEDA (Graduate Student, Graduate School of Education, Tohoku University) The purpose of this article is to clarify the relationship between the teaching strategies of upper secondary school teachers and their learning experiences in the on-the-Job-Training programs. The author made an investigation about through what kinds of experiences they have most enhanced their teaching strategies, in what kinds of learning opportunities or sites they learned them and what kinds of contents, knowledge and skills they learned in such opportunities or sites. In order to achieve this research question, the author conducted a questionnaire for upper secondary school teachers who teach sciences in M Prefecture in Japan. Main findings of this investigation are following. Firstly, a group that feels themselves most influenced by OJT programs provided by the in-service training institutes tends to answer that they are influenced mainly in their teaching strategies. Another group feels that they are most influenced by Subject Research Associations (Science), in which they learned mainly the knowhow of scientific experiments. Secondly, a group, which has more than 20 years carrier, tends to hope short-term learning programs provided by universities in order to enhance their proficiencies as science teachers. Another group, which has less than 20 years carrier, tends to hope programs by the in-service training institutes in order to acquire their teaching strategies. Although we find several different dispositions in science teachers, we might say that they share a common disposition; they hope to acquire more content knowledge and more expertise like scientific experiment skills, and they are not necessarily concerned with formative assessment of learners. Today, in Japan, a national guideline of curriculum is changing from a ’education of knowledge storage’ into a ‘education of knowledge application’. If we try to change our instruction and learning methods in upper secondary schools, we should revise the mindset of teachers and improve the existing in-service training programs. KEYWORDS:Teacher training program, Upper secondary school teachers, Educational method, Education policy, Educational assessment ― ― 249
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