皮膚感覚を持つ航空宇宙機用先進複合材構造の研究開発 学術研究と

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基盤科学研究系
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武田 展雄教授
物質系専攻、先端エネルギー工学専攻、複雑理工学専攻の 3つ
の専攻からなり、未来科学の基盤となる新分野をつくりだします。
また新しい基盤科学を担う人材を育成します。
先端エネルギー工学専攻
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皮膚感覚を持つ航空宇宙機用先進複合材構造の
研究開発 ─ 学術研究と応用研究の融合を目指して
軽
量構造部材としての炭素繊維強化
されているとは言えません。CFRPを多用
ング直径52ミクロン)
、および、CFRP積層
プラスチック基複合材料(以下CFRP) した航空機を長期間にわたって安全に運
構造への埋め込みと衝撃損傷同定技術
は、金属材料に対して密度あたりの強度・ 航していくためには、複合材構造の健全
は高く評価されています。
まさに、人間の皮
剛性に優れており、航空宇宙機の部材を
性を詳細に把握し、異常が認められた際
膚感覚を次世代航空機に与えようとする
CFRPに換えることで、機体の軽量化が
には、
直ちに修理、
交換が可能な体制を用
技術開発です(図2)
。
現在、エアバス社と
図れます。
軽量化による恩恵は、燃費の改
意する必要があります。
も本格的な適用を前提とした応用化研究
善や積載重量の増加に伴う輸送効率の
このような状況の中で、
航空機運用中の
を実施しています。
向上だけではありません。
現在、航空機エ
構造システムに発生する損傷の種類、位
さらに、この埋込みを前提とした光ファ
ンジンの排気ガスが環境に与える影響も
置、
サイズを同定し、
損傷発生・進展メカニ
イバセンサシステムは、大型化、複雑化し、
問題になっており、軽量化によって排気ガ
ズムとセンサ情報の相関性から、構造健
製 造・加 工 上の問 題 点が 生じている
スと環境への影響の低減も見込めます。 全性を地上点検時、あるいはリアルタイム
CFRP構造の製造・加工中のモニタリング
このため、最新のBoeing 787やAirbus
で自己検知・診断する、
構造ヘルスモニタリ
用としても使用できます。
筆者らは世界に
A350では、構造重量の各々約50%、52%
ング(Structural Health Monitoring,
先駆け、大型複雑CFRP構造の成形中か
をCFRPが占めています。
SHM)システム構築の重要性が認識され
ら、加工、組立、運用にわたるライフサイク
日本は現在、炭素繊維の世界生産の約
ています。
筆者らは、光ファイバセンサ利用
ルモニタリング技術を提案して、その実証
7割を占めており、CFRPの航空宇宙分野
世界的にも優位にあ
SHM技術を複合材構造に適用すべく、 に取り組んでいます。
への適用を目指した、
設計・成形・製造研究
10年以上に渡り、経済産業省の支援のも
る日本における学術的知見を活用し、従
開発の技術力という視点からは、日本が
と、航空宇宙機製造メーカーとの産官学
来の生産技術から脱皮した「複合材構造
国際的にも一歩リードしています。
たとえ
共同研究を進めています。
とくに、複合材
の知的生産科学」は、強固な学術研究に
ば、
約40年ぶりの国産民間旅客機 MRJへ
中埋め込み用の世界で初めての、通常の
基礎を置き、欧米を凌ぐ国際競争力のあ
のCFRP構 造 の 適 用、Boeing 787用
光ファイバ直径の1/3の細径光ファイバと
る産官学研究開発体制を構築するために
CFRP構造の開発・製造の主要な部分(全
そのファイバ・ブラッグ・グレーティング
貢献できると考えています。
体の35%)
を担当しています。
(FBG)
センサの開発
しかし、CFRPの詳細な破壊過程、耐 (図1、クラッド直径
久性、
耐衝撃性等については、
十分に解明
40ミクロン、コーティ
図1:複合材料積層板中へのFBGセンサの埋込み
,
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図2:皮膚感覚をもつ次世代スマート航空機複合材構造システム