平成 28 年度 前期定期試験 分子生物学 (平成 28 年 8 月 1 日、担当:荒牧弘範) 学番 氏名 得点 問1. DNA から mRNA への転写を行う RNA ポリメラーゼはどのようにして RNA を合成する酵素か述べよ。また、真核生物に 存在する 3 種類(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ)の RNA ポリメラーゼの細胞内局在、転写産物の種類における差異について、表にせよ。 RNA ポリメラーゼとは、遺伝子 DNA を鋳型に、RNA の素となる 4 つのヌクレオシド(A:アデノシン, U:ウリジン, G:グアノシン, C:シチジン)を重 合し mRNA を合成する酵素である。 細胞内局在 転写産物 Ⅰ 核小体 rRNA 前駆体 (5.8S, 15S, 28S) Ⅱ 核質 hnRNA (mRNA 前駆体)、snRNA Ⅲ 核質 tRNA、5S rRNA、snRNA の一部 問2. クロマチンリモデリングをヒストン修飾の変化を例に説明しなさい。 プロモーターやエンハンサーに結合する転写因子には、ヒストンアセチル化酵素(コアクチベータ―)が結合して、ヒストンのアミノ基をアセチル 化する。アセチル化したアミノ基は、塩基性が低下して DNA との結合が弱くなり、ヒストンと DNA の解離が周囲に向かって進行し、さらに周囲の ヌクレオソームでヒストンのアセチル化が進行して、やがてプロモーターが露出して、RNA ポリメラーゼが結合しやすくなります。逆に、発現を抑 制する場合は、ヒストン脱アセチル化酵素(コリプレッサー)が働いてアセチル基を外して、ヌクレオソーム構造を戻します。 問3. mRNA からタンパク質への翻訳過程におけるペプチジル転移反応とトランスロケーションを説明しなさい。 ペプチジル転移反応とは、mRNA からタンパク質への翻訳で、リボソームのペプチジルトランスフェラーゼにより、P 部位のペプチドが結合した ペプチジル tRNA から A 部位の次のアミノアシルtRNA へとペプチドが転移し、タンパク合成が進行する過程である。リボソームの大サブユニット にペプチヂル基転移酵素活性がある。 トランスロケーションとは、 A 部位のペプチジル-tRNA が mRNA ごと P 部位に移動することである。 問4. 真核生物において、ひとつの転写単位から複数のタンパク質が生成される。その理由を記しなさい。 複数あるエキソンからある種のものが選ばれ,別々の mRNA ができる選択的スプライシングという機構がタンパク質の多様性を生みだしてい る。選択的スプライシングとは、DNA からの転写過程において特定のエキソンをとばしてスプライシングを行うことである。すなわち、エキソン部 分が前後のイントロンと一緒になり,1 つのイントロンとして働くと,そのエキソンを欠いたタンパク質ができる.このようにして,1 つの転写単位か ら複数のタンパク質が生成される. 問5. インデューサー(inducer)とコリプレッサー(corepressor)をひとつずつ挙げ、リプレッサーとの結合による転写制御について説 明しなさい。 インデューサーとしてアロラクトース、コリプレッサーとしてトリプトファンがあげられる。 アロラクトースは Lac りプレッサーと結合して、リプレッサーを不活化してオペレーターから遊離させ、Lac オペロンが転写できるようにする。トリプ トファンは Trp りプレッサーと結合して、リプレッサーを活性化してオペレーターに結合できるようにし、Trp オペロンが転写できなくなるようにす る。 裏面も使用可
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