平成 15 年度牧野組合調査 調査結果の概要 阿蘇の草原は千年の昔から人の手によって維持されてきました。 現在、その役割を担っている阿蘇郡内の牧野組合を対象に、牧野利用 や組合の状況、今後の維持管理や支援活動に対するご意向などをお聞き するアンケート調査を行いました。以下、調査結果の概要を報告いたし ます。 環境省自然保護局九州地区自然保護事務所 1.牧野と牧野組合の状況−ここ5年間の変化 ・ 平成 10 年から5年間で、牧野面積は微減。 ・ 牧草地は8%減少し、野草地は微増。 ・ 平成 10 年から5年間で放牧頭数は約 1,800 頭 (17%)減少。預託放牧頭数は全体の 16%。 ◇牧野面積の変化 ◇放牧頭数の変化 30,000 25,000 12,000 1,953 1,953 5,365 4,911 20,000 10,000 林地 牧草地 野草地 (ha) 15,000 頭 ︶ 22,128 ︵ 総面積 22,434 10,000 10,711 平成10年 平成15年 8,930 8,000 6,000 3,335 4,000 1,952 1,430 2,000 15,264 15,116 0 5,000 放牧頭数 子牛頭数 預託頭数 0 平成10年 平成15年 ・ 平成 10 年から5年間で入会権者は5%減少し、 有畜農家は 36%減少。 ・ 組合単位でみても有畜農家が大幅減の組合が 多く、現状維持・増加のところは少なくなって います。 組合単位でみた 有畜農家戸数増減率 (H10∼H15・%) ◇入会権者戸数、農家数、有畜農家数の変化 12,000 10,268 平成10年 平成15年 9,760 10,000 ︵ 6,865 8,000 6,446 ︶ 戸 6,000 数 4,000 1,846 1,183 2,000 0 入会権者戸数 農家数 有畜農家数 注)平成 10 年の数値は(財)阿蘇グリーンストック調査による。 ★ここ5年間で牧野の面積はさほど減っていませんが、放牧頭数は大幅に減っています。その背景とし て、特に有畜農家戸数の減少が目立ちます。有畜農家では高齢化が進み、後継者がいる農家も限られる ことから、今後、どう畜産業を受け継いでいくのか、草原再生の観点からみても大きな課題です。 2.牧野の維持管理に対する意向 ・ 維持管理の継続意向は高いが、規模を縮小せざ るを得ないとする牧野組合も2割弱。 ◇牧野の維持管理に向けた意向 10.6 5.3 1.2 続けたいし、拡大で きる 続けたいし、現状維 持できる 続けたいが、同じ規 模では出来ない まだ続けられるが、 やめたい 続けられないし、や りたくない 不明 1.8 18.8 ◇牧野の利用状況(面積) 野焼きは行っている ◇牧野を利用していない理由 野焼きのみ行っている場所がある牧野 放置してある場所がある牧野 0 20 n=52 n=26 40 63.5 57.7 50.0 61.5 地形的に使いにくい 有畜農家が少なくなっている 36.5 34.6 23.1 46.2 牛がいない 高齢化で作業が困難になっている 5.8 野焼きをしていない 管理道がなく使いにくい 採草しても草の需要がない その他 1.9 3.8 3.8 80 非利用牧野 がある牧野 組合の面積 放置している 利用している 1 8 16 6 87 7 19 1 9.7 (N=71) 38.4 3.7 非利用牧野 がない牧野 組合の面積 (%) 90 3 4 48.2 (%) (N=75) 0 2000 4000 6000 8000 10000 総面積: 18 ,7 2 8h a (ha) 注)牧野の利用状況に未回答であった20牧野組 合、3,459haを除く 42.3 13.5 19.2 15.4 11.5 11.5 11.5 水場がない 牧野内の利用権の関係から (%) 60 不明 ・ 利用放棄の理由で大きいのは「地形条件」と「有 畜農家の減少」。 野焼きも行 っ て いな い土 地 があ る 野焼きだ け 行 って いる 土 地 があ る ◇利用していない牧野の状況 (%) 45.9 50.0 40.0 n=170 30.6 30.0 15.3 20.0 12.4 10.0 0.0 利 用 し てな い 土 地 はな い 62.3 n=170 ・ 「利用していない牧野」がある組合は4割強。 ・ 「利用していない牧野」の面積は全体の1割強。 ・ 有畜農家が少ない組合、放牧頭数の少ない組合 では、 「維持管理の継続が困難」な傾向がみられ ます。 15.4 ◇放牧頭数別 非利用地と牧野維持管理についての今後の意向 ・ 非利用牧野がある組合の半数以上は、条件が整 えば放牧や採草に利用したいとしていますが、 3割は再利用が難しい状況にあります。 ◇非利用牧野の利用意向 0 10 20 30 42.3 放牧に利用したい 採草に利用したい n=71 20% 合計 35.9 0頭 7.4 22.2 1∼10頭 26∼50頭 29.6 14.1 0% 11∼25頭 28.2 利用したいとは思わない 不明 (%) 40 50 非利用地はなく同規模以上に維持可 再利用はできないが維持は可能 維持管理作業はもうやめたい 不明 51∼100頭 101頭以上 非利用地の再利用を含めた維持可能 続けたいが今と同規模では出来ない その他 40% 14.7 18.5 33.3 14.3 37.0 11.1 51.3 38.9 44.4 60% 17.1 22.2 18.8 100% 8.2 2.9 2.4 18.5 7.4 19.0 3.7 14.3 14.3 18.5 25.9 12.8 11.1 80% 19.4 22.2 12.8 15.4 4.8 7.4 5.1 2.6 19.4 8.3 2.8 11.1 16.7 5.6 3.輪地切り省力化技術への関心 ・ 牛を利用した「モーモー輪地切り」(※)は6 割の牧野組合の方に知られており、認知度が高 まっています。 ◇輪地切り省力化技術の認知度 詳細まで知っている 全く知らない 0% ◇輪地切り省力化技術への関心 ある程度知っている 不明 20% ・ 関心が高いのは「管理道を兼ねた恒久輪地」 (6割)や「グリーンベルト防火帯」 (5割)。 40% 余り知らない 非常に関心がある 0% 60% 80% 小規模点在 樹林地除去 16.5 43.5 17.1 14.1 24.7 13.5 32.9 20% 関心はない 40% 不明 60% 80% 100% 100% 8.8 モーモー輪地切り モーモー 輪地切り 関心がある 12.4 22.4 2.9 ※ 輪地切りの負担を軽減するため、輪地切りの予定地を電 気牧柵で囲い、その中に牛を放牧させて草を食い詰めさ せることによって輪地を作成するもの。 小規模点在樹林地 除去 24.1 41.8 25.3 27.6 38.8 31.2 2.4 9.4 0.6 ヤギによる輪地切り 11.2 1.2 グリーンベルト造成 14.1 管理道を兼ねた 恒久輪地整備 28.8 58.8 25.3 24.7 35.9 27.1 防火帯を兼ねた 8.2 樹林地造成 29.4 60.6 ウマによる輪地切り 22.4 18.8 31.7 27.6 43.6 20.6 4.牧野維持支援活動への関心 ・ 牧野組合では、特に「野焼き」 「輪地切り」 「牧 柵設置・補修」に人手不足を感じています。 ・ 野焼き・輪地切り支援ボランティア活動はよく 知られてきており、受け入れ意向のある組合は 半数近くとなっています。 ◇人手不足で困っている作業 0.0 ◇野焼きボランティア活動の認知度 20.0 (%) 60.0 40.0 聞いたことはある 知らない 不明 50.6 野焼き 44.1 45.9 輪地切り 37.1 牧柵設置・補修 24.7 管理道の補修や草刈り 採草作業 15.9 飲水施設の維持 9.4 8.8 植林地の間伐・下草刈り 牛の見回り 10.6 11.2 不明 10.0 1.2 今後是非とも受け入れたい 受け入れたいとは思わない 32.9 37.7 14.1 4.7 1.2 とくに困っていない 11.2 ◇野焼きボランティアの受け入れ意向 7.6 ダニ駆除 43.5 既に受け入れている 受け入れを検討したい 不明 21.8 16.5 雑草駆除 その他 良く知っている n=170 ・ 野焼き・輪地切り以外の作業でのボランティア については、35%の牧野組合で受け入れ意向が あります。 ◇野焼き・輪地切り以外の作業でのボランティ ア受け入れ意向 是非受け入れたい 受け入れを検討したい 受け入れたいとは思わない ボランティアに出きることはない 不明 ★人手不足を補うため、輪地切り省力化への関 心は高く、牧野維持支援活動についても一定の 受け入れ意向が確認されました。今後さらに、 技術の確立やしくみづくりを進めることが求め られています。 8.2 26.5 40.0 18.2 7.1 5.草の活用について ・ 採草は、草原環境の維持に大きな役割を果たし てきましたが、現在、採草している牧野組合は 約半数までに減少しました。 ◇野草の利用内訳(重量比) 販売用 141t 8.5% 堆肥 240t 家畜飼料 14.5% 66.8% ◇採草の実施状況 15組合 不明 8.8% 採草して いる 48.2% 採草して いない 42.9% 73組合 ・ 採草された野草は、約7割が家畜飼料として自 家利用、約1割が販売されています。 敷料 10.2% 82組合 1,106t 169t 6.畜産振興策への要望 ・ 行政施策として、子牛価格の安定が強く望まれ ています。 ◇重要と思う畜産振興施策 0.0 n=170 20.0 40.0 60.0 42.4 後継者対策 0% 17.6 周年放牧等技術指導 16.5 阿蘇の畜産PR 肉用牛の改良 12.4 地産地消 11.8 10.0 観光による畜産振興 不明 今のまま継続すべき 制度適用を柔軟にして継続すべき 他の支援措置の方が良い その他 不明 46.5 補助事業の強化 その他 ◇助成の有無別 中山間地域等直接支払制度への意向 75.9 子牛価格の安定 畜産団地整備 (%) 80.0 ・ 中山間地域等直接支払い制度は、継続を望む声 が強い。 6.5 0.6 合計 (n=170) 「受けている」組合 (n=107) 「受けていない」組合 (n=49) 20% 40% 50.6 60% 28.8 58.9 44.9 80% 7.6 12.4 0.6 34.6 24.5 100% 0.9 5.6 0.0 14.3 14.3 2.0 10.6 ★阿蘇の草原の維持・再生には畜産業の振興が不可欠ですが、そのためにも国民的な合意形成を進め、 草の活用や都市住民による支援活動と連携するなど、幅広い施策が必要と考えられます。 <調査概要> ●調査主体 環境省自然保護局九州地区自然保護事務所 熊本県阿蘇地域振興局農業振興課 ●調査方法 町村役場を通して牧野組合にアンケート調査票を 配布・回収 ●調査時期 平成 15 年 12 月∼平成 16 年2月 ●回収状況 ◇ 実質的な調査対象牧野組合数:171 牧野組合 ◇ 回収数 :160 牧野組合 ◇ 回収率 :93.6% ◇ 未回収組合のうち町村へのヒアリングにより、牧 野面積等基礎情報が把握できた組合 : 10 牧野組合 ◇ 集計対象組合数 :170 牧野組合 ●調査の詳細は阿蘇草原再生ホ ームページをご覧下さい。 http://www.aso-sougen.com ●調査に関するお問い合わせ先 環境省自然環境局 九州地区自然保護事務所 〒869-2225 熊本県阿蘇郡阿蘇町大字黒川 1180 TEL:0967-34-0254 FAX:0967-34-2082
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