発 注 仕 様 書 1.委託名:平成27年度地方創生加速化交付金事業 阿蘇サイクルツーリズム創出業務委託 2.場 所:熊本県阿蘇市 3.背 景: 阿蘇市は、九州のほぼ中央に位置し、阿蘇五岳を中心とする世界最大級のカルデラや 広大な草原を有し、平坦地の阿蘇谷と、傾斜地の外輪地域で形成されています。また、 阿蘇くじゅう国立公園に指定されており、特有な希少植物が自生するなど、自然資源が 大変豊富です。さらに、今なお続く活発な火山活動からは、地球の鼓動を直に体感する ことができる特異的な地域です。 これまでの阿蘇市における観光的な経緯としては、平成17年の町村合併を機に、阿 蘇市全体を屋根のない博物館にたとえたエコミュージアム構想を「ASO田園空間博物 館」としてスタートさせ、現在はJR阿蘇駅前に隣接する道の駅阿蘇を拠点として、地 域振興に取り組んでいます。平成25年秋から「然」と名付けた取組みをスタートしま した。「然」とは、豊かな自然を背景とした人々の暮らしの姿そのものが阿蘇の財産で あり、誇りであるという考えに立った市民活動です。阿蘇の恵みを包括するブランドと して、その認知度を広げています。 近隣町村との広域的な阿蘇地域のブランド化への推進にあっては、平成25年度に阿 蘇の草原の維持と持続的な農業システムが、国際連合食糧農業機関の「世界農業遺産」 に認定され、翌26年度には阿蘇カルデラ地形と人々の活動が地球科学的な評価を受け、 ユネスコプログラムである「世界ジオパークネットワーク」に加盟認定されました。ま た、人間の営みにより遺された資産として、阿蘇火山との共生と文化的景観をテーマに 「世界文化遺産」の登録に向けて挑戦しています。さらには県境を越え、大分県竹田市 や宮崎県高千穂町と「阿蘇くじゅう観光圏」という枠組みで、観光圏整備法に基づいた 認定を受け、国際競争力の高い魅力ある滞在交流型の観光地域づくりを進め、日本の顔 となるブランド観光地域を目指しています。 4.目 的: 平成28年4月、熊本地震の影響により、観光資源の崩壊や交通インフラの断絶など、 観光経済は危機的状況にあり、曳いては九州全体に風評被害をもたらしました。しかし、 これまでの活動・成果が実を結び、阿蘇くじゅう国立公園は日本政府の「明日の日本を 支える観光ビジョン」に基づき、世界水準の「ナショナルパーク」としてブランド化を 図る先行地域として、全国8ヶ所に選定されました。 今後は、熊本地震からの創造的復興を基本に、域内で磨き上げてきた様々な仕組みを さらにステップアップさせ、国内外から選好される国際競争力の高い魅力ある観光地域 を形成するため、地域の「ブランド」の確立を通じた日本の顔となる観光地域づくりと、 日本を代表するディスティネーションとしてのポジションを国内外で確立します。 阿蘇市全体をフィールドとし、その地形を活かした滞在コンテンツとして、サイクル ツーリズムの創出を提案します。理想像は、これまで取組みを推進してきた「阿蘇ユネ スコジオパーク」や「然」プロジェクトの活動をベースに置き、阿蘇の若者が輝き活躍 する場であり、ツーリストの滞在交流の場づくりに期待するものです。新たな仕組みの 構築にあたり、基礎的な調査を踏まえ、市場やターゲットの設定を行い、課題の抽出と 整理、検討します。受け皿は、官民連携によるプラットフォームとして DMO 組織化も 視野に入れ、地域の若者たちによるワークショップを開催し、その醸成を図ります。 阿蘇市におけるサイクルを活用した新たなムーブメント起こす観点から、これらの情 報を幅広く発信するプロモーション活動も必須です。ここでは、阿蘇サイクルツーリズ ムの紹介のための特設WEBサイトを構築し、阿蘇発情報を拡散します。また同時に、 九州各地はもとより、全国のサイクルファンに呼びかけるなど、愛好家や有識者の実体 験によるモニタリング実証をし、現場でのソフト・ハード面における課題整理など意見 徴収し、将来計画に反映します。これら情報素材として、動画によるアプローチを図る ため、阿蘇サイクルツーリズムの楽しみ方を紹介したPR-DVDを作成します。 そして、これら一連の取組みの中で、阿蘇サイクルツーリズムの創出に係る将来計画 を取りまとめ、具体的にアクションプランとしてロードマップ化します。例えば、目標 を東京オリンピック開催の2020年と捉え、それ以前と以後における持続的な観光地 域づくりの指南書として取り扱うものです。そこでは、ナショナルパークにふさわしい インバウンド環境にも配慮された、正に阿蘇の創造的復興を描きます。さらには、地域 と連携する大手自転車メーカーとの企業マッチングにより、双方にとってメリット性の 高いコンテンツへと進化していくことを希望します。 本事業は、内閣府の地方創生活性化交付金を活用するにあたり、定性的かつ定量的な 目標設定も必要なことから、「まち・ひと・しごと創生」の名のとおり、地域が特徴を 活かした自律的で持続的な社会を創生することを目指します。 5.内 容: 阿蘇ユネスコジオパークと然プロジェクトが融合した阿蘇サイクルツーリズム創出 1)基礎調査の実施 何をするにも新しい取組みを実践する前には調査が必要です。PDCAサイクルの 基盤づくりに基礎的な調査は必須です。例えば、阿蘇市における実態調査、先進地事 例収集、愛好家や有識者からの意見徴収、市場やターゲット設定などです。 2)課題整理と検討 上記の調査を踏まえ、挙げられた課題などを整理し、阿蘇市における適応範囲や改 善案の検討を進めます。ソフト面及びハード面に係る必要最低限の計画をまとめます。 3)拠点計画と検討 阿蘇市における拠点となるサイクルステーションをどう考えるか?基本的には、道 の駅阿蘇のような既存施設を活用することが効果的です。希望する各宿泊施設との連 携も必要です。域外からの来訪者からすれば、交通インフラとの連携も検討します。 4)プラットフォーム/DMO計画 阿蘇サイクルツーリズムの受け皿となる組織をどのようにつくり上げていくか? 既存の組織で対応するのか?あるいは新たに組織化も必要となるのか?ここでは、地 域の若者たちを巻き込んだ戦略的考え方に立って、地域ワークショップなどを開催し、 様々な意見を聴取し、理想の環境づくりを模索します。そこは、地域の若者たちが活 躍する場づくりであり、阿蘇市DMO構想への発展や地域経済の活性に広がります。 5)モデルコース設定 上記の拠点計画やワークショップを踏まえ、そのアウトプットの一部として、阿蘇 市におけるサイクルモデルコースの設定を進めます。拠点と拠点を結び、その間で地 域の人々との交流が芽生えるコースのラインナップです。ここで初めて、阿蘇ユネス コジオパークの地形(アップダウン)と然プロジェクトの人(もの)が活用されます。 提案されたコースは有識者の声も反映しながら、コースマップ作成へと進展します。 6)モニタリング調査 上記で出来上がったモデルコースのモニターツアー実証実験です。ある特定のサイ クリストを招聘した小規模なモニタリング調査にするのか?それとも、全国からサイ クリストを募集し、イベント的に開催するモニタリング調査にするのか?実施の手法 は問いません。参加者からの生の声を反映し、将来の阿蘇サイクルツーリズムに活か すことが重要です。この取組みが定例化していき、結果的にイベント化が図られるこ とも理想と考えます。 7)プロモーション活動 上記までの基盤が整ったうえで、新たなツーリズム開発の情報発信について、熊本 地震からの復興を象徴したプロモーション活動が必要です。特設WEBページの構築 は、既存する媒体を当面活用するなど、その後の維持管理費を極力抑えることを考慮 します。また、動画によるアプローチ戦略ツールとして、阿蘇サイクルツーリズムの イメージPVを作成し、情報発信に活用します。さらに、継続的な取組みとなること から、統一的なビジュアル設計も必要と判断します。なお、プレス広告は予算が掛か るため、ここではパブリシティ活用に留めておくことが妥当です。 8)将来計画の策定 阿蘇市での実証実験を実施した後は、地域においてやる気の醸成が起こり、地域啓 発も進んでいくものと想定されます。地域の若者とともに、そのサイクルは大きなサ イクルへと変革していくことを望みます。そこで、来る東京オリンピックの日本開催 を視野に入れ、それまでの期間における全5段階により計画性を盛り込みます。第1 フェーズは阿蘇市内、第2フェーズは市域を越え阿蘇郡域へ、第3フェーズは県境を 越え阿蘇くじゅう観光圏へ、第4フェーズは当該観光圏を越え、観光庁の九州広域観 光周遊ルート形成計画と連携を図り、大分県の「豊の国千年ロマン観光圏」や長崎県 の「島原半島ユネスコジオパーク」へ、第5フェーズは九州を越え香川県の「香川せ とうちアート観光圏」や高知県の「室戸ユネスコジオパーク」、島根県の「隠岐ユネ スコジオパーク」へと展開を図ります。そして、全国的な活動へと導き、国や県にも 関与してもらえるような大きな取組みへと進化していきます。 9)インバウンド対応 上記の計画と並行して進めていかねばならない取組みがインバウンド環境づくり です。国の施策とも連動した取組み方針を大きく打ち出します。そうすれば、阿蘇サ イクルツーリズムが国内外から来訪者を集客する新しい滞在プログラムとなります。 ここでは、受け皿環境や情報発信について、多言語化は必須であるため、その計画を 予め整理しておきます。多言語化の推進計画と各種機能の充実化を図る計画です。当 該プログラムの確立に向けては、外国人旅行者も含めた中でリスクマネジメント(安 全管理)体制の検討と構築をしていくことも必要です。ここでは、環境省の国立公園 満喫プロジェクトとの連携は必須と考えます。 10)企業マッチング 阿蘇サイクルツーリズムは、単に地域の熱意だけでは動かない取組みと悟ります。 外部への情報発信や専門的見地の集積、民間企業によるノウハウやアイデアは計り知 れません。そのような意図においても、自転車メーカーなど大手企業とのマッチング は必須です。また、本プログラムを継続的に実施していくうえでもスポンサー的意味 合いは欠かせません。補足ですが、地域によるサイクリングチームを立ち上げ、話題 性を盛り込むことも戦略の手法として挙げられます。 6.履行期間: 契約締結の日から平成29年3月15日まで 7.成 果 品: 1)コースマップ(自由仕様): 5,000部 2)PR-DVD(コピー版): 50部 3)報告書/紙媒体(A4判サイズ): 5部 4)CD-ROMまたはDVD-ROM: 2部 8.注意事項等: 1)本業務を履行するうえで知り得た情報等については、第三者に開示または漏洩し ないこと。 2)本業務の成果物となる報告書および二次的著作物については、阿蘇市(所管:経 済部観光課)に帰属するものとする。 3)本業務の実施にあたっては、関係する法令および諸規程を遵守すること。 4)本仕様書に記載のない事項であって、本業務の遂行に必要と認められる事項が発 生した場合には、監督職員に速やかに協議し、その指示に従うこと。 5)情報媒体の多言語化の場合は、その翻訳の作業過程において、別途第三者による チェック機能を付加し、より精度の高い、そして信頼性のある情報を提供する。 6)限られた期間内での業務であるため、既存の資料映像の活用等については可能と するが、著作権等の確認を得たうえで、使用の許可を認めるものとする。 9.特記事項等: 1)阿蘇ユネスコジオパーク「阿蘇火山の大地と人間生活」 阿蘇ユネスコジオパークの象徴である世界有数の巨大カルデラ。約27万年前以降 の活発な火山活動と、約9万年前の大噴火によって形成された独特の地形や地層、噴 火がもたらした日本各地への影響など、ジオサイトを通じて理解していきます。そこ は数十万年の時空を超える感動体験です。 http://www.aso-geopark.jp 2)然(zen)「人の力を信じる」 阿蘇の「振興と観光」の市民ブランド。雄大な自然、肥沃な大地、清冽な水という 環境風土を示し、そこから得られる産物を示し、それを育む人びとの技能を示す。す べてを貫くものは、この地ならではの独自性であり豊饒性。その価値を「しかるべき、 ありのまま」を意味するこの語に託します。 http://www.aso-zen.com 3)観光庁/阿蘇くじゅう観光圏「阿蘇カルデラ ~命きらめく草原の王冠~」 観光圏とは、自然・歴史・文化等において密接な関係のある観光地を一体とした区 域であって、区域内の関係者が連携し、地域の幅広い観光資源を活用して、観光客が 滞在・周遊できる魅力ある観光地域づくりを促進するものです。観光圏整備法に基づ き、全国13地域が認定されています。 http://www.aso-kuju.jp 4)環境省/国立公園満喫プロジェクト「阿蘇くじゅう国立公園」 政府が平成28年3月30日に取りまとめた「明日の日本を支える観光ビジョン」 に基づき、日本の国立公園を世界水準の「ナショナルパーク」としてブランド化を図 ることを目標に、全国8ヶ所の国立公園を選定し、訪日外国人にとって魅力ある取組 みを集中的、計画的に実施されます。 http://www.env.go.jp/press/102826.html
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