別紙 諮問第969号 答 1 申 審査会の結論 「配水小管布設替工事に係る施工代価表に計上されている機械運転費の内訳、各歩掛 の数量及び単価が確認できるものの全て」及び「配水小管布設替及び工業用水道配水 管撤去工事に関する施工代価表に計上されている機械運転費の内訳、各歩掛の数量及 び単価が確認できるものの全て」について、不存在を理由として非開示とした決定は、 妥当である。 2 審査請求の内容 (1)審査請求の趣旨 本件審査請求の趣旨は、東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号。以下「条 例」という。)に基づき、審査請求人が行った「工事名:(1)○○市○○番地先から 同市○○番地先間配水小管布設替工事、(2)○○区○○丁目○○番地先から同区○ ○丁目○○番地先間配水小管布設替及び工業用水道配水管撤去工事 上記2つの工 事の施工代価表に計上されている、機械運転費の内訳、各歩掛の数量、単価が確認で きるものの全て。 (例:小型バックホウ運転費、管据付費(機械)etc.)」の開示請求 (以下「本件開示請求」という。)に対し、東京都水道局長が平成27年7月7日付け で行った非開示決定について、その取消しを求めるというものである。 (2)審査請求の理由 審査請求書及び意見書における審査請求人の主張を要約すると、以下のとおりであ る。 ア 東京都水道局が発注した公共工事の金入り設計書に関する資料の開示請求を行っ た。資料名は「施工代価表」である。担当者の説明によると、当該資料は、システ ム内部にあり作成することは可能だが、現時点で文書として作成していないことか - 1 - ら、決定通知書では文書不存在の扱いとなっている。しかしながら、当該資料は、 出力して紙等の媒体での作成が可能なものである。 イ 情報公開条例によると「公文書は実施機関の職員が職務上作成し」とある。請 求資料は、予定価格を算出する際に職員が積算を行うことで作成されたもので、 公文書に該当する。また同条例には「当該実施機関の職員が組織的に用いるもの として当該実施機関が保有しているもの」とあるが、公共工事は東京都として発 注されているため、作成する時には個人の職員かもしれないが、それを組織的に 用いており保有しているのは実施機関である。 ウ 名称は異なるが工事の予定価格の算出根拠となる資料について、同じ情報公開 条例で運用が行われているにも関わらず、東京都で開示請求を行うことで作成し、 開示が行われている局もある。文書として作成できるにも関わらず、現時点で作 成していないのは実施機関の都合によるものだと考える。 公共工事として発注が行われている工事の予定価格算出根拠となるものは、全 て文書として作成するべきものであり、例えば情報公開法が適用されている国土 交通省でも、公共工事の予定価格の算出根拠となるものは全て開示が行われてい る。 エ 請求資料は、公共工事の予定価格を算出するために積み上げられている項目で 費用(単価)を知るために必要なもので、それを開示しないということは、東京 都の行政として、公共工事をどのような金額で発注しているかを示すものを開示 しないことと同じ意味になる。 情報公開条例の第一条にある「都政に関し都民に説明する責務を全うするよう にし、都民の理解と批判の下に公正で透明な行政を推進し、都民による都政への 参加を進めるのに資すること」という目的が果たされていない。 オ 理由説明書には、2層目以下の計算過程は1層目に計算結果を反映した段階で 当該データは削除されてしまうとある。しかし、実際にデータとして存在してい ることが確認できている。また以前、既に発注及び契約が完了している工事案件 - 2 - に対し、電話にて1層目に記載されている施工単価金額の算出根拠(内訳)を口頭 で確認したことがあるが、この時はシステムを確認した上で、2層目にて使用さ れている材料単価の金額の説明が行われた。 1層目に単価を反映した時点でデータが削除されるのであれば、担当者が答え られるはずがない。 カ 3 以上のことから、公文書不存在の決定は誤りだと考える。 審査請求に対する実施機関の説明要旨 理由説明書及び口頭による説明における実施機関の主張を要約すると、以下のとおり である。 (1)本件開示請求に係る工事について 本件開示請求に係る工事は、(1)○○市○○番地先から同市○○番地先間配水 小管布設替工事、(2)○○区○○丁目○○番地先から同区○○丁目○○番地先間 配水小管布設替及び工業用水道配水管撤去工事(以下「本件工事」という。)であ り、いずれも実施機関が発注したものである。 本件工事は、道路下に埋設されている水道管(口径200㎜から75㎜まで、計約900m) について、水道管埋設位置に沿って道路を掘削し新しい水道管(耐震継手管)に取 り換える工事及び道路下に埋設されている老朽化した水道管(口径350mmから75㎜ま で、計約2,140m)について、水道管埋設位置に沿って道路を掘削し新しい水道管(耐 震継手管)に取り替えるとともに、不要となった工業用水道管(口径200㎜、約300 m)を撤去する工事である。 (2)工事系システムについて 工事系システムとは、水道工事の請負費の積算業務をシステム化したものであり、 実施機関の積算基準及び設計単価表に基づき構築されている。システムへの入力内 容は工事設計書に反映されるが、その構成は以下のとおりである。 ア 総括書及び工種別総括書 - 3 - 総括書及び工種別総括書とは、工事価格に消費税等相当額を加算して、請負費 を記載したものである。工事価格の内訳として「管路工」や「舗装工」などの最 上位の工種の合計金額及び諸経費が記載されている。 イ 内訳書 内訳書とは、総括書に記載された「管路工」などの工種の内訳、即ち「管路掘 削工」や「埋戻工」等の工種を計上し、当該工種に係る施工数量とそれらを足し 上げた合計額を記載したものである。 ウ 内訳明細書 内訳明細書とは、内訳書に記載された「管路掘削工」などの工種の内訳、即ち「バッ クホウ掘削積込み費(0.45㎥)」等の工種を計上し、当該工種に係る単価及び施工数 量とそれらを足し上げた合計額を記載したものである。 エ 施工代価表 施工代価表とは、内訳明細書に計上する工種の単価が設計単価表に設定されてい ない場合に、積算基準に記載された計算式に従い算出した当該単価の内訳を記載し たものである。 「バックホウ掘削積込み費」という工費を例にあげると、施工代価表には「機械 運転費」、 「誘導する世話役」、 「作業員」の経費が記載される。これらの経費のうち、 世話役と作業員の単価は設計単価表に設定されているが、機械運転費の単価につい ては、設計単価表に設定がなく、「軽油」、「運転手」、「機械損料」の経費の計算結 果が計上されることになるため、2層目以下の計算過程が存在することになる。し かしながら、2層目以下の計算過程は工事系システムに保存されないことから、施 工代価表として記録されない。 これは、当該計算過程で用いられる計算式は全て積算基準に記載されており、各 単価は設計単価表から直接又は積算基準と設計単価表を用いた計算により導くこと ができるため、必ずしも全ての計算過程を保存する必要はないとの考えに基づいて いる。 なお、実施機関では、平成28年度以降に積算を行う工事案件について、2層目以 - 4 - 下を含む全ての計算過程も施工代価表として作成・保存されるよう、工事系システ ムの改修を予定している。 (3)本件開示請求に係る公文書の不存在について 本件開示請求は「(1)○○市○○番地先から同市○○番地先間配水小管布設替工 事、(2)○○区○○丁目○○番地先から同区○○丁目○○番地先間配水小管布設替 及び工業用水道配水管撤去工事に関し、施工代価表に計上されている機械運転費の内 訳、各歩掛の数量及び単価が確認できるものの全て」を求めるものである。 実施機関が本件開示請求に係る公文書の存否を確認したところ、本件工事において は工事系システムを利用して工事設計書を作成したことから、「施工代価表に計上さ れている機械運転費の内訳、各歩掛の数量及び単価が確認できるもの」には工事系シ ステムを利用した施工代価表作成における2層目以下の計算過程が該当するが、計算 結果を単価として反映した段階で当該データは削除されてしまうため、本件開示請求 に係る公文書は存在しないことを確認した。 さらに、実施機関では、施工代価表に計上されている機械運転費の内訳、各歩掛の 数量及び単価が確認できる参考資料となる公文書について保有していないかの確認も 行ったが、そのような公文書は存在しなかった。 なお、平成27年7月7日付け非開示決定通知書では、非開示理由を「請求に係る公 文書は、実施機関において作成又は取得しておらず、存在しないため」としていたが、 本件開示請求の趣旨は、本件工事に関し工事系システムを用いて作成した施工代価表 の2層目以下の計算過程の情報を求めるものであると解され、2層目以下の計算過程 を保存していないことから、平成28年2月12日付け理由説明書において、「当該請求 に係る公文書については、実施機関で採用している工事系システム上、計算結果のみ を保存し計算過程を保存していないため、設計書データとして残らない。よって、実 施機関では、データとして保有していない。また、実施機関では、文書として作成及 び取得しておらず、当該公文書は存在しない。」と非開示理由を訂正した。 4 審査会の判断 (1)審議の経過 審査会は、本件審査請求について、以下のように審議した。 - 5 - 年 月 日 平成27年11月 審 6日 議 経 過 諮問 平成27年12月21日 新規概要説明(第165回第二部会) 平成28年 2月12日 実施機関から理由説明書収受 平成28年 2月18日 実施機関から説明聴取(第167回第二部会) 平成28年 2月29日 審査請求人から意見書収受 平成28年 4月27日 審議(第168回第二部会) 平成28年 6月 審議(第169回第二部会) 1日 (2)審査会の判断 審査会は、実施機関及び審査請求人の主張を具体的に検討した結果、以下のように 判断する。 ア 工事系システムについて 工事系システムとは、水道工事の請負費の積算業務を電算システム化したもので あり、実施機関の設計単価表及び積算基準に基づき積算される仕組みになっている。 実施機関の説明によると、設計単価表は、材料費・労務費・機械経費の単位数量 当たりの価格を表にしたものであり、積算した年月、施工地域、昼間・夜間等の項 目ごとに設定されていることから、数万種類のデータから構成されている。一方、 積算基準は、工事を単位数量施工するために必要な経費の組み合わせとその数量で あり、設計単価表と積算基準は別のデータベースとして格納されている。 工事系システムを使った積算は、工事の内容に応じて、工種及び数量と施工条件 (機械の規格、材料の種類、施工地域、施工環境、積算年月等)を決定し入力する ことで行われ、工事設計書に反映される。 - 6 - 工事設計書は、水道工事の請負費を算出するための文書であり、主に「単価」に 「施工数量」を乗じて算出した金額を、工種ごとに足し上げた内容及び諸経費等が 記載されるもので、総括書、工種別総括書、内訳書、内訳明細書及び施工代価表か ら構成されている。 イ 本件請求文書について 本件開示請求に係る請求文書は、「(1)○○市○○番地先から同市○○番地先 間配水小管布設替工事、(2)○○区○○丁目○○番地先から同区○○丁目○○番 地先間配水小管布設替及び工業用水道配水管撤去工事、上記2つの工事の施工代価 表に計上されている、機械運転費の内訳、各歩掛の数量、単価が確認できるものの 全て」(以下「本件請求文書」という。)であり、実施機関は、本件請求文書は作 成又は取得しておらず存在しないとして、不存在を理由とする非開示決定を行った。 なお、実施機関は、平成28年2月12日付け理由説明書において、「当該請求に係 る公文書について、工事系システムでは計算結果のみを保存し計算過程を保存して いないため、設計書データとして残らない。よって、実施機関ではデータとして保 有しておらず、また文書として作成及び取得もしていないことから、当該公文書は 存在しない。」と非開示理由を訂正している。 ウ 本件請求文書の不存在の妥当性について 実施機関の説明によると、本件開示請求の趣旨は、工事系システムを利用した施 工代価表作成における2層目以下の計算過程(以下「施工代価表の計算過程」とい う。)を求めるものと解されるとのことである。 施工代価表は、内訳明細書に計上する工種の単価が設計単価表に設定されていな い場合に、積算基準に記載された計算式に従い算出した当該単価の内訳を記載した もので、当該単価の内訳とは、単位当たりの施工に必要な「機械経費」、 「労務費」、 「材料費」及び「別工種の費用」の足し上げのことであり、ここで言う「別工種の 費用」とは、設計単価表に設定されていない経費であることから、当該費用の算出 に当たっては、さらに施工代価表の計算過程が存在することになるとのことである。 また、施工代価表で用いられる計算式は積算基準に記載されており、単価につい ても設計単価表に設定されている単価をそのまま用いるか、又は積算基準と設計単 - 7 - 価表により算出した単価を用いるものであることから、施工代価表の計算過程を保 存する必要はないとの考えに基づき、当該計算過程はデータとして保存されない仕 組みとなっているとのことである。 審査会が、前記アの工事系システムにおける工事設計書のデータの構成及び帳票 の出力画面を見分したところ、総括書、工種別総括書、内訳書、内訳明細書及び施 工代価表についてはデータとして保存されるが、施工代価表の計算過程は保存され ないこと、また、当該計算過程を記録した帳票の出力はできないことが確認できた。 さらに、審査請求書に添付された施工代価表についても、施工代価表の計算過程を 記録した帳票ではないことを実施機関に確認した。 審査請求人は、以前、施工代価表に記載されている単価の内訳を電話で問合せた 際、システムを確認した上で2層目にて使用されている材料単価の金額の説明が行 われた旨主張する。 この点につき、審査会が確認したところ、実施機関によれば、工事系システムに おいては、施工代価表の2層目以下の計算過程は保存されていないものの、改めて 同システムの入力画面に試算として数値を入力することにより、同種の計算過程の 数値をシステム画面上で作成することは可能であるとのことであった。しかしなが ら、当該数値は開示請求時点において保有されているデータではなく、あくまでも 試算として作成したものであり、同システムでは当該数値を保存することはできな い仕組みであることが確認できた。 また、審査請求人は、他の機関では予定価格の算出根拠となる資料について、普 段は作成していない資料を公文書開示請求があった場合に作成し、開示が行われる 旨主張するが、条例に基づく開示請求の対象となる公文書は、実施機関が組織とし て現に保有しているものに限られ、条例上、開示請求時点において保有していない 公文書を当該開示請求に応ずるために作成する制度とはなっていない。 したがって、審査請求人のこれらの主張は、いずれも採用することができない。 以上のことから、本件請求文書については、実施機関で採用している工事系シス テムにおいてデータとして保有しておらず、公文書として作成及び取得していない という実施機関の説明に不自然・不合理な点は認められず、他に本件請求文書の存 在を認めるに足りる事情も見当たらないことから、実施機関が本件請求文書につい て、不存在を理由として非開示とした決定は、妥当である。 - 8 - よって、「1 審査会の結論」のとおり判断する。 (答申に関与した委員の氏名) 横山 洋吉、中村 晶子、野口 貴公美、山田 - 9 - 洋
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