巻頭言 医療事故調査制度について私の考えること 大阪府医師会理事 大平 真司 昨年10月1日より医療事故調査制度が施行さ は限らない)、③再発防止策ヲを報告すること れ、今年6月末に同制度全般と医師法第21条につ と、通知に明記されています。報告書の記載内容 いての見直しがされることになっています。この は「個人の責任を追及するためのものではない」 拙文が掲載される頃には少し修正されているかも という原則を徹底すべきと私は考えています。医 しれませんが、現時点では大きな修正はないと考 療関係者の多くが報告書を遺族に渡すことで、医 えています。 事紛争につながると懸念しています。報告書に個 私は2年前に理事就任後、月1回のペースで日 人の責任を追及した内容の記載があれば、医事紛 本医師会の医療安全対策委員会に出席し、難解な 争につながる可能性がありますが、それは記載内 医療法の法令や通知文を自分なりに解釈し、委員 容に問題があると考えます。報告書に挙げる内容 会で揉まれてきました。当初、大阪での支援体制 と内部資料とを峻別することが大切であり、内部 作りに苦慮しましたが、関係団体にご協力いただ 資料は非公開とすることが、通知にも明記されて き、大阪府医師会の医療安全支援課が府内の支援 います。 団体の窓口となり、支援の連携・調整を行ってい この制度は医師のプロフェッショナル・オート ます。また、 「医療事故調査制度について」の詳 ノミーに委ねられており、報告の判断は管理者が 細を府医のホームページに掲載し、制度の説明、 行い、また医療機関がセンターに事故として報告 医療事故の判断、初期対応の方法等の周知を行っ した事例でなければ、遺族からセンターに調査を ています。パスワードが必要で、ご存じない方は 依頼することができない。この制度を定着させる 府医の医療安全支援課(℡:06-6763-7400)まで には、非懲罰性、秘匿性、独立性が担保される必 お問い合わせください。ぜひとも一読をお願いし 要があると考えます。 たいと思っています。 誤薬等の原因や結果が明らかな事例でも、事故 医療事故調査制度について、一般の方はもちろ の背景となった要因を分析し、システムエラーを ん、多くの医療関係者が誤解しています。同制度 究明し、再発防止策としてシステムの改善を検討 は、医療法の「通知」のとおり、「本制度の目的 する。本制度における院内事故調査は、犯人捜し は医療安全の確保であり、個人の責任を追及する が目的ではなく「医療の安全の確保」であること ためのものではない」ということであり、「医事 を十分認識して取り組むことが大切です。 紛争の解決」が目的ではありません。そのことを また、他人のミスを許すのも、許さないのも人 遺族はもちろん、一部の弁護士や医療関係者も誤 です。日頃の診療の中で、医師と患者とのコミュ 解しています。報告書にも、 「本制度の目的は… ニケーションを大切にし、 信頼関係を築くこと 個人の責任を追及するためのものではない」と冒 が、自分の身を守ることにもつながると考えてい 頭に記載した上で、①臨床経過(客観的な事実経 ます。 過)、②調査項目と結果(必ずしも明確になると 大阪府医師会報7月号 (vol.391)
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