瀬戸昌之先生のレジュメ

「大気・水・土壌の環境と生き物」、UFJ,環境講義、2016 年 7 月 23 日(土)
地球環境と微生物の過去・現在
瀬戸昌之(東京農工大学名誉教授)
微生物を、地球の歴史とともに、考えてみよう。つぎに、人は微生物とどのようにかか
わってきたかを、とりわけ環境問題との関連で、考えてみよう。 1. 地 球 と 生 物 の 歴 史 地球は 46 億年前に誕生した(表 1)。地球は誕生期は火の塊であった。もちろん生物は存
在しなかった。やがて、原始的な細菌が発生し、長い時間を経て人類が出現した。
表1. 地球と生物の歴史 年前 出来事 地球の歴史を 1 年間とすると 46 億 太陽系(太陽と地球などの 9 つの 1 月 1 日午前 0 時 惑星)の誕生、地球は数千℃の 熱の塊、O2 は皆無 35 億 最 初 の 生 命 (嫌気性細菌)が海に誕生 3 月下旬 27 億 光合成をおこなう嫌気性細菌(シアノ 5 月下旬 バクテリア)の誕生、O 2 の 発 生 開始 20 億 好気性細菌の誕生 7 月下旬 4 億 脊椎動物(魚類)の出現、オ ゾ ン 層 11 月下旬 の形成、生物の上陸 6500 万 恐竜の絶滅 12 月 25 日 20 万 現生人 類 の 出 現 37 分* 1万 農耕の開始 59 分 250 産業革命 59 分 58 秒 0 現在 12 月 31 日午後 12 時 *
これ以降は 12 月 31 日の午後 11 時台の出来事である。 (瀬戸、2006 より)
人 間 活 動 は 地 球 の 歴 史 を 逆 流 さ せ る !?
こう言われたらあなたは何を考えますか。いくつか例をあげてみよう。
1)CaO を主成分とするセメントの製造である。セメントは、CaCO3 を主成分とする石
灰石をロータリーキルンで加熱して CO2 を除去した CaO である。これは 35 億年以上前に
行われた CO2+CaO →CaCO3 の反応の逆流である。 2)フロンガスの利用はオゾン層を
破壊し、陸の生物を海に追いもどして、地球の歴史を4億年以上逆流させる。3)石油石炭
などの化石燃料は数億年前に CO2 を吸収して繁茂した生物体からできたのであるから、こ
れを燃やすことは CO2 の充満した大気に逆流させる。 4)土壌と「逆流」 2. 微 生 物 と は 何 か 微生物とは文字どおり微小な生物である。ではどれくらい微小なのか。 一般に 0.1mm
( 100μ m)以 下 とされる。0.1mm 以下は肉眼では見えない。さらに、微生物は単 細 胞 であ
る。けっきょく、微生物は肉眼では見えないほど小さな単細胞生物といえる。 微生物は 5 つのグループに分けられる。それらは、大きい順に、原 生 動 物 、藻 類 、糸 状
菌 (カ ビ )、細 菌 そしてウ イ ル ス である。細菌の大きさは 0.001mm、すなわち、1μm である。
ウィルスの大きさは細菌のさらに 100 分の一程度である。 微 生 物 も 食 べ て 、 排 泄 す る 人も含めて、全ての生物は有機物などの栄養素を食べて、不要物を排泄する。図1に
示したように、微生物も栄養素を取りこむ。栄養素の一部は微生物の体になる。好気条件
では微生物は体を多くつくり、CO2 を排泄する。嫌気条件では微生物は体をわずかしかつく
らず、有機酸やアルコールを多く排泄する。 二酸化炭素
基質
(栄養素)
細菌
有機酸など
二酸化炭素
原生動物
排泄物など
図1.基質、細菌、原生動物の食物連鎖
有機物などの基質(「栄養素」の意)は細菌などによって取りこまれ、増
殖した細菌は原生動物などによって摂食される。基質の多くの割合は、
好気的条件では二酸化炭素になるが、嫌気的な条件では有機酸などにな
る。
( お ま け ) 1)もしもこの世から微生物がいなくなったら!? 「良いこと」は何? 「悪
いこと」は何? 2)除菌のコマーシャル 3)生物圏の従属栄養微生物、家畜およびヒト
のバ イ オ マ ス 4)三つの微生物学 5)細菌を何個食べて原生動物は 2 倍になるのか? 6)多くの細菌は 15 分ごとに二分裂して増殖する。この分裂が 1 日(24 時間)つづいたら、
どのくらいの量になる? 7) 廃棄物を資源に変えた匠の技 8)「月から地球に土壌を持ち
帰った」は不適切な表現であるといわれる。なぜ不適切か。9)土壌の公益的価値とは? 10)土の色の基本情報・・・…二酸化ケイ素(白)、鉄(青、赤)、有機物(黒) Fin