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クレジット・スプレッドの時系列変化
クレジット債の下落局面
は、その時々に応じてテク
ノロジー、運輸、金融、エネ
ルギー・素材等のセクター
が代わる代わる先導役とな
り、異なるセクターを巻き
込みながら、スプレッドの拡
大を見ました。
2015年のクレジット市場の低迷は主に2つのセクターに起因しています。素材とエネルギー・セク
ターにおけるスプレッド拡大は、コモディティ価格の急落やエネルギー関連産業への弱気見通
し、両セクターにおけるデフォルト・リスク上昇の懸念と軌を一にします。
ハイイールド債のスプレッド推移
ハイイールド債市場でスプレッド拡大が特に顕著だったのは、素材産業(金属・鉱業、化学、紙製
品など)
に加え、エネルギー・セクターの油田サービス、独立系総合型石油精製やミッドストリーム
(探査・開発と精製・化学との間に挟まれた原油ガス処理過程)
の企業です(図表1参照)。
図表1:ハイイールド債におけるセクター別スプレッド推移
オプション調整後スプレッド
(ベーシス・ポイント)
INVESTMENT
INSIGHTS
3,000
ハイイールド
素材産業
2,500
2,000
資本財・サービス
循環消費財
非循環消費財
エネルギー
テクノロジー
1,500
運輸
通信
1,000
電力
銀行
500
0
1993
1995
1997
1999
2001
2003
2005
2007
2009
2011
2013
2015
出所:バークレイズPOINT月次データ
(1993年5月~2015年11月)。
1
最近のスプレッド拡大はエネルギーと素材セクターが主導する格好で市場に暗い影を投げかけ
ていますが、過去の推移を見ると、主役を入れ替えながら、あるセクターのスプレッド急拡大の跡
を、市場全体が追う展開となっていることに留意が必要です(図表2参照)。
オプション調整後スプレッド
(ベーシス・ポイント)
図表2:ハイイールド債市場で最大スプレッド幅を示すセクターは時と共に変化
3,000
ハイイールド
最大スプレッド
最小スプレッド
銀行
2,500
運輸
2,000
テクノロジー
素材
1,500
エネルギー
1,000
500
0
1993
1995
1997
1999
2001
2003
2005
2007
2009
2011
2013
2015
出所:バークレイズPOINT月次データ
(1993年5月~2015年11月)。
ハイイールド債市場においては、テクノロジー・セクターのスプレッドが2000年下期に最大でした
が、2000年代前半は運輸セクターがそれ以上に拡大し、2008年~2009年の世界金融危機の最
中は銀行セクターが極端に拡大しました。巡り巡って今回、スプレッドが最も拡大したのはエネル
ギーと素材セクターです。
投資適格債のスプレッド推移
投資適格債市場においても同様で、2015年は素材とエネルギー・セクターが市場の重石となって
います(図表3参照)。
図表3:投資適格債セクターにおけるセクター別スプレッド推移
オプション調整後スプレッド
(ベーシス・ポイント)
INVESTMENT
INSIGHTS
700
投資適格債
素材産業
600
資本財・サービス
循環消費財
500
非循環消費財
エネルギー
400
テクノロジー
運輸
300
通信
200
銀行
電力
100
0
1993
1995
1997
1999
2001
2003
2005
2007
2009
2011
2013
2015
出所:バークレイズPOINT月次データ
(1993年5月~2015年11月)。
2
INVESTMENT
INSIGHTS
過去の推移も同様に、以前は他のセクターがスプレッド拡大を主導していました。2000年にはテ
クノロジー・セクターが投資適格債市場を圧迫しましたが、2001年~2002年は通信セクターが重
石となりました。2005年には循環消費財セクターのスプレッド、2008年と2011年には銀行のスプレ
ッドが最も拡大しました
(図表4参照)。
オプション調整後スプレッド
(ベーシス・ポイント)
図表4:投資適格債市場で最大スプレッド幅を示すセクターも時と共に変化
700
最大スプレッド
投資適格債
最小スプレッド
600
銀行
通信
500
テクノロジー
400
素材
循環消費財
300
エネルギー
200
100
0
1993
1995
1997
1999
2001
2003
2005
2007
2009
2011
2013
2015
出所:バークレイズPOINT月次データ
(1993年5月~2015年11月)。
クレジット市場において、常に同じセクターが最大スプレッドとなることはなかったという事実は、
現在危機的状況にないセクターであっても、将来の下落局面においてスプレッド拡大を主導する
可能性があることを示唆しています。参考例として、1990年代以降、比較的タイトなスプレッドで
取引されてきた銀行セクターが挙げられます。銀行は世界金融危機の際に急変し、スプレッドが
最も拡大したセクターに数えられました。その後は徐々に回復し、今日ではハイイールド債市場
においても投資適格債市場においても最もスプレッドがタイトなセクターになりました。
2015年の注目セクターはエネルギーと素材産業へと移りました。過去市場で注目を集めたのは、
テクノロジー、運輸、通信、循環消費財、銀行でした。今後は別のセクターで、市場が予期もして
いないような混乱に陥る可能性を否定できません。
投資家は、ポートフォリオ構築の際に、足元の市場のストレスをそのまま将来に当てはめてみた
いと考えがちです。しかし、何カ月、もしくは何年か先に訪れる可能性のある混乱の方に備え、今
から準備をしておいた方が賢明であると当社は考えます。
著者について
ショーン・A・キャメロン、CFA
クオンツ・リサーチ・アナリスト
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