途上国における気象・気候・水文サービスおよび早期警報

途上国における気象・気候・水文
サービスおよび早期警報システム
の近代化
世界銀行のアプローチ
諏訪 理
世界銀行防災グローバルファシリティ
7月22日
気象環境テクノロジー展
World Bank and GFDRR (2012)
World Bank and GFDRR (2012)
防災分野における国際的な資金援助の大半は緊急援助
World Bank and GFDRR (2012)
事前防災および早期警報システムの重要性
バングラデシュ
Munich Re (2014), in GFDRR (2015)
サイクロン・ファイリン
(カテゴリー5)
死者47人
サイクロン・05B
(カテゴリー5)
死者9843人
サイクロン・シドル
(カテゴリー5)
死者4234人
サイクロン・ゴルキー
(カテゴリー4)
死者14万人
死者30万人
ボーラ・サイクロン
(カテゴリー3)
インド・オリッサ州
途上国における気象・気候・水文サービス近代化による便益
途上国におけるよりよい気
象・気候・水文サービスが
もたらす生産性の向上
300億米ドル/年
自然災害による経済的損失
を最大
20億米ドル/年
減少させる
Hallegatte (2012)
直面している問題
 気象・気候・水文データやサービスに対する需要の増大
 社会の発展に伴ってより洗練されたデータやサービスのニーズが増加する
 防災からの要請:気象水文災害の人的・経済的損失を減少させる
 気候変動適応戦略
 気象水文機関のキャパシティーは多くの地域で現在、適切でないレベルにある。過去20-
30年間の間にキャパシティーが低下している国も多くある。
アフリカにおける気象・水文サービスキャパシティー低下の例
5750 km2あたりの観測地点
4
マダガスカル
3
2
世界気象機関推奨
(内陸平野部および丘陵地帯の雨量計)
1
アンゴラ
0
1950
1960
FMI (2010) and IRI/Columbia University (2014)
1970
1980
1990
2000
2010
何が必要とされているか?
• 途上国における優先順位の高い気象・水文の投資ニーズは少なく見積も
って15-20億米ドル(1500億円-2000億円)
• 近代化したシステムの保守点検に少なく見積もって年間3-4億米ドル
(300億円-400億円)必要
• 近代化への国際的な支援は現在十分なレベルにあるとはいえず、また必
ずしも効果的でなかったという反省がある。
気象水文近代化プロジェクトからの教訓
費用対効果が高い
組織強化の重要性
技術的にチャレンジングな投資
水文サービス
地域・グローバルの文脈
パートナーシップ
世界銀行の気象水文機関近代化のアプローチ
基本的な考え方1:気象水文機関近代化への投資はシステム全体を対象とする。
基本的な考え方2:細分化した投資を避け、ある程度のサイズの投資を行うことに
よりインパクトを作る。
基本的な考え方3:3つの相互に依存したコンポーネント
サービス提供
インフラの近代化
組織強化
世界銀行の気象水文機関近代化のアプローチ
基本的な考え方4:価値連鎖(バリューチェーン)全体の強化
観測
モデリン
グ・解析
予報
予報提供
より
ユー
ザー
ニーズ
にあっ
たプロ
ダクト
開発
ユーザ
ーによ
る意思
決定
結果
気象・水文近代化プロジェクトの事例
モルドバ: 5.5M
(IDA+GFDRR)
イエメン: 19M
(PPCR)
ハイチ: 5.5M
(PPCR)
ジャマイカ:
6.8M (PPCR)
ホンジュラス・
ニカラグア
ペルー
ウルグアイ
アフガニスタン
ロシア: 139.5M
(IBRD)
中央アジア: 28.9M
(IDA/PPCR+GFDRR)
ネパール: 31M
(PPCR/IDA)
ブータン
ニジェール
マリ: 29M
(GCF/GFDRR)
ベトナム: 30M
(IDA)
インド
ラオス
セネガル
フィリピン
ガーナ
ナイジェリア:
7M (IDA)
エチオピア:
10M (IDA)
サントメ・プ
リンシペ
ウガンダ
ミャンマー:
30.1M (IDA)
太平洋 諸国(サモア, ト
ンガ): 26.95M (IDA)
バングラデシュ:
127.8M (IDA)
カメルーン
コンゴ民:8M
(GEF/GFDRR)
ザンビア: 8M
(IDA)
モザンビーク: 21M
(PPCR/IDA/NDF)
マラウイ
世銀プロジェクト実施中
世銀プロジェクト準備中
GFDRR技術協力
タンザニア
マダガスカル
スリランカ
世界銀行の気象水文プロジェクトの一例:ミャンマー
エーヤワディー流域統合管理プロジェクト (1ドル=100円で換算)
(総融資額:100億円, うち 気象水文対象:30.15億円)
コンポーネントA: 組織強化, 能力開発およ
びプロジェクト実施支援 (6億円)
コンポーネントB: 観測インフラ・データ管
理システム・予報システムの近代化 (17.1億
円)
コンポーネントC: 気象水文局のサービス提
供システム改善 (7.05億円)
A.1: 組織強化および法規制の整備(0.5億円)
B.1: 観測ネットワークの近代化(9.25億円)
C.1: 公共気象サービスおよび水文サービス
の導入(1.2億円)
A.2: 気象水文局の能力開発およびトレーニ
ング(2.9億円)
B.2: データ管理システムおよびICTの近代化
(5.35億円)
A.3: システム設計・統合・プロジェクト実
施支援 (2.6億円)
B.3: 数値予報および水文モデルの改良 (1.9
億円)
B.4: 気象水文局オフィスおよび施設の再建
と改装 (0.6億円)
C.2: 気象水文情報の防災分野への貢献の強
化・特にインパクトベース予報・警報の導
入といくつかの流域を対象とした洪水や鉄
砲水に対するエンドツーエンド早期警報シ
ステムの拡張(1.6億円)
C.3: 農業気象アドバイザリーサービス開発
(2.9億円)
C.4: 気候サービスのための国家的枠組み
(1.35億円)
より効果的なパートナーシップ構築へ: ミャンマーの事例
2016年11月
第二回開発パート
ナー会議
2016年9月
2015年10月
数値予報とインパクト
ベース警報に関するワ
ークショップ
第一回開発パート
ナー会議
アフリカに於ける気象・気候・水文サービス強化のための枠組み計画
アフリカ地域システム統合
- グローバルプロダクトの品質およびアクセス改善
- 戦略策定、プロジェクト準備と管理、サービス提供強化の
ためのナレッジおよびアドバイザリーサービス
- アフリカ気象大臣会合(AMCOMET)および気候サービス
のための世界的枠組み(GFCS)との協調
世界気象機関地域センターの近代化
- 天気・洪水予報、早期警報、気候予測のための地域的協力
体制および能力強化
国・地域レベルの気象・気候・水文サービス近代化
- 国家気象水文機関の組織強化および能力開発
- 気象水文インフラの近代化
- サービス提供の改善・気候サービスのための国家的枠組み
の開発
防災グローバルファシリティ・気象水文プログラム
世銀内のフォーカルポイントおよびサービスセンターとしての役割:資源動員、気象水文近代化プ
ロジェクトのデザインおよび実施支援。
 能力開発
 分析とナレッジマネージメント
 プロジェクト計画および実施支援
日本の経験に学ぶ
 日本の国家気象水文機関(気象庁、国
交省、河川管理者)の近代化の歴史、
およびそれから得られる教訓
 日本のODAによる途上国支援の経験か
ら得られた教訓
 全3巻
1. 政策決定者向け要約
2. 日本の気象サービス近代化レヴュー
3. 日本の水文サービス近代化レヴュー
今後の見通し
 より効率的なプロジェクトデザインおよび実施
 “ターンキー”契約、システムインテグレーション、DBOT/DBT
 イノベーティブな技術をどう使うか(クラウドコンピューティング、クラウド
ソーシング、携帯ネットワーク、格安センサー)
 長期的で調和のとれた途上国の気象・気候・水文サービスへの支援
 官民協働(PPP)モデル
 持続可能なファイナンスモデル
 “国際公共財”としての気象データ・サービスの持続的なファイナンス
 途上国気象局のビジネスモデル