研究開発プログラム全体計画

「バイオニックヒューマノイドが拓く新産業革命」
ImPACTプログラム・マネージャー
原田
香奈子
Kanako
HARADA
2001年 東京大学大学院博士前期課程修了
2001∼2004年 株式会社日立製作所
2005∼2007年 (財)医療機器センター流動研究員
2007年 早稲田大学大学院博士後期課程修了 博士(工学)
2007∼2010年 イタリア聖アンナ大学院大学博士研究員
2010∼2012年 東京大学大学院 特任助教
2012∼2015年 東京大学大学院 特任講師
2016年∼ 東京大学大学院 准教授
プロフィール
大学・企業・病院・海外での研究経験を有し,医療機器審査
や標準化にも携わるという稀有なキャリアを持つ.工作機械
やロボットの国際共同研究プロジェクトのマネジメント経験
を活かし,研究成果を広く社会に還元することを目指す.
<研究開発プログラム案の概要>
人体を精巧にモデル化した「バイオニックヒューマ
ノイド」の開発により、定量的・倫理的な研究開
発・評価・教育・訓練手法と匠の技の再現を実現し、
広範な産業に革命を起こす。
資料2
<非連続イノベーションのポイント>
バイオニックヒューマノイド
・生体計測に基づいて人体の特性を再現し、内蔵するセン
サによりモデルに対する影響や操作を記録・評価
革新的技術シーズの実装による社会革命の具現化
・産業用ロボットをベースに人の近くで使えるような
安全かつ知的な匠ロボットを開発し医療革命を具現化
バイオニック
ヒューマノイド
バイオニック
ヒューマノイド
訓練
安全性評価
スマートアーム
・計測、加工、材料、ロボットの世界トップ研究者を結集
して技術的障壁を突破
<期待される産業や社会へのインパクト>
・人や動物が被験者となる製品評価をバイオニック
ヒューマノイドに置き換えるという定量的・倫理的
アプローチにより、広範な産業革命を実現する。
・製造業や医療産業など匠の技術が必要とされる分野の
評価・教育・訓練・技術伝承を実現する。
製造業
ロボット教示・学習
医療
福祉
精巧モデルによる安全性評価
匠の技術の伝承(教育・訓練・評価)
超精密熟練マニピュレーション
カスタムメイド製品設計
生体特性計測,柔軟人工材料の立体造形,超精密知的ロボット制御
研究開発プログラム構想
解決すべき社会的課題等
革新的技術シーズが実用化され,社会に届くまでに多くの労力と時間がかかる.
特にヒトに関わる機器の研究開発・評価・教育・訓練のプロセスでは,感覚的表現(もっと大きく,
もっと強く,など)が多用され,試行錯誤的であり,非効率的である.
PMの挑戦と実現したときのインパクト
実物の代わりに使える「センサ付の精巧な偽物」を作ることで,感覚的表現を定量的に理解し,
試行錯誤を減らして,プロセスを加速する.
本プロジェクトでは,センサ付の精巧な人体モデル「バイオニックヒューマノイド」を開発し,
革新的技術シーズの実装により社会革命をおこすという構想を具現化する.
・実現したときに産業や社会に与えるインパクトは何か?
定量的,倫理的,効率的な研究開発・評価・教育・訓練を実現し,イノベーションを加速
「センサ付の精巧な偽物」をプラットフォームとして研究者,ユーザー,企業が意見交換し共同開発
構想や要素技術を広く産業に展開し,新産業革命をおこす
2
プログラム構想のブレークスルー
非連続イノベーション、リスクの大きさ
社会的インパクトが大きい医療から挑戦
 ヒトや実験動物の代わりに使えるプラットフォームとして
センサ付の精巧なヒトモデル「バイオニックヒューマノイド」を開発
 革新的技術シーズの実装による社会革命の具現化として
 シーズの実装:匠ロボット「スマートアーム」を開発
 医療革命:小さな穴(鼻や切開口)から超精密な治療
現在
未来
リスク:プラットフォームの完成度,再現性,有用性が構想の具現化に影響
「センサ付精巧モデルの活用による革新的技術シーズの社会実装」を医療以外にも展開して社会変革を
起こし,新産業革命をおこす
3
研究開発プログラムの出口目標−1
産業や社会のあり方を変革するシナリオ
医療用プラットフォーム
シーズ実装による社会革命の具現化
バイオニックヒューマノイド
感覚的に表現される臓器の特性
(豆腐みたい,など)を計測し,
センサを埋め込んだ人工物で再現
埋込型センサ
計測
加工
革新的技術シーズ
スマートアーム
産業用ロボットをベースに,
人の近くで使えるような安全
かつ知的な匠ロボットを開発
医療革命
小さな穴から超精密手術
臨場感の高い,定量的な
シミュレーションと評価
経鼻的脳外科手術など,動物では
テストできない高度な手術
展開
バイオニックヒューマノイドとして展開
ヒトを対象としたテストや
訓練,評価を代替
福祉の製品開発,
介護の訓練,
事故の解析など
要素技術として展開
センサ付の精巧な偽物,匠ロボットの技術
を応用
対象物の視点で
癖とスキルを区別
して学習
センサ付の
精巧な偽物
実物
医療応用として展開
手術の練習,新しい術式や
医療機器の研究開発
練習の機会が少ない手術分
野での医師の育成,
革新的治療の開発・評価
精密加工,
柔軟物マニピュレーションなど
4
研究開発プログラムの出口目標−2
産業や社会のあり方を変革するシナリオ
ImPACT終了
H27
H28
バイオニック
ヒューマノイドの精巧
な頭部モデル完成
H29
H30
医学系学会
会場に持ち
込み,模擬
手術実施
スマートアーム
試作機完成
H31∼
産業展開
手術訓練用モデルとして製品化
安全性評価,
事故評価など
H31∼
評価用
モデルとして
製品化H35∼
微細操作用ツールの
産業応用,商品化 H31∼
産業用ロボットに展開,
技術深化 H31∼
アイデア募集
公募
産業応用:製造業などのPj
標準化 厚生労働省 革新的医薬
品・医療機器・再生医療製品実用
化促進事業ガイドライン案に反映
国際標準化
ISO/TC 299及びIEC/TC 62/SC 62D/JWG 35に成果を反映
5
達成目標
達成目標(プログラム終了時の具体的アウトプット)
バイオニックヒューマノイド:
-特に脳と眼球を正確に再現した頭部モデルを持つモジュール型バイオニックヒューマノイドを開発する
-生体膜組織(硬膜,くも膜,眼底内境界膜など,厚さ3∼600 μmの膜)の計測と再現.動物よりも人の
特性に近いことを達成目標とする
スマートアーム:
-マスタ・スレーブ型の多自由度微細ツールを搭載した賢いロボットを開発する
-操作中の繰り返し位置決め精度として10 μmを担保する(ヒトの手は55 μmのブレ)
-マスタ・スレーブ間で100 ms未満の時間遅れとする(一般的なロボットで300∼500 ms)
医療応用:バイオニックヒューマノイドとスマートアームを用いた脳神経外科経鼻的手術と
眼科硝子体手術のシミュレーションを行う.3D造形装置で作った血管モデルを販売する
国際標準化:H30に血管モデルで新業務項目提案(NWIP:New work item Proposal)を目指す
産業応用:産業用ロボットにセンサ付の精巧な偽物を用いた学習アルゴリズムを搭載する
達成目標の実現に向けた戦略
すでに助走のついている技術(脳・眼球・血管モデル,微細手術支援)に大きなリソース配分
実施機関同士の綿密な共同研究なしでは達成できない目標設定により技術交流を促進
確実な要素技術開発は大企業を中心に,チャレンジの要素は大学や中小企業で実施する
各PJのリーダーによる目標設定を行う
国際標準化は日本が主導する
産業展開:産業用技術をベースに開発し,医療分野での研究成果を実装した後に,産業用に還元する
医療応用:早期に医学系の学会,認定医制度関係者,PMDA関係者を巻き込んで,プログラム終了後に
教育や評価のプラットフォームとして定着させることを狙う
6
研究開発プログラム全体構成
運営(運営委員会,知財管理委員会,標準化
委員会,産業展開委員会,外部評価委員会)
PM
プロジェクト1
バイオニックヒューマノイド
1-A
計測
1-B
1-C
加工 センサ
1-D
評価
プロジェクト3
医療応用
プロジェクト2
スマートアーム
産業
産業
応用
応用
(1) (2)
3-B
2-C
2-D 2-E
2-A 2-B
3-A
シス アーム ツール UI
センサ
脳外科 眼科
テム
UI:ユーザーインターフェース
各克服すべき課題の実施時期
H27
運営
H28
H29
運営委員会,知財管理委員会,標準化委員会,産業展開委員会,外部評価委員会)
プラットフォーム プロジェクト1
バイオニックヒューマノイド
革新的技術シーズ プロジェクト2
スマートアーム
医療革命
H30
プロジェクト3
医療応用
展開
プロジェクト 4,5…
産業応用(公募または指名)
7
各プロジェクトの取組:Pj. 1 バイオニックヒューマノイド
プロジェクトの計画
バイオニックヒューマノイドを開発
 【1-A 計測】画像処理と生体計測.定量的な指標がない物理特性は計測原理から開発
 【1-B 加工】材料の選定,加工法開発,モデル製作
 【1-C センサ】柔軟なモデルに埋め込めるセンサの開発
 【1-D 評価】再現性や有用性の評価方法開発
プロジェクトの体制
Pj.4,5
産業応用
特許化,
標準化
運営
Pj.2
スマート
アーム
技術
共有
Pj. 1 バイオニックヒューマノイド
【1-B 加工】
統合:名大
脳:東北大,名城大,
眼:名大
頭蓋骨:ソニーEMCS
公募
評価方法検討
形状,
構造など,
材料特性データ
【1-A 計測】
名大
センサ搭載方法検討
【1-C センサ】
東北大,名大,公募
センサ一部共有
【1-D 評価】
産総研
試作物の
評価・
教育,訓練
での応用
データや
サンプル,
術中計測
Pj.3
医療応用
8
各プロジェクトの取組:Pj. 2 スマートアーム開発
プロジェクトの計画
スマートアームを開発
 【2-A システム】システム統合,匠の技の学習,制御など
 【2-B アーム】支持用のアーム,人が周囲にいる場合の安全を考慮した制御
 【2-C ツール】センサ付ツールの開発,様々な手術用モジュールの開発
 【2-D UI(ユーザーインターフェース)】操作性などを考慮したUIを開発
 【2-E センサ】ツールの先端に搭載するセンサを開発
プロジェクトの体制
運営
Pj.4,5
産業応用
特許化,
標準化
Pj. 2 スマートアーム開発
【2-B アーム】
デンソー
【2-A システム】
東大,公募
評価・訓練
【2-C ツール】
九大,
高山医療機械製作所
【2-D UI】
名大
【2-E センサ】
東北大,公募
設計
制御
すり
合わせ
センサ共有
Pj.1
バイオニック
ヒューマノイド
Pj.3 医療応用
9
各プロジェクトの取組:Pj. 3 医療応用
プロジェクトの計画
医用画像の撮像・生体サンプルの採取や術中の計測,
開発するバイオニックヒューマノイドとスマートアームの評価を行う.
 【3-A 脳外科】経鼻的手術,キーホール手術など
 【3-B 眼科】硝子体手術など
 手技評価や教育,認定医制度でのバイオニックヒューマノイドの
採用を検討する
プロジェクトの体制
Pj. 3 医療応用
Pj.1
バイオニックヒューマノイド
【3-A 脳外科】
東大病院,日医大
運営
認定医制度
等と連携
【3-B 眼科】
東大病院
その他の分野の公募または指名
撮像,
サンプル
提供,
評価・訓練
Pj.2
スマートアーム
10
各プロジェクトで選定する実施機関の考え方【補足資料】
研究開発機関選定に際して重要視するポイント等
選定に至る考え方・理由
【1‐A 計測】
‐CT,MRI, OCTなど,様々なデータベースへのアクセス
‐マイクロからマクロまで,正常から異常まで,胎児から
老人まで,など,多様性のあるデータに対応可能
‐臓器などの形状抽出だけでなく,3Dプリンタで加工でき
るよう処理できる技術
‐生体組織を扱った研究などの実績
‐従来の計測レンジを超えるセンサ技術の開発能力
 選定方法:非公募指名 名大/森
‐名大/森は医用画像処理の世界的権威であり,文科省新学術領
域「多元計算解剖学」に参加しており,様々な医用画像データ
ベースにアクセス可能
‐共同研究者の名大/佐久間はMEMSを用いたセンサ技術で著名
であり,計測レンジの広いセンサを開発中.また,細胞計測など
を行っており,生体組織を扱った経験が豊富
【1‐B 加工】
‐既に生体模擬材料などの加工の実績がある
‐医工連携の経験が豊富
‐コストや大量生産に有利な加工法
 選定方法:非公募指名 東北大/太田,名大/新井,名城大/福
田,ソニーEMCS,一部公募
‐東北大,名大.名城大,ソニーEMCSは既に臓器モデルなどの開
発の実績が豊富
‐東北大/太田:血管に特性が似ているPVAでトップレベルの技術
‐名大/新井,名城大/福田:血管モデルなどで特許やベンチャー
の実績
‐ソニーEMCS:世界初の3Dプリンタ技術,コストと環境面ですぐれ
る塩造形の技術
【1‐C,2/E センサ】
‐柔軟物に埋込可能な微小センサ
‐ウェットな場所で使用可能なセンサ技術
 選定方法:非公募指名 東北大/芳賀,名大/丸山 一部公募
‐東北大/芳賀は血管などに埋込可能であり滅菌対応可能な
MEMSセンサを開発,医工連携の経験が極めて豊富
‐名大/丸山は生体モデル用センシング技術の実績を有する
【1‐D 評価】
‐医療トレーニングなどで実績
‐標準化や医工連携研究の実績
 選定方法:非公募指名 産総研/鎮西
‐産総研/鎮西はガイドライン事業や国際標準化関係の実績が豊
富であり,共同研究者の山下は頭部モデルを用いたトレーニン
グで豊富な実績を有する
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各プロジェクトで選定する実施機関の考え方【補足資料】
研究開発機関選定に際して重要視するポイント等
選定に至る考え方・理由
【2‐A システム】
‐ロボット全体としてユーザーのニーズとすり合わせたシス
テム統合
‐汎用的な学習・制御手法の研究実績
 選定方法:非公募指名 東大/光石(PM関係機関:PMが所属、
5年以内に緊密な共同研究),一部公募
‐東大/光石は微細手術ロボットの研究で世界トップレベルであり,
東大病院との医工連携の経験が豊富.汎用的な学習やロボット
制御手法の研究実績を有する
【2‐B アーム】
‐汎用的な産業用アームをベースにした開発
‐共同研究で制御を実装できる環境
‐医療への参入の可能性
 選定方法:非公募指名 デンソー
‐医療用アームを製品化しており,医工連携の経験を有する
‐産業用アームを研究プラットフォームとして大学と共同研究を
行った実績を有する
【2‐C ツール】
‐医療用はすでに医療用ツールやロボットの研究開発実
績が豊富であり,明文化されていない制約などについて
熟知していること
 選定方法:非公募指名 九大/荒田,高山医療機械
‐九大/荒田は手術用の機構の設計について業績が豊富であり,
医工連携では世界トップレベル
‐高山医療機械は脳外科用術具などで著名であり,医療用材料の
加工技術にも優れる
【2‐D ユーザーインターフェース】
‐ロボットの制御の実績があり,ユーザーインターフェー
スの操作性についての実績があること
 選定方法:非公募指名 名大/長谷川
‐名大/長谷川は人が身に着けるロボティックデバイスの研究
で著名であり,人との親和性が高いUIの研究で実績
【2‐E センサ】
‐術具に埋込可能な微小センサ
‐ウェットな場所で使用可能,滅菌可能なセンサ技術
 選定方法:非公募指名 東北大/芳賀 一部 公募
‐医工連携の経験と関連分野の業績が豊富であり,Pj.2のセンサ
とあわせて調整可能
【3‐A 脳外科, 3‐B 眼科】
‐医工連携の実績が豊富であること
‐本プロジェクトの成果をすぐに評価できる体制が構築で
きること
 選定方法:非公募指名 東大病院/斉藤 ,相原,日医大/森田
(PM関係機関:5年以内に緊密な共同研究) 一部公募
‐Pj.2のPLである東京大学と医工連携の実績が豊富であり,物理
的な距離も近い.東大病院の施設を用いた評価が可能
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研究開発プログラム全体の体制図
運営(運営委員会,知財管理委員会,標準化
委員会,産業展開委員会,外部評価委員会)
PM
PL
1-A
計測
名大/
森
PL
名大/新井
1-B
1-C
加工 センサ
名大/
新井
東北大/
太田
名城大/
福田
1-D
評価
東北大/ 産総研/
芳賀
鎮西
名大/
丸山
プロジェクト3
医療応用
プロジェクト2
スマートアーム
プロジェクト1
バイオニックヒューマノイド
2-A
シス
テム
東大/
光石
2-B
2-C
2-D
アーム ツール UI*
デン
ソー
公募
公募
ソニー
EMCS
PL
東大/光石
九大/
荒田
高山医
療機械
製作所
名大/
長谷川
2-E
センサ
3-A
脳外科
3-B
眼科
東北大/
芳賀
東大病院/ 東大病院/
斉藤
相原
公募
日医大/
森田
センサ基盤技術共通化
公募
赤字:開始段階で必要な体制,太字:グループリーダー
東大病院/斉藤
産業
産業
応用
応用
(1) (2)
公募または
指名
他医療分野
公募または指名
*UI: ユーザーインターフェース
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研究開発プログラム予算の想定
H27
H28
研究費総額(1500百万円)
17百万円
376百万円
H29
H30
550百万円
557百万円
バイオニックヒューマノイド(740百万円)
【1-A 計測】(名古屋大学)
【1-B 加工】(名古屋大学, 名城大学, 東北大学,ソニーイーエムシーエス㈱, 公募)
【1-C センサ】(名古屋大学, 東北大学,公募)
【1-D 評価】(産業技術総合研究所)
スマートアーム(544百万円)
【2-A システム】(東京大学,公募)
【2-B アーム】(㈱デンソー)
【2-C ツール】(九州大学, ㈱高山医療機械製作所)
【2-D ユーザーインタフェース】(名古屋大学)
【2-E センサ】(東北大学,公募)
医療応用(89百万円)
【3-A 脳外科】 (東京大学医学部附属病院,日本医科大学)
【3-B 眼科】 (東京大学医学部附属病院)
公募または指名
産業応用(127百万円)
産業応用( 127百万円)公募または指名
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