小型クライオクーラを用いた超伝導 スーパーモーターの開発 岡山理科大学 工学部 電気電子システム学科 教授 河村実生 1 研究背景 近年、高性能な超伝導ワイヤーや小型高効率 冷凍機の開発が進んできており超伝導モーター の実用性が高まってきている。 超伝導モーターは従来のモーターに比べ高効 率であるだけでなく、高出力、高トルク、小型、軽 量、高速などの理想的な特性を持ったモーターの 実現の可能性を持っており、これらの特長を生か した、これまでに無い使用法や、新たな分野への 電気モーターの進出も可能にすると考えられる。 2 新技術の基となる研究成果・技術 z高性能高温超伝導ワイヤーの開発 実用化には高い冷却効率の実現が不可欠 (室温超伝導と同等の効果) •高機能プラスチック •高効率小型クライオクーラ •磁性流体シール •高機能セラミックス 高い冷却効率の実現 3 Superpower社資料 4 Sunpower社のクライオクーラー 5 6 PBIとステンレスの比較 ステンレス (SUS304) 性質 単位 ポリベンゾイミダゾール (PBI) 引張強度 MPa {kgf/cm2} 160 {1,630} 520 {5,200} 熱伝導率 W/(m・k) 0.41 16.3 線膨張係数 ×10-6/K 23 17.3 対ステンレス 強度∼1/3 熱伝導率∼1/40 膨張係数∼1.3 7 セラミックスの特性 性質 単位 アルミナ 窒化アルミ 銅 曲げ強さ MPa {kgf/cm2} 450 {4,500} 350 {3,500} 熱伝導率 W/(m・k) 34 90∼200 400 線膨張係数 ×10-6/K 8.6 4.5 16 8 超伝導スーパーモータの原理 Pseudo Magnetic Monopole A practical example 9 通常モータと超伝導スーパーモータの等価回路 通常モーター 超伝導スーパーモーター 電源 電源 誘導起電力 誘導起電力 10 モータの回転速度と効率、トルク 超伝導スーパーモータ 超伝導スーパーモータ 100% 常伝導モータ 鉄損 回転速度 最大トルク 効率 銅損 常伝導モータ 回転速度 11 冷却実験結果 超伝導モーター銀箔有無比較 300 250 熱電対180°の温度[K]銀箔あり 熱電対90°の温度[K]銀箔あり 熱電対180°の温度[K]銀箔なし 熱電対90°の温度[K]銀箔なし 絶対温度[K] 200 150 100 50 0 0 5 10 15 時間[h] 20 25 30 12 抵抗値の温度変化 0.12 抵抗(Ω) 抵抗(Ω) 0.1 0.08 0.06 0.04 0.02 0 0 50 100 150 200 250 300 温度(K) 13 超伝導スーパーモータの特徴 • • • • • • 高効率 高速 高トルク 高出力 小型 軽量 •回転速度依存性が小さい •特に低速、高速での効率に大差 •エネルギーの効率的な回収が可能 従来のモータに比べ10倍以上の効果 14 従来技術とその問題点 これまでに開発されているものは、大型冷凍機 の使用による液体窒素による冷却を前提とした 超大型のものがあるが、 冷却を含めたエネルギー効率やシステム全体 の小型軽量化が考慮されていないため、広く利 用されるまでには至っていない。 15 新技術の特徴・従来技術との比較 • 新たな真空断熱構造を採用することにより、 断熱構造がシンプルで、効率的なトルクの発 生、および、高い断熱冷却性能の実現が可能 である。 • ローレンツ力を利用したコアレス構造であるた め低電圧駆動や高速、軽量化が可能である。 • 従来は超大型のものに限られていたが、自動 車等への利用も可能である。 16 想定される用途 • 本技術の特徴を生かすためには、回生エネル ギーの利用が効果的な、自動車、列車、ク レーン、エレベーター等での利用に適している と考えられる。 • 上記以外に、回転速度が一定でない風力発 電などに適していると考えられる。 • また、高速・高トルクや小型軽量に着目すると、 航空の分野に展開することも可能と思われる。 17 想定される業界 • 利用者・対象 自動車、列車製造メーカー エレベーター、クレーン製造メーカー 風力発電機製造メーカー • 市場規模 自動車 国内生産 886万台 (2009年 日本自動車工業会) 18 実用化に向けた課題 • 現在、小型冷凍機を使って110Kまで到達して いるが、冷凍機と固定子間の温度差が大きい のでこれを1/3程度に軽減する必要がある。 • 今後、固定子の素材を変更することにより、冷 却効率の最適化を図る必要がある。 • 実用化に向けて、強度の検討や更なる性能 アップのため、磁気回路の最適化やイットリウ ム系薄膜超伝導ワイヤーの利用の検討が必要。 19 企業への期待 • 未解決の温度差については、チッ化アルミの 製造技術により克服できると考えている。 • 断熱、冷却冷凍の技術を持つ、企業との共同 研究を希望。 • また、高速列車を開発中の企業、電気自動車 分野への展開を考えている企業には、本技術 の導入が有効と思われる。 20 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :超伝導モーター又は超伝 導発電機 • 出願番号 :特願2010-109575 • 出願人 :学校法人加計学園 • 発明者 :河村実生 21 産学連携の経歴 • 2009年-2010年 JSPS 科学研究補助金 採択 22 お問い合わせ先 岡山理科大学 学外連携推進室 TEL: 086−256 − 9730 FAX: 086−256 − 9732 産学連携コーディネーター 横溝精一 e-mail: s-yokomizo@office.ous.ac.jp 産学連携コーディネーター 安井茂男 e-mail: s-yasui@office.ous.ac.jp 23
© Copyright 2024 ExpyDoc