E - 群馬大学

スイッチング電源の原理(中級)
2016年7月21日
群馬大学 客員教授
落合政司
1
内容
1. 電源回路の役目
2. スイッチング電源回路の使用例
3. 定電圧回路(電圧安定回路)
3.1 シリーズレギュレータ
3.2 スイッチングレギュレータ
4. スイッチングコンバータ(スイッチングレギュレータ)の代表的な
回路方式
5. チョッパ方式非絶縁形コンバータ
5.1 降圧形 (Buck形、カレントステップアップ形) コンバータ
5.1.1 降圧形コンバータの動作原理と静特性
5.1.2 パルス幅制御方式コンバータの動作モード
5.1.3 電流不連続モードにおける出力電圧ほか
5.1.4 動特性
5.1.5 降圧形DC-DCコンバータの特徴および用途
5.2 昇圧形 (Boost形、ボルテージステップアップ形) コンバータ
5.2.1 降圧形コンバータの動作原理と静特性
5.2.2 不連続モードの出力電圧、ほか
5.2.3 動特性
5.2.4 昇圧形DC-DCコンバータの特徴およびと用途
2
内容
5.3 昇降圧形 (Buck Boost形、極性反転形) コンバータ
5.3.1 昇降圧形コンバータの動作原理と静特性
5.3.2 不連続モードの出力電圧、ほか
5.3.3 動特性
5.3.4 昇降圧形コンバータの特徴および用途
5.4 3方式の纏め
6. 非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
6.1 リンギングチョーク形コンバータ(RCC)
6.1.1 リンギングチョーク形コンバータの動作原理
6.1.2 スイッチングトランスの等価回路
6.1.3 理想的な状態における静特性と動作状態
6.1.4 実際の回路での静特性および動特性
6.1.5 リンギングチョーク形コンバータの特徴と用途
6.2 フライバック形 (オンオフ形、他励式フライバック形) コンバータ
6.2.1 フライバック形コンバータの動作原理と静特性および動特性
6.2.2 電流不連続モードでの出力電圧など
6.2.3 フライバック形コンバータの特徴と用途
3
内容
6.3 フォワード形 (オンオフ形)コンバータ
6.3.1 フォワード形コンバータの動作原理と静特性
6.3.2 電流不連続モードでの出力電圧など
6.3.3 動特性
6.3.4フォワード形コンバータの特徴と用途
6.4 3方式の纏め
7. 共振絶縁形コンバータ
7.1 電圧共振フライバック形コンバータ (1石電圧共振回路)
7.1.1 電圧共振フライバック形コンバータの構成と一周期期間の動作
7.1.2 スイッチのZVS条件
7.1.3 出力電圧の制御
7.1.4 今後の展望
7.2 電流共振形コンバータ(SMZコンバータ)
7.2.1 電流共振形コンバータの動作原理
7.2.2 一周期間の動作
7.2.3 出力電圧の制御
7.2.4 電流共振形コンバータの特徴
7.3 部分共振形コンバータ
4
1.電源回路の役目
一般の電気及び電子機器は直流で動きます。
液晶テレビ
5V,12V,18V,24V,32V,他
5V:マイコン、デジタル信号処理回路
12V:信号処理回路
18V:音声出力回路
24V:バックライト(冷陰極管)用インバータ
32V:チューナー用電圧
パソコン
1.2V,3.3V,5V,12V,他
・集中型発電・・・AC(電力会社:10社)
・分散型発電・・・AC/DC
図1.1 液晶テレビとパソコンの使用電源例
したがって、交流を直流に変換する回路が必要となります。これが電源回路
です。一般の電気及び電子機器には必ず電源回路が付いています。
5
1.電源回路の役目
電源回路は、交流電圧から安定化された直流電圧を作り負荷回路に供給します。
交流電圧
直流電圧 E o
電気・電子機器
負荷回路
メイン電源回路(AC-DCコンバータ)
整流・平滑回路 E i DC-DCコンバータ
・整流
・安定化
+
・平滑
・絶縁
整流出力電圧 E i
・感電防止
POL電源
E1
DC-DCコンバータ
・電圧変換・安定化
負荷回路
Eo
・ムーアの法則
・スケーリング
図1.3 電源回路の役目と構成
6
1.電源回路の役目
ほとんどの電気及び電子機器はリモートコントロールが付いているために、メイン
電源とは別に待機電源を備えています。
電気・電子機器
主電源
スイッチ
待機電源回路(AC-DCコンバータ)
整流・平滑回路
・整流
+
・平滑
電磁リレー
DC-DCコンバータ
・安定化
・絶縁
リモートコント
ロール受光部
μコンピュータ
主電源スイッチが電磁リレーの電源に
入っているものもある。
負荷回路
メイン電源回路(AC-DCコンバータ)
整流・平滑回路
・整流
+
・平滑
DC-DCコンバータ
・安定化
・絶縁
POL電源
DC-DCコンバータ
・電圧変換・安定化
負荷回路
7
図1.4 リモートコントロールを備えた機器の電源回路構成-1
1.電源回路の役目
印刷配線板、トランス、放熱板、
キャパシタ及びダイオード、
FET、IC等の半導体により
構成されている。
図1.6 電源ユニット例
出典:サンケン電気ホームページ、http://221.253.80.196/prod/powersp/sw/swc/index.htm
8
第1章:演習問題
1.1 現在は集中型発電が主であるが、交流による送配電が行われている。
その主たる理由は何か?
発電所から高電圧で送電し電流を減らすことにより、送電損失を少なくしています。
送電を開始した当時には直流を変圧する技術がなく,容易に変圧できる交流送電
が採用されました。
9
2.スイッチング電源回路の使用例
エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)でテレビ、エアコン、
蛍光灯器具 、複写機、電子計算機、磁気ディスク装置、VTR、乗用自動車、
貨物自動車、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、他、合計23品目のエネルギー消
費効率が定められている。
(財)省エネルギーセンター平成20年度待機時消費電力調査報告書
・家庭にある液晶テレビの待機電力:0.44W(n=26)
・現在販売している液晶テレビの待機電力:0.29W(n=175)
液晶テレビ(CCFL、LED)
・待機電源
5V:マイコン、デジタル信号処理回路
・メイン電源
24V:バックライト(冷陰極管)用インバータ
32V:チューナー用電圧
・サブ電源
12V:信号処理回路
18V:音声出力回路
図2.1 スイッチング電源回路使用例(液晶テレビ)
出展:スイッチング電源の現状と動向2010,(社)JEITA,2010年3月.
10
2.スイッチング電源回路の使用例
・待機電源
3.3V,5V:マイコン、デジタル信号処理回路
・メイン電源
12V,24V
図2.2 スイッチング電源回路使用例(複合機)
出展:スイッチング電源の現状と動向2010,(社)JEITA,2010年3月.
11
2.スイッチング電源回路の使用例
High Intensity Discharge Lamp(高輝度放電灯)
(電子安定器)
AC100V
回路構成 : PFC+矩形波コンバータ(PWM1コンバータ)
5V : IC、デジタル信号処理
12V : 信号処理
18V : 音声出力(無いものもあり)
360V~380V : バラスト出力用(PFC出力) 280W~360W
⇒ランプ用電圧:20V~90V
360V~380V
PFC
回路
矩形波
コンバータ
電子
バラスト
5V,12V,18V
20V~90V
図2.3 スイッチング電源回路使用例(プロジェクタ)
出展:スイッチング電源の現状と動向2010,(社)JEITA,2010年3月.
12
2.スイッチング電源回路の使用例
W ( J )  P(W )  T (sec) 
P(W )
f ( Hz)
W:一周期間に供給されるエネルギー
入力 :三相AC200V(相電圧115V)/400Hz⇒周波数変換後AC110V/60Hz
出力 :DC24V、他(コンセント出力:AC110V/60Hz、Em Power出力:DC10-15V)
三相AC200V/400Hz
相電圧:115V
AC110V/60Hz
周波数
変換回路
24V、他
整流・平滑
スイッチング
コンバータ
Em Power:最近の旅客機に搭載されている乗客席用の航空機内直流(DC)電源の世界標準規格。 DC10-15Vの
電圧が出力される。コネクタは円形。中央に2本の接続端子がある。
13
図2.4 スイッチング電源回路使用例(航空機内)
出展:スイッチング電源の現状と動向2010,(社)JEITA,2010年3月.
2.スイッチング電源回路の使用例
入力(HVバッテリー):201.6V
⇔出力:DC500Vモータ用・ジェネレータ用インバータ、他⇔三相AC電圧
⇒出力:DC14V(補器バッテリー)
500V ブラシレスDCモータ
バッテリー
201.6V
昇圧
コンバータ
降圧
コンバータ
図2.5 スイッチング電源回路使用例(ハイブリッド車)
出展:スイッチング電源の現状と動向2010,(社)JEITA,2010年3月.
14V
モーター用
インバータ
三相
AC
ジェネレー
タ用
インバータ
三相
AC
補器
バッテリー
14
2.スイッチング電源回路の使用例
パワーコンディショナ
家庭用(5.5kW以下) 定格入力電圧:250V ,最大入力電圧:380V程度,出力:AC100V
産業用(10kW以上) 定格入力電圧:300V ,最大入力電圧:500V程度,出力:AC100V
家庭用
DC250V-380V
AC
100V
パワーコンディショナの駆動回路用電源、制御用電源
駆動回路用電圧:10V~15V
制御回路用電圧:±12V, 5V,3V
図2.6 スイッチング電源回路使用例(太陽光発電システム:パワーコンディショナ)15
出展:スイッチング電源の現状と動向2010,(社)JEITA,2010年3月.
2.スイッチング電源回路の使用例
標準出力電圧:19V
(16Vもある)
出力電圧:5V~12V
出力電圧:12V
出展:スイッチング電源の現状と
動向2010,(社)JEITA,
2010年3月.
図2.7 スイッチング電源回路使用例(ACアダプタ)
16
第2章:演習問題
2.1 スイッチング電源回路にはいろいろな機器に使われている。どのような事が必要と
されるか?
・高い信頼性
・安全性
・高効率、低消費電力(動作時及び待機時の電力)
・高性能
・小型、軽量
・低コスト
・低ノイズ
17
3.定電圧回路(電圧安定回路)
定電圧回路とは、入力電圧や負荷電流が変動したときに出力電圧Eoが変化するのを
防止し一定にするための回路であり、安定化された直流電圧(出力電圧Eo)を負荷
に供給する役割を果たしている。図3.1 に示すように,定電圧回路にはリニア方式とス
イッチング方式があります。リニア方式にはシリーズレギュレータとシャントレギュレータが
ありますが,現在は,シャントレギュレータはほとんど使われておらず,シリーズレギュレー
タで代表されます。
定電圧回路
リニア方式
シリーズレギュレータ
シャントレギュレータ
スイッチング方式
図3.1
スイッチングレギュレータ
定電圧回路の分類
18
3.定電圧回路(電圧安定回路)
r
Io
R
Ei
Eo
Io
r
R
Ro Ei
Eo
Ro
I
Eo  Ei  (r  R) I o
(3.1)
Ei  r ( I  I o )  E o  r (
 rI o  (1 
Eo
(a) シリーズレギュレータ
図3.2
Ei  rI o
1  r R 
Eo
 Io ) E o
R
r
)E o
R
(3.2)
(b) シャントレギュレータ
リニア方式定電圧回路の原理
19
3.定電圧回路(電圧安定回路)
入力電圧Eiもしくは出力電流(負荷電流)Ioが変化すると出力電圧Eoが変化してしまう。
このときに抵抗Rを変え、出力電圧Eoを一定にする。図3.2(a)では出力電圧Eoが低下
するとこれと連動して抵抗Rが減少する。また、図3.2(b)では、出力電圧Eoが低下する
とこれと連動して抵抗Rが増大する。このような動作で出力電圧Eoの低下が補償され
るが、一般的には図3.2(a)の方式が広く用いられている。
E o  Ei  ( r  R) I o
Ei  rI o
Ei  rI o
Eo
Eo
E o
0
R
Ei  (r  R) I o
0
Ei  rI o
1  r R 
R
R  Ei I o  r
(a)
図3.3
(b)
リニア方式定電圧回路の特性図
図3.2 (a)に示すシリーズレギュレータは、実際には次のような構成になっている。 20
3.定電圧回路(電圧安定回路)
制御回路
誤差増幅器
比較回路
検出回路
Ei
Eo
基準電圧
図3.4
Vref.
シリーズレギュレータの構成
Ei
差動増幅器、ゲイン:α
Eo
Vref
+
βEo
-
帰還量:β
帰還回路
図3.5
シリーズレギュレータの考え方
21
3.定電圧回路(電圧安定回路)
図3.4に示すシリーズレギュレータは図3.5に示す差動増幅器と考えることが
できる。ここで、出力電圧Eoを求めると以下のようになる。
 Vref  E o   E o より Vref  (1   ) E o
Eo 
Eo 

Vref   1なら
1  
Vref

 R1  R2
 
Vref
R2


 
(3.3)
となります。
つまり、式(3.3)で決まる一定の出力電圧Eoを得ることができる。
(式(3.3)のR1とR2は図3.6を参照)
以下、シリーズレギュレータとスイッチングレギュレータについて説明する。
22
3.定電圧回路(電圧安定回路)
3.1 シリーズレギュレータ
入力と出力の間に直列に接続されており、 Q1のベース電流をiB1調節してコレクタ・
エミッタ間vCE1を変化させることにより出力電圧Eoを一定にしている。このときの入力
電圧Eiと出力電圧Eoとの差はトランジスタの損失Pcとして消費される。
vCE1
Q1
r
熱
IO
R4
入力電圧
Ei
R3
iB1
vBE2
出力電圧
Eo
Q2
+
DZ
図3.6
R1
R2
VZ
シリーズレギュレータの構成
Pc  ( Ei  Eo )  I o
(3.4)
23
3.定電圧回路(電圧安定回路)
電圧V
入力電圧Ei
ここの部分はトランジスタの熱として捨てる。
出力電圧
Eo
この部分を負荷に供給する。
0
時間 t
図3.7
シリーズレギュレータの動作説明図
このときのシリーズレギュレータの出力電圧と入力電圧に対する出力電圧の変動
率(安定指数)は以下のようになります。
Eo 
S


R1
Ei  rI o  VBE1    R1  R2 (VBE 2  VZ )
h fe 2 R4
 R2 
Eo
R1

Ei h fe 2 R4
(3.5)
(3.6)
24
3.定電圧回路(電圧安定回路)
R1  36k,R4  11k,h fe 2  200とするとS  0.0164になります。
ここでh fe 2が十分に大きく式(3.5)第一項が十分に小さいとすると,出力電圧E oは基準
電圧と分圧抵抗だけで決まる直流電圧となります。
 R  R2
E o   1
 R2

R  R2
(VBE 2  VZ )  1
VZ
R
2

(3.7)
このシリーズレギュレータには以下のような特徴がある。
・部品点数が少ない。
・動作が安定しており、 ノイズがない。
・損失が大きい。
・放熱板などがあり、 大きく重い。
・入力電圧より高い出力電圧は出ない。
・入出力の絶縁が困難
25
3.定電圧回路(電圧安定回路)
3.2 スイッチングレギュレータ
スイッチングレギュレータはDC-DCコンバータと発振器および制御回路(基準電圧、比較回路、
増幅回路、時比率制御回路もしくは周波数制御回路)から成り、 DC-DCコンバータのスイッチ
Qの時比率(デューティレシオD=Ton/T) もしくは周波数を制御し出力電圧Eoを一定にする。これらは
①パルス幅制御(PWM:Pulse Width Modulation)方式
②周波数制御(FM:Frequency Modulation)方式 (※)
という。
DC-DCコンバータ
Q
IO
L
注)※印
スイッチング周波数制御方式、
パルス周波数制御方式ともい
う。
+
入力電圧
Ei
D
時比率制御回路
(V-PW変換器)
発振器
C
誤差増幅器
Ro
出力電圧
Eo
3つの方法がある。
・D一定でfを変える。
・Ton一定でToffを変える。
・Toff一定でTonを変える。
比較回路
基準電圧
発振器及び
制御回路
26
図3.8
スイッチングレギュレータの回路例:降圧形(Buck形)コンバータ
3.定電圧回路(電圧安定回路)
スイッチがオンするとコイルには時間に対して直線的に増加する電流が流れ、オン期間
の終わりには( LI P2 / 2)なるエネルギーが蓄えられることになる。
コイル(インダクタンス) Lに電流iが流れると、その電流を打ち消す方向に電圧が誘起される。
このことよりコイルに定電圧Eが加わった時に流れる電流は時間に対して直線的に増加する
電流となる。
Ee EL
E  Eo
di
di
E
0 E  L i  t  i
t
dt
dt
L
L
(3.8)
IP
i
0
t
Ton
図3.9 コイルに流れる電流
次にTon : オン期間,Toff : オフ期間,T : 一周期間(T  Ton  Toff ),I L :コイルLを
流れる電流(平均値)として降圧形コンバータの出力電圧Eoを求める。
27
3.定電圧回路(電圧安定回路)
オン期間にコイルに蓄えられるエネルギーはオフ期間に負荷に放出されるエネルギー
に等しく、次の式が成立つ。
Ei  Eo I LTon  Eo I LToff , Ei I LTon  Eo I L Ton  Toff   Eo I LT これよりE oは以下となる。
Eo 
Ton
E i  D  E i T
ただし,D  Ton T ,I L  I o
(3.9)
1
IL
Q
0.8
Eo
Ei
Io
L
Ei
0.6
D
C

Ro
Eo
0.4
0.2
iL
0
0
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
I L  Io
t
D ( Ton / T )
図3.10 降圧形コンバータにおける時比率(デューティレシオ)と入出力電圧比
28
3.定電圧回路(電圧安定回路)
定常状態ではt  0とt  T時刻にコイルに流れる電流の変化はなく,e   Ldi / dt   0
となり,コイルに発生する電圧の一周期間の平均値はゼロになる。
VL
面積が等しくなる。
Ei  E o
Q
Ei  E o
Io

0
Eo
Ei
L
Ei
D
C

Ro
Eo
IL
iL 
Ei  E o
t  i L (0)
L
(a) Qオン期間
iL
Q
Io  I L
Io
Eo

0t
t1
0
Ton
T
Toff
T
t
Ei
Eo
di
t  L L  Eo  0
L
dt
E
i 0 E
LsI L s   i L 0  o  0  I L s   L  o2
s
s
Ls

L
D
Ro
C
i L  i L t1  
IL
(b) Qオフ期間
29
図3.11 降圧形コンバータにおけるコイル電圧と電流
Eo
3.定電圧回路(電圧安定回路)
オン期間に入力電圧がダイオード両端に現れる。この電圧がLCで平滑され、その平均値
が出力電圧になる。
Io
L
Q
Eo 
Ton
Ei  D  Ei T
Eo : 高い
(3.9)
Ei
VD
D C

Ro
Eo
Eo : 低い
図3.12 降圧形コンバータにおけるスイッチのオン期間と出力電圧
30
3.定電圧回路(電圧安定回路)
スイッチングレギュレータには発振器の付いていないものもあり、これを自励式といいます。
スイッングレギュレータ
他励式
パルス幅制御方式
周波数制御方式
自励式
図3.13
周波数制御方式
発振方式によるスイッチングレギュレータの分類
これらのスイッチングレギュレータの実際の構成は図3.15になります。
DC-DCコンバータ
Ei
時比率制御回路
誤差増幅器
(V-PW変換器)
誤差
(電圧)
発振器
比較回路
Eo
基準電圧
(a) 他励式のパルス幅制御式
図3.14 スイッチングレギュレータの実際の構成
31
3.定電圧回路(電圧安定回路)
DC-DCコンバータ
Ei
周波数制御回路
誤差増幅器
(V-F変換器)
誤差
(電圧)
比較回路
Eo
基準電圧
発振器
(b) 他励式の周波数制御方式
DC-DCコンバータ
誤差増幅器
比較回路
Ei
Eo
・発振器やPWM制御回路が付いてない。
・入力電圧や出力電圧が変化⇒自動的にDが変化する。
・負荷電流が変化⇒自動的に周波数が変化する。
基準電圧
(c) 自励(Self-commutated )式の周波数制御方式
図3.15 スイッチングレギュレータの実際の構成
32
3.定電圧回路(電圧安定回路)
スイッチングレギュレータはシリーズレギュレータに比較して以下のような特徴を持っている。
・損失が少ない。
・小型、軽量。
・入力電圧より高い出力電圧を出すことができる。
・入出力の絶縁が容易
・部品点数が多い。
・ノイズが大きい。
・安定性はシリーズレギュレータより劣る。
降圧形コンバータの入力電圧の変動に対する出力電圧の変動率Sは以下となります。
Eo
D2
D2
S


Ei
D1  Z o / Ro   Eo D  Eo
(3.10)  (5.19)
 : 帰還量
33
3.定電圧回路(電圧安定回路)
シリーズレギュレータ
E
R1
36k
S o 

 0.0164
Ei h fe 2 R4 200  11k
0.25
0.2
β=0.1
β=0.2
0.15
D  0.5
S
0.1
シリーズレギュレータ
S  0.0164
0.05
0
0
図3.16
20
40
60
Eo(V)
80
100
120
降圧形コンバータにおける出力電圧の変動率S
34
3.定電圧回路(電圧安定回路)
リンギングチョークコンバータの一周期間におけるスイッチの損失を図3.17に示して
いる。リンギングチョークコンバータの場合、この他にも、スイッチングトランスの損失(鉄損
と銅損)及びダイオードの損失(順方向損失とリカバリー損失)等を生じるがシリーズレギュ
レータと比較すると非常に小さい。
VQP
VQ
vQ
IP
v Q , iQ
iQ
I P
0
Pr
PQ
0
t0
Pf
Pon
Ton
tr
Toff
T
tf
t
Pon:オン期間の損失、PrおよびPf:立上りおよび立下り時間におけるスイッチング損失
図3.17
一周期間におけるスイッチの損失(リンギングチョークコンバータの場合)
35
3.定電圧回路(電圧安定回路)
1
Pr 
T
1
Pf 
T

tr
0

tf
0
1
vQ iQ dt 
T
1
vQ iQ dt 
T

tr
0


t
VQ 1 
 tr
tr
0
VQP
VQ I P  t r

t
  I P dt 
tr
6T


t
t
 I P 1 
 t
tf
f


V I t
dt  QP P f

6T

PSW  Pr  Pf
Pon  iQ  rms  Ron
2
PQ  PSW  Pon 

1
VQ I P  t r  VQP I P  t f   iQrms 2 Ron
6T
f
VQ I P  t r  VQP I P  t f   iQrms 2 Ron
6
(3.11)
ただし,PSWはスイッチング損失,iQ  rmsはiQの実効電流,Ronはオン抵抗を示しています。
それぞれの特徴をまとめると表3.1 のようになります。現在は、小型・軽量で
あるために、いろいろな製品にスイッチングレギュレータが採用されている。
36
3.定電圧回路(電圧安定回路)
表3.1 二方式の比較
効率
大きさ・重さ
シリーズレギュレータ
スイッチングレギュレータ
低い(30~80%程度)
高い(85~97%程度)
大きい、重い
小型、軽い
少ない
多い
良好
普通(シリーズレギュレータより劣る)
小さい
シリーズレギュレータより大きい
部品点数
安定性
出力電圧の
変動率S
ノイズ
出力電圧
出力リプル電圧
S
Eo
R1

Ei h fe 2 R4
D2
S
D  Eo
ない
輻射ノイズ、伝導ノイズともに大
入力電圧以下
入力電圧以上も可
小さい(10mV以下)
大きい(大きさは出力電流と出力コンデンサ
のインピーダンスによる)
出力インピーダンス
小さい
シリーズレギュレータより大きい
シリーズレギュレータより遅い
過渡応答速度
早い
ワイド入力対応
困難
可能
部品点数が少なく、高い。
普通(部品点数が多い分シリーズレギュレー
困難(大きな電源トランスが必要になる。)
容易
信頼性
絶縁
(減衰時定数は降圧形で200μs程度)
タより劣る)
37
第3章 演習問題
3.1 (
)内に適当な言葉を入れなさい。
・定電圧回路を大別すると( ① )と( ② )に分けることができる。現在は、小型・軽
量であるために、いろいろな製品にスイッチングレギュレータが採用されている。
・スイッチングレギュレータはDC-DCコンバータと制御回路から成り、スイッチング素子Qの
( ③ )もしくは( ④ )を制御し出力電圧Eoを一定にする。
これらは( ⑤ )方式及び ( ⑥ )方式という。
( ⑤ )方式ではスイッチング周波数は一定で( ③ )を制御する。
( ⑥ )方式では
(1)( ⑦ )期間は一定で( ⑧ )期間を変化させ周波数を変える方式
(2)( ⑧ )期間は一定で( ⑦ )期間を変化させ周波数を変える方式
(3)( ⑦ )期間と( ⑧ )期間の比率は一定で周波数を変える方式
の3つの方式がある。
この他にも自励式がある。この方式では入力電圧等が変化すると自動的に( ③ )が変化
し出力電圧を一定にするように制御し、負荷が変動すると( ④ )も変化する。
38
(注)サンケン電気では、矩形波コンバータをオフ期間固定でオン期間を制御する方式を特にPRC(Pulse Rate Control)と言っている。
4.スイッチングコンバータの代表的な回路方式
表4.1
スイッチングコンバータの代表的な回路方式
スイッチ
代表的回路方式
素子数
降圧形
チョッパ方式
非絶縁形
非共振形
(矩形波)
コンバータ
用途
他励式
/PWM方
式
DC-DC
コンバータ
(バック形、カレントステップアップ形)
一石式
昇圧形
(ブースト形、ボルテージステップアップ形)
昇降圧形
(バックブースト形、極性反転形)
リンギングチョーク形
自励式
/FM方式
(RCC、自励式フライバック形)
フライバック形
絶縁形
制御方式
一石式
(オンオフ形、他励式フライバック形)
フォワード形
(オンオフ形)
プッシュプル形
(センタータップ形)
ハーフブリッジ形
多石式
他励式
/PWM方
式
AC-DC
コンバータ
フルブリッジ形
共振形
コンバータ
絶縁形
電流共振形
多石式
電圧共振形
一石式
他励式
/FM方式
部分共振形
一石式
自励式/
FM方式
AC-DC
コンバータ
39
4.スイッチングコンバータの代表的な回路方式
Q
(a) 降圧形
(buck形)
L
VL (Toff )
Io
+
Ei
D
Ro
C
Ton
Ei  DEi
T
D  Ton T
Eo 
Eo
VQP  Ei
(Step down 形)
L
(b) 昇圧形
(boost形)
Ei
Io
D
VL (Toff )
Eo  Ei 
1
1
Ei 
Ei

D
1 D
D   Toff T

+
Q
Ton
T
Ei 
Ei
Toff
Toff
C
Ro
Eo
VQP  E o 
Q
Io
D
Eo  
(c) 昇降圧形
(buck-boost形) Ei
C
L
+
Ro
VL (Toff )
図4.1 チョッパ方式非絶縁形コンバータ
Eo

1
Ei
1 D
Ton
D
Ei  
Ei
Toff
D
D
Ei
1 D
VQP  Ei  E o 
1
Ei
1 D
40
4.スイッチングコンバータの代表的な回路方式
(a) 昇降圧形コンバータ(非絶縁)
(b) フライバック形コンバータ(絶縁)
図4.2 フライバック形コンバータへの展開
41
4.スイッチングコンバータの代表的な回路方式
(a) 降圧形コンバータ(非絶縁)
(b) フォワード形コンバータ(絶縁)
図4.3 フォワード形コンバータへの展開
42
4.スイッチングコンバータの代表的な回路方式
D Ei
D Ei




D n 1 D n
n  N1 N 2
Eo 
(a) リンギングチョーク形
VQP  Ei  nE o  Ei (1  D)
D Ei
D Ei



D n 1  D n
 Ei  nEo  Ei 1  D 
Eo 
(b) フライバック形
VQP
D1
Ei
n
 Ei (1  D)
Eo  D 
D2
(c) フォワード形
VQP
43
図4.4 矩形波絶縁形コンバータ
4.スイッチングコンバータの代表的な回路方式
Ei
Eo  2 D 
n
VQP  2 Ei
(d)プッシュプル形
Eo  2 D 
Ei
E
 D i
2n
n
VQP  Ei
(e) ハーフブリッジ形
Ei
Eo  2 D 
n
VQP  Ei
(f) フルブリッジ形
44
図4.4 矩形波絶縁形コンバータ
4.スイッチングコンバータの代表的な回路方式
スイッチング周波数を上げると、一周期間に供給する消費電力量(エネルギー)が減少する
ためにスイッチングコンバータを小形化できるが、スイッチング損失が増えてしまう。そのた
めに、実際には小形化が出来ません。
RCC の場合
LP :トランスの励磁インダクタンス( H ) , I P : LPを流れる励磁電流のピーク値( A)
 :トランスの電力効率 , Po : 出力電力(W )  1秒間の電力量(Ws  J )
 Po (W )  1(sec)  Po (Ws  J ) , f : スイッチング周波数( Hz) , T : 一周期間(sec)
W : 一周期間に供給されるエネルギー
W (J ) 
LP I P2
2
 PoT 
PQ  PSW  Pon 

Po
f
(4.1)
1
VQ I P  t r  VQP I P  t f   iQrms 2 Ron
6T
f
VQ I P  t r  VQP I P  t f   iQrms 2 Ron (3.11)
6
スイッチング損失
オン期間の損失
45
4.スイッチングコンバータの代表的な回路方式
そこで、スイッチング損失を減らす技術として共振形コンバータが開発されました。電圧も
しくは電流を共振させ、ZVS(Zero voltage switching)又はZCS(Zero current switching)
させることによりスイッチング損失を大幅に減らすことができました。
ゼロクロスでスイッチさせる。
VQ,iQ
0
t
図4.5 ZVS及びZCSの説明図
PQ  PSW  Pon 
f
VQ I P  t r  VQP I P  t f   iQrms 2 Ron
6
(3.11)
電圧か電流のいずれかをゼロにするとスイッチング損失を削減できる。
46
4.スイッチングコンバータの代表的な回路方式
ie
Ci:電流共振コンデンサ、Cv:電圧共振コンデンサ
・ハーフブリッジ構成
・電流共振コンデンサと電圧共振コンデンサが付いている。
・二次側は全波整流。
・Q1とQ2が交互にDuty50%でオンオフする。
・出力電流(励磁電流)が共振し正弦波になる
・Q1,Q2はZVS動作している。 ZVS : Zero Voltage Switching
・出力電圧はFM制御。
・効率が比較的に良く、ノイズも少ない。
(a) 電流共振形(SMZ ; Soft-switched Multi-resonant Zero-cross コンバータ)
図4.5 共振絶縁形コンバータ
47
4.スイッチングコンバータの代表的な回路方式
・QはZVS動作している。
・出力電圧はFM制御。
(b) 電圧共振形
(電圧共振
フライバック形)
Lr:共振用リアクトル、Cr:共振コンデンサ
・オンディレー回路でΔt遅らせ、
ターンオン時の損失Prを削減
している。
(c) 部分共振形
(部分共振形
RCC)
VQ
iQ
Δt
Cr:共振コンデンサ
図4.5 共振絶縁形コンバータ
Pr
PQ : Loss
48
4.スイッチングコンバータの代表的な回路方式
表4.2
主な回路方式
回路方式の特徴と主な用途
特
徴
主な用途
1. チョッパ方式
非絶縁形
・DC入力の昇圧、降圧、昇降圧
・非絶縁形
・DC/DCコンバータ
・降圧形:POL電源
・昇圧形:PFC回路
2. フライバック形
リンギング
チョーク形
・部品点数が少なく、コストが安い
・昇降圧形であるために出力電圧が
高い回路に有利
・AC-DCコンバータ
・消費電力の少ない電気・電子機器用
・出力電力の目安:250W/150W程度
3. フォワード形
・制御等も安定で、最も一般的な
方式
・AC-DCコンバータ
・フライバック形より電力が多い機器
で広範囲に使用可能
・出力電力の目安:数10W~1.5kW程度
4. プッシュプル形
・回路が複雑、部品点数多い
ハーフブリッジ形
フルブリッジ形
・AC-DCコンバータ
・フォワード形以上の電力を供給するとき
に使用
・出力電力の目安:数百W~数kW 程度
5. 共振形
コンバータ
・AC-DCコンバータ
・広範囲に使用可能
・高効率であり、小形化可能
・低ノイズ
注1)POL : Point of load 注2)PFC ( Power factor correction ) 回路:力率改善回路
注3) 出力電圧
T
E
D Ei
D Ei
フライバック形,RCC : Eo  on  i 



, n  N1 N 2
Toff n
D n 1  D n
フォワード形,ハーフブリッジ形 : Eo  D  Ei / n ,プッシュプル形,フルブリッジ形 : Eo  2 DEi / n
49
第4章 演習問題
4.1 POL(Point of load)電源として最も多く使われている方式はどれか?
また、それはどういう理由からか?
4.2 プッシュプル形、ハーフブリッジ形、フルブリッジ形の使い方の差について説明せよ。
ただし、各方式の出力電圧とスイッチに加わる電圧は以下となっている。
表A4.1
プッシュプル形
ハーフブリッジ形
フルブリッジ形
Eo
2 DEi n
DEi n
2 DEi n
VQP
2 Ei
Ei
Ei
用途
4.3 スイッチング周波数を上げるとトランス等小形化できるが、スイッチング損失が増えて
しまう。そこで、これを解決するためにスイッチング損失を減らす技術として考え出され
50
たコンバータとは何か? また、どのような技術か?
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
チョッパ方式非絶縁形コンバータは固定周波数でスイッチングしており、出力電圧はPWM
により一定に制御されている。
5.1 降圧形(Buck形、カレントステップアップ形)コンバータ
5.1.1 降圧形コンバータの動作原理と静特性
降圧形は入力電圧より低い出力電圧を取り出す回路です。
VL
Q
L
Io
+
Ei
D
Ro
C
Eo
図5.1 降圧形コンバータの構成
表5.1 降圧形コンバータの動作状態
1
2
Q
on
off
D
off
on
51
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
VG
0
VQ
VQP  E i
0
Eo
VD
Ei
0
VL
Ei  E o
0
Eo
i L  iQ  i D
iL
1:スイッチオン期間
2:スイッチオフ期間
Ei
I L  Io
図5.2 降圧形コンバータの動作波形
IP
i L
0
iQ
iQP
0
iD
0
t0
t1
1
2
52
T
t
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
降圧形コンバータはスイッチング電源の基本的な動作をする回路であり、スイッチ素子Q
を高周波でスイッチさせ矩形波の入力電圧を作る。これを、LCフィルタにより平滑しDCの
出力電圧を得ている。
(a)動作状態1
(b)動作状態2
図5.3 降圧形コンバータの各動作状態における等価回路
スイッチQがオンするとコイルLの両端に電圧(Ei-Eo)が加えられコイルが励磁される。回
路には時間に対して直線的に増加する電流iLが流れ、その結果、コイルに蓄えられるエネ
ルギーも時間に対して直線的に増加する。スイッチQがオフすると、ダイオードDがオンし先
程とは逆方向にコイルLに電圧Eoが加えられる。このため、回路を流れる電流iLは時間に
対して直線的に減少し、先の動作でコイルLに蓄えられたエネルギーはキャパシタCに放出
される。スイッチQがオン期間にコイルに蓄えられるエネルギーとオフ期間に放出されるエ
53
ネルギーは等しく、この動作を繰り返すことにより負荷に電力を供給する。
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
それぞれを次のように定め出力電圧、他を求める。
Ton : スイッチQのオン期間,Toff : スイッチQのオフ期間,T ( Ton  Toff ) : 一周期間
i L : コイルを流れる電流,I L : i Lの平均値,i L : i Lの変化分,I i : 平均入力電流,
I o : 平均出力電流,iQ : スイッチQの電流,iQP : スイッチQのピーク電流,
VQP : スイッチ両端のピーク電圧,D( Ton / T ) : オンデューティレシオ(時比率),
D   Toff / T  1  D
コイルに流れる電流が連続している時,オン期間にコイルに蓄えられる
エネルギーはオフ期間に放出されるエネルギーに等しく次式が成立つ。
Io
Q
L
IL
Ei  Eo I LTon  Eo I LToff
Ei I L Ton  E o I L Ton  Toff   E o I L T Ei
D
Ro
C
Eo
これよりE oは
Ton
E i  D  E i T
となる。
Eo 
(3.7)
iQP
iL
i L
I L  Io
0
t
54
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
また、Ei I i  E o I oより
Ii 
Eo
E
I
I o  D  I o or I o i I i  i
Ei
Eo
D
(5.1)
が得られる。さらにi L、iQP、VQPは以下となる。
i L 
E i  E o 
Ton 
E i  E o 
DT
L
L
E  E o 
i
iQP  I o  L  I o  i
DT
2
2L
VQP  Ei
(5.4)
(5.2)
(5.3)
式(3.7)の出力電圧は理想的な状態における理論式である。実際にはスイッチの抵抗分
やコイルの抵抗およびダイオードの抵抗分に相当する抵抗が存在するために、出力電
圧は式(3.7)の出力電圧より下がってしまう。
55
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
r1
Io
L
iL
Io
L
iL
+
C
Ei
r2
Ro
+
C
eo
(a)動作状態1
Ro
eo
(b)動作状態2
r1:スイッチがオン期間における等価抵抗(スイッチの抵抗とコイルの抵抗)
r2:スイッチがオフ期間における等価抵抗(ダイオードの抵抗とコイルの抵抗)
図5.4 降圧形コンバータの各動作状態における実際の等価回路
オン期間にコイルに蓄えられるエネルギーはオフ期間に放出されるエネルギーに
等しく次式が成り立つ。
Ei  I L r1  Eo I LTon  VL I LToff  Eo  I L r2 I LToff
Ei  I L r1  Eo Ton  Eo  I L r2 Toff
ここで、I L  I o を代入する。
56
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
Ei  I o r1  Eo Ton  VLToff  Eo  I o r2 Toff
Eo 
Ei Ton  I o r1Ton  r2Toff 
T
 DEi 
 E oT  Ei Ton  I o r1Ton  r2Toff 
Io
r1Ton  r2Toff 
T
上式より,コンバータの出力インピーダンスZ oは以下となる。
Zo  
E o r1Ton  r2Toff

 Dr1  D r2  r
I o
T
Eo
(5.5)
0
Io
上式においてrを平均損失抵抗という。次に式 (5.5)をE oの等式に代入し整理すると
E oと昇降圧Gが求められる。
E o  DEi  I o Z o  DEi 
G
Eo
1
 D
Ei
1  Z o / Ro
Eo
DEi
Z o  Eo 
Ro
1  Z o / Ro
(5.6)
(5.7)
57
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
図5.5 出力インピーダンスと出力電圧
図5.6 出力インピーダンスと出力抵抗の比に対する出力電圧
58
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
Eo I o
E I
1  DEi 
1
コイルの鉄損による効率

 
 o o 
(5.8)
Ei I i
Ei DI o DEi  1  Z o Ro  1  Z o Ro
低下は含んでいません。
i T
1 t3
T VL D T
リプル電圧 eo   i L  I L dt  L 

ここで VL  Eo  I o r2 を代入します。
C t1
8C
8C
L
r 
T E o  I o r2 D T D T 2 
eo 


E o 1  2 
(5.9)
8C
L
8LC
R
o 

電力効率  
eo 
1 t3
i L  I L dt
C t1
T
off
i L  Toff
1  2on i L
2

tdt

0 Toff  t  2
C  0 Ton
T
1 i L

C Ton
Ton
2
 
dt 

 
Toff
t 2 
1 i L  t  Toff t  2


  
C Toff 
2
 0
 2 0
2
2
1 i L  Ton2  1 i L  Toff 



C Ton  8  C Toff  8 
Toff  i L T
i  T

 L  on 
C  8
8  8C
図5.7 降圧形コンバータのコイル電流と出力電圧
59
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
5.1.2 パルス幅制御方式コンバータの動作モード
コイルを流れる電流が連続しているときを電流連続モード(CCM: Continuous current
mode)、不連続のときを電流連続モード(DCM: Discontinuous current mode)という。
また、この中間のモード、コイルを流れる電流がゼロになったときにスイッチをオンさせ
電流を増加させるモードを臨界モード(BCM: Boundary current mode)という。
動作モード
電流連続モード(CCM: Continuous current mode)
iL
i L
0
Io
I o  i L 2
t
電流臨界モード(BCM: Boundary current mode)
iL
Io
0
I o  i L 2
t
電流不連続モード(DCM: Discontinuous current mode)
iL
0
Io
I o  i L 2
t
60
図5.8 パルス幅制御降圧形コンバータの動作モード
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
5.1.3 電流不連続モードにおける出力電圧ほか
Ei  Eo I LTon  Eo I LTd
これより電流不連続モードにおける出力電圧は以下となります。
Ton
Ton
Eo 
 Ei
(5.10)
電流連続時の出力電圧 : E o 
 Ei
Ton  Td
Ton  Toff
Td  Toff のためEo  Eo
つまり,電流不連続になると式(5.10)のTdがToffより小さいために電流臨界モードのとき
よりも上昇してしまうことになります。図5.9はその様子を表したものです。
※Tdについては図5.9を参照してください。
コイル電流が不連続になる限界を求めると以下となります。
Io  I L 
E  E o  E o
E  Eo Eo T
i L Ei  Eo 

DT  i

T i

2
2L
2L
Ei
Ei
2L
(5.11)
次にTdを求める。
E i  E o 
L
DT 
E  Eo DT  Ei 
Eo
Td  0 より Td  i

 1 DT
L
Eo
E
 o

(5.12)
61
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
t 0とt 2時刻のコイル電流の変化はなく,v L   Ldi / dt   0となり,
面積が等しくなる。
VL
コイルに発生する電圧の一周期間の平均値はゼロになる。
電流連続モード
Ei  E o
0
E o
電流不連続モード
Ei
Eo
※出力電圧
Eo : 電流連続モード
Eo : 電流不連続モード
iL
i L
0t
t1 t 2
0
Ttdd
Ton
T
t
Io  I L
t
Toff
T
出力電流が少なくなり電流不連続になると、出力電圧が上昇する。
図5.9 降圧形コンバータの電流不連続モードでの動作波形
62
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
不連続期間Δtも以下のように求めることができます。
 E  E o  

E 
  T 1  i D 
t  T  Ton  Td   T  DT 1  i
Eo


 Eo 
(5.13)
出力電流を一定にして時比率を小さくしていくと電流不連続現象が発生しますが,そのと
きの時比率は式(5.14)で与えられます。式(5.14)の時比率で降圧形コンバータは電流不
連続モードに入ります。
D
Eo
Ei
(5.14)
 式(5.13)より,D 
Eo
のときにt  0 になり電流不連続になる。
Ei
また、電流不連続モードでの出力電流は式(5.15)になります。
Io 
T i  T  Td
1 i L

(Ton  Td )  on  L  on
T 2
T
2  Ton
E i E i  E o  D 2 T
Io 

Eo
2L
(5.15)
 i L
E  E o 
E
E
 
D i  i
DT  D i
2
Eo
2L
Eo

Eo 
Ton
T  Td
E
 Ei (5.10)  on
 i
Ton  Td
Ton
Eo
63
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
次に電流不連続モードにおける出力電圧を式(5.15)から求めることができます。
2 LEo I o  Ei Ei  E o D 2Tより
Ei
Eo 
2 LI
1 2 o
D TEi
(5.16)
LfI o
 K I とおくと式(5.16)と式(5.11)から電流不連続のときの昇降圧比Gと電流不
Ei
ここで、
連続が発生する限界KIが求められます。
G
Eo

Ei
Io 
LfI
i L Ei  E o DT E o D T Ei DD 
DD 



, o 
より
2
2L
2L
2 Lf
Ei
2
KI 
DD 
2
1
1
1


2 LI
2 LfI
2K
1 2 o
1  2 o 1  2I
D
D TEi
D Ei
(5.18)
(5.17)
64
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
時比率Dを変えたときの出力特性,電流不連続が発生する限界のKIと電流不連続のときの
昇降圧比Gを図5.10に示します。
CCM
Eo
Ei
DCM
 LfI o 

K I  
 Ei 
図5.10 降圧形コンバータの出力特性
65
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
5.1.4 動特性
◆出力電圧のレギュレーション機構と変動率
Gvv Ei G vd D  E o ここで,
G vd D G vd  E o    G vd Eo
Gvv Ei  Gvd E o  E oより
E o 
Gvv
Ei
1  Gvd
図5.11 スイッチングレギュレータの直流に対するレギュレーション機構
D
E o
Gvv
1  Z o Ro
D2
変動率 S 



r
Ei 1  Gvd



r 
1 2 

D1  Z o / Ro   E o 1  2 
E
Ro 
Ro 

1  o 

 D 1 Z / R 
o
o




ここで,Ro  Z o,Ro  r2 とすると次のようになります。
D2
S
D  Eo
(5.19)
66
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
◆出力インピーダンス
ΔEo:負荷抵抗が微小変化しとしたときの出力電圧の微小変化
E o  ( I o  I o )( Ro  Ro )  I o Ro  I o Ro  I o Ro  I o Ro  I o Ro  I o Ro  I o Ro  I o Ro
両辺をE oで割り整理すると
Ro
I o
Ro
I o E o Ro
I o
E Ro
1 
1  o 
 Io
 1  Ro


1 

E o
E o
E o Ro E o
E o Ro 
Ro E o
となります。これより,出力インピーダンスZは以下となります。
DZ o

r2
Ro2 E o



D
1

Z
/
R


E

o
o
o 1 
Ro
E o
Ro
E o Ro

Z 



E o Ro
R E o
I o

r 

1 1 o 
D  E o 1  2 
Ro E o
E o Ro
Ro 







詳細計算を
次ページに示す。

r 
D1  Z o / Ro    E o 1  2 
Ro 


DZ o
Zo


Eo 
r 
r 
1  2 
D  E o 1  2  1 
Ro 
D 
Ro 

(5.20)
67
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
Z o Eo
Z o Eo
1
D
E o
Gvr
Ro2 1  Z o / Ro
Ro2



r
Ro 1   Gvd



r 
1  2  D1  Z o / Ro    E o 1  2 


E
Ro 
Ro 

1  o 
 D 1 Z / R 
o
o




Z o Eo
D
Ro2 E o
Ro2
Ro2
DZ o




E o Ro
Eo


r 
r
D1  Z o / Ro    E o 1  2  D1  Z o / Ro    E o 1  2
Ro 
Ro






r 
D   E o 1  2 
Ro 
R E o
R

1 o 
 1 o 

E o Ro
Eo


r 
r 
D1  Z o / Ro    E o 1  2  D1  Z o / Ro    E o 1  2 
Ro 
Ro 


Z E
D o 2o
Ro
ここで,β=0.1,Eo=12V,D=0.5,r2=0.2Ω,Ro=12V/2A=6Ωすると,出力インピーダンス
Zは帰還をかける前の降圧形コンバータの出力インピーダンスZoの0.287倍に小さくなり
ます。
Zo
Zo
Z

 0.287 Z o
0.1  12  0.2  1  2.48
68
1
1 

0.5 
6 
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
5.1.5 降圧形DC-DCコンバータの特徴および用途
Ei
(特徴)
・出力電圧は入力電圧より低い。
・出力電流は入力電流より大電流になる。
・入力電圧と出力電圧は同一極性になる。
・スイッチには入力電圧と同じ電圧がかかる。
・出力が低電圧だと変動率が大きくなります。
0
Eo
0
E
D
D
変動率 S  o 

Ei
D1  Z o / Ro   Eo D  Eo
2
Ei
2
(5.19)
t
Eo

t1
t
 : 帰還量
・帰還量βを大きくしても制御機構が不安定になる領域がありません。
・入力電圧がステップ変化したときの出力電圧の応答はシリーズレギュレータより遅い。
時定数  
1
1  Zo
1 



2  L CRo 
(5.21)
  200s程度
(用途)
・12Vバッテリ-から5Vを取り出す場合。
・AC-DCコンバータの二次側出力である高電圧から低電圧を作り、負荷に供給する場合。
・POL(Point of load)電源
69
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
5.2 昇圧形(Boost形、ボルテージステップアップ形)コンバータ
5.2.1 昇圧形コンバータの動作原理と静特性
昇圧形は入力電圧より高い出力電圧を取り出す回路です。
VL
L
Io
D
Ei
+
Q
C
Ro
Eo
図5.12 昇圧形コンバータの構成
表5.2 昇圧形コンバータの 動作状態
1
2
Q
on
off
D
off
on
70
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
VG
0
VQP 
VQ
T
Ei
Toff
0
VL
Ei
0
Eo
E o  Ei
i L  iQ  i D
I L  Ii
iL
i L
IP
1:スイッチオン期間
2:スイッチオフ期間
0
iQ
図5.13 昇圧形コンバータ
の動作波形
iQP
0
IL 
iD
0
T
Io
Toff
Io
t1
t0
1
T
2
t
71
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
スイッチがオンするとコイル両端には入力電圧Eiが加えられ励磁される。回路には時間に
対して直線的に増加する電流iLが流れ、その結果、コイルに蓄えられるエネルギーも時間
に対して直線的に増加する。スイッチQがオフするとダイオードDがオンし、先程とは逆方向
にコイルLに電圧(Eo-Ei)が加えられる。このため、回路を流れる電流iLは減少しコイルLに
蓄えられたエネルギーは入力電圧に加算されてキャパシタCに放出される。スイッチQがオ
ン期間にコイルに蓄えられるエネルギーとオフ期間に放出されるエネルギーは等しく、この
動作を繰り返すことにより負荷に電力を供給します。
(a)動作状態1
(b)動作状態2
図5.14 昇圧形コンバータの各動作状態における等価回路
72
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
コイルを流れる電流が連続しているとき、出力電圧Eo、入力電流Ii、他は以下のように
求められます。
Ei I L Ton  E o  Ei I L Toff , Ei I L Ton  Toff   E o I L Toff これよりE oは
Eo 
T
1
Ei 
 E i Toff
D
Ii 
Eo
1
Io 
 I o or I o  D I i

Ei
D
(5.22)
となる。
(5.23)
Toff / T  D  : オフ期間の時比率
Ei Ton Ei DT

(5.24)
L
L
E DT
E DT
i
i
T
1
 i DP  I i  L  I L  L 
Io  i

Io  i
2
2
Toff
2L
D
2L
i L 
iQP
VQP  E o 
Ei
D
(5.25)
(5.26)
損失抵抗を考慮した実際の回路での出力インピーダンス、出力電圧、昇降圧比は
次のようになります。
73
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
降圧形と同様に求めることができます。
Ei  I L r1 Ton  VLToff  VL  Ton Ei  I L r1 
Toff
E o  Ei  VL  I L r2  Ei 
-
Ei
VL
+
Io
r2 D
L
Q
C
+ Ro
Eo
r1


Ton
Ei  I L r1   I L r2  T Ei  I L  Ton r1  r 2 
Toff
Toff
 Toff

ここで、I L Toff  I oTより I L 
T
I o が求められこれを代入する。
Toff
 T
 T
 E  T
 T

T
Ei  
I o  on r1  r 2   i  
I o  on r1  r 2 
T

 D  T


Toff
 off  Toff

 off  Toff

これよりZ oが求められる。
Eo 
Zo  
E o
T

I o Toff
 Ton
 1 D
1
r


r1  r 2  
r1  r 2   2 Dr1  D r 2   2

T
 D  D
D
 D
 off

(5.27)
次に式 (5.27)をE oの等式に代入する。
Eo 
G
Ei
E
E
E
1
 I o Z o  i  o Z o  Eo  i 
D
D  Ro
D  1  Z o / Ro
1
1

D  1  Z o / Ro
(5.29)
(5.28)
74
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
電力効率
リプル電圧
Eo 

Eo I o
Ei
I o D
1
1



Ei I i
Ei D  1  Z o / Ro I o
1  Z o Ro
eo 
(5.30)
eo
e DT E o  eo / 2DT
DT
Ton  o


Eo
t
CRo
CRo
CRo
(5.31)
eo
2
図5.15 昇圧形コンバータのコイル電流と出力電圧
75
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
5.2.2 不連続モードの出力電圧、ほか
VL
Ei
0
E o
電流連続モード
E o  Ei
Eo
電流不連続モード
※出力電圧
Eo : 電流連続モード
Eo : 電流不連続モード
i L
iL
T
I L  Io
td
0
iD
IL
Io  I D
t0
t1
t2
Ttdd
Ton
Toff
T
T
t
電流連続のとき
Io 
Toff
Io 
td
IL  ID
T
IL  ID
T
電流不連続のとき
i L
0
注) I o
t
図5.16 昇圧形コンバータの電流不連続
モードでの動作波形
76
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
出力電流が減少しコイルを流れる電流が不連続になると、出力電圧が上昇してしまう。下図
はこの様子を示したものです。電流不連続モードにおける出力電圧、他を表5.6に示してい
ます。
CCM
Eo
Ei
DCM
 LfI o 

K I  
E
i 

図5.17 昇圧形コンバータの出力特性
77
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
5.2.3 動特性
表5.7に示しています。
5.2.4 昇圧形DC-DCコンバータの特徴およびと用途
(特徴)
・出力電圧は入力電圧より高い電圧になる。
・出力電流は入力電流より小電流になる。
・入力電圧と出力電圧は同一極性になる。
・スイッチには出力電圧と同じ高い電圧がかかる。
・帰還量β を限度を超えて大きくすると,制御機構が不安定になる
・入力電圧がステップ変動したときの応答は,シリーズレギュレータより遅い
(用途)
・5V等の低電圧から15Vに昇圧する場合等
・力率改善回路(PFC回路: Power factor correction 回路)
・ワイドレンジ対応(AC 85V~265V)電源のプリレギュレータ
• ハイブリッド自動車や電気自動車の昇圧形コンバータ
78
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
昇圧形PFC 回路を図5.18 に示します。交流電圧を整流した脈動波電圧を,数十kHz 以上
の周波数で全周期にわたって入力電流の平均値が正弦波状に流れるようにスイッチします。
この動作により,高調波電流が減少します。図5.19 に,昇圧形PFC 回路を動作させたとき
の交流入力電流波形と,基本波電流および高調波電流の発生量を示します。交流入力電
流波形はほぼ正弦波になっており,電流は基本波電流だけで,高調波電流の発生はなくな
ります。
e
i
i
0
t
昇圧形PFC回路
D2
D4
L
D6
r
D1
Q2
D5
T
e
D3
DC-DCコンバータ
C
C2
+
+
R
Q1
図5.18 力率改善回路例と交流入力電流
79
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
PFC回路なし
e
i
基本波電流
e:50v/div
i:5A/div
クラスD規格値
2ms/div
1A/div
100Hz/div
0
PFC回路付き
e
i
基本波電流
e:50v/div
i:5A/div
クラスD規格値
1A/div
0
2ms/div
100Hz/div
0
図5.19 交流入力電流波形と高調波電流の発生量(P=380W,r=1Ω,C=1000μF)
80
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
5.3 昇降圧形(Buck Boost形、極性反転形)コンバータ
5.3.1 昇降圧形コンバータの動作原理と静特性
昇降圧形は入力電圧より低い電圧と高い電圧の両方を出力電圧として取り出すことが
できます。なお、出力電圧は入力電圧と逆極性になります。
Q
Ei
Io
D
C
L
+
Ro
Eo
VL
図5.20 昇降圧形コンバータの構成
表5.3 昇降圧形コンバータの動作状態
1
2
Q
on
off
D
off
on
81
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
VG
0
VQ
VQP 
T
Ei
Toff
0
VL
Ei
0
Eo
i L  iQ  i D
1:スイッチオン期間
2:スイッチオフ期間
IL
iL
IP
i L
0
iQ
図5.21 昇降圧形コンバータ
の動作波形
iQP
0
IL 
iD
Io
0
t1
t0
1
T
2
T
Io
Toff
82
t
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
昇降圧形は反転形ともいわれ、入力電圧と逆極性の出力電圧を取り出すことができる。
また、出力電圧の可変にできる範囲が非常に広い特徴がある。
(入力電圧よりも低い出力電圧、高い出力電圧ともに取り出すことができる。)
(a)動作状態1
(b)動作状態2
図5.22 昇降圧形コンバータの各動作状態における等価回路
スイッチQがオンするとコイル両端には入力電圧Eiが加えられ励磁される。回路には時間
に対して直線的に増加する電流iLが流れ、その結果、コイルLに蓄えられるエネルギー
も時間に対して直線的に増加する。スイッチがオフするとコイル電流は連続しているため
に、ダイオードDがオンになる。そうするとコイルに逆方向に出力電圧Eoが加えられ、ここ
に流れる電流は減少し蓄えられていたエネルギーが放出される。スイッチがオン期間に
コイルに蓄えられるエネルギーとオフ期間に放出されるエネルギーは等しく、この動作を
繰り返すことにより負荷に電力を供給する。
83
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
コイルを流れる電流が連続しているとき、出力電圧Eo、入力電流、他は以下のように求めら
れる。
Ei I L Ton   E o I L Toff , これよりE oは
Eo  
Ii 
Ton
D
Ei  
 E i 
Toff
D
(5.32)
Eo
D
D
Io 
 I o or I o 
 Ii
Ei
D
D
i L 
Ei DT
L
iQP  i DP  I L 
となる。
(5.33)
(5.34)
I
E DT
i L
i
T

Io  L  o  i
2
Toff
2
D
2L
(5.35)
または、
iQP  i LP  I i  I o 
E DT
E DT
i L D  D 
1

 Io  i

 Io  i
2
D
2L
D
2L
I i : オン期間の平均電流、I o : オフ期間の平均電流
VQP  Ei  E o 
Ei
D
(5.36)
84
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
損失抵抗を考慮した実際の回路での出力インピーダンス、出力電圧、昇降圧比は
次のようになります。
Ei  I L r1 Ton  VLToff
ここで、I L Toff  I o T
 E o  I L r2 Toff
より
IL 
T
Io
Toff
となり、これを代入しE oを求める。
 Ton
 Ton
 Ton

I L Ton r1  Toff r2  
T




Eo  
Ei 

Ei 
I0
r1  r2  
T



 Toff
Toff
Toff  Toff
 off



Zo  
 Eo
I o

T
Toff
 Ton
 1 D
1
r

 r1



 r2  
r1  r 2  
Dr

D
r


1
2
2
 T
 D  D
D 2
 D
off


 Ton
 Ton

D

E
T
D



Eo  
Ei 
I0
r1  r2    
Ei  I oZ o   
Ei  o Z o 

 Toff
Toff  Toff
Ro
 D

 D



Q
Io
r2 D
D
1
 Eo  
Ei 
(5.38)

D
1  Z o / Ro
r1
-
D
1
G 

(5.39)
Ei
C
L
Ro
D  1  Z o / Ro
+
+
VL
(5.37)
Eo
85
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
電力効率と出力電圧に含まれるリプル電圧は昇圧形と同じになります。
電力効率
リプル電圧

Eo I o
Ei I i
eo 

DEi
I o D
1
1


Ei D  1  Z o / Ro I o D 1  Z o Ro
(5.40)
eo
e DT E o  eo / 2DT DT
Ton  o


Eo
t
CRo
CRo
CRo
(5.41)
86
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
5.3.2 不連続モードの出力電圧、ほか
VL
Ei
電流連続モード
0
Eo
電流不連続モード
Eo
※出力電圧
Eo : 電流連続モード
i L
Eo : 電流不連続モード
iL
IL
0
電流連続のとき
iD
0
注) I o
Io  I D
t0
t2
t1
Td
Toff
Ton
T
T
t
Io 
Toff
Io 
td
IL  ID
T
IL  ID
T
電流不連続のとき
t
図5.23 昇降圧形コンバータの
電流不連続モードでの動作波形
87
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
出力電流が減少しコイルを流れる電流が不連続になると、出力電圧が上昇してしまう。下図
はこの様子を示したものです。電流不連続モードにおける出力電圧、他を表5.6に示してい
ます。
CCM
Eo
Ei
DCM
 LfI o 

K I  
E
i 

図5.24 昇降圧形コンバータの出力特性
88
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
5.3.3 動特性
表5.7に示しています。
5.3.4 昇降圧形コンバータの特徴および用途
(特徴)
• 極性反転形とも呼ばれ,入力電圧と逆極性の出力電圧を取り出すことができる
• 出力電圧は入力電圧より低い電圧と高い電圧のどちらも取り出すことができ,出力電圧の
範囲が非常に広い
• スイッチには高い電圧がかかる
• 出力電圧が低電圧だと変動率が大きくなる
• 帰還量β を限度を超えて大きくすると,制御機構が不安定になる
• 入力電圧がステップ変動したときの応答は,シリーズレギュレータより遅い
(用途)
• 電池などの正電源から負電源を作る場合
• メモリIC 用負電圧を作る場合(ただし,以前は負電圧が必要だったが,現在は必要と
しない)
5.4 3方式の纏め
次ページ以降に表として示します。
89
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
表5.4 理想的な状態におけるチョッパ方式非絶縁形コンバータの静特性,ほか
出力電圧Eo
入力電流Ii
降圧形
DEi
DIo
昇圧形
1
Ei
D
1
Io
D
D
Io
D
昇降圧形

D
Ei
D
D=0.5,
Ii=0.5Io
Ii=2Io
Ii=Io
コイル電流の
交流分ΔiL
Ei  Eo
DT 小
L
Ei
DT
L
Ei
DT
L
スイッチの
ピーク電流iQP
Io 
スイッチ電圧
VQP
Ei  Eo
DT 小
2L
E
1
I o  i DT
D
2L
E
1
I o  i DT
D
2L
Ei
Ei
D
Ei
D
高電圧
高電圧
表5.5 実際の回路でのチョッパ方式非絶縁形コンバータの静特性
昇降圧比
G
1
1  Z o / Ro
平均損失抵抗
r
出力インピー
ダンスZo
Dr1  Dr2
r
降圧形
D
昇圧形
1
1

D 1  Z o / Ro
Dr1  Dr2
r
D2
昇降圧形
D
1

D 1  Z o / Ro
Dr1  Dr2
r
D2
リプル電圧
Δeo
r 
DT 2 
1  2  小
8LC  Ro 
電力効率
η
1
1  Z o / Ro
大きい
DT
CRo
1
1  Z o / Ro
大きい
DT
CRo
1
1  Z o / Ro
90
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
昇圧形
Eo 
5
昇降圧形
1
1
D
D
Ei 
Ei E o   Ei  
Ei
D
1 D
D
1 D
4
G
3
2
降圧形
1
Eo  DEi
0
0
0.2
0.4
0.5
0.6
0.8
1
D
図5.25 チョッパ方式非絶縁形コンバータにおけるデューティレシオ
と入出力電圧比(無負荷時)
91
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
表5.6 理想的な状態における電流不連続の発生点と不連続モードでの出力電圧
電流不連続の発生点
出力電圧 E o
出力電流Io
時比率D
降圧形
E E  E o  T
Io  o i

Ei
2L
DD 
KI 
2
E
D o
Ei
昇圧形
Ei2 Eo  Ei  T
Io 

2L
Eo2
DD 
KI 
2
E  Ei
D o
Eo
DD 
KI 
2
D
昇降圧
形
※K I 
Io 
Ei2 Eo
E
i
 Eo

2
T

2L
Eo
Ei  E o
Ei
2 LI
1 2 o
D TEi
1
2K
1  2I
D
 D 2TEi 

Ei 1 
2 LI o 

D2
1
2K I
D 2TEi2
2 LI o
D2
2K I
LfI o
Ei
92
5.チョッパ方式非絶縁形コンバータ
表5.7 実際の回路でのチョッパ方式非絶縁形コンバータの動特性
変動率S
S  E o Ei
出力インピーダンスZ
降圧形
昇圧形
1
D    Eo
昇降圧形
1
DD    Eo
Zo
1
E o 
r
1  21
D   D  Ro
1
 Eo 
Dr  D r2
1 
DD  
D  2 Ro
降圧形
限界はありません。
昇圧形
D  D 2 Z o Ro C 
1 

l 
Eo 
L

昇降圧形




Zo
制御機構の安定限界
D
l 
Eo
1
Zo
E  r 
1  o 1  2 
D  Ro 
D2
D   Eo

D  2 Z o Ro C 
1 



L


減衰時定数τ




1  Zo
1 



2  L CRo 
1

1  2 Zo
1  Eo


 1
D



2 
L CRo  D

1

1  2 Zo
1   Eo

 1
 D

2 
L CRo  D 

※変動率Sはr1とr2が小さく無視したときの近似式
です。また,βlは制御機構の安定限度の帰還
量を意味します。
93
第5章 演習問題
5.1 降圧形コンバータにおいて負荷電流の最小値が1Aから0.8Aに減少した。
電流不連続を起こさないようにするためにはどうしたら良いか?
ただし、負荷電流が1Aのときの条件を以下とする。
Ei  10V , Eo  5V , L  12.5H , f  100kHz, T  10s
Io 
E  Eo Eo T
i L Ei  Eo 

DT  i

 1.0 Aで不連続になる。
2
2L
Ei
2L
5.2 昇降圧形コンバータにおいてデューティレシオ(D)が0.2と0.5におけるEo/Eiを求めよ。
条件:Ei  12V , rQ  0.05, rL  0.03, rD  0.02, Ro  2.5
ヒント:D’ , r , Zo を先ず求める。次に G=Eo/Ei を求める。
94
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
6.1 リンギングチョーク形コンバータ(RCC)
6.1.1 リンギングチョーク形コンバータの動作原理
T
Io
D
C
+
Ro
R1
Ei
Q
C1
R7
D2
R8
Eo
・自励式で発振器がない。
・周波数制御により出力電圧を一定にする
・動作電流が三角波⇒必ず臨界モードで
動作する。⇒電流不連続現象は発生
しない
・ 負荷で周波数が変動する。
・ Eiが変化するとEoを一定にするようD
が変化する。
R2
Q2
R3
+
C2
R4
R6
Q3
D3
R5
表6.1 リンギングチョーク形コンバータ
の動作状態
1
2
Q
on
off
D
off
on
D4
図6.1 リンギングチョーク形コンバータの構成
95
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
図6.2 リンギングチョーク形
コンバータの動作波形
96
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
スイッチQがオンしている期間にトランスにエネルギーを蓄積し、オフ期間にダイオードを通し
て二次側に放出する。スイッチの電流とダイオードの電流は三角波であり、二次側ダイオー
ドの電流がゼロになった後にスイッチがオンする。負荷が変動すると動作周波数が変化し、
スイッチを流れる電流のピーク値が変わる。
(a) 動作状態1
(b) 動作状態2
(c) 二次換算の動作状態1
図6.3 リンギングチョーク形コンバータの各動作状態における等価回路
97
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
6.1.2 スイッチングトランスの等価回路
R1
LS 2
LS 1
ie
i 2
i1
(a)等価回路
v1
RP
ie
(b)簡易等価回路
v1
im
LS 1
LS 2
iR
R2
i1  i2
LP
RP
v 2
LP
iR
R1
R2
v 2
im
R1:一次巻線抵抗、R2´:一次側に換算された二次巻線抵抗、LS1:一次漏洩インダクタンス、
LS2 ´ :一次側に換算された二次漏洩インダクタンス、LP: 励磁インダクタンス、RP: 鉄心の鉄損に相当する等価抵抗
v1:一次電圧、v2 ´ :一次側に換算された二次電圧、I 1 : 一次電流、I2 ´ :一次側に換算された二次電流
ie:励磁電流、iR:鉄損電流、Im:磁化電流
図6.4 スイッチングトランスの等価回路
98
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
6.1.3 理想的な状態における静特性と動作状態
ここで、出力電圧、入力電流、他をここで求めると以下となる。ただし、トランスの一次巻
線数をN1、二次巻線数をN2、巻線比をn(=N1/N2)とする。
N 2 Ton
D E i 
Ei 

N 1 Toff
D n
Eo 
Ii 
昇降圧形コンバータとの相違点
(6.1)
Eo
I D E
D Io
D
I o  o   i 

or I o 
 nI i
Ei
Ei D  n
D n
D
(6.2)
注)昇降圧形コンバータ
Eo  
Ton
D
E i    E i Toff
D
(5.32) , I i 
D
 Io
D
(5.33)
トランスの励磁インダ クタンス LP を流れる電流の変化分は、トランスの一次側 で以下となる。
i P 
Ei Ton Ei Ton Ei DT


 iQP
L1
LP
LP
(6.3)
L1 : N 1の自己インダクタンス , L1  LP  LS 1  LP
LP : N 1の励磁インダクタンス , LS 1 : N 1のリーケージインダクタンス
99
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
また、入力電流の平均値は式(6.4)で与えられる。
Ii 
i P Ton i P


D
2 T
2
VQP  Ei  nE o  Ei 
(6.4)
E
D
Ei  i D
D
(6.5)
次にスイッチのオンタイムとオフタイム及びスイッチング周波数について求める。二次側
の負荷電力はトランスに蓄えられた電磁エネルギーに等しく(エネルギーの不変
の法則)、これから求めることができる。ただし、トランスの電力効率をηとする。
また、負荷電流をIo、トランスの一次巻線電流と二次巻線電流のピーク値をIP、
ISとする。
IP
Ton
Toff
図6.5 トランスの励磁電流
100
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
IP 
Ei Ton Ei Ton
L I

より Ton  P P
L1
LP
Ei
また、I P 
E1Toff
L1

E1Toff
LP

nEoToff
LP
が得られる。
(6.6)
より Toff 
LP I P
nEo
(6.7)
が求められる。
ただし、E1は一次側に換算した出力電圧、E1  nE oを意味する。
以上より、Tは以下のように求めることができる。
T  Ton  Toff 
 nE  Ei
LP I P LP I P

 LP I P  o
Ei
nE o
 nE o Ei
ここで式 (6.1)よりDが
nE o 1  D   DEi  nE o  DnE o  Ei   D 



(6.8)
Eo 
N 2 Ton
D Ei 
Ei 

(6.1)

N1 Toff
D n
nE o
E1

nE o  Ei E1  Ei
(6.9)
となる。これを式 (6.8)に代入すると
T
LP I P 1

Ei
D
(6.10)
が得られる。
次にトランスに蓄えられるエネルギーW ( J )は出力電力量に等しく、次式が成り立つ。
101
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
W 
LP I P2
2
 E o I oT  PoT 
Po
f
 :トランスの効率
(6.11)
これより、式(6.12)が求められる。
2 Eo I oT
I P2 
(6.12)
LP
さらに、式(6.12)に式(6.8)を代入し、整理すると次式が得られる。
 nE  Ei
T  LP I P  o
 nE o Ei
I P2 



(6.8)
 nE  Ei
2 Eo I oT 2 Eo I o

LP I P  o
L P
L P
 nE o Ei



2 I o  nE o  Ei 


(6.13)
  nEi 
式(6.13)を式(6.8)に代入し、Tを求めると式(6.14)のようになる。
IP 
 nE  Ei
T  LP I P  o
 nE o Ei
2 LP E o I o

ηE o2

 nE  Ei
  LP  o

 nE o Ei
 nE o  Ei

 nEi
2

2 LP Po
 
η

Eoを分子と分母に掛ける。
 2I o

 η
 nE o  Ei

 nEi
 nE o  Ei

 nE o Ei
Eo・Io=Poと置く



 2 LP I o
 
ηE o

 nE o  Ei

 nEi



2
2
(6.14)
102
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
同様にTonとToff の等式に式(6.13)を代入し、それぞれに付いて求めると
以下となる。
Ton 
LP I P LP 2 I o


Ei
Ei η
 nEo  Ei

 nEi
Toff 
LP I P
L 2I o
 P
nE o
nE o η
 nE o  Ei

 nEi
 2 LP I o
 
ηEi

 2 LP I o
 
 ηnE o
 nEo  Ei

 nEi
 nE o  Ei

 nEi






(6.15)
(6.16)
また、動作周波数 f は以下のようになる。
E o
1
f  
T 2 LP I o
2
 nEi 


 
2 LP Po
 nE o  Ei 
nE o
E1
ただし、D 

nE o  Ei E1  Ei
 nE o Ei

 nE o  Ei
2

ηEi2 D 2
 
2 LP Po

(6.17)
(6.9)
一周期間Tは負荷電流に対して単純比例するために、動作周波数は負荷電流に
対して逆比例の関係で変化する。
103
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
f
LP、Po
図6.6
リンギングチョーク形コンバータでの
負荷電力と動作周波数
104
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
6.1.4 実際の回路での静特性および動特性
ここで、出力電圧、他を求めると以下となる。
(a) 動作状態1
(b) 動作状態2
(c) 二次換算の動作状態1
図6.7 リンギングチョーク形コンバータの実際の等価回路
105
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
図6.7において次式が成り立ちます。
 Ei

 I L r1 Ton  VL  E o  I L r2 Toff

 n

これより,出力電圧が求められます。
Eo 

 Ton

Ton  Ei
Ton Ei




I
r

I
r



I

r

r

L 1
L 2
L
1
2
Toff  n
Toff n

 Toff

T
 D Ei I o  D
Ton Ei
T



I o  on r1  r2  


 r1  r2 

 D n D  D
Toff n Toff  Toff


(6.18)
昇降圧形コンバータとの相違点
また,出力インピーダンスは以下となります。
Zo  
E o
1 D
1
r





 r1  r2  
r

D
r


1
2
2
I o
D  D
D 2
 D
ただし,r  Dr1  D r2
(6.20)
(6.19) 昇降圧形コンバータに同じ
である。 昇降圧形コンバータに同じ
106
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
Z oを用いて出力電圧を再計算すると次のようになります。
Eo 
D Ei
D Ei
1

 IoZo 

D n
D  n 1  Z o / Ro
(6.21)
昇降圧形コンバータとの相違点
電力効率は非絶縁の昇降圧形コンバータと同一になります。
E I
DEi
nD I o
1
1
 o o 



(6.22) 昇降圧形コンバータに同じ
Ei I i
Ei nD  1  Z o / Ro DI o
1  Z o / Ro
出力電圧に含まれるリプル電圧Δeoも昇降圧形コンバータと同じになります。
eo 
eo
e DT Eo  eo / 2DT
DT
Ton  o


Eo
t
CRo
CRo
CRo
(6.23)
昇降圧形コンバータに同じ
動特性としての変動率Sは式(6.24)になります。また,出力インピーダンスZ,減衰時定数τ,
制御機構が安定動作をする帰還量βの限度は昇降圧形コンバータと基本的に同じになりま
す。しかし,トランスを使うためにすべての値はトランスの出力側(二次側)に換算する必要
があり,それぞれは以下となります。なお,式(6.26)及び(6.27)のLはL=LS (二次励磁インダ
クタンス)です。
107
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
S
Z
E o 1
1
 
Ei n DD   E o
(6.24)
Zo
Eo 
Dr  D r2
1 
1
DD  
D  2 Ro

昇降圧形 S 
(6.25)




ただし,r  Dr1+D r2,Z o 
昇降圧形コンバータとの相違点
1
DD   Eo
昇降圧形コンバータに同じ
r
です。
2

D
1
, L  LS
(6.26)
昇降圧形コンバータに同じ
2ωvd  D   D  2 Z o Ro C 
1 
 , L  LS



Gvd ω0 E o 
L

(6.27)
昇降圧形コンバータに同じ

1  2 Zo
1  E o


D


1



2 
L
CRo  D 

6.1.5 リンギングチョーク形コンバータの特徴と用途
リンギングチョーク形コンバータは以下の特徴があります。
・安価で,出力電力の少ない電気・電子機器(概ね150W 以下)に使用されています。
108
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
・オン期間に蓄えたエネルギーをオフ期間に放出し,負荷に電力を供給します。この動作は
フライバック形コンバータと同じですが,動作周波数が出力電力によって変化します。出力
電力が大きいと動作周波数が下がり,1 周期間に出力するエネルギーが大きくなるため,
スイッチやダイオードは定格電力・電流が大きいものが必要になります。トランスも大きなもの
が必要になります。そのため,一定の周波数で動作するフライバック形コンバータより供給
できる電力が小さくなります。
・リンギングチョーク形コンバータの励磁電流は三角波ですが,フライバック形コンバータでは
台形波です。同一周波数および同一時比率で同じ出力電力を取り出したときの一次巻線に
流れる電流のピーク値IP1 は,フライバック形コンバータのIP2 に比べて(1 + KP ) 倍に大きく
なります。
(a) リンギングチョーク形
コンバータ
(b) フライバック形
コンバータ
109
図6.8 リンギングチョーク形コンバータとフライバック形コンバータの励磁電流波形
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
Po1をリンギングチョーク形コンバータの出力電力,Po 2をフライバック形コンバータ
の出力電力とします。
Toff
1 Toff
E
i
dt

o s
T 0
T
Toff
1 Toff
Po 2   E o i s dt 
T 0
T
Po1 
E o nI P1 E o nI P1

D
2
2
E nI 1  K P  E o nI P 2 1  K P 
 o P2

D
2
2

Po1  Po 2とおくと以下となります。
I P1  I P 2 1  K P 
(6.28)
・図6.9に示すようにスイッチングトランスのヒステリシス損失もリンギングチョーク形コンバー
タの方が大きくなります。
・リンギングチョーク形コンバータでは,ダイオード電流(二次励磁電流IS)がゼロになってから
次の動作に移ります。そのため,ダイオードのリカバリー電流による損失とノイズが少ないと
いう特長があります。この点はフライバック形コンバータより優れています。詳細は6.2 節で
説明します。
110
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
マイナーループ
図6.9 リンギングチョーク形コンバータとフライバック形コンバータの磁束密度変化
111
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
6.2 フライバック形(オンオフ形、他励式フライバック形)コンバータ
6.2.1 フライバック形コンバータの動作原理と静特性および動特性
・昇降圧形コンバータを絶縁した回路
・周波数は固定でPWM制御する。
・他励式で発振器が付いている。
・励磁電流波形が台形波
表6.2 フライバック形 コンバータの動作状態
図6.10 フライバック形コンバータ
1
2
Q
on
off
D
off
on
このコンバータは昇降圧形コンバータのコイルをトランスに置き換えて絶縁したもので,出
力は正極性の電圧になっています。基本的な動作は昇降圧形コンバータと同じです。動作
周波数は一定で,パルス幅制御により出力電圧が一定に保たれます。他励式で発振器が
付いており,励磁電流波形は台形波になります。
112
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
図6.11 フライバック形コンバータ
の動作波形
i L
Io  I D
113
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
(a) 動作状態1
(b) 動作状態2
(c) 二次換算の動作状態1
図6.12 フライバック形コンバータの等価回路
114
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
出力電圧、ほかの以下に基本式を以下に示します。iQPを除いてリンギングチョーク形
コンバータと同じ式になります。
N T
D E i E o  2  on Ei 

(6.22)
昇降圧形コンバータとの相違点
N 1 Toff
D n
Ii 
Eo
I D E i D I o
Io  o 



Ei
Ei D  n
D n
注)昇降圧形コンバータ
T
D
E o   on Ei  
 E i Toff
D
(6.23)
(5.32) , I i 
D
 Io
D
(5.33)
トランスの励磁インダ クタンスを流れる電流の変化分は、トランス の一次側で以下となる 。
E DT
i P  i
(6.24)
昇降圧形コンバータに同じ
LP
iQP 
i DP
T I o Δi P
1 I o Ei DT



 
n
Toff n
2
D n
2 LP
iQP  i PP  I i 
(6.25)
または
I o Δi P D  D  I o Ei DT
1 I o Ei DT


 

 
n
2
D
n
2 LP
D n
2 LP
I i : オン期間の平均電流、I o : オフ期間の平均電流
VQP  Ei  nE o  Ei 
E
D
Ei  i D
D
(6.26)
115
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
実際の回路での出力電圧、ほかはリンギングチョーク形コンバータの式と同じになります。
・出力電圧
:式(6.21)
・出力インピーダンス
:式(6.19)
・電力効率
:式(6.22)
・出力電圧に含まれるリプル電圧Δeo:式(6.23)
動特性を表す式もリンギングチョーク形コンバータの式と同じになります。
・変動率
:式(6.24)
・出力インピーダンス :式(6.25)
・減衰時定数
:式(6.26)
・制御機構の安定限度:式(6.27)
注)RCCは不連続にはならない。
周波数を固定でPWM制御しているものはある条件で発生する。
6.2.2 電流不連続モードでの出力電圧など
出力電流が減少するとトランスの一次側を流れる励磁電流が不連続になのます。この
ときの不連続条件は以下となります。出力側で考えます。
116
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
IL 
ni P
i
T
 Io 
 L より
Toff
2
2
昇降圧形コンバータとの相違点
 E /n

 E /n 
i L
 D  i
DT   DD  i
T 
T
2
2
L
2
L
S
S




Eo
Ei / n
となる。ここで,DとD は式 (6.22)よりD 
, D 
となり
Ei / n  Eo
Ei / n  E o
Io 
Toff

これを代入します。
Io 
Ei
n

Eo
 
 Ei / n  Eo
 Ei / n
I o  E o 
 Ei / n  E o
が求められます。
  Ei / n
  
  Ei / n  Eo
 T

より
2
L
 S
2

T
 
 2 LS
(6.27)
また、動作が電流不連続モードになったときに,コイル電流が最大値よりゼロに達するまでの
時間Td と不連続期間Δt は,以下のように求められます。
Ei / n
E
DT  o Td  0 より
LS
L
117
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
Td 
Ei / n
DT
Eo
昇降圧形コンバータとの相違点
(6.28)
 E /n
 E / n  Eo 
t  T  Ton  Td   T  DT 1  i   T 1  i
D 
E
E
o 
o



(6.29)
出力電流を一定にして,時比率を小さくしていくとコイル電流が不連続になります。そのと
きの時比率は式(6.29)より以下となります。
D
Eo
Ei / n  E o
(6.30)
また,電流不連続モードでの出力電流は式(6.31)となります。
2
2
 Ei / n

E i / n  D 2 T E i / n 
1 i L
1  Ei / n
Io  
Td  
DT 
DT 

T 2
T  2 LS
E
E
2
L
Eo
o
S
 o

Eo

 Ei / n  E o
2
 T

(6.31)
2
L
S

式(6.31)より電流不連続モードにおける出力電圧は以下となります。
Eo 
Ei / n2
Io
D 2T E i / n 


2 LS
Io
2

Eo

 Ei / n  E o
2
 T

 2 LS
(6.32)
118
式(6.32) のEo はコイル電流が不連続になり上昇した後の出力電圧であり,その値を式
(6.28) および式(6.29) に代入することにより,Td とΔt を求めることができます。
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
ここで,K I 
LS fI o
とおくとG  Eo / Eiは
Ei / n
E o 1 E i / n D 2T D 2 E i / n
1 D2
G
 



 
Ei n I o
2 LS
n 2 LS fI o n 2 K I
昇降圧形コンバータとの相違点
(6.33)
となります。コイル電流が不連続となる限界のK Iも以下のように求められます。
 E /n 
I o  DD  i T  より
 2 LS 
LS fI o
DD 
 KI 
(6.34) 昇降圧形コンバータに同じ
Ei / n
2
6.2.3 フライバック形コンバータの特徴と用途
フライバック形コンバータは出力が30W~250W程度の単出力や多出力電源に広く使われ
ています。以下のような特徴があります。
・動作周波数が固定のために,リンギングチョークコンバータよりも周波数を上げることができ,
トランスを小さくできます。
・一方,ノイズは出力ダイオードのリカバリノイズが大きく不利になります。ゲート電圧がなくな
るとスイッチはオフし,出力ダイオードには逆バイアスされます。このとき出力ダイオードには
まだ順方向に電流が流れており,このためにストレージ期間に大きなリカバリ電流が流れます。
119
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
したがって,ダイオードのリカバリ損失とリカバリノイズはリンギングチョーク形コンバータより
も大きくなります。ノイズが大き過ぎるときは,ソフトリカバリダイオードを使うなどの工夫が必
要になります。図5.18はこの様子を図示したものですが,時刻t2でオフした後に電流が急激
にゼロに向かうために,回路の寄生インダクタンスに逆起電力が発生し,浮遊容量などと共
振し図5.18のような振動が発生しノイズが放射されやすい状態になります。リンギングチョー
ク形コンバータでは出力ダイオード電流がゼロになってからスイッチがオンしますので,リカ
バリノイズはほとんどありません。
リカバリ電流
t 0 : 逆バイアス印加
t 2 : オフ
t2
図6.13 フライバック形コンバータの出力ダイオード電流波形
120
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
6.3 フォワード形(オンオフ形)コンバータ
6.3.1 フォワード形コンバータの動作原理と静特性
•・降圧形コンバータを絶縁形にした回路
•・トランスが同極性。Qがオンしているときに
• エネルギーを伝達する。
•・他励式で発振器が付いている。
•・周波数は一定でPWM制御する。
•・励磁電流が台形波
表6.3 フォワード形コンバータの動作状態
図6.14 フォワード形コンバータの構成
1
2
Q
on
off
D1
on
off
D2
off
on
フォワード形コンバータは入力電圧をトランスで絶縁しダイオードを通してコイルに加えるよう
にしたものであり、動作は基本的に降圧形コンバータと同じである。スイッチがオフすると大
きなキックバック電圧がスイッチ両端に発生するため,トランススナバーなどを使用して,ス
イッチに加わる電圧VQがスイッチの耐圧を超えないようにする必要があります。
121
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
降圧形コンバータとの差
トランスTのキックバック電圧
Tの逆起電力によりTのインダクタンスと
分布容量が共振し発生する。
iD2
図6.15 フォワード形コンバータ
の動作波形
122
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
(a)動作状態1
(b)動作状態2
図6.16 フォワード形コンバータの各動作状態における等価回路
123
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
以下にフォワード形コンバータの基本式を示す。
降圧形コンバータと違うのは巻線比が入っていること。
E
N T
E o  2  on Ei  D  i N1 T
n
Ii 
Eo
I DEi I
Io  o 
 D o
Ei
Ei
n
n
(6.35)
降圧形コンバータとの相違点
Ton
E i  D  E i T
E
I i  o I i  D I o
Ei
Eo 
降圧形
コンバータ
(6.36)
コイルL電流の変化分、スイッチのピーク電流、スイッチに加わるピーク電圧は以下となる。
Ei n  E o
DT
(6.37)
L
E n  Eo
i  1 
1

iQP   I o  L    I o  i
DT 
n
2  n
2L

Ton
Ei
Ei2
T
VQP  Ei 
Ei 
Ei 

Toff
Toff
D  Ei  nE o
i L 
(6.38)
(6.39)
降圧形コンバータ VQP  Ei
スイッチスナバーを使用した時
VQPはキックバック電圧が発生するので降圧形コンバータより大きくなる。
VQPはスナバー回路で変化し特定できないが、トランススナバーを除けばスイッチスナバー
(アクティブスナバ―)を採用したときが最も低く、式(6.39)の値になる。
124
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
(a) CRD スナバー
組合せて使います。
(b) CR スナバー
(c) LC スナバー
VQの振動を吸収する。
Ton
Ei
Toff
(d) ダイオードスナバー
VQPの大きさを抑制する。
-
+
-
+
(e) スイッチスナバー
(f) トランススナバー
T
E
N
VQP  Ei  on Ei  i (6.39) VQP  Ei  1  Ei (6.40)
Toff
D
N3
最も良く使われる。 125
図6.17 主なスナバー回路
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
(f)が良く使われるトランススナバーです。(a)~(d)のスナバーは対策効果が少なく、フォワード
形コンバータに使用するときは主に(b)のCRスナバーと(d)のダイオードスナバーの両方を
組合せて使います。 CRスナバーでVQの振動を吸収し、ダイオードスナバーでVQPの大きさ
を抑制します。
ダイオードスナバー(リーケージインダクタンス小)
スイッチスナバ― VQP  Ei 
Ton
E
T
Ei 
Ei  i (6.39)
Toff
Toff
D
トランススナバ― VQP  Ei 
N1
 Ei
N3
(6.40)
N1  N 3  VQP  2 Ei
図6.18 スイッチに加わるピーク電圧VQP
126
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
スイッチやダイオードおよびコイルの抵抗を考慮に入れた実際の回路での出力電圧などを
求めると,以下のようになります。ただし,オン期間の損失抵抗r1 とオフ期間の損失抵抗r2
は,トランス二次側での値です。
Ei / n  Eo  I L r1 I LTon  Eo  I L r2 I LToff ,
IL  Io これよりフォワード形コンバータの出力電圧E oを求めると以下となります。
E oT  Ei / n Ton  I o r1Ton  r2Toff 
Eo 
Ei / n Ton  I o r1Ton  r2Toff 
降圧形コンバータとの相違点
T
また,出力インピーダンスZ oは,Z o   E o I o より
E o r1Ton  r2Toff
Zo  

 Dr1  D r2  r
I o
T
(6.41) 降圧形コンバータに同じ
となります。Z oを用いて出力電圧を再計算すると次のようになります。
Eo  D
Ei
E
E
1
 Ior  D i  IoZo  D i 
n
n
n 1  Z o Ro
(6.42)
127
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
6.3.2 電流不連続モードでの出力電圧など
出力電流が減少すると,コイルに流れる電流iL が不連続になります。その限度は以下と
なります。
Io  I L 
E n  Eo Eo
E E / n  E o  T
i L Ei n  Eo

DT  i

T o i

2
2L
2L
Ei / n
Ei / n
2L
(6.43)
動作が電流不連続モードになったときにコイル電流が最大値よりゼロに達するまでの時間を
Tdと不連続期間Δtは以下のように求められます。
E i / n  E o 
L
DT 
E / n  Eo DT
Eo
Td  0 より Td  i
L
Eo
 E / n  Eo
t  T  Ton  Td   T  DT 1  i
Eo

(6.44)

 E /n 
  T 1  i
D 
Eo



(6.45)
出力電流を一定にして,時比率を小さくしていくと,コイル電流が不連続になります。そのとき
の時比率は,式(5.45) より以下のようになります。
D
Eo
Ei / n
(6.46)
降圧形コンバータとの相違点
また,電流不連続モードでの出力電流は式(6.47)となります。
128
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
Io 
 T  Td
T i
i
1 i L

(Ton  Td )  on  L  (1  Td / Ton )  L  D   on
T 2
T
2
2
 Ton



ここに,式(6.37)と式(6.44)を代入します。
Ei / n Ei / n  Eo  D 2T
E i / n D E i / n E i / n  E o 
i L
Io 
D
 

DT 

2
Eo
2 Eo
L
Eo
2L
降圧形コンバータ
との相違点
(6.47)
さらに,電流不連続モードでの出力電圧を求めることができます。
2 LEo I o  Ei / n Ei / n  E o D 2Tより
LfI o
ここで、 E / n  K I
i
Eo 
Ei / n
2 LI
1 2 o
D TEi / n
(6.48)
とおくと式(6.43)と式(6.48)から電流不連続のときの昇降圧比Gと
電流不連続が発生する限界のKIが求められます。
Eo

Ei
1/ n
1
1
1
1
 
 
(6.49)
2 LI o
2 LfI o
2K I
n
n
1 2
1 2
1 2
D
D TEi / n
D Ei / n
E n  Eo
DD Ei / n
LfI o
i
DT Ei
DD 
Io  IL  L  i
DT 
 D 
,

より
2
2L
2L n
2 Lf
Ei / n
2
DD 
KI 
(6.50)
降圧形コンバータに同じ
2
G
129
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
6.3.3 動特性
動特性は変動率Sを除いて、出力インピーダンスZ,減衰時定数τは降圧形コンバータの式
に同じになります。しかし,トランスを使うためにすべての値はトランスの出力側(二次側)に
換算する必要があり,それぞれは以下となります。なお,制御機構の安定限界は降圧形
コンバータですので存在しません。
E o 1
D2
S
 
(6.51) ,
Ei n D  E o
降圧形コンバータとの相違点
Zo
(6.52) 降圧形コンバータに同じ
Eo 
r 
1  2 
1
D 
Ro 
ただし,r1とr2はトランスの二次側に換算した抵抗値です。また,r  Dr1  D r2,Z o  r
Z
となります。

1
1  Zo
1 



2  L CRo 
(6.53) 降圧形コンバータに同じ
6.3.4 フォワード形コンバータの特徴と用途
リンギングチョーク形コンバータやフライバック形コンバータは,オン期間にトランスに蓄えた
エネルギーをオフ期間に放出することにより,トランスの二次側に電力を供給します。このた
め,供給できる電力には限度があります。一方,フォワード形コンバータはオンオン形コン
バータとも呼ばれ,スイッチがオンしている期間にトランスの二次側に電力を供給します。
そのため,リンギングチョーク形コンバータやフライバック形コンバータより出力電力を大きく
することができ,一般的には数十Wから1.5kW 程度まで広範囲に対応できます。
130
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
6.4 3方式の纏め
表6.8 理想的な状態における非共振(矩形波)絶縁形コンバータの静特性など
リンギング
チョーク形
昇降圧形
フライバック
形
昇降圧形
フォワード形
降圧形
入力電流
出力
電圧
(平均値)
コイル電流の
変化分
Eo
Ii
i L
D Ei 
D n
D Io


D n
D Io

D n
高く可変幅が大きい
D
E i n
低い
D
Io
n
iQP
スイッチ両端
ピーク電圧
VQP
n
Ei
E /n
DT  i
DT
LP
LS
Ei
DT
LP
Ei
D
n
Ei
E /n
DT  i
DT
LP
LS
Io
E
 i DT
D n 2 LP
Ei
D
高く可変幅が大きい
D Ei 
D n
スイッチの
ピーク電流
Ei n  E o
DT
L
E n  Eo
1

DT 
 Io  i
n
2L

Ei


D
キックバック電圧
があり大きい。
・リンギングチョーク形とフライバック形:昇降圧形であるために出力電圧が高いときに有利で
あり、可変幅も大きい
131
・キックバック電圧が発生するためにフォワード形のスイッチ電圧は非常に高い。
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
表6.9 実際の回路での非共振(矩形波)絶縁形コンバータの静特性など
昇降圧比
G
リンギング
チョーク形
D 1
1
 
D  n 1  Z o / Ro
平均損失
抵抗
r
Dr1  Dr2
高く、可変幅が大きい
フライバック
形
D 1
1
 
D  n 1  Z o / Ro
1
1
D 
n 1  Z o / Ro
低い
リプル電圧
電力効率

Zo
eo
r
D2
DT
Eo
CRo
1
1  Z o / Ro
DT
Eo
CRo
1
1  Z o / Ro
大きい
Dr1  Dr2
r
D2
大きい
高く、可変幅が大きい
フォワード形
出力イン
ピーダンス
Dr1  Dr2
r
DT 2 
r 
Eo 1  2 
8LC  Ro 
1
1  Z o / Ro
小さい
・リンギングチョーク形とフライバック形の昇降圧比は大きい。
・リンギングチョーク形とフライバック形の出力インピーダンスは大きい。
・フォワード形のリプル電圧は小さく、大電流の出力に適している。
132
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
表6.10 理想的な状態における電流不連続の発生点と不連続モードでの出力電圧
電流不連続の発生点
出力電流Io
出力電圧Eo
時比率D
2
フライバック形
 Ei / n
I o  E o 
 Ei / n  Eo
 T

 2 LS
フォワード形
E E  nEo  T
Io  o i

Ei
2L
Ei / n 2  D 2T
Eo
D
Ei / n  Eo
Io
2 LS
Ei / n
2 LI
1 2 o
D TEi / n
Eo
D
Ei / n
表6.11 理想的な状態における電流不連続の発生点と不連続モードでの出力電圧
KI
電流不連続の発生点
昇降圧比G
フライバック形
LS fI o
Ei / n
DD
KI 
2
1 D2

n 2K I
フォワード形
LS fI o
Ei / n
DD
KI 
2
1
1

n 1  2K I
D2
133
6.非共振(矩形波)絶縁形コンバータ
表6.12 実際の回路での非共振(矩形波)絶縁形コンバータの動特性
変動率S
S  Eo / E i
リンギング
チョーク形
フライバック
形
フォワード形
1
1

n DD   E o
1
1

n DD   E o
2
1
D

n D  E o
出力インピーダンスZ
Zo
Eo  Dr  Dr2 
1 

1
DD 
D2 Ro 
Zo
Eo  Dr  Dr2 
1 

1
DD 
D2 Ro 
Zo
E  r 
1  o 1  2 
D  Ro 
減衰時定数τ
1

1  2 Zo
1  Eo

 1
 D


2 
L CRo  D

ただし,L  LS
1

1  2 Zo
1  Eo

 1
 D

2 
L CRo  D

ただし,L  LS
1
1  Zo
1 
 

2  L CRo 
134
第6章 演習問題
6.1 リンギングチョーク形コンバータにおいて入力電圧が低下すると自動的にデューティレシオ
Dが大きくなり出力電圧を一定にする。その理由についての図と式を示し説明せよ。
ヒント:一次巻線を流れる電流がどうなるかを考える。
6.2 リンギングチョークコンバータとフライバック形コンバータを比較した場合、どのような得失
があるか説明せよ。
リンギングチョーク形コンバータ
フライバック形コンバータ
動作周波数
変化する。
固定
スイッチ電流の
形状と大きさ
三角波、大きい
台形
トランスの大きさ
フライバックより大きくなる。
コア損失が少なく、また、周波数固
定のために小さくできる
出力電力
小電力用、概ね150W以下。約
30W以下は殆どがこの方式である。
小電力用、概ね30~250W以下
ノイズ
周波数が変化するために
フライバック形より有利
二次側ダイオードのノイズが大きい
周波数が一定のために不利
135
7.共振絶縁形コンバータ
7.1 電圧共振フライバック形コンバータ(1石電圧共振回路)
7.1.1 電圧共振フライバック形コンバータの構成と一周期間の動作
表7.1 電圧共振フライバック形コンバータ
の動作状態
1
2
3
4
Q/DQ
off
off
on
on
D
off
on
on
off
注)2:共振期間
・ Lr:共振コイル(インダクタンス)、トランスのリーケージを使うのが一般的。
・ Cr:共振コンデンサ
・ スイッチ両端に発生する共振電圧を二次側でピーク整流する。
・ オン期間を変え、FM制御する。
・ スイッチはターンオン・オフ時ZVS(Zero Voltage Switching)動作をする。
・ 高耐圧のスイッチ素子が必要になる。高耐圧のスイッチ素子が
できれば有効な回路です。
・ CRTテレビの高圧発生回路に使われていた。
図7.1 電圧共振フライバック形コンバータの構成
136
7.共振絶縁形コンバータ
VG
VCr  VQ
■動作状態1
スイッチがオフしており、Crが励磁電流(ほぼ
定電流)で充電される。
VQP
■動作状態2
二次側ダイオードがオンする。トランス(LP)は
短絡状態で、LrとCrが共振する。
Ei  nEo
VL
iCr
iQ
iD
■動作状態3
スイッチ(DQ)がオンし、Crが短絡される。
Eo
■動作状態4
二次側ダイオードがオフし、ほぼ定電流が
トランスに流れる。
Ei / n
IP
IP
VL
DQ
図7.2 電圧共振フライバック形
コンバータの動作波形
137
7.共振絶縁形コンバータ
二次側ダイオードがオンする。
トランス(LP)は短絡状態で、
LrとCrが共振する。
Crが励磁電流(ほぼ定電流)
で充電される。
(a) 動作状態1
(b) 動作状態2
スイッチがオンしCrが
短絡される。
(c) 動作状態3
二次側ダイオードがオフし
ほぼ定電流がトランスに流れる。
(d) 動作状態4
図7.3 電圧共振フライバック形コンバータの各動作状態における等価回路
138
7.共振絶縁形コンバータ
ここで、それぞれを以下のように定義し、各期間における電圧・電流を求める。
LP  としてトランスの励磁電流I Pを定電流とする。
n
N1
N
,一次側換算出力電圧 E o  1 E o  nE o
N2
N2
一次側換算出力電流 I o 
Io
n
(7.1)
(7.2)
ID
(7.3)
n
E
一次側換算荷出力(負荷)抵抗 Ro  o  n 2 E o / I o  n 2 Ro
I o
一次側換算ダイオード電流 i D 
E o
Eo
入出力電圧比:G 

Ei
Ei / n
I P  I i  I o  1  G I o 
1  G I o
n
(7.4)
(7.5)
(7.6)
139
7.共振絶縁形コンバータ
■動作状態1
時刻t0でゲート電圧がなくなりスイッチQはオフ状態にあります。共振コンデンサCrが励磁電
流IPで充電される。このときの共振コンデンサ両端電圧VCrは定電流で充電されるために直線
的に増加する。 時刻t1でトランスの二次励磁インダクタンス電圧VLが出力電圧Eoに等しくなる
とダイオードDが導通し、この期間は終了します。
VCr  VQ 
IP
t  t 0 
Cr
(7.7)
t  t1でVL  Eoとなり、Dがオンする。
■動作状態2
ダイオードDが導通しており負荷に電力を供給しながら共振コイルLrと共振コンデンサCrが
共振をしています。このとき、励磁インダクタンスLPは短絡される。共振コンデンサCrの電流・
電圧、ダイオード電流は以下となる。この期間は共振コンデンサ両端電圧VCr がゼロになると、
スイッチの寄生ダイオードDQがオンし終了します。
iCr  I P cos  t  t1 
(7.8)
i D  i D n  I P  iCr  I P 1  cos  t  t1 
i D  ni D  nI P 1  cos  t  t1 
(7.9)
VCr  VQ  Ei  Eo  I P Z sin  t  t1 
(7.10)
140
7.共振絶縁形コンバータ
VCr  Ei I P Z sin  t  t1 

 Eo
(7.11)
n
n
Lr
1
ただし,Z 
, ω
です。
Cr
Lr C r
VL 
■動作状態3
スイッチQとダイオードDはオンしており,負荷に電力を供給し続けています。ダイオードDが
導通しているためにトランスの励磁インダクタンスは短絡されており,共振コイルのインダクタ
ンスで決まる電流がスイッチの寄生ダイオードに流れ,時間に対して直線的に増加します。こ
の電流はいずれ負から正になり寄生ダイオードがオフしますが,その前の時刻t3にゲート電
圧VGが加えられるためにスイッチは継続して導通し,電流は流れ続けます。このときのスイッ
チ電流iQとダイオード電流iDは以下となります。なお,この期間はスイッチを流れる電流が励
磁電流に等しくなると,ダイオードを流れる電流がゼロとなり終了します。
iQ  iQ t 2  
Ei  E o
t  t 2 
Lr
(7.12)


Ei  E o



t  t 2 
i D  I P  iQ  I P  iQ t 2 
Lr




E  E o
t  t 2 
i D  ni D  nI P  n iQ t 2   i
Lr


(7.13)
141
7.共振絶縁形コンバータ
■動作状態4
ダイオードはオフしており,励磁インダクタンスが現れます。その結果,ほぼ一定の電流IP
がスイッチに流れます。この期間はスイッチQのゲート電圧がなくなり終了します。
iQ  I P
(7.14)
動作状態2の終わり、時刻t2において
7.1.2 スイッチのZVS条件
この電圧共振フライバックコンバータは出力電流が少ないと,動作状態2の期間において
スイッチ電圧(共振コンデンサの電圧)が負にならなくなり,スイッチがZVSできなくなります。
ここでスイッチがZVSする条件を求めると以下のようになります。
式(7.10)において、最悪でも sin ωt  t1   1のときにVQ  0 となれば,ZVSできることに
なります。
注)
-1
VCr  VQ  Ei  E o  I P Z  0
VCr  VQ  Ei  E o  I P Z sin  t  t1  (7.10)
これに式(7.6)を代入する。
VQ  VCr  Ei  E o  I o 1  G Z  0
I P  I i  I o  1  G I o 
1  G I o
n
(7.6)
これより、以下が求められる。
I o 
Io
Ei  E o
E 1  G  Ei
E 

 i

 I o  n i 
1  G Z Z
n 1  G Z
Z 
(7.15)
142
7.共振絶縁形コンバータ
7.1.3 出力電圧の制御
次に動作周波数と入出力電圧比の関係について求める。先ず、時刻t1で
VCr (t1 )  VQ (t1 ) 
IP
t1  t 0   Ei  nE o  Ei  E o
Cr
が成り立ち,これより(t1  t 0 )が
C E  E o  C r E i  E o 
t1  t 0  r i

IP
I o 1  G 
と求められます。
ここで,
Cr 
1
1
Lr C r
Lr
Cr

1
Z
1
 E  1  G 
E i  E o  E o   1  o
G
G

を代入して
E o 1  G 
Ro
t1  t 0 

Z  I o 1  G G ZG
(7.16)
が得られます。
143
7.共振絶縁形コンバータ
(注) Ei  Eo 
次に時刻t 2 において
VQ  VCr  Ei  E o   I P Z sin  t 2  t1   0
Eo
1 G 
 Eo  Eo 

G
 G 
より
sin  t 2  t1   
Ei  E o
E o 1  G 
R

 o
IPZ
G 1  G I o Z
ZG
が成り立ち,これからt 2  t1 が求められます。
t 2  t1 
R 
1
   sin 1 o 

ZG 
(7.17)
 R 
cos  t 2  t1 を求めると,
cos  t 2  t1    1   o  となりますが
 ZG 
動作波形より t 2  t1 は   t 2  t1   3 / 2のの関係にあり,
2
 R 
cos  t 2  t1    1   o 
 ZG 
2
(7.18)
となります。ここで一次側換算の出力電圧E oを求めると,
t2
1  t1
 t VCr dt  t VCr dt 
1

T 0
となり,これより以下が得られます。
E o'  ( Ei  E o' )  Ei  ( Ei  E o' ) 
144
7.共振絶縁形コンバータ
Eo'
G
1
1
 t1V dt  t2 V dt   1 
 t1V dt  t2 V dt 


1

Cr
Cr
t1 Cr 
t1 Cr 
E i (1  G)T  t0
Ei  Eo' 1  G
( Ei  Eo' )T  t0
ここに、式(7.16)~式(7.18)を代入し整理すると式(7.19)が求められる。
t2
 t1 I P

G
1







 1
t

t
dt

E

E

I
Z
sin

t

t
dt
0
1


t1 i o P
1 G
Ei (1  G )T  t0 C r

 I P t1  t 0 2

IPZ
1







 1

E
1

G
t

t

1

cos

t

t

i
2
1
2
1 
Ei (1  G )T 
2C r


E  1  G 
また、前述の式 (7.6),I P  1  G I o  o
を代入する。
Ro
G
1 G
2
2
 '
'


 


 Ro'   Z E o'



E
1

G
R
E
1

G
R
1


1

o
o
i
o

   sin 

 
    ' 1  G  1  1  
 1

'


  R

Ei (1  G )T  2C r Ro  ZG 

ZG
ZG


o





145




7.共振絶縁形コンバータ
E
1
ここで, o  G ,
 Z を代入する。
Ei
Cr
2
2

'





R
R
G
1  GZ  Ro' 
1 
ZG


1
1  1   o 

 
 o  
 1


sin
' 
'
 ZG   R 
1 G
T  2 Ro  ZG   
 ZG 
o




2 

'




R
R
G
1  Ro'
ZG


 1
   sin 1  o   ' 1  1   o  
1 G
T  2ZG
ZG  Ro 
ZG  









1
f
次に, 
を代入する。
T 2f 0
2

'




R
R
G
f  Ro'
ZG


 1
   sin 1  o   ' 1  1   o 
1 G
2f 0  2 ZG
ZG  Ro 
 ZG 



f
2

2 
f0
 '
'




R
R
R
ZG


1  G  o    sin 1  o   ' 1  1   o  
 2 ZG
 ZG  
 ZG  Ro 






(7.19)
ここで,f 0は共振周波数,fは動作周波数( f  1 / T )です。
周波数比 ( f / f 0 ) と昇降比 G を求めると次ページの図のようになる。
146
7.共振絶縁形コンバータ
4
3.5
3
G
2.5
2
(注)
負荷大
Z
1.5
1
Lr
Cr
, f0 
1
2 Lr C r
E o' nE o
x

Ei
Ei
0.5
0
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
E o n 2 E o
Ro 

 n 2 Ro
I o
Io
f f0
・動作周波数を下げるとオン期間が長くなり、出力電圧が上昇する。
・負荷が大きくなると動作周波数が低下し、小さくなると高くなる。
図7.4 電圧共振フライバック形コンバータの出力特性
147
7.共振絶縁形コンバータ
7.1.4 今後の展望
電圧共振フライバック形コンバータでは,高耐圧の素子が必要になります。高耐圧に
なると素子のオン抵抗が増加し,ZVS しているにもかかわらずスイッチの損失が増加
し,効率が下がってしまうことになります。耐圧が高く,しかもオン抵抗が低く速度の
速い素子が開発されれば,有効な回路になるでしょう。
148
7.共振絶縁形コンバータ
7.2 電流共振形コンバータ:SMZ ( Soft-switched Multi-resonant Zero-cross)コンバータ
7.2.1 電流共振形コンバータの動作原理
ie
Ci:電流共振コンデンサ、Cv:電圧共振コンデンサ
・ハーフブリッジ構成
・電流共振コンデンサと電圧共振コンデンサが付いている。
・二次側は全波整流。
・Q1とQ2が交互にDuty50%でオンオフする。
・出力電流(励磁電流)が共振し正弦波になる
・Q1,Q2はZVS動作している。 ZVS : Zero Voltage Switching
・出力電圧はFM制御。
・効率が比較的に良く、ノイズも少ない。
図7.5 電流共振形コンバータの構成
149
7.共振絶縁形コンバータ
励磁インダクタンスLPには,電圧( Ei / 2+ΔVciεjπ)を励磁インダクタンスLPとリーケージイン
ダクタンスLS1とでインピーダンス分割した電圧VLPが発生します。このときの励磁インダク
タンスに発生する電圧を式(7.21)に示します。式(7.21)において,動作周波数がインダクタ
ンス(LP+LS1)と電流共振コンデンサCiの共振周波数f1付近になると,共振電圧ΔVciεjπが
最大になるためにVLPも最大になります。また,動作周波数が非常に高くなると電流共振
コンデンサCiが短絡状態になるために,共振電圧ΔVciεjπがゼロになりVLPは最低値になり
ます。このときの出力電圧はVLPに比例して変化するために,動作周波数に対して図6.10
のように変化します。電流共振形コンバータはこの特性を利用して出力電圧を周波数制
御します。
E
VCi  i  VCi
(7.20)
2

LP
LP
 Ei

 Ei
VLP 
E



V



i
Ci 
 2  VCi
LP  LS 1 
2
L

L


P
S1 
 (7.21)
VCi:電流共振コンデンサ電圧,
V LP:励磁インダクタンス電圧,VCi:共振電圧
LS 1
j


 E
i
VLS 1
ie
LP
VLP
Ci
VCi
Q1オン、無負荷時の等価回路
LP:一次励磁インダクタンス
LS:一次リーケージイン
ダクタンス
1
150
7.共振絶縁形コンバータ
VLP
VCi j 
LP
L P  LS 1
Ei
LP

2 L P  LS 1
0
f1 
T /2
1
2
LP  LS1 Ci
T
一次励磁インダクタンスに発生する電圧
図7.6 電流共振形コンバータの出力特性
fが動作周波数を,f1がインダクタンス(LP+LS1)と電流共振コンデンサCiの共振周波数を意
味しています。出力電流があるときは,一周期間の一部の期間で出力ダイオードが導通
し一次励磁インダクタンスが短絡されるために,共振周波数は高くなります。
151
7.共振絶縁形コンバータ
7.2.2 一周期間の動作
一周期間の動作は6つに分けられる。
表7.2 電流共振形コンバータの動作状態
1
2
3
4
5
6
Q1
on
on
off
off
off
off
Q2
off
off
off
on
on
off
D1
on
off
off
off
off
off
D2
off
off
off
on
off
off
注)動作状態3,6:デッドタイム期間,
電圧共振期間
C
152
7.共振絶縁形コンバータ
VVG1
G1
0
VVG 2
G2
0
VCi
VCi
Ei / 2
V LP
V
LP
0
ie i +ii /n
D /n
e
D
0
iD i 
i +i1  i D 2
=i D
D
D1
D2
0
ZCS
Ei
V
V DS
1
DS1
V DS
V 2
ZVS
0
Ei
DS2
0
t0
t1
1
t2
2
t3
3
t4
4
t5
5
T
6
ZVS
図7.7 電流共振形コンバータ
の動作波形
153
7.共振絶縁形コンバータ
(a) 動作状態1
(c) 動作状態3
(b) 動作状態2
(d) 動作状態4
154
7.共振絶縁形コンバータ
(e) 動作状態5
(f) 動作状態6
LS1:一次リーケージインダクタンス,LS2´:一次換算の二次リーケージインダクタンス,LP:一次励磁
インダクタンス,Ci:電流共振コンデンサを,ie:励磁電流を,iD/n:一次換算のダイオード電流,
C´,Ro´:一次換算のコンデンサと出力抵抗
電流の向きは実際に流れている方向に書いてありますが,動作状態1と動作状態4の期間において,
電流(ie+iD/n)が図の方向と逆に流れる期間があります。ご注意ください。
図7.8 電流共振形コンバータの各動作状態における等価回路形
155
7.共振絶縁形コンバータ
■動作状態1,4
スイッチがオン状態にあります。励磁インダクタンスLP及びリーケージインダクタンスLs1,
LS2´と電流共振コンデンサCiが共振しており,ダイオードを通して負荷に電力を供給して
います。このとき,ダイオード電流iD1/nのピーク値はリーケージインダクタンス(LS1+ LS2´)に
よって制限されます。励磁インダクタンスの電圧VLPは直流電圧に共振電圧が加算される
ために,出力電圧は共振電圧により昇圧されることになります。この期間の共振周波数ω0,
共振回路のインピーダンスZ0,励磁インダクタンスの電圧VLPは以下のようになります。
なお,式中のΔVCiは共振電圧を意味します。
0 
1
(7.22) , Z 0 
LS C i
VLP (t 0~t1 ) 

VLP (t 3~t 4 ) 
LS
Ci
(7.23)
注) LS  LS1 
L P LS 1
(7.33)
L P  LS 1
LP
Ei  VCi   LS1 d (i D1 / n)  LP Ei / 2  VCi   LS1 d (i D1 / n)
L P  LS 1
dt
L P  LS 1
dt
LP

Ei / 2  VCi
L P  LS 1
j
 L
S1
d (i D1 / n)
dt
LP
0  Ei / 2  VCi   LS1 d (iD 2 / n)
L P  LS 1
dt
 LP
d (i D 2 / n) 
Ei / 2  VCi   LS1
 

L

L
dt
S1
 P

(7.24)
無負荷時よりもこの分
低下する。
(7.25)
156
7.共振絶縁形コンバータ
■ 動作状態2,5
励磁インダクタンスLP及びリーケージインダクタンスLs1と電流共振コンデンサCiが共振し
ており,出力電圧が共振電圧(ΔVci)の分,昇圧されます。この期間の共振周波数ω1,共
振回路のインピーダンスZ1,励磁インダクタンスの電圧VLPは以下のようになります。
1 
1
LP  LS1 Ci
VLP (t1~t 2 ) 

VLP (t 4~t 5 ) 
L P  LS 1
Ci
(7.26) , Z 1 
(7.27)
LP
Ei  VCi   LP Ei / 2  VCi 
L P  LS 1
L P  LS 1

LP
Ei / 2  VCi
L P  LS 1
j

(7.28)
LP
0  Ei / 2  VCi    LP Ei / 2  VCi 
L P  LS 1
L P  LS 1
(7.29)
157
7.共振絶縁形コンバータ
■動作状態3,6
スイッチQ1,Q2はオフ状態にあります。励磁インダクタンスLP及びリーケージインダクタンス
Ls1と電流共振コンデンサCi及び電圧共振コンデンサCVが共振しており,これを利用してスイ
ッチQ1,Q2をZVSさせることができます。この期間の共振周波数ω2,共振回路のインピーダ
ンスZ2,励磁インダクタンスの電圧VLPは以下のようになります。ただし,CV<<Ciです。
 22 
1

LP  LS1  Ci CV
 Ci  CV
Z2 
L P  LS 1
CV




1
LP  LS1 CV
(7.30)
 CV
 Ci 
(7.31)
表7.3 電流共振形コンバータのZVS動作点
t0
Q1
Q2
on
t1
t2
t3
t4
t5
off
on
off
158
7.共振絶縁形コンバータ
7.2.3 出力電圧の制御
次に昇降圧比Gを交流近似解析により求めます。トランスの一次巻線には0~T/2 期間
はEi/2 が,T/2~T 期間は−Ei/2 が加わっており,この電圧が入力電圧になります。この矩
形波電圧をフーリエ展開して基本波を取り出すと,振幅が2Ei/π の交流電圧になります。交
流近似解析では,このように矩形波電圧を交流に変換し,交流に対する等価回路から昇降
圧比を近似します。
入力電圧を下図のような矩形波電圧とすると以下のようにフーリエ展開できます。
Ei 4 
1
1
1
1
 2E 

  sin t  sin 3t  sin 5t       i  sin t  sin 3t  sin 5t     
2 
3
5
3
5
  

基本波だけを考えると,入力電圧は以下となります。
2E
Vi  Vim sin t  i sin t
(7.32)
Vi 

Vi
Ei
2
0
Vim 
T /2
2 Ei

T
電流共振コンデンサを無
限大としたときの入力電圧
図7.9 入力電圧の交流への変換
159
7.共振絶縁形コンバータ
先ず図7.5より交流近似解析における等価回路を求めると下図のようになります。
LS 2  LS1 
LS 1
LP
Ro  AC
LS
LP
Vo
Ro  AC
Vo
Vi
Vi
Ci
Ci
(a) 等価回路1
Vi : 交流入力電圧
(b) 等価回路2
LS  LS 1 
L P LS 1
L P  LS 1
(7.33)
LP  LP 
L P LS 1
L P  LS 1
(7.34)
Vo : 交流出力電圧
LP : 励磁インダクタンス
C i : 共振コンデンサ
LS 1 : 一次リーケージインダクタンス
詳細は次ページ以降を参照してください。
LS 2 : 一次側換算の
二次リーケージインダクタンス
Ro-AC : 交流出力抵抗
図7.10 電流共振形コンバータの交流近似解析における等価回路
160
7.共振絶縁形コンバータ
図7.10(a )の等価回路1において出力ダイオードが導通すると交流抵抗Ro  AC は
短絡され,このときの合成インダクタンスをLSとすると,
LS  LS 1 
LP LS 2
L L
 LS 1  P S 1
LP  LS 2
L P  LS 1
(7.33)
となります。また,出力ダイオードが非導通でRo  AC が開路状態にとき,合成イン
ダクタンスはLP  LS 1となります。このことより,
1周期間の平均をとって,さらに
簡易化した等価回路を求めると図7.10(b)になります。
図7.10(a ), (b)において,Ro  AC が開路状態のときはLS 1  LP  LP  LS が成り立ちま
す。これより,LP を求めることができます。

L L 
L L
LP  LP  LS 1  LS  LP  LS 1   LS 1  P S 1   LP  P S 1
L P  LS 1 
L P  LS 1

(7.34)
161
7.共振絶縁形コンバータ
ここで、交流出力抵抗を求めておきます。
矩形波の出力電圧をフーリエ展開し基本波だけを取り出すと下図の(a)のようになります。
また,出力電流の基本波電流は同図(b)のようになります。
Vo  Vom sin t 
4 E o'

sin t 
4nE o

sin t
(7.35)
Io 2


 I om より I om  I o' 
Io
(7.36)
n 
2
2n
これより,交流出力抵抗を求めることができます。
I o' 
Ro  AC 
Vom 4nE o 2n
E
8
8


 2  n 2  o  2  n 2  Ro  DC  0.81n 2  Ro  DC
I om
 I o 
Io 
Vo
E  nEo
'
o
0
T /2
Vom 
T t
(a) 出力電圧の交流変換
4 Eo'


4nEo

io
I  Io n
'
o
0
T /2
(7.37)
I om 

2
I o' 

2n
T t
(b) 出力電流の交流変換
電圧・電流はすべて一次側に換算したものになっています。
図7.11 出力電圧・電流の交流への変換
162
Io
7.共振絶縁形コンバータ
次に図7.10(a)における昇降圧比Gを求めます。

V
j L P
1 V
G  o    i 
 Ro  AC 
V
Vi Vi  Z T Ro  AC  j LP  LS 1 

jLP ( Ro  AC  jLS 1 )
1
ここで,Z T  jLS 1 

を代入します。
jC i Ro  AC  j LP  LS 1 
L S 2  L S1 
LS 1
LP
Ro AC
Vo
i
i
Ci
i



Vi
j L P
1 


G  

 Ro  AC 
jLP ( Ro  AC  jLS 1 ) Ro  AC  j LP  LS 1 
1
Vi 

j L S 1 



jC i Ro  AC  j LP  LS 1 
jLP Ro  AC


1 
 jLS 1 
Ro  AC  j LP  LS 1   jLP ( Ro  AC  jLS 1 )
j

C
i 


 2 LP C i Ro  AC

2
LP  LS1 Ci  1Ro AC 


L L  
j LP  LS 1  2 C i  LS 1  P S 1   1
L P  LS 1  



L L 
L
1
1
f
LS   LS 1  P S 1 , 02 
,12 
,K 1  P ,y  とおき,等式を整理
LP  LS1 Ci
L P  LS 1 
LS C i
LS
f0

します。
163
7.共振絶縁形コンバータ
2
K

LS C i Ro  AC
1
G  2
 LP  LS 1 C i  1 Ro  AC  j LP  LS1   2 LS C i  1




K 1 2 Ro  AC

 02
K1

2
   02  02 
 2

1







1
R

j

L

L

1


j

L

L

 2
 o  AC
P
S1 
P
S1
2
  2  2 
Ro  AC
 1

 0
  1

K1

(7.38)
 f 2  1  2  j  L  L    1  2 
P
S1 
1    
 02     
  y 
Ro  AC
 f 1  y  


  02
1  2
 





したがって、Gの絶対値は最終的に以下のようになります
K1
G
2
(7.39)
 2f L  L    1  2 
 f 2  1 2 
P
S1 
1    
 02      
  y  
Ro  AC

 f 1  y  


1
1
ただし,f 0 
,f 1 
です。
2 LS C i
2 LP  LS 1 C i
2
164
7.共振絶縁形コンバータ
さらに,図7.10(b)の等価回路における昇降圧比Gを求めると以下のようになります。

V
jLP
1 V
G  o   i 
 Ro  AC 
Vi Vi  Z T Ro  AC  jLP

jLP Ro  AC
1
ここで,Z T  jLS 

を代入します。
Ro  AC  jLP
j C i
jLP

V

 Ro  AC
i


R

j

L
1
o  AC
P
G  
jLP Ro  AC
1
Vi 
j L S 


Ro  AC  jLP
j C i





LS
LP
Ro AC
Vo
Vi
i
Ci
i
jLP Ro  AC

1
 jLS 
j C i


Ro  AC  jLP   jLP Ro  AC

 2 LP Ci Ro  AC
 2
 LS Ci  1Ro AC  jLP    2 LP Ci Ro AC
f0 
Q
1
2 LS C i
,y 

L
L L 
f
, K 2  S   LS 1  P S 1 
fo
LP 
L P  LS 1 

L L 
 LP  P S 1  , Z 0 
L P  LS 1 

LS
,
Ci
Ro  AC
Ci
 Ro  AC
とおき等式を整理します。
Z0
LS
165
7.共振絶縁形コンバータ
G 


G 
f
f
2
 2 LS C i LP Ro  AC LS
f 02  1Ro  AC  jLP    2 LS C i LP Ro  AC LS
f
2
f 02 Ro  AC K 2
 jLP    f 2 f 02 Ro  AC K 2
2
f 02  1Ro  AC
y2
y 2  1 K 2  jRLP K 2
o  AC


  y 2


y2
y
2

j L S
 1 K 2 
Ro  AC

y2

  y 2

y2




y
j L S C i L S
2
2
2



  y 2


y

1
K

j
y  1 K 2  R
y
2

Q
C i 

o  AC

y2
1


(7.40)
y 2


K
2
1
1
y K 2  1  K 2  j  y  1 K 2  1  2  j  y  
Q
Q 
y 
y2
昇降圧比の絶対値は最終的に以下となります。
G
1
2

K2 
1 
1




K

1


y

 2
2 
2 
y
y
Q




2
(7.41)
166
7.共振絶縁形コンバータ
式(7.41)で与えられるG は、y=1、つまり動作周波数 f が f0 に等しい時にQの大きさに
関係なく1になる。また、動作周波数 f が f0 より高い時は1未満になり、低い時は1を超え
た値になる。
 f  f0  G  1
 f  f0  G  1
* f  f0  G  1
LS1/LPを0.16~0.24まで0.04刻みに変化させたときの、y(=f/f0)に対するGの変化を
図7.13以降に示す。この特性を利用して出力電圧が制御される。
注)
 LS 1 
LS1 リーケージインダクタンス

 は

 0.16~0.24 のとき、
LP
励磁インダクタンス
 L P  LS 1 
LS 1
リーケージインダクタンス

: 0.138~0.194 になります。
L P  LS 1
自己インダクタンス
167
7.共振絶縁形コンバータ
Ls1/Lp
K2
Ls1/Lp
K2
K2
0.02
0.04
0.06
表7.4
0.08
0.1
0.0404 0.0816 0.1236 0.1664
0.22
0.24
0.26
0.21
0.28
0.3
0.4884 0.5376 0.5876 0.6384
0.69
0.12
0.14
0.16
0.18
0.2544 0.2996 0.3456 0.3924
0.32
0.34
0.36
0.2
0.44
0.38
0.7424 0.7956 0.8496 0.9044
1
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0.4
0.96
LS  LS 1 
L P LS 1
L P  LS 1
LP  LP 
L P LS 1
L P  LS 1
K2 
0
0.1
0.2
0.3
LS
LP
0.4
LS1 / LP
図7.12
リーケージインダクタンスの比率と定数 K2
168
7.共振絶縁形コンバータ
Q
LS1 LP  0.16 , K  0.3456
10
G
Ro  AC
Ci
 Ro  AC
Z0
LS
Q=100
9
Q=20
8
Q=10
7
Q=9
6
Q=8
5
Q=7
4
Q=6
Q=5
3
Q=4
2
Q=3
1
Q=2
0
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
1.1
1.2
Q=1
y=f/fo
図7.13 入出力電圧比の周波数特性(出力電圧特性)
169
7.共振絶縁形コンバータ
10
LS1 LP  0.2 , K  0.44
Q=100
9
Q=20
8
Q=10
7
Q=9
6
Q=8
5
Q=7
4
Q=6
3
Q=5
G
Q=4
2
Q=3
1
Q=2
0
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
1.1
1.2
Q=1
y=f/fo
図7.14
入出力電圧比の周波数特性(出力電圧特性)
170
7.共振絶縁形コンバータ
LS1 LP  0.2 4, K  0.5376
10
Q=100
9
Q=20
Q=10
8
Q=9
7
Q=8
6
Q=7
5
Q=6
G
Q=5
4
Q=4
3
Q=3
2
Q=2
1
Q=1
0
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
1.1
1.2
y=f/fo
図7.15
入出力電圧比の周波数特性(出力電圧特性)
171
7.共振絶縁形コンバータ
7.2.4 電流共振形コンバータの特徴
電流共振形コンバータは以下に述べる特徴があり,広範囲にいろいろな電気及び電子機器
に使用されています。
① 一周期間に2回エネルギーの伝達が行われるために,トランスの利用率が上がり小型化
ができます。リンギングチョーク形コンバータ(RCC)に比べコアサイズで2ランク程度小さく
できます。
②ハーフブリッジ形であるために,1つのスイッチに加わる電圧は入力電圧以上にはならず,
したがって耐圧はリンギングチョーク形コンバータより低くて済み, オン抵抗により発生す
る損失を少なくできます。
③Q1とQ2がZVSしているためにスイッチング損失が少なく,効率が比較的に良い(RCC比2%
程度以上)。ただし,負荷に関係なく大きな励磁電流が流れているために,軽負荷のときの
効率はあまり良くありません。
④D1とD2がZCSしているためにスイッチング損失が少なく,リカバリノイズが小さい。
⑤トランスやQ1,Q2の放熱板が小さくでき,基板面積が少なくなります。
以上のような長所を持っていますが,反面,以下に述べる欠点があります。
⑥ 二次側が全波整流になっているために,トランスから供給できる電源の数が限定され,
多出力が取れません。
172
7.共振絶縁形コンバータ
⑦共振はずれ現象(励磁電流の共振周波数よりQ1とQ2の動作周波数が下がってしまい,同
期が外れる現象)を起こすと出力段に貫通電流が流れ,Q1とQ2が破壊します。現在では
パルス・バイ・パルス方式で共振はずれを検出して,動作周波数が共振周波数より低く
ならないようにしています。
⑧ コストがやや高い。
⑨ トランスの励磁電流は共振電流であるが,この電流に対してQ1とQ2はZCSしてなく,また,
MOSFETを使っているために切れが速く,ある程度の輻射ノイズが発生します。
173
7.共振絶縁形コンバータ
7.3 部分共振形コンバータ
VG
T
D10
D
LS
Ei
0
+
C
Ro
Eo VCr=VQ
R1
VQP
0
C2Cr
R7
R7
Q
VL
0
Q1
+ D2
C2
C/D
Q3
C3
Eo
Amp
Q4
RR2
2
D
D8310
iP  I P
P
R3
Ei / n
一次励磁電流
RR34
D
D411
9
R4
C4
C4
R56
IL n
0
iQ
R5
iQP
Ii
0
iD
0
Io
t1
t0
1
図7.15 部分共振形コンバータの構成と動作波形
t2
2
T
3
t
174
7.共振絶縁形コンバータ
表7.5 部分共振形コンバータの動作状態
動作状態1
動作状態2
動作状態3
Q
on
off
off
D
off
on
off
構成は基本的にRCCに同じすが、スイッチと並列に新たに共振コンデンサCrを設けてい
る。出力のダイオードがオフした後、スイッチを直ぐにオンさせずトランスの一次巻線イン
ダクタンスL1と共振コンデンサCrで共振させる。その結果、メインスイッチの電圧VQが共
振により徐々に低下し、最低値になったところでスイッチのゲート信号を供給しオンさせ
る。この動作により、スイッチング損失が少なくなり、効率が上がります。また、ノイズが少
なくなります。しかし、ゲート信号を遅らせる回路が必要になり、その分部品点数が多くな
ります。
175
第7章 演習問題
7.1 電圧共振フライバック形コンバータにおいて動作周波数が下がると出力電圧が上がる。
その理由を式と図を書いて説明せよ。
7.2 SMZ ( Soft-switched Multi-resonant Zero-cross )コンバータにおいて動作周波数を
V
上げると入出力電圧比xが1に近づくが、何故か? x  o
Vi
176
END
177
レポートの課題
1.チョッパ方式非絶縁形コンバータの三方式について出力特性(時比率に対する出力電圧)
とそれぞれの方式の 特徴および用途について説明しなさい。
2.共振形スイッチング電源が開発された一番の理由について説明しなさい。また、電流共振
形コンバータが広く使われていますが、その特徴について説明しなさい。
3.リンギングチョーク形コンバータとフライバック形コンバータを比較した場合、どのような
得失があるか説明しなさい。
提出期限
2016年8月8日(月)14時までに3号館1Fの EL事務室に提出してください。
178
付録:演習問題の解答
1.1 現在は集中型発電が主であるが、交流による送配電が行われている。
その主たる理由は何か?
発電所から高電圧で送電し電流を減らすことにより、送電損失を少なくしています。
送電を開始した当時には直流を変圧する技術がなく,容易に変圧できる交流送電
が採用されました。
2.1 スイッチング電源回路にはいろいろな機器に使われている。どのような事が必要と
されるか?
・高い信頼性
・安全性
・高効率、低消費電力(動作時及び待機時の電力)
・高性能
・小型、軽量
・低コスト
・低ノイズ
179
付録:演習問題の解答
3.1 (
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
)内に適当な言葉を入れなさい。
シリーズレギュレータ
スイッチングレギュレータ
デューティレシオ(時比率)
スイッチング周波数(周波数)
パルス幅制御(PWM:Pulse Width Modulation)
周波数制御(FM:Frequency Modulation)
オン(オフ)
オフ(オン)
4.1 POL(Point of load)電源として最も多く使われている方式はどれか?
また、それはどういう理由からか?
ICの微細化が進み電源電圧が低下している。そのために負荷(IC)の近くに降圧形
コンバータを配置し、配線等による電圧降下でICが不動作になるのを防いでいる。
180
付録:演習問題の解答
4.2 プッシュプル形、ハーフブリッジ形、フルブリッジ形の使い方の差について説明せよ。
ただし、各方式の出力電圧とスイッチに加わる電圧は以下となっている。
表A4.1
プッシュプル形
ハーフブリッジ形
フルブリッジ形
Eo
2 DEi n
DEi n
2 DEi n
VQP
2 Ei
Ei
Ei
用途
・入力電圧が低い時
・主に中~大電力用
(数100W~数kW)
・入力電圧が高い時
・フルブリッジ形よりも
出力電力が低い時
・入力電圧が高い時
・ハーフブリッジ形よりも
出力電力が大きい時
4.3 スイッチング周波数を上げるとトランス等小形化できるが、スイッチング損失が増えて
しまう。そこで、これを解決するためにスイッチング損失を減らす技術として考え出され
たコンバータとは何か? また、どのような技術か?
P40,41参照
181
付録:演習問題の解答
5.1 降圧形コンバータにおいて負荷電流の最小値が1Aから0.8Aに減少した。
電流不連続を起こさないようにするためにはどうしたら良いか?
ただし、負荷電流が1Aのときの条件を以下とする。
Ei  10V , Eo  5V , L  12.5, f  100kHz, T  10s

Ei  Eo Eo T
iL Ei  Eo 
5 5
10 10 6
Io 

DT 



 1.0 Aで不連続になる。
6
2
2L
Ei
2 L 10 2 12.5 10
したがって、I o=0.8 Aに減った場合は不連続になってしまう。そのために、
①周波数を上げるか
②コイルのインダクタンスを上げる必要がある。
T  0.8 10s  8s  f 
L
1
8s
 125kHz
12.5H
 15.6H
0.8
i L Ei  Eo 

DT
2
2L
I oが減ったら右辺i Lも小さくし不連続にならないようにする。
Io 
182
5.2 昇降圧形コンバータにおいてデューティレシオ(D)が0.2と0.5におけるEo/Eiを求めよ。
付録:演習問題の解答
条件:Ei  12V , rQ  0.05, rL  0.03,
rD  0.02, Ro  2.5
1
0.9
E
G o
Ei
0.8
r1  rQ  rL  0.05  0.03  0.08
0.7
r2  rD  rL  0.02  0.03  0.05
0.6
r  Dr1  D r2
0.5
r
D 2
E
D
1
G o 

E i 1  D 1  Z o / Ro
Zo 
0.4
0.3
0.2
0.2
0.3
0.4
0.5
D
図A5.2 デューティレシオと昇降圧比G
表A5.1 デューティレシオと昇降圧比G
D
0.5
0.45
0.4
0.35
0.3
0.25
0.2
D‘=1-D
0.5
0.55
0.6
0.65
0.7
0.75
0.8
r
0.065
0.0635
0.062
0.0605
0.059
0.0575
0.056
Zo
0.26
0.209917 0.172222 0.143195 0.120408 0.102222
0.0875
Zo/Ro
0.104
0.083967 0.068889 0.057278 0.048163 0.040889
0.035
1+Zo/Ro
1.104
1.083967 1.068889 1.057278 1.048163 1.040889
1.035
G=Eo/Ei 0.905797 0.754803 0.623701
0.50929
0.408879 0.320239 0.241546
183
付録:演習問題の解答
6.1 リンギングチョーク形コンバータにおいて入力電圧が低下すると自動的にデューティレシオ
Dが大きくなり出力電圧を一定にする。その理由についての図と式を示し説明せよ。
ヒント:一次巻線を流れる電流がどうなるかを考える。
Ton
Ton
IP 
IP
I P
W 
Ei
E
Ton  i DT  A
LP
LP
LP I P2
2
 PoT 
Po
J 
f
T
T
図A6.1 入力電圧低下時のトランスの励磁電流
入力電圧が変化すると出力電圧が一定になるようにオンデューティが変化する。
その結果、周波数も変化する。また、出力電力が一定であるためにIPも変化する。
例えば、入力電圧が低下すると上図のようにオン期間が伸び周波数が低下する。
周波数が低下するとスイッチング1サイクル当たりの電力が増えるためにIPが上図の
ように増加する。
184
付録:演習問題の解答
6.2 リンギングチョークコンバータとフライバック形コンバータを比較した場合、どのような
得失があるか説明せよ。
表A6.1 リンギングチョークコンバータとフライバック形コンバータの比較
リンギングチョーク形コンバータ
フライバック形コンバータ
動作周波数
変化する。
固定
スイッチ電流の
形状と大きさ
三角波、大きい
台形
トランスの大きさ
フライバックより大きくなる。
コア損失が少なく、また、周波数固
定のために小さくできる
出力電力
小電力用、概ね150W以下。約
30W以下は殆どがこの方式である。
小電力用、概ね30~250W以下
ノイズ
周波数が変化するために
フライバック形より有利
二次側ダイオードのノイズが大きい
周波数が一定のために不利
185
付録:演習問題の解答
7.1 電圧共振フライバック形コンバータにおいて動作周波数が下がると出力電圧が上がる。
その理由を式と図を書いて説明せよ。
V P VT  VP  Ei
Ei
Ei
0
T
Ei T  VP t r  (VT  Ei )t r
0
t r : 一定
T
VT

 1

Ei T  Ei t r  T



VT 
   1 Ei  
 1 Ei
tr
 tr

 f  tr

(A5.1)
0
f
図A7.1 電圧共振フライバック形コンバータの動作周波数と出力電圧
186
付録:演習問題の解答
7.2 SMZ ( Soft-switched Multi-resonant Zero-cross )コンバータにおいて、動作周波数を
上げると昇降り電圧比Gが1に近づくが、何故か
Vi 
Ei
2
Vo 
LP

Ei / 2  VCi
L P  LS 1
無負荷でありLS1  LS 2 
j
  L
S 1  LS 2 
d i D1 / n 
dt
d i D1 / n 
LP
Ei / 2  VCi
 0とすると、Vo 
dt
L P  LS 1
j

Vo
LP  VCi j
1 
G

V i L P  LS 1 
Ei / 2


となる。

ここて、周波数が上がるとC iは徐々に短絡状態となりVCi j が小さくなりGが1に近づく。
f  とするとG 
LP
となる。
L P  LS 1
187