にせ税理士対策について

にせ税理士対策 に つ い て
平成15年4月
九州北部税理士会
綱紀監察部
序
税理士は、税務の専門家として納税者の信頼にこたえ、納税義務の適正な実現を図るとい
う使命を持つとともに、税務行政上も極めて重要な役割を果たしています。
税理士法では、税理士の使命及び職責の重要性にかんがみ、有資格者のみに税理士業務を
行うことを認め、無資格者の税理士業務を禁止しています。
税理士資格を有しない「にせ税理士」は、法の規則をくぐって税理士業務を侵害し、税理
士全体に対する社会的信頼を低下させ、ひいては、税理士制度の健全な発展を阻害するもの
です。
このようなにせ税理士に対し、会員ひとりひとりが絶えず監視の目を光らせ、にせ税理士の
発生を未然に防止するよう努めるとともに、違反者に対しては強い姿勢でその排除にあたら
なければなりません。
税務当局はもとより、税理士会においても、その排除のために多大の努力を傾注していま
すので、会員各位も積極的な協力と適切な対応をお願いします。
九州北部税理士会では、平成3年4月に「にせ税理士対策について」という冊子を発行、
平成10年9月に改訂版を刊行して、その排除のために努力しているところでありますが、
このたび税理士法の改正に伴う改訂版を刊行することになりました。
会員各位におかれましては、いま一度自らの使命と職責を再確認し、本冊子を「にせ税理
士」発生の未然防止のために活用されますことを切に願うものであります。
平成15年4月
九州北部税理士会
綱紀監察部長
木村
政男
目
次
1.
にせ税理士の排除
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
2.
会員としての留意事項 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
(1)
名義貸し行為の禁止 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
(2)
使用人の管理監督 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
(3)
関与先との信頼関係の醸成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
(4)
事務所の継承 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
3.
にせ税理士等の情報の収集 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
4.
税理士会としての対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
※ 別
紙(にせ税理士等情報連絡せん)
1.にせ税理士の排除
税理士の資格を有しない者が税理士業務を行うことは、税理士法第52条(税
理士業務の制限)に違反するものであり、税理士業務に対する不法な侵害行為
でありますので、にせ税理士の排除は、税理士業界における重要な課題であり
ます。
にせ税理士行為は、納税義務の適正な実現を阻害するだけでなく、納税者に
不測の不利益を与える恐れがあり、ひいては、税理士業界全体の信頼が害され
ることにもなりかねません。
したがって、次項以下に述べることに留意して厳正な態度で対処することが
重要であります。
にせ税理士事案については、その処理に努めていますが、事案の発生は、依
然として後を断たないばかりか、むしろ、増加の傾向すら見受けられる状況で
す。
特に、「○〇経営計算センター」又は「〇〇会計センター」等の名称を用い
て事務所を設置し、事務機を駆使するなどかなりの規模で業務を行っていたり、
また全国各地に支店や出張所を設け全国的規模で業務を行っているものも見受
けられます。
これらの中には、税理士資格を有していないにもかかわらず税務書類の作成
を行っている疑いがあるものもあります。
(注)*税理士法第52条(税理士業務の制限)
税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、
税理士業務を行ってはならない。
2.会員としての留意事項
にせ税理士対策については、にせ税理士を発見し、それを排除していくとい
う後追い型パターンでは、いつまで経つても問題の解決にはならないという指
摘があります。
にせ税理士を発生させないような防止措置をとることが最も大切なことです
が、これについては会員各位が、にせ税理士行為に対しては、厳正な姿勢で対
処しなければならないと認識することが必要であります。
したがって、にせ税理士の発生防止については、会員各位に留意していただ
きたい点を幾つか挙げてみます。
(1)名義貸し行為の禁止
にせ税理士に対して名義貸しその他一切の便宜を与えないようにしなけ
ればならないということであります。
このことは、税理士としての品位を保持する観点からも極めて大切なこ
- 1 -
とであり、しかも、にせ税理士排除対策として大きな効果が期待できるか
らであります。
にせ税理士が行っている業務の内容は、記帳代行から決算及び税務書類
の作成までを行っています。
にせ税理士が作成した申告書を税理士が審査していたとしても、また、
にせ税理士から依頼されて税理士自身が申告書を作成したとしても、いず
れの場合においてもにせ税理士から依頼されたものである限り、名義貸し
行為に当たります。
申告書に署名押印することは、その申告書について責任を負うことにな
ります。例え、名義貸しとして申告書に署名押印したとしても、署名押印
した申告書に誤りがあった場合、納税者から損害賠償請求の対象になるな
ど、トラブルも発生します。
この様な、名義貸し行為は、綱紀規則第16条(名義貸の禁止)及び綱紀
規則第17条(にせ税理士との関連排除)に違反します。
また、名義貸しを行った結果にせ税理士の事務所が、当該税理士の増設
事務所とみなされる場合は、税理士法第40条第3項(事務所の設置義務)に
違反することになります。
したがって、名義貸し行為をした会員は、税理士法違反として懲戒処分
の対象となるほか、会則違反として、会則第49条(会員の処分)に基づく
処分の対象とされることになります。
(注)*綱紀規則第16条(名義貸の禁止)
会員は、いかなる場合においても、他の者に税理士として自己の名義を利用させ、
又は利用するおそれのあるような便宜を与えてはならない。
*綱紀規則第17条(にせ税理士との関連排除)
会員は、直接間接又は有償無償を問わず、法第52条に違反する疑いのある者と次
の関係を結んではならない。
(1)税理士の業務を行うための事務所を共同使用し又は賃貸借すること。
(2)業務上のあっせんを受け又は紹介すること。
(3)実質上の使用人となり又は雇用すること。
(4)業務を代理し、又は業務に関与すること。
(5)業務上の便宜を与えること。
*税理士法第40条第3項(事務所設置の義務)
税理士は税理士事務所を2以上設けてはならない。
*会則第49条第1項(会員の処分)
会長は、会員が税理士に関する法令、連合会の会則又は本会の会則若しくは規則
に違反した場合は、理事会の議を経て当該会員を訓告し、又は1年以内本会の会員
として有する権利の全部又は一部を停止することができる。
(2)使用人の管理監督
使用人の管理監督のあり方や、税理士事務所の運営のあり方について問題
はないか、いま一度、よく考えてみる必要があるということであります。
綱紀監察部で、今までに審議されたにせ税理士問題を調べてみますと、そ
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の大部分が税理士事務所の元使用人となっています。
使用人の管理監督がおろそかになった結果、使用人が関与先(特に当該使
用人の担当関与先)や、場合によっては他の使用人も引き抜いて、にせ税理
士行為を始めていくといったケースが見受けられます。
使用人に対しては、その管理監督に常時配意することが大切であります。
使用人等の監督義務については、税理士法第41条の2(使用人等に対する
監督義務)及び会則第44条(使用人等の監督)に規定されているほか、会の
使用人等綱紀細則にも、具体的に列挙されていますので、使用人等に不正行
為が起きないように、十分注意してください。
(注)*税理士法第41条の2(使用人等に対する監督業務)
税理士は、税理士業務を行うため使用人その他の従業者を使用するときは、税理
士業務の適正な遂行に欠けるところのないよう当該使用人その他の従業者を監督し
なければならない。
*会則第44条(使用人等の監督)
会員は、税理士の業務に係るその使用人その他の従業者(この章において「使用
人等」という。)が税理士に関する法令に違反する行為を行わないよう、連合会の
会則並びに本会の会則及び規則等の規定に基づき、監督しなければならない。
(3)関与先との信頼関係の醸成
税理士は、関与先との信頼関係の醸成に特に留意する必要があります。
関与先との日常の接触は、使用人にある程度任せる場合もあるかと思われ
ますが、任せっ放しにしますと、税理士と関与先との関係が疎遠になって信
頼関係にも支障を来たし、担当使用人の退職にからんで関与先を引き抜かれ
たり、又はにせ税理士発生の温床ともなりかねません。
税理士と関与先との相互信頼関係の絆を強化することは、税理士業務の健
全な運営からも、また、にせ税理士発生の予防的見地からも極めて重要なこ
とでありますので、特段の配意が必要であります。
(4)事務所の継承
税理士の死亡又は引退等による個人税理士事務所の継承が円滑に行われな
かった場合に、資格を有しない使用人がにせ税理士として業務を継続したり、
独立してにせ税理士行為を行うといったケースがしばしば見受けられます。
税理士の資格が一身専属制である以上、常々業務の継承対策をしっかり立
てておく必要があります。
このことは、にせ税理士発生の予防のためにも極めて大切なことだと言え
ます。
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3.にせ税理士等の情報の収集
過去におけるにせ税理士問題の処理状況を見ますと、にせ税理士開業後早い
機会に対応したものについては、比較的、円滑に問題が解決されていますが、
長期間にわたって放置されていたものについては、その解決に相当の困難を伴
っているのが現状です。
にせ税理士は、各地で潜在的に存在している可能性があり、これらのにせ税
理士排除について実効をあげるためには、幅広い会員の協力が必要であります。
したがいまして、にせ税理士に関する情報等を見聞したときは、会の綱紀規
則第17条第2項(にせ税理士との関連排除)に基づき、別紙様式の「にせ税理士
等情報連絡せん」を使用して、本会の綱紀監察部長あてに届け出るようお願い
します。
(注)*綱紀規則第17条第2項
会員は、法第52条に違反する疑いのある者を発見したときは、速やかにその者の
氏名及びその事実の概要等を本会に届け出なければならない。
4.税理士会としての対応
にせ税理士の排除については、税理士会と税務当局とが協調して積極的に対
応していかなければ、その成果を期待することはできません。
したがって、にせ税理士問題については、税理士会の本部及び各支部におい
ても、国税局や税務署と常に連絡協調を図りながら、同一歩調をもってこれに
対処することが大切であります。
綱紀監察部としては、にせ税理士や名義貸し税理士に対して厳正に対処する
こととしています。
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別 紙
に せ 税 理 士 等 情 報 連 絡 せ ん
(平成 年 月 日)
に
せ
税
理
士
と
思
わ
れ
る
者
の
氏 名
住 所
事務所の名称
事務所の所在地
同上電話番号
に
せ
税
理
士
行
為
等
の
内
容
名義貸しをしている税理士がいると思われる場合、その
税理士名
支部名
情報提供者(差し支えがあれば、無記名でも結構です。)
支部、
税理士
(注) 1.この連絡せんは、九州北部税理士会綱紀規則第17条第2項により作成する
ものです。
2.この連絡せんは、親展文書をもって、九州北部税理士会の綱紀監察部長
(〒812-0016 福岡市博多区博多駅南1丁目13番21号)あてに送付してくだ
さい。