広域災害対策マニュアル【事務所編】(PDF)

〈 事務所編 〉
第1章 広域災害対策の基本的な考え方
現在、東海大地震の切迫性が叫ばれ、また風水害や火災もいつ発生するかわからない状態
にある。
従って、会員一人ひとりにおいても、災害を想定した広域災害対策を講ずる必要がある
ものと思われる。
そこで、本会は、以下の基本的な考え方に基づき、会員個人における広域災害対策の一
助となるようなマニュアルを策定する。
1 会員及び会員事務所(事務所職員)を対象として策定する。
2 大地震、風水害、火災等の災害を想定して策定する。
3 税理士の特殊性を念頭におき策定する。
4 平常からの事前対策と災害発生時の対策とに大別して策定する。
第2章 税理士業務及び税理士事務所の特殊性
税理士は、税の専門家として、納税義務者の信頼にこたえ、納税義務の適正な実現を図
ることを使命(税理士法第1条)としている。
税理士業務は、このような社会的、公共的な性格を有するものであり、税理士のみが営
める独占的業務である以上、税理士は、この社会的使命と業務上の責任を常に念頭におき
業務を遂行しなければならない。
これは、地震等災害時においても同様で、税理士は、①事務所の維持及び従業員の安全
確保、②関与先の被害状況の把握と救済並びに資料の保全、③業務の早期回復に努め、関
与先への職責を果たすと同時に、本会が行う災害税務援助活動に協力するなど、地域社会
への税理士業務を通じた貢献をすることが肝要である。
第3章 平常時の広域災害対策
1 緊急連絡網の整備
⑴ 本会及び支部との緊急連絡網
本会で策定の「広域災害対策マニュアル」(本会・支部を中心とする組織編)では、
緊急時の通信連絡は第一義的には会員を主体とするものとし、会員(その代理人)か
ら情報を発信する場合の宛先の優先順位は、次のとおりとなっている。
【緊急連絡網】
第1順位 所属支部
第2順位 班 長(班組織がある場合)
(被災)会員
第3順位 災害対策本部
〈東海税理士会 052−581−7508〉
第4順位 緊急時連絡先リスト登載者
(注)会員は、予め支部に緊急時連絡先を登録することとして、変更が生じた場合は遅
滞なく変更手続きをされたい。
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⑵ 事務所内の緊急連絡網
① 事務所職員全員の住所、緊急時の連絡先、電話番号(携帯電話も含む)、FAX
番号等の一覧表を作成する。
② 知り合いの税理士の一覧表を作成する。(①の一覧表に組み入れてもよい。)
③ インターネット通信をしている事務所においては、そのメールアドレス等を一覧
表にしておく。
《 緊 急 連 絡 網( 一 例 )》
○○○税理士事務所 緊急連絡網
職員A
所 長
職員B
TEL
TEL
FAX
FAX
税理士
職員A
職員B
TEL
TEL
FAX
FAX
2 事務所の立地環境及び建物の把握と補強
税理士事務所の広域災害対策を講ずる際、事務所を取り巻く環境、さらに、どの様な
建物の中に事務所が入っているかを把握することは、安全対策上極めて重要な仕事である。
事務所を設置するに当たっては、地震やそれに伴い発生するであろう火災や津波の被
害が少ない場所が良いことは言うまでもないが、必ずしもそのような場所に設置できる
とは限らない。
事務所用地を調査し、軟弱地盤や土地の液状化による不等沈下、支持力低下による被
害のおそれがないか、また、地形を調査し、活断層の有無・山崩れ・地すべり・盛り土
崩壊や津波被害のおそれがないか認識して、それに従って、建物の強さを考慮し、建物
の地震被害がどのようなものになるか考えておく必要がある。
さらに、避難場所をどこにするか、避難路の良否なども合わせて考慮しておくことが
肝要である。
なお、建築物とその特徴は次の表のとおりであるので、事務所がどの部類の建築物に
該当するのか確認されたい。
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構 造
耐 震 性
鉄筋、鉄骨コンクリー
ト造りの超高層ビル(12
建物そのものの倒壊の危険はまずない。
階によっては揺れの大きさや性質が相当異なるので
階建て以上)
注意が必要。
鉄筋、鉄骨コンクリー
ト造りの高層ビル(7
建物倒壊等の損害が予想される。ビルの高さとの関
係でどの階が最も安全かを考慮して入居階を決定す
〜11階建て)
る必要がある。
鉄筋、鉄骨コンクリー
ト造りの中低層ビル(2
同 上
〜6階建て)
阪神・淡路大震災で見られたとおり、1階が駐車場
筒抜けの階があるビル
等である「筒抜け」の階があるビルはその倒壊率が
非常に高かったので、極めて危険である。
木造一戸建
建物倒壊等の損害が予想されるが、屋根が軽く、鉄
骨入りの壁構造の建物が地震に強い。また、柱が太く、
多いものがよい。
免震構造の建物
この構造の建物は、相当大きな地震でも殆ど影響を受
けることなく、現在では最も地震に強い建物といえる。
『建築基準法』について
昭和55年の建築基準法改正(56年6月施行)により耐震基準が強化され、それ以前の
ものと比べて耐震度は高くなっている。
したがって、55年基準に適合しない建物については、耐震診断を受けて必要があれ
ば補強策を講じておくことが望ましい。また、今後、ビル等の選定の際は、いつの建
築基準で建てられたかを判断基準とされたい。
建築の年度は、市町村の建築指導課や土木課等で「建築確認申請書」の「申請年度」
を調べることにより知ることができる。
3 施設の内容の確認
事務所内に転倒、落下の危険性、有毒・有害物質流出の危険性、あるいは火災・爆発
の危険性のあるものがないか把握して対策を考え、また、地震発生時に操業を停止すべ
き装置の有無も把握しておくこと。
4 重要書類、データ等の管理
⑴ 重要書類の保管
重要書類(FD、光ディスク、USBキー等含む)は、耐火金庫等に保管し、併せ
て原本と同一のもの(二重化)を事務所以外の場所に保管することが望ましい。
すべての重要書類のコピーを、事務所から離れた同時罹災の懸念がない地域に保管
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することが有効であり、その保管手段としては、①専門の保管業者(貸し倉庫等)へ
の委託、②銀行等の貸金庫、③ネットワークの利用(LANまたはインターネット通信)
等があげられる。
⑵ データ等の管理
データ等に関しては、主に業務データ及びプログラムなどいわゆる情報処理機能の「バ
ックアップ」対策が考えられる。
この「バックアップ」対策とは、災害時に情報システムが被害を被った場合でも、
その損害を最小限に食い止めるためにその代替機能を確保しておくことである。例えば、
無停電電源装置等の活用も考えられる。
5 非常持出品の選定・管理
災害時に最優先して持ち出さなければならない金品、文書を予め定めておき、災害時
に速やかに搬出できるよう特定の場所に整理・保管しておくこと。
非常持出品については、非常時持出責任者以外の職員も、その保管場所や持ち出し方
法等について日頃から確認しておくこと。
6 防災用品等備品の状況の把握
従業員や関与先に連絡を行う伝達・通信機器の有無、地震発生後必要な食料や飲料水
の備蓄の有無、火災報知設備・防火用水等消火設備の有無(消火栓・スプリンクラー等
は使用できない可能性大)、医薬品の有無、事務所の破損を考慮した場合の修復資機材
の有無などを把握しておくこと。
⑴ 食 品
非常食は、最低でも1人1日分、できれば3日〜5日分は備蓄しておくことが望ま
しい。また、保存性の高い食品が良いことは言うまでもなく、次の食品などが上げら
れる。
非常食(一例)
□飲料水 □乾パン □レトルト食品 □餅(真空パック)
□み そ □粉ミルク □米 □パン(缶詰)
□キャンディー □カップめん □チョコレート
飲料水は1人1日3ℓを3日〜5日分備蓄することが望ましい。
ミネラルウォーターは缶入りで2年、ペットボトル入りで1年の保存が可能。
これに洗面、洗い物の生活用水も必要でポリタンクによる保存が望ましい。
⑵ 備 品
食品以外の備品としては、次のものが挙げられる。
防災用品(一例)
□懐中電灯 □携帯ラジオ □携帯テレビ □予備電池 □消火器等
□三角バケツ □簡易トイレ(ダンボール製)
□救急箱(消毒薬、きず薬、風邪薬、頭痛薬、整腸薬、包帯、ガーゼ、止血帯、
絆創膏、副木)
□毛布 □ティッシュ □ロープ □ナイフ □簡易カイロ □小銭
□ろうそく □ライター(マッチ) □軍手 □ヘルメット □防災頭巾
□卓上カセットコンロ □固定燃料 □木炭
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7 事務所の防災対策組織、訓練、啓蒙
⑴ 防災対策組織
災害発生時に、迅速かつ的確な対応をするためには、初動体制の整備が必要であり、予め
事務所内の防災体制を確立しておき、緊急時には十分に機能するものにしておく必要がある。
事務所における点検整備は、予め職員による役割分担を定めておき、組織的な対応
を行う必要がある。また、災害時の消防活動についても、自衛消防隊の組織に倣って、
前記同様分担を定めておく。
なお、防災点検及び消防活動対策については、資料1・2を参考とされたい。
防災組織(一例)
火元・消火器担当(氏名 )
点検責任者
建 物 ・ 施 設 担 当(氏名 )
所長税理士
電 気 設 備 担 当(氏名 )
(氏名 )
O A 機 器 担 当(氏名 )
消防組織(一例)
通
消
点検責任者 避
所長税理士 安
(氏名 ) 応
搬
報連
火
難誘
全防
急救
出
絡担
担
導担
衛担
護担
担
当(氏名 )
当(氏名 )
当(氏名 )
当(氏名 )
当(氏名 )
当(氏名 )
⑵ 防災訓練、啓蒙
防災訓練は年2回、最低でも1回は行うことが望ましく、防災の日である9月1日
は周辺の自治体などの訓練にも参加できるので、必ず訓練を行いたい。
防災訓練は、本会及び支部でも行うが、訓練の意義を正しく理解し、積極的に参加
するものとする。
なお、訓練の時のみに災害に対する意識を持つのではなく、常日頃からの心がけが
大切である。防災訓練の要領は資料3を参照。
また、災害発生時においては、各地区の避難場所についても職員に十分周知しておく。
第4章 災害発生時の対策
1 東海大地震の警戒宣言発令時
大地震の警戒宣言が発令された時は、情報収集に務め混乱を防止し火災等による被害
を大幅に減少させることを念頭に置き、対策を講じたい。
警戒宣言が発令された時の事務所業務は、危険性を考慮し業務を中止し、目前に迫っ
た地震に備えるため、次の応急措置を行う。
警戒宣言が発令の仕組みは、資料4を参照。
⑴ 緊急避難場所の確認
⑵ 出火防止
止むを得ないものを除き、火気設備等の使用停止、使用火気及び消火器等の確認。
⑶ 危険物等の安全確認
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止むを得ないものを除き、取扱いの中止。
⑷ 建物等の緊急点検
ガムテープ等によるガラス・照明器具等の固定、ブラインド等の閉鎖。
破損し易い物、重量物等の床置き及び転落防止。
⑸ 非常持出し品の確認、搬出の準備
⑹ 防災用品の確認
すぐに使用できる場所等へ移動。
2 大地震発生時
⑴ 人命の保護・救済
大地震発生時に伴い生じる災害は枚挙にいとまがない。その際、最も重要なことは、
いかなる災害が発生しようとも、自分の生命を含む人命の保護・救済を図ることであり、
次に掲げる「地震の心得」を参考に沈着冷静に行動されたい。次に余裕のある場合には、
他人の生命の安全と救済を図るのであるが、他人の救済に当たる際、相当な訓練と技
術及び判断力が要求される場合があることを留意されたい。
⑵ 職員及びその家族の安否の確認と相互連絡
事務所の責任者は、速やかに職員及び職員の家族の所在と安否を確認し、相互に連
絡を図る。
⑶ 支部及び本会への連絡
会員は、自らの安否と被災状況等を直ちに緊急連絡網に基づき連絡する。連絡は、
FAX等を利用し、連絡内容は別表の「災害被害等情報」によるものとする。
3 事後対策
地震発生後の事後対策としては、事務所及び関与先の人的・物的被害の状況を正確に
把握し、その上で復旧計画に基づき速やかに業務を再開し、関与先の救済活動を行うも
のとする。
また、本会が行う災害税務援助活動に協力するなど、地域社会への税理士業務を通じ
た貢献をすることが肝要である。
地 震 の 心 得
1 まずわが身の安全を図る
地震が発生したら、まず丈夫なテーブル、机などの下に身をかくしてしばらく様子を
見る。
2 すばやく火の始末
大地震で最も恐ろしいのは火災。地震を感じたら落ち着いて、冷静に、すばやく火の
始末。ガスもれはないか確認し確認できるまで、タバコ等火は使わない。
3 火が出たらまず消火
万一出火した場合には、初期のうちに火を消すことが大切。周囲に声をかけあい皆で
協力して初期消火に努める。
4 どっちが先か救出と消火
幼児が家具の下敷になっている、あるいは大けがをしている者がいる。一方出火に気
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づいた。火事! こんなときは、救出救護より消火を優先する。
大声で近所など人に知らせて応援を求めながら消火にあたる。
5 玄関ドアを開けはなつ
マンションなど中高層の住宅では玄関の鉄扉をとっさに開けはなつ(開閉できなくな
ることがある。閉じ込められないようにする。余震があるので、そのままにしておく。)
6 あわてて外に飛び出すな
屋外は屋根かわら、ブロック塀、ガラスの飛散など危険がいっぱい。揺れがおさまっ
たら外の様子を見て、落ち着いて行動する。
7 余震に備え危険な場所には近寄るな
狭い路地、塀ぎわ、ブロック塀の傍など、危険な場所にいるときは急いで離れる。
8 近隣への協力をする
出火があれば消火にかけつける。
負傷者の救出救護を手伝う。
高齢者世帯や障害者の方のいる家庭など、すぐにたずねて安全を確認し、余震への備
えの助力をする。
9 がけ崩れ、津波などに注意
海沿いでは地震のときは避難の用意をする。強い地震では津波警報を待たずにともか
く避難する。
崩落や倒壊のあるような地形や建造物のそばに住んでいる場合はともかく避難して様
子をみる。
がけ崩れ、津波など危険区域では、すばやく安全な場所に避難する。
10 正しい情報で行動
テレビやラジオ、防災機関からの情報で行動し、デマにまどわされないように注意す
る。
11 不要不急の行動をしない
単なる状況連絡の電話は控える。
現金引きおろしに金融機関へ行かない(大勢おしかけることになるとデマやパニック
のもとになる)。
12 人の集まる場所では冷静な行動を
あわてて出口や階段に殺到せず、係員の指示に従う。
13 避難は徒歩で、持ち物は最小限に
避難は自動車・自転車は使わずに徒歩で。また、身軽に行動できるよう荷物は必要最
小限にとどめ、背負うなどして両手をあける。
14 自動車は左に寄せて停車
カーラジオの情報に注意し、勝手な走法はしない。また、走行できない場合は左に寄
せて停車し、車を離れるときにドア・口ックはしない。
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