平成28年7月21日 No.157-1 有効茎決定期の生育概況と今後の肥培管理 平年に比べ茎数は少なめ、茎数確保後は中干しを! 中干しの実施は生育診断で、終了は幼穂形成期前 圃場内の検診で、葉いもちの早期発見・早期防除 仙台管区気象台は、東北地方は6月13日に「梅雨入り」したとみられると発表しました。この梅雨入りは 平年より1日早く、昨年より13日早い梅雨入りとなりました。今年は消雪も早く、田植以降の高温・多照で 生育は全体的には順調に推移していますが、地域・圃場間での生育較差や、移植が遅かった地域では 6月初めの低温等もあり生育の遅れが見られています。 ― 有効茎決定期(6月24日現在)の生育概況 ― 表1の全県的な「あきたこまち」の生育(県水稲定点生育 調査結果)は、葉数の展開は8.7葉(平年差+0.1葉)と平年 並ですが、草丈は39.4cm(平年比105%)とやや長く、㎡当 たりの茎数は395本(同比93%)と少なく、葉緑素計値は 44.1(同比100%)で平年並となっています。 表2は有効茎決定期の理想生育量ですが、生育調査 結果からは草丈で、上限値を上回り、茎数・葉色は理想 生育量の範囲内ですが、茎数確保に圃場間の較差が 大きくなっています。 ― 生育診断で中干しの判断を ― 生育診断は草丈・茎数・葉色を測定し、理想生育と比 較して生育を診断するものです。下の図1に有効茎決定 期の生育診断図(県南地区を対象)を示しました。 表1 水稲定点生育調査結果(あきたこまち・6月24日現在) 草 丈(㎝) 茎数(本/㎡) 本 年 平年比 (%) 本 年 県 北 41.0 108 中 央 42.3 109 県 南 37.0 全 県 39.4 葉 数(葉) 葉緑素計値 平年比 (%) 本 年 平年差 (葉) 本 年 平年比 (%) 437 93 8.8 0.0 44.3 100 435 102 9.1 0.3 44.2 100 102 346 89 8.4 0.0 44.0 100 105 395 93 8.7 0.1 44.1 100 表2 有効茎決定期の理想生育量 ※上限・理想・下限 草 丈(㎝) 茎数(本/㎡) 葉 数(葉) 葉 色 (SPAD502) 県 北 36・34・33 462・428・394 8.7・8.5・8.3 43・42・41 中 央 38・36・34 475・431・388 8.8・8.6・8.3 46・45・44 県 南 36・34・33 378・346・314 8.6・8.4・8.1 44・43・42 ※H28稲作指導指針より 表3 Ⅴ-1 型 40 伸び過ぎ (倒伏3~4) Ⅳ 型 生育過剰 (倒伏4) Ⅰ 型 ● Ⅲ 型 ☆ ↑理 想 草 丈 (cm) 30 Ⅱ 型 Ⅳ 型 倒 伏 (2~3) Ⅲ 型 (倒伏1~2) Ⅳ 型 Ⅴ-2 型 Ⅰ 型 20 生育不足 (倒伏0) 300 茎数過剰 (倒伏3~4) Ⅱ 型 倒 伏 (0~1) 350 技 術 対 策 生育型 ☆ :理想値 ● :調査値 Ⅴ‐1型 Ⅴ‐2型 400 茎数(本/㎡) 図1:有効茎決定期における生育診断(県南) Ⅵ 型 生育促進するため、通常の水管理で茎数 確保とする。 有効茎数を確保してから、深水管理により 弱小茎を抑制し、その後中干しを行う。 6号分げつの発生を確認してから、深水管 理を行い、その後中干しを行う。 生育量がやや多いことから通常の中干し を行う。 草丈が長いことから直ちに中干しを行う。 茎数が過剰であることから、直ちになかほ しを行い、弱小茎を抑制する。 生育量が過剰であることから、直ちに強め の中干しに入る。 有効茎決定期の生育診断に基づく水管理 診断図には理想値を☆印、生育調査結果値を●印として表しました。診断結果は、倒伏 2~3が想定 される「Ⅳ型」の生育型(表3)となり、診断に基づく水管理は「通常の中干し」の実施となります。 中干しは、無効分げつの発生を抑えるとともに、根の活力を高めて一穂粒数と千粒重を増加させる効果 や、節間伸長が抑制されることにより、倒伏が軽減されます。期間は7~10日間を目安に、田面に亀裂が 1~2cm入り足跡がつく程度とします。中干しは幼穂形成期前には終了としましょう。 平成28年7月21日 No.157-2 生育・栄養診断で幼穂形成期の適期肥培管理 表4:幼穂形成期の予測 幼穂形成期(例年7月15日頃・幼穂長2mm)、減数 分裂期(例年7月25日頃・葉耳間長±0cm)は幼穂が 移植時期 伸長し、籾数・籾殻の大きさを決定する時期であると 5月10日 5月15日 5月10日 5月15日 5月15日 5月20日 鷹巣 ともに、下位節間が伸長する時期でもあります。(表4) 稲の生育ステージは間もなく幼穂形成期を迎えま 秋田 すが、穂肥判断の肥培管理は生育・栄養診断結果 横手 に基づいて行いましょう。 中苗 あきたこまち ± 0℃ + 2℃ - 2℃ 7月8日 7月11日 7月9日 7月12日 7月10日 7月14日 7月5日 7月7日 7月6日 7月8日 7月11日 7月9日 7月7日 7月10日 7月8日 7月12日 7月10日 7月14日 ※発育モデルを用いて予測した幼穂形成期(2mm)の到達時期 ※移植時期から6月26日まではアメダス平均気温、27日以降は平年値 ― 生育・栄養診断とは ― 生育診断とは、草丈 、茎数、葉色を測定し、理想生育と比較して生育を診断するものです。栄養診断は、 栄養診断値によって幼穂形成期の稲の窒素吸収量を推定し、理想窒素吸収量と比較し、その多少により 追肥の時期と量を判断し、籾数を制御するものです。 表5 幼穂形成期の理想生育量 ※上限・理想・下限 表5の理想生育量により、県南地区を対象とし 草 丈(㎝) 茎数(本/㎡) た生育診断(図2)・栄養診断(図3)を下図に 示しました。(理想値は☆印、生育推定値は●印) Ⅴ‐1型・ 伸びすぎ (倒伏3~4) 70 Ⅳ型・ 生育量やや多い (倒伏2~3) 65 草 丈 60 (cm) Ⅱ型・ 生育量やや不足 倒伏0~1 Ⅵ型・ 生育過剰 (倒伏4) :理想値 ☆ ● :推定値 62・60・57 586・552・519 11.0・10.9・10.7 42・40・39 中 央 63・61・58 559・515・471 10.9・10.7・10.5 44・42・40 県 南 64・62・60 484・463・443 11.0・10.9・10.7 43・42・41 55 Ⅴ‐1型 ← 粒数過多 登熟不良 (倒伏2以上) 50 Ⅲ型・理想(倒 伏1~2) ☆ :理想値 ● :推定値 Ⅵ型 葉色濃い (倒伏1~2) Ⅰ型・ 生育不足 (倒伏0) 55 県 北 ※H28稲作指導指針より ● ☆ 葉 色 (SPAD502) 葉 数 Ⅳ型 Ⅴ‐2型・ 茎数過剰 (倒伏3~4) 葉 緑 素 計 値 籾数やや多い (倒伏1~2) 45 ● ☆ 40 ← Ⅲ型 理想 (倒伏0~1) Ⅰ型 50 350 400 450 500 550 600 栄養不足 粒数不足 (倒伏0) 35 Ⅱ型 Ⅴ‐2型 籾数やや不足 倒伏0 生育過剰 (倒伏1~2) 茎数(本/㎡) 図2:幼穂形成期における生育診断(県南) 30 15 20 25 30 35 40 生育指数(草丈×㎡茎数) ― 生育・栄養診断による肥培管理 ― 45 (×1000) 図3:幼穂形成期における栄養診断(県南) 例として幼穂形成期の生育を、草丈 66cm、茎数 463本/㎡、葉緑素計値 43.5 とした場合の診断は、 生育診断(図2)では生育量やや多い「Ⅳ型」、栄 養診断(図3)では籾数やや多い「Ⅳ型」の生育型 となり、表6の診断に基づく追肥量は、幼穂形成期 には「なし」、減数分裂期に「2kg」の追肥判断となります。 但し、緩効性肥料を使用した圃場では、追肥は控えます。 ※生育指数は30.6(66cm×463本/1000) 表6 生育型 Ⅰ 型 Ⅱ 型 Ⅲ 型 Ⅳ 型 Ⅴ‐1型 Ⅴ‐2型 Ⅵ 型 窒素追肥量(kg/10a) 幼穂形成期 減数分裂期 2kg 2kg 2kg 2kg ムラ直し1kg 2kg な し 2kg な し ムラ直し1kg な し ムラ直し1kg な し な し 生育・栄養診断に基づく追肥量 詳細については、最寄りのJAや県各地域振興局農林部の普及担当者にご相談ください。 お問合せは 米穀部 米穀総合課(小 松) 018- 845- 8034 へ 営農支援部 営農支援課
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