ASEAN に進出する県内企業は全国 9 位の 227 社

2016/7/20
松本・長野・飯田支店
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特別企画:ASEAN 進出に関する長野県内企業の実態調査
ASEAN に進出する県内企業は全国 9 位の 227 社
「製造業」が 175 社、進出国は「タイ」が 116 社で最多
はじめに
昨年 12 月 31 日、東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟する 10 ヵ国が域内貿易自由化や市場統
合を目指し、広域経済共同体「ASEAN 経済共同体(AEC)」を発足させた。インドネシアやタイなど、
東南アジア地域の主要国が参加、域内総人口約6億人、名目 GDP 約2兆ドル、域内総貿易額 2.1
兆ドルにものぼる巨大な経済圏を抱える一大諸国連合の ASEAN は、低廉な人件費や巨大市場の魅
力から近年、日本企業の進出が盛んな地域である。昨今の中国経済減速の影響などもあり、中国
一辺倒の海外進出から「チャイナ・プラス・ワン」の動きが広がっており、海外進出を考える日
本企業にとって、ASEAN の存在感は高まっている。
帝国データバンクでは、2016 年4月末時点の企業概要データベース「COSMOS2(約 146 万社)」
及び信用調査報告書ファイル「CCR(約 170 万社)」などに基づいて、現地企業への出資、現地法
人及び関係会社・関連会社の設立・出資、駐在所の設置などを通じて、ASEAN に進出していること
が判明した日本企業を抽出。このうち、長野県内に本社を置く企業に焦点を当て、進出国別、業
種別、地区別、規模別などに集計・分析を行った。
ASEAN 全体を対象とした県内企業の進出実態調査は今回が初めて。
調査結果(要旨)
■ASEAN 進出の日本企業は1万 1328 社、長野県内企業は 227 社
ASEAN のいずれかに進出している日本企業は1万 1328 社判明した(複数国進出による重
複を除く)。このうち長野県内企業は 227 社で、47 都道府県別では9番目に多い。一方、
特化係数で比較すると、長野県の 1.12 は5番目に高く、県内企業の積極的な進出が窺え
る。
■進出国では「タイ」
「インドネシア」
「シンガポール」の順
ASEAN に進出する県内企業の進出国で最も多かったのは「タイ」で 116 社、以下「イン
ドネシア」(55 社)
、「シンガポール」
(48 社)
、
「ベトナム」(45 社)と続く。全国企業では
「タイ」
「シンガポール」
「ベトナム」
「インドネシア」の順。
■進出企業の4分の1が売上高「5億円未満」
ASEAN 進出の県内企業 227 社を業種別にすると、「製造業」が 175 社で構成比は 77.1%
を占めた。地区別では「南信」の企業が 100 社(構成比 44.1%)で最多。売上高別では「10
億円以上 30 億円未満」が 56 社(同 24.7%)で最も多かったが、「1億円以上5億円未満」
にも 50 社(同 22.0%)が該当、
「5億円未満」の区分を合わせると 57 社(同 25.1%)と
なった。
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特別企画:ASEAN 進出に関する長野県内企業の実態調査
1.ASEAN 進出企業、長野県は都道府県別9位の 227 社、特化係数では5位に
今回の調査で、ASEAN いずれかに進出している日本企業は1万 1328 社判明した(複数国進出に
よる重複を除く)
。都道府県別にみると、
「東京都」が 3908 社で最多、構成比は 34.5%を占めてい
る。以下、
「大阪府」
(1462 社)
、「愛知県」
(1004 社)、
「神奈川県」
(593 社)、
「静岡県」(429 社)
、
「兵庫県」(378 社)、
「埼玉県」
(351 社)、
「京都府」(256 社)と続き、
「長野県」
(227 社)は多い
方から9番目に位置している。
「広島県」
(218 社)、
「福岡県」(195 社)
、
「千葉県」
(182 社)を上
回るなど、積極的な進出ぶりが窺える。
特化係数(注)を算出し、全国の進出状況と比較して相対的にどれだけ特化しているかという
特性をみると(全国 1.00、数字が大きいほど全国の中で ASEAN への進出度が高いと判断できる)
、
「 長 野 県 」 は 1.12 。「 東 京 都 」
(2.45)、「大阪府」(1.84)、「愛知
県」
(1.70)
、
「静岡県」
(1.29)に続
き、
「京都府」(1.12)と並んで5番
目に高くなっている。「東京都」と
「大阪府」を除くと、
「愛知県」
「静
岡県」
「長野県」など中部地区の県で
特化係数の高さが目立っており、同
地区では製造業や物流拠点の集積を
背景に ASEAN への進出が非常に盛ん
であることを示している。
なお、昨年5月時点のデータに基
づく「中国進出に関する長野県内企
業の実態調査」では、中国に進出す
る県内企業は 226 社で、都道府県別
では 12 位だった。
2.県内企業の進出国、
「タイ」
「インドネシア」
「シンガポール」
「ベトナム」の順
ASEAN に進出している県内企業 227 社を進出国別に示したのが次頁の地図(1社で複数国に進出
しているケースがあるため、進出国の合計は 227 ではなく 337 となる。構成比算出の母数は 337)
。
最も多かったのは「タイ」
(116 社)で、以下「インドネシア」
(55 社)
、
「シンガポール」(48 社)
、
「ベトナム」
(45 社)
、
「フィリピン」
(39 社)などと続く。なお、構成比で長野県が全国を上回っ
たのは、
「タイ」(長野県 34.4%、全国 30.4%)
、
「インドネシア」
(長野県 16.3%、全国 12.8%)
、
「フィリピン」(長野県 11.6%、全国 8.5%)
。
最も多かった「タイ」は、人件費の上昇や 2011 年の洪水被害などのマイナス要因を伴うものの、
依然として自動車産業を中心に産業集積が厚く、既に進出している日本企業も多いことから、他
の加盟国より比較的進出しやすい土壌が確立していることが背景にある(タイ進出の日本企業は
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4788 社)
。一方、2011 年に軍政
から民主化へ舵を切り、「アジ
ア最後のフロンティア」として
市場成長が期待される「ミャン
マー」は、今回の調査では4社
(同 1.2%)にとどまった(日
本企業は 286 社)
。製造拠点と
して注目される反面、電力・交
通などインフラ整備が途上で
あることに加え、政情が不安定
だったことも、期待の大きさと
比べ進出が伸び悩む一因とみ
られている。
3.
「製造業」の構成比は 77.1%、全国の 43.5%を 33.6 ポイント上回る
ASEAN に進出している県内企業 227 社を業種別にしたのが下の表。
「製造業」が 175 社で、構成
比は 77.1%と4分の3を超えた。全国でも「製造業」の構成比は最も高いが、それでも 43.5%。
長野県は全国を 33.6 ポイント上回っており、「製造業」
中心の進出が長野県の特徴となっている。
「製造業」の構成比を進出国別にみると、
「タイ」75.0%、
「インドネシア」81.8%、「シンガポー
ル」79.2%、
「ベトナム」73.3%など進出企業の多い国がいずれも高くなっている。
製造業が圧倒的に多い長野県だが、全国の調査結果は「製造業」(43.5%)のほか、「卸売業」
(24.9%)
、
「サービス業」(15.0%)も構成比が 10%以上。単一の市場・生産基地を目指す ASEAN
は、物品や投資、労働者の自由な移動を目標に掲げている。そのため、域内貿易の活発化による
経済成長、所得水準の向上によるサービス分野などへの経済波及効果が見込まれており、「製造
業」に限らず「卸売業」
や「サービス業」とい
った業種で恩恵を享受
しやすい環境にある。
なお、「中国進出に
関する長野県内企業の
実態調査」では、中国
に進出する県内企業
226 社のうち、171 社
(75.7%)が「製造業」
だった。
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4.地区別では「南信」が構成比 44.1%でトップ
ASEAN に進出する県内企業 227 社の本社所在地を地区別にすると、
「南信」が 100 社(構成比 44.1%)で最も多かった。製造業者、
特に機械・金属メーカーが多数存在する「南信」は、ASEAN 進出に
おいても牽引役を担っている。
「中国進出に関する長野県内企業の実態調査」でも、地区別で「南
信」は 42.5%を占めトップだった。
地区
北信
東信
中信
南信
合計
社数
46
58
23
100
227
構成比
(%)
20.3
25.6
10.1
44.1
100.0
5.売上高「10 億円未満」が 39.6%、
「100 億円以上」は 17.6%
ASEAN 進出企業は、必ずしも規模の大きな企業ばかりではない。年売上高「100 億円以上」は 40
社(構成比 17.6%)存在するが、「10 億円以上 30 億円
未満」が 56 社(同 24.7%)、
「1億円以上5億円未満」
が 50 社(同 22.0%)と幅広く分布。「10 億円未満」の
区分を合わせると構成比は 39.6%、「5億円未満」で
も 25.1%と全体の4分の1に達している。
「中国進出に関する長野県内企業の実態調査」でも
これに近い結果だったが、「10 億円未満」は 34.1%と、
ASEAN の方が 5.5 ポイント高い。
売上高
1億円未満
1億円〜5億円未満
5億円〜10億円未満
10億円以上30億円未満
30億円以上50億円未満
50億円以上100億円未満
100億円以上
合計
社数
7
50
33
56
19
22
40
227
構成比
(%)
3.1
22.0
14.5
24.7
8.4
9.7
17.6
100.0
まとめ
今回の調査で、ASEAN に進出する日本企業は1万 1328 社に達し、そのうち長野県内企業が 227
社であることがわかった。1973 年に設立された日・ASEAN 合成ゴムフォーラムから始まった日本
と ASEAN の交流は、現在ではかけがえのない重要な経済パートナーとして強く結ばれていること
を裏付けた。特にタイやインドンシア、シンガポールといった発足当初からの加盟国を中心に、
政情や産業インフラが比較的安定している地域への進出が目立つ。一方、ラオスやミャンマー、
カンボジアなど 1990 年代に ASEAN へ加盟した国々は、今後の市場成長は期待されているものの、
現時点では活発な進出状況とは言い難い。
ASEAN 経済共同体の発足による「ヒト・モノ・カネ」の往来の自由化は、今後 ASEAN 全体をひと
つの生産拠点としてとらえる動きを一層加速させるだろう。現在は一部の加盟国に集中する日本
企業の進出も、今後域内で分散して進出する動きが活発になる可能性もある。中国経済減速に伴
い「チャイナ・プラス・ワン」の動きも拡大している。昨年5月のデータに基づく中国進出企業
は、全国で1万 3256 社、長野県 226 社。全国では、ASEAN 諸国への進出企業数がまだ中国進出企
業数を下回っているが、近い将来こうした構図が変化することも考えられる。
一方、様々な文化的背景を持つ国が集う ASEAN は、宗教・人種・文化が混在しており、日本に
は馴染みのない商習慣や制度も多数存在するほか、突発的な政情変化などのリスクを内包してい
る。こうした文化や商習慣の違いを理解し、どのように克服することができるかが ASEAN 進出の
成否を分けるひとつのカギとなる。
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